このブログでは200記事近く、革靴の選び方や革靴のお手入れについて書いてきました。また電子書籍も出しました。このブログもかれこれ4年近くになるので、その中には少し煽るような表現もありましたし、また「○○は駄目」といった言葉も出てきたと思います。ありがたいことに、今も質問や感想をよく頂きます。
ネット上を眺めていると、最近は革靴に興味を持っている方が増えてきたな、と感じますし、そうした方の知識や経験は年齢関係なく、正直私なんかより遥かに上の方も多いです。また、そうした方々は日々最前線で情報や自分の知識をアップデートし続けています。素晴らしいな、と思います。
反面、同じように世の中には靴に全く興味の無い方、サイズの合わない靴や、ボロボロのまま雑に履かれている方もたくさんいます。
それはそれで良いと思うのです。人生は靴だけではありません。自分自身と、自分の人生に関わりのある人が幸せであれば、何も問題ないのであれば、細かいことはいちいち気にする必要もないと思うのです。人生なんてあっという間に終わります。
いきなり人生にまで話が飛びましたが、今回私は久しぶりに靴を一足買いました。
1972年から変わらず発売され続けているリーガル(REGAL)の定番中の定番とも言える一足、2235NAです。私が以前から2504とともに大好きな靴です。
今回改めて調べてみたところ、
この靴のルーツは、1960年代にアメリカで発売されていた『REGAL』ブランドの靴がサンプル。日本で、有名デパートの特注品として、日本人の足や好みに合うよう各部のリファインを行い、販売したのがきっかけでした。
その後、リーガルブランドのラインアップのひとつとして1968年にリリース。1972年に現行品番No.2235に改定されました。
既に46年近く、変わらず販売され続けている靴なんですね(ちなみに2504NAは1969年なので49年。来年で50周年になります)。
リーガルと言えば個人的にはプレーントゥとこのロングウィングチップ。
若い頃は表面にシボのある、そして穴飾りのある、この種のスコッチグレイン(ヒロカワ製靴のブランドのほうじゃないよ)なウィングチップは好きではありませんでした。何となく過剰な気がして、何となく派手な気がして、生理的に駄目だったのです。
ただ、20代半ばにロイドフットウェアでたまたま見かけたスコッチグレイン(表面に細かい粒状のエンボスがある、革の加工法の一つとしてのスコッチグレインのほう)なブローグシューズを愛用するようになってから、「何かいいなぁ」と思うようになりました。
あ、ここ、ちょっと細かい言葉が色々出てくるