さて。開設から間もなく4年を迎える「黙ってブラシかけとけ」な当ブログ。「革靴とお手入れに興味を持った」結果、不幸にもこのブログに何らかの事情でたどり着いてしまったあなたへ、この年末年始は今までに書いた200以上の靴と靴のお手入れ関連の文章からテーマ別にまとめ直して文章を書いております。
今回はその3回目。元旦に相応しい、このテーマのメインとなる、お手入れ方法です。テーマは「ブラッシングと乾拭き」です。
既に食傷気味の方もいると思いますが、何より一番食傷気味のはずの発信している私自身が今回見直してみたところ、思った以上に新鮮でしたので、そろそろ暇になってきた年の初めに、改めて軽く目を通して頂ければ、と思います。
靴のお手入れ、靴磨きの基本は「ブラッシングと乾拭き(磨き上げ)」です。他は基本不要です。
革靴にとって最低限でありながら、実は基本的にはこれ以上は必要ないのではないか、と思っているお手入れの方法。それが当ブログで毎回暑くしつこく書いている「ブラッシングと乾拭き(磨き上げ)」です。
方法自体は簡単ですので、最初に挙げておきます。これで腑に落ちた方にはこの後の長い振り返りと説明の文章は不要です。
- 革靴を手に取り、ブラシで全体の埃を落とします。念入りに。
- 革靴を引き続き手に取り、グローブで全体を磨きます。念入りに。
これでは不十分だと思った方、何となく落ち着かなかった方、引き続きお読み頂けると私の意図が伝わるのではないか、と思っています。
えっ?ふざけるな?バカにしてる?
そう思われたあなた、先ほどのマストバイ、まだ買ってませんね?
上の二行だけサラッと流し読みしただけで文句言わずに、とりあえず買ってみましょう。
買ってる?としたら、まだこの二つやってませんね?変なクリーム加えたりしてませんか?とりあえずこれだけなんですから、サクッとやってみてください。
綺麗になりませんか?
綺麗にならないとしたら、恐らく後半部分を読み飛ばしています。「念入りに」です。最低1分、目安は3分です。
当ブログでは「靴のお手入れ」と「靴磨き」を明確に分けてはいますが、最近この「お手入れ」自体が実際文字通り「靴磨き」だな、と気付きました。結局靴を磨いているんです。
靴のお手入れ、というと、なんか休日の時間がある時に気合を入れて行うものだと思っている人が多いと思います。このブログでは、それは「お手入れ」ではなく敢えて「靴磨き」と表現しています。どちらも大切ですし、厳密な区別があるわけではないのですが。
靴には、今あなたが思い描いている「磨く」という行為の他に、もっと大切なことがあります。「磨く」のは半年ぶりでも、一年ぶりでも構いません。けれど、「お手入れ」は毎日して下さい。その代わり、手順も簡単だし、時間も1分もかかりません。
腑に落ちたので、一応写真付きで確認したい、という方は初めの頃に書いた次の文章をご覧頂ければ、と思います。
あなたの靴を劣化させる最大の原因は「愛情と関心が薄れること」です。
靴を劣化させる最大の原因は何でしょうか。それは「愛情と関心が薄れること」だと思っています。
愛情と関心が薄れることで放置されるだけならまだマシかもしれません。
薄れることで、日頃の扱いが雑になります。
それはクリームやオイルが足りないことではなく、表面に埃がついたままにすることで靴自体が傷んでくること。そのことがきっかけとなって実際に手に取る頻度が減ることで、あなた自身がその靴に対して愛情が薄れてしまうこと。
埃という直接の害、そして興味が薄れることで益々靴自体が艶が無くなったように勝手に思ってしまうという害。
これらを取り除く一番の方法が、丁寧な日々のブラッシングと磨きあげ(乾拭き)なんですね。
実際に埃というのは靴を物理的に劣化させます。カビの原因にもなりますし、革自体を傷めます。ただ、それ以上に毎回伝えたいと思っているのは、埃が与える心理的な影響です。
見向きもされなくなった、存在を忘れ去られた革靴は急速に生命力を失っていきます。これは靴に限らず、モノ全般に当てはまると思っています。
ちょっと最近放置がちだった部屋の片付けをしようと思った時、床に積み上がった書類や本を片付けようとして、埃が積もっていたりするとそれだけで億劫になったりしませんか?片付けをしばらくサボると、部屋のあちこちに埃がつもり始めます。それが直接すぐに影響を与えるというわけではなくとも、この埃が意外と厄介で、人を億劫にさせるんです。「またでいいや」と。
靴も同じです。原因は埃だけではありませんが、埃が積もった靴は徐々にその靴の魅力と力を奪っていきます。
革ってそれほどオイルだクリームだが必要な訳ではないんです。毎日のお化粧とは違います。却って常にしっかりブラシをして、埃だけでなく、刺激を与えつつ、革自身が持っているオイル分であったりを引き出してあげる。乾拭きで表面を引き締めてあげる。内側から革本来が持つ力を引き出してあげる。
埃というのは人を億劫にさせます。これは靴に興味がない方だけでなく、靴好きでも同じです。靴好きにとっては、手元の靴が多すぎて、一つ一つの靴に触れなくなることで、埃が積もっていきます。目が行き届かなくなるんです。そうなると、不思議なもので、あれほど欲しいと思って手に入れた筈の高級革靴への愛情が薄れてしまうのです。
クリームもクリーナーも本来不要なんです。普段お手入れを全くしていないあなたは「でも私の靴は靴マニアのあなたと違って汚いから」「ボロボロだから」と言いたくなるかもしれません。けれど、もし普段からお手入れ一つしたことがないのであれば、ますますいきなりクリーナーやクリームは使わないでください。
ごめんなさい。今回はなるべく幾つものページを見なくても良いように引用するようにしていますが、この話は前回まとめたばかりなので、上記をご覧頂ければと思っています。
何故多くの人は靴のお手入れをしないのでしょうか。
これは最初の考え方の時に書きましたので、今回はちょっと別の視点から振り返ってみたいと思います。何故多くの人は靴のお手入れをしないのでしょうか。
お手入れをしない一番の理由は。
面倒、やり方が分からない、人それぞれですが、私、一番の理由は「靴って汚いもの」「外で履くもの」だからだと思います。
靴って、家の中に持ち込むものじゃないんです。日本では。あくまで外のもの。けれど、お手入れは基本的に家の中でするものです。
家に着くと靴を脱ぐ私たち日本人にとっては、靴のような外のものはあまり中に持ち込みたくないんです。あくまで外履き。
だから、基本無頓着だし、家に持ち込まないから汚れも気にならない。これ、家の中でも履くとなったら、全く変わると思います。
修理で靴を預かると、得体の知れないものを踏んだ靴にたくさん出会います。つい数分前に踏んだと思しきものから、これ、いつからこの靴底にへばり付いているんだ、と思うほど形を変えてしまっているものまで、もう、色とりどり。
だから、家に着くとそのまま脱ぎっぱなし、放置状態で、靴の存在なんて忘れます。身近な存在ではないんですね。
靴が身近な存在ではないからです。
あまり「日本人固有の問題論」にはしたくないのですが、単純に「やり方が分らない」「面倒」という以外にも、意外とこの理由は大きいのではないか、と改めて思います。
やり方も分らず、何となくやることが多そうな気がして既に面倒になっているところに持ってきて、更に靴は汚いものとなったら、普通触りたくもないと思うんです。だから、実際に家を出るときに玄関先で靴自体触れることすらない方も結構多いのです。見ていて凄いです、玄関先での靴の扱われ方って。
ところが、実際のところ、靴のお手入れ、靴磨きってすごく簡単でシンプルなのです。
だって、散々書いているように、
- 革靴を手に取り、ブラシで全体の埃を落とします。念入りに。
- 革靴を引き続き手に取り、グローブで全体を磨きます。念入りに。
これだけなんです。バカにしているようですが、これ、凄く効果があるのです。埃や汚れが取れてキレイになる、というだけでなく(実際にその効果に驚かれた方から最近結構メッセージを頂けるようになりましたが)、更に大きな効果があるんです。
それが気持ちの変化です。
極端な話、道具なんて無くても良い。
お手入れの方法以上に馬鹿にしているように感じられるかもしれませんが、反対に先ほどの埃の話で腑に落ちた方もいると思います。
毎日家に帰ると靴底をブラシで軽く払うようになる。
そうなると、靴ってそれ程汚れなくなります。汚れなくなると、このブログで何度も書いてきた、帰宅後のブラシと乾拭きが苦じゃなくなります。
私、靴のお手入れって、道具じゃなくて、気持ちだと思うのです。
極端な話、道具なんて無くても良い。大切なのは、今まで意識にも上らなかった物体を人生の中で意識してあげられるようになること。
目の前の自分の世界の中に入れてあげられるようになること。
認識してあげる、ということですね。靴が認識されるようになると、それに繋がって色々なものが見えてくるようになります。
だいぶ精神論になってきましたので、そろそろ具体的な話に戻りたいと思います。それでも面倒で長続きしない理由を考えてみましょう。
それでも「毎日のお手入れ」が面倒だと思われたあなたへ。お手入れが面倒な理由。
うん、言いたいことは分った。でも私は君たちと違って仕事で忙しい。傷や汚れこそ勲章だ。人は外見ではなく中身だ。君たち靴マニアと違って一般人は靴磨きなんてしない。靴なんて安いし消耗品なんだから、どんどん履き潰して買い換えれば良い。靴に傷が一つ付いたくらいで気にしているようなちっちゃいヤツは仕事も出来ない。人それぞれなんだから口出しするな。(煽っているように思われるかもしれませんが、全て以前店頭に立っていた時に言われた台詞です。)
分かります。要は面倒なんですよね。
正直に言います。靴好きでこんなブログで偉そうに毎回書いている私でも面倒になる時があります。さらに言えば、実際にもし以下に挙げるような状況だったら、私でもお手入れしません(できません)。少々長くなりますが、当てはまる方も多いと思うので、サラッと眺めてみてください。
今月初めも実家に帰りました。玄関先で気分転換に履いてきた三交製靴ラギッドシューズにブラシをかけていたら、母から言われました。「あ、たまにはお父さんの靴も磨いてあげてよ。」
わが家の父と母は革好き、革製品好きで、そこからの影響をかなり私は受けていると思うのですが、靴に関しては無頓着です(主に父)それなら気付かないうちに綺麗にしておいてあげよう、と思ったのですが、靴磨きの為の道具が見当たりません。母に聞いてもすぐに思い出せません。その内思い出した母が言ったのは「あ、2階のトイレの前の大きな本棚の上にあるよ」
階段を上がり、トイレの前を通り、父の部屋の前のかなり大きな本棚の上(イスか三脚でもないと届かない)場所に、綺麗なタッパーに入れられて、大切そうに保管されていました。
家に帰れば靴を脱ぐ私たち日本に住む人間にとっては、靴はあくまで外履きです。外にある表札やポストと同じ。一度家に入ってしまえば靴のことは忘れてしまいます。
大切に部屋の何処かにしまわれているモノを取りに行って、玄関先まで移動して、玄関先の腰にも辛い前屈みの体勢でわざわざ靴磨きをしよう、という気持ちになれるでしょうか。年に一度あるかないか?しかもその程度だと大抵張り切りすぎるので、逆効果になることもあります。
とりあえずいつものアイテムですが、ブラシとネル(布)もしくはグローブだけでも下駄箱に移動させましょう。
さて、早速その靴磨きセットを取り出した私ですが、まぁ靴クリームの好みは人それぞれなので良いのですが、何故か妙に無駄が多いのです。黒の靴クリームが2瓶とチューブの(半分固まってる)靴墨らしきタイプのものが1つ、その上100円ショップでも売っているハンディタイプの艶出しスポンジまでありました。あとクリーナーが2本。うち一本は使い古しの歯磨き粉の様に折り曲げられていました。ブラシが3つ。良く覚えているでしょ。思わず数えちゃいました。それだけでしたから。
それが、私のお手入れ用品一式入れてもまだ余裕が出来るような大きなタッパー(蓋付き)にゴチャゴチャって入っていました。
これで、どうやってお手入れしますか?まずこれを前にして、何から始めようと思いますか?
何か最近実家の両親も読んでいるようなので正直非常に書きづらいのですが、これは別に両親を責めている訳でもバカにしているわけでもありません。むしろ普通だと思うのです。こういうものだと思っています。むしろ私にとっては当たり前だと思っていた自分の習慣が当たり前ではないことに今更ながら気付かされた(目を覚まさせられた)衝撃的な出来事でもありました。
靴磨き、靴のお手入れというものが何か特別なモノになってしまっているのかな、と最近感じます。そんなこと全くないんです。さらに言えば、靴磨きに限らず、靴だって大層なモノでもなんでもないんです。所詮靴なんです。
やらなければならないことなんて大してありません。何度でも書きます。「ブラッシングと乾拭き(磨き上げ)」だけなんです。
たったこれだけのことを伝えたいだけなのに、繰り返し毎回5000字以上書いてしまうほど、革靴のお手入れ、靴磨きというのは特殊な行為になってしまっているな、と感じています。
革靴のお手入れとは、ブラシとグローブ(布)だけ用意して、その日履いた靴を毎日1分だけ磨くこと。
革靴が趣味でない、世の中の大半の方にはそれで充分です。それ以上はやらなくても構いません。
「やるな」と書くと、どこかの過激な健康本などと一緒になってしまうので、それはそれで悩ましいのですが、それでも敢えてそう書きたいと思います。ここまで長々と書いてきたことの1割でも伝わってくれれば、私が何故「不要」だと言いたいのかに気付いて頂けると思うからです。
靴というのは自分の目(や頭)から最も離れた位置にあるため、なかなか気持ちが行き届きません。それを、手に取ることで、実際の距離が近くなります。近くなれば汚れもちょっとした変化も気付きますし、何より意識するようになります。
まずは革靴を身近な存在にしてあげてください。ブラッシングと乾拭きというのは簡単なようでいて、やればやるほど奥が深く、やればやるほど綺麗になっていきます。たかがブラシ、けれど本当にされどブラシなんです。グローブ(布)も同じです。
身近な存在にするのに、複雑な手順は入りません。むしろ邪魔になります。既に手元にブラシと布がある方は、早速手元の一足で良いので試してみてください。
最後に・・。
以下は当ブログでも非常にアクセス数の多い文章の中の一部分ですが、ここまで読まれた方なら、私の答え、すぐにお分かりですよね?
よくある「革靴のお手入れ方法」
幾つかのサイトで出ていた革靴のお手入れ方法を例として挙げてみます。
- ブラシで靴の埃を簡単に払い落とします。
- クリーナーを使って靴の汚れを落とします。「ステインリムーバー」などを使うと良いですね。
- クリームで栄養を与えます。クリームは同じ色であれば何でも構いません。
- 最後に仕上げとしてブラシをかけると綺麗な艶が出ます。
どうでしょうか?一番簡単そうだったものを挙げてみました。お手入れ特集などになると、ここから更に手順が増えていきます。
では、上の4つに例えば「3分」を割り振ると、どういう割合になりますか?