[革靴] フィッティングには足へのフィットと心へのフィットの2種類がある。だから心が動いたのなら、まずは勇気を出して話しかけてみよう。

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[革靴] フィッティングには足へのフィットと心へのフィットの2種類がある。だから心が動いたのなら、まずは勇気を出して話しかけてみよう。

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今朝眺めていて、「とても良い言葉だなぁ」と思ったツイートだったので、拝借して、少し書いてみたいと思います。以前からブログでも何度か取り上げさせていただき、また実際に靴を作っていただいたこともある、ZinRyu / 靴師2.0(@Zin_Ryu)さんのこちらのツイートから。

フィッティングには2種類ある。足へのフィッティングと心へのフィッティング。

私がこのブログで靴について書き始めて間もなく5年になります。基本的に伝えたいことは変わらないのですが、以前から読まれている方には、何となく雰囲気が変わってきていることにお気づきかもしれません。

私は20代の頃から革靴好きでした(本当に革靴が好きだったのか、というと自分でも悩む部分はあるのですが)。また、一時期は革靴のお店で働いていました。そして今でも革靴は好きです。そうした中で、5年前、靴について情報を発信し始めた頃は「サイズの合わない靴」「まったくお手入れされていない靴」に対して少し攻撃的だったかもしれません。店頭で働いていた頃からまだそれほど年月が経っておらず、当時店頭で感じていたもどかしさや切なさがまだ生々しく残っていたこともあり、その辺りとにかく伝えたい、知ってほしい、という気持ちが強かったのだと思います。

得てしてなにかに興味を持ち始め、知識も増え始めてきた頃、というのはこういう傾向が出やすいと思っています。また、靴屋としての経験も浅い内はこういうもどかしさがとにかく前面に出やすい。その辺りある程度ゆったり構えている先輩の態度にちょっとイラッとしてしまったり。頭でっかちになってしまうだけでなく、ちょっと言葉の端々が攻撃的になってしまうんですね。こういうときには「足へのフィッティング」を極端に重視してしまう傾向があります(フィッティングに限らず、ですが)。

今も問い合わせフォームからいろいろなご質問をいただくのですが(全てにお返事できておらず申し訳ありません)、この場合も2種類の傾向があって、最近靴に興味を持ち始めたばかりの方は、こうした「足へのフィッティング」やその他「〇〇でなければならないのか」「〇〇は駄目なのか」という不安を抱きやすいのかな、と感じます。

でも、どんなに足へフィットした靴でも、その人にとっては最良の靴とならない場合がある。

店頭でも多くのお客さんはひとまず前提として明らかに足の大きさに合っていないと思われる靴を履かれている、選ぼうとされる傾向があるため、どうしても「足へのフィッティング」ばかりを考えてしまいます。この人の足の形から考えると‥この人の歩き方を考えると‥いや、この木型のほうが足に合うと思うのに‥。

もちろん足にフィットすることは大切です。そのための知識や技術論は確かに必要ですし、それはいくらでも突き詰めていけるし、一つの答えがあるわけでもありません。ZinRyu / 靴師2.0(@Zin_Ryu)さんには失礼に当たるかもしれませんが、昨年彼に作っていただいた私の木型から作られた靴も、あくまであの時点でのZin_Ryuさんのたどり着いた答えの中から生み出された一つの答えであって、それが今年も、来年も、まして一生モノとしてずっと変わらないわけではないと思っているのです。

靴師として精力的に活動、活躍されているZinRyu(@Zin_Ryu)さんにこの度縁あって靴を作っていただきました。 オーダー靴というのはただ単に足の多くの部分を正確に計測して、話を多く訊けば「最高の靴」が生まれる、という訳ではありません。そこに単なる数値ではない、その人の持つ視点や感覚、木型や靴に対する考え方が非常に大きな影響を与えます。もちろん履く本人にも(難しい話ではありません)。この靴は、この木型は非常に良いです。私にとって。そしてこの靴を出来る限り履き続けていきたいと思っています。

もちろん彼の知識と経験から導き出された解は決していい加減なものではなく、だからこそ決してすぐに色褪せるものでもありませんし、実際私はその後も彼の靴をかなりの頻度で履き込むほどに愛用しているのですが、そんな靴も私の足が変われば、靴の状態が変わればフィット感も変わりますし、また今年や来年に改めて木型から作っていただいたら、全く別のアプローチの木型が生まれることも十分にあると思っています。そして、それだから良いのだと思っています。

そして、先程の私が店頭でお客さんのために「この靴のほうがフィットする」と思っておすすめした靴であったとしても、それが必ずしもその方にフィットするとは限りませんし、長持ちもしなければ、ほとんど履かれることもないかもしれません。

何故なら人間は心で動く生き物でもあるからです。

足に合う合わないではなく、とにかく欲しい、履きたい、と思える靴がある。それは理屈じゃない。

先日私は久しぶりにREGALの定番靴の一つである、2235NAを買い直しました。

世の中にはたくさんの足に合わない靴があります。また、選び方やお手入れの仕方、履き方もたくさん存在します。最近はネット上にもたくさんの情報が出てくるようになり、また多くの方が発信するようになりました。それは素晴らしいことですが、中には知識や情報ばかりが増えてしまって身動きが取れなくなっている方もいるのではないでしょうか。ただ、大切なのは、まずは靴を履きたいと思うこと。そして実際に履いてみること。履いてみたいな、と思う靴と出会ったら、まずはそんな諸々を一旦忘れて是非履いてみましょう。そこから得られることがたくさんあるはずです。

この文章のあとも時折出してきては履いていて、今も気に入っています。正直未だに外踝が当たって痛いときもありますし、私の足の形からすれば決して相性が良いとは言えない靴でもあります。

でも、この靴は私にとって、時折無性に履きたくなる靴であり、また手放したとしても結局は気になって買い直してしまう靴でもあります。それはおそらく、今までの私にとって、心がとてもフィットしている靴だからだと思うのです。

意外とこの足にはそこまで合ってはいないけれど、心にフィットしている靴が、自分にとって履く頻度がとても高く、また気がついたら履きよい靴になっていることがあります。それくらい心というものが及ぼす影響は大きい。

心がフィットしている靴は、なんとか履きたいと思うので、細かい部分なんて気にならなかったり、なったとしてもどうすれば履けるようになるのか真剣に考えたりします。また良く履くので、気がついたら身体も歩き方も靴に寄り添い始めて、一番自然に履ける靴になっていることもあります。

心ってそれくらい不思議。

だから最近はそうした質問に関しては「自分が履きたいと思える靴なのであれば、履いたほうが良いと思うよ」と答えています。

何故なら以前も書きましたが、履きたい、という想いは、きっと様々なハードルを乗り越えてくれるからです。

心がフィットする靴だからこそ、足にもフィットすることは大切だと思います。

「足がフィットすること」「心がフィットすること」この2つはどちらも大切だと思っています。どちらが大切、ということではありません。そして、人によって、またその靴によって、どちらが先に来るかは変わってきます。

靴のフィッティングはとても大切です。何故なら人は歩く生き物だからです。一歩一歩の歩みは小さくても、積み重なれば大きなものになる。それは身体への影響も同じです。合わない靴を適当に履いて歩き続ければ、歳を重ねていくにつれ、後悔してもしきれない影響を身体に及ぼすこともあるからです。

あなたの靴はいいです。好きなもの選んで下さい。大人のあなたにまで強制はしません。もう手遅れな人もいるかもしれませんし。けれど、もしあなたが今何かしら足や腰、背中や頸といったどこかに歪みや辛さを感じてい...

だから、無理のない範囲では拘ってほしい。幾ら心がフィットする、履きたい靴だから、といっても、出来る限りサイズに関しては自分に合うものを履いてほしい。いや、フィットするのであれば、するからこそ、そこには拘ってほしいと思っています。

ただ、こだわりすぎる必要もありません。それは必要であればプロの力を頼れば良い。頼りっぱなしは良くないけれど、この部分は幾ら拘っても答えの出ない部分でもあるからです。フィッティングにこだわりすぎてしまって、気にしすぎてしまって、せっかく履きたいと思える靴があるのに一歩が踏み出せない方もたくさん目にしてきました。

多くの方は「革靴は固い」「革靴は痛い」と思われているのではないでしょうか。そして、何となく靴屋さんに行って、今の足のサイズを測ることもせず、適当に「足に合いそう」な靴を選んでいたのではないかと思います。足に合った靴を選ぶ方法は実はシンプルです。そこに難しい知識や経験は一切要りません。大切なことはたった一つです。

靴磨き同様、靴の選び方に関する大半の情報は「趣味」でなければ不要です。

このブログも含めて、最近はネットで少し調べればだいぶ多くの靴に関する情報が見つかるようになりました。以前は「心のフィッティング」を重視した靴自慢、靴紹介のものが多かった気がしますが、最近は若い方を中心に、靴の選び方や磨き方、フィッティングの方法など、様々な情報が発信され、やり取りされるようになりました。またたくさんのイベントやミーティングも行われているようで、そうした意味ではネットが生んだこうした素晴らしい繋がりはぜひこれからも続いていってほしいな、と思っています。

私は以前から、靴磨きに関しては一貫してこんな内容のことを発信してきています。

当ブログは主に革靴の「お手入れ」と「選び方」をメインに書いています。今まで、元靴屋の店員の視点から、店頭で気がついた「店員や靴好きにとっては当たり前だけれど、一般的にはあまり知られていないこと」をいろ...

