今年に入り様々な意味で話題となった#KuToo運動や#スニ活キャンペーン。
その運動の方向性については幾つか気になる点はあるので心から賛同がしづらいものの、個人的にはこの運動に関しては共感はしていますし、こうしたテーマが話題になることで、より多くの一般の方に靴というものに関心を持ってもらえるのであれば、嬉しいことだと思っています。
とともに、当ブログでは最近あまり革靴について触れる機会がありませんでしたが、改めてブログ上、Twitter上などで私に出来る発信の仕方をしていきたいと思っています。
ということで、以前からお読み頂いている方には今更な話題ではありますが、今回は改めて私がこれからもしつこく繰り返し発信していきたいと考えている靴のお手入れについて改めて書いてみたいと思います。
靴は誰もが必要とする生活必需品であり日用品。
冒頭の#KuToo運動や#スニ活キャンペーン、そしてここ最近の流れで感じてきていることがあります。それが、靴は誰もが必要とする生活必需品であり、日用品でもある、ということです。
人は毎日何千歩、何万歩と歩きます。その一歩一歩は僅かなものでも、積み重なると非常に大きなものになります。それは単に歩み、ということだけでなく歩く、踏み出すことが身体に与える影響という意味でも大きなものだと思っています。
特に教わることがなくても自然と何となく身につけてしまうこと程、改めて一度考えてみる必要があると思う。
人は誰に教わるでもなく、歩けるようになります。そして、靴の履き方も、特に意識して教わる、ということでもなく、小さい頃に何となく身につけてしまうため、特に意識することもありません。
特に何も考えなくても身につけてしまうこと。それは人が生きる上では必須のことであり、だからこそ無意識に習得出来てしまうのですが、だからこそ、日々の僅かなズレがそのまま気がつけば身体に大きな影響を及ぼしてしまうこともある。
これは靴の履き方、選び方、歩き方に限らず、様々なことで私がこのブログでも発信してきた想いでもあります。
靴も同じです。あまりに身近な存在になりすぎたために、人は日常においてほとんど意識する機会がありません。意識することがないものは、省みられることもありません。また自分の視界に入ってこないので、大切に扱われることも、真剣に考えられることもありません。
これは靴の歴史が短いと言われている日本に限った話ではなく、世界共通の現象だと思っています。
けれど、当たり前のことこそ、本当はもっと真剣に考える必要があるし、考える価値があると思っています。
「#KuToo」運動や「#スニ活」キャンペーンから感じる、一般の方の「靴離れ」。
冒頭で挙げた#KuToo運動や#スニ活キャンペーンは大きな反響を生んでいるようです。そして、私たち靴好きや靴関連の仕事をしている立場の者の視点としては「靴を悪者にしないで(悪いのは靴じゃない)」という気持ちと「きちんとサイズの合った靴を選んで欲しい」という気持ちがあります。これらの運動は性差やその他の様々な感情や思惑がない交ぜになってしまっていることもあって、なかなか問題が複雑になってしまっています。ただ、そうした中で私が感じることが、
一般の方の「靴離れ」
です。
言葉の使い方に誤解を生む可能性はありますが、そのまま続けさせて頂くと、前述のように靴というのは日用品、生活必需品でありながら、その実意識の上では決して身近な存在ではない、ということです。靴というものが何か煩わしいモノ、面倒なモノのような印象もあるかな、と思っています。
冒頭の運動やキャンペーンは主に革靴(パンプスも含め)に向けられている印象も強いのですが、実際の所スニーカーであってもサンダルであっても、多くの方にとって靴(履き物)はやはり意識の上では身近な存在ではない=靴離れ(靴から気持ちが離れてしまっている)状態だと感じています。
意識されないモノは何であれ、雑に扱われます。あまり考えられることもありません。
ということは、靴が身近な存在にならない限り、私たち靴好きや靴関係者が幾ら「サイズの合った靴を」と願っても、多くの方にとっては興味を示すことは少ないのかな、と思っています。何故なら靴は仕方なく履くモノであり、基本的に関心がないものだからです。だから履いていて痛ければ、益々良い印象は残りません。
そこで伝えたいのが、今回の文章のタイトルでもある、
歯磨きや洗顔と同じ習慣としての「靴のお手入れ」を私はこれからも発信していきたいと思う。
ということです。
靴が生活必需品であり、日用品なら、靴のお手入れも歯磨きや洗顔と同じ日常の習慣の一つ。
最近は若い方を中心に靴磨き職人さんや靴を趣味とされる方が積極的に発信をされるようになりました。靴磨きの全日本選手権が開催されたり、靴磨きの世界チャンピオンが生まれたり、靴磨きに関する書籍が次々と発売されたり、と、革靴、靴磨き、という分野も一つの流行としてだけでなく、趣味として認知されてきたような気がしています。それは大変喜ばしいことです。
趣味においてそうした情報収集も大きな楽しみの一つであり、またそうした情報や仲間と繋がりやすくなる、というのは、長く楽しむ上でも大切です。またこれから興味を持つ方にとっても敷居が低くなる、というのは嬉しいことだと思っています。ですので、このまま良い流れが続いていって欲しいと思っています。
ただ、残念ながら世の中の多くの方(あなたもそうかもしれません)にとっては、靴は趣味とは限りません。そしてそういう方にとっては靴磨きは、気が向いた時に「ちょっとたまには靴でも磨くか」と思って重い腰を上げる、とても気合いの要るものだということです。気が乗らなければ一生訪れないかもしれません。
けれど先ほどから何度も触れているように、靴というのは本来生活必需品であり、日用品です。身体(健康)への影響を考えたら、身体の一部といっても良い。人間の身体の一部。歯や手足と同じようなモノです。であれば、そんな生活必需品であり身体の一部でもある靴のメンテナンスは、歯磨きや洗顔といった日常の習慣と同じようなものだと思うのです。
虫歯になってから気がつくように、歯も案外意識されることの少ない身体の一部。けれど歯磨きの大切さは誰もが分かっていることだと思います。だから歯磨きは習慣になる。多くの方にとっては歯磨きは一応一日の中でやらないとスッキリしないものの一つだと思います。洗顔も同じでしょう。
靴のお手入れもそうなれば良いのです。一日の終わりに、お手入れをしないと落ち着かなくなればしめたものです。それだけで人は単に靴だけでなく、自分の足も意識するようになります。そして不思議なことに、歩き方まで変わってくるのです。
2年前に私が書いたKDP書籍(電子書籍)です(近々アップデート予定です)。別にこの本を宣伝したくてこんな長い文章を書いている訳ではありません。サイズが合った靴を選ぶためには、その前に靴自体が自分の生活の一部として意識される必要があります。意識されなければ興味も起きないからです。そして、意識するコツは何か。意識するためのコツを習慣化する仕組みを作ってしまえば良い。そしてその仕組みを作るのはシンプルで簡単です。
- 靴ブラシとから拭き用のグローブ(もしくは布)を下駄箱の上に置いておく。
- 帰ってきたら毎日1分で良いのでブラシで埃を払って、グローブ(布)で拭く。
これだけなんです。
靴磨きが趣味の人、興味がある人は、そこに好きなようにカスタマイズを加えてご自身なりの世界観と流儀を作っていって構わないのですが、多くの方にとってはこの2行だけで充分です。
- 靴ブラシとから拭き用のグローブ(もしくは布)を下駄箱の上に置いておく。
- 帰ってきたら毎日1分で良いのでブラシで埃を払って、グローブ(布)で拭く。
たかがブラシ、たかがグローブ(布)で何が変わるんだ、と多くの方は思われます。中には馬鹿にされる方もいます。ただ、実際にこの4年近く、これだけを言い続けてきましたが、実際にたくさんの方から驚きや感謝のメールやメッセージを頂きました。実際、これだけで意識って変わるんです。
意識が変われば、足の変化にも気付けるようになる。
意識が変われば、あとは簡単です。何故なら自分で気にすることが出来るようになるからです。
「なんで私は足が痛いんだろう?」
→「もしかして私の考えていた足のサイズって違うのかな・・。」
「なんで靴擦れするんだろう?」
→「もしかして靴擦れの原因って自分が考えてたのと違うのかな。」
足もとに意識が向くようになると、自然と歩き方も変わってきます。足の細かい変化に気付くようになります。一日の中での足の変化にも気付くようになります。
そうした細かい変化に気が付けるようになるんです。
その上で、改めて冒頭の#KuToo運動や#スニ活キャンペーンを振り返ってみてください。今までと少し違った見え方がしてきませんか?この運動やキャンペーンにおいて本当に大切なこと、大切な目的が今までとは違った視点から見えてくるのではないか、と思っています。
ここ最近、これらの話題のおかげか、改めて靴関係のご質問や感想を頂くことが増えてきました。最近は靴磨きもフィッティングもとても参考になる情報や書籍も出てくるようになりました。私自身も自分なりのアプローチの仕方で、より靴を身近な存在と感じてもらえるためのコツを発信していきたいなと思っています。