この気持ちは今も変わりません。とともに、今回更に加えるのであれば、

靴磨き同様、靴の選び方に関する大半の情報は「趣味」でなければ不要です。

もちろん趣味の世界はとても奥深く楽しい世界です。ただ、時として身動きを取れなくさせてしまうことがあります。

足に合った靴を選んでほしい、という気持ちは今も変わりません。そしてそうした情報を私はこれからも変わらず発信していきますし、頂いた質問にはなるべくしっかりお返事したいと思っています。

ただ、もし今、心にフィットする靴に出逢えたのであれば、それはなにかの縁。足に合う木型か、とか世間の評価はどうか、とか一生モノか、なんて周りの情報に振り回されずに、とりあえず手にしてみてください。頑張ってお金を出して買って、思う存分に履いてください。

その上で、その気持ちを持続させるためにいろいろな情報に接するのは良いと思っています。買ったあとで雑誌やメディアで「名靴」だの「ベストバイ」だの「至高の一足」だのといった情報に触れられれば、気分も良いと思うからです。気分てとても大切。そして持続させるためにはあらゆる手を使いましょう。

意味もなく、本心でもなく、単に適当に叫べば宗教ですが、「倦怠期」だと思ったときにこそ試してほしい簡単だけれど効果的な方法をご紹介します。それは「口に出して褒める」こと。それは人でもモノ(革靴)でも変わりません。「そのつま先の潰れ具合がセクシーだね」の一言が、あなたと革靴の関係をより良いものにしてくれるかもしれません。
あなたは「惚れ直すためのプチイベント」していますか?人間関係でも、モノとの関係でも、接点を増やすことが大切です。人間関係であれば無駄に頻繁に会う必要はないかもしれませんが、「単に思っている」だけではなく、「最近どうしているかなぁ」と思ったら連絡してみる。何もこまめに食事をしたり遊びに行く必要はないけれど、気がついたら連絡だけでも絶やさない。それと同じです。靴も「忘れない」ことが大切です。

そのときに私のブログなり情報が役に立つのであれば嬉しいし、そうなれるような発信をしていきたいと思っています。また冒頭で触れたZinRyu / 靴師2.0(@Zin_Ryu)さんのように、日々非常に精力的に、かつ素晴らしい情報を発信されている方がいらっしゃいます。

ただ、所詮靴なんです。たかが靴なんです。されど靴でもある。

今まで500以上の文章を書き、20台近いChromebookを買い、電子書籍や会報誌を出し、オフ会やコミュニティも運営している私ですが、それでもChromebookだって「たかがパソコンに過ぎない」んです。買ったからと言って、突然もの凄く特別な世界が開けたり、使いこなさなければならない、なんてことは少しもありません。自分で買う前に勝手にハードルを上げてしまう必要なんてないんです。モノに過ぎません。でも、そんなモノが「されど」に変わることは多々あります。今回はそんな話を久しぶりに書いてみます。

「たかが○○に過ぎないんです。」

もちろんお財布の事情はあるだろうし、ネットの情報眺めて悩んでいる時間も楽しいと思います。私も好きです。今も色々眺めては次に買うモデル想像しては楽しんでます。でもね、悩む(心が動いている)んだったら、買えるんだったらさっさと買っちゃった方が良いと思うんです。

だって、人との出逢いと同じで、遠巻きに眺めていても、人からの噂を幾ら集めても、その人のことなんて分からないからです。勇気を出して一歩踏み出して「こんにちは」「はじめまして」と声かけて、時にはお金や時間がかかるかもしれないけど、付き合っていく中で、良さも悪さも、自分に合うか合わないかも分かります。でも眺めていてもそもそも自分の想像の範囲内以上のことにはならないんです。

遠巻きに眺めながら、他人の噂話や情報ばかりを仕入れていても、何も分からないんです。それよりも勇気を出してまずは「こんにちは」「はじめまして」と声をかけてみる。心が動いたのであれば、フィットしたのであれば、それが始まり。

新しい世界に足を踏み入れるときも、また踏み入れた後で知識や経験が増えてきたあとも、この「はじめまして」のときの気持ちを大切にしていきたいな、と私自身も思っています。

フィッティングには2種類ある。足へのフィッティングと心へのフィッティング。

でも、どんなに足へフィットした靴でも、その人にとっては最良の靴とならない場合がある。

足に合う合わないではなく、とにかく欲しい、履きたい、と思える靴がある。それは理屈じゃない。

心がフィットする靴だからこそ、足にもフィットすることは大切だと思います。

靴磨き同様、靴の選び方に関する大半の情報は「趣味」でなければ不要です。

  • フィッティングには2種類ある。足へのフィッティングと心へのフィッティング。
  • でも、どんなに足へフィットした靴でも、その人にとっては最良の靴とならない場合がある。
  • 足に合う合わないではなく、とにかく欲しい、履きたい、と思える靴がある。それは理屈じゃない。
  • 心がフィットする靴だからこそ、足にもフィットすることは大切だと思います。
  • 靴磨き同様、靴の選び方に関する大半の情報は「趣味」でなければ不要です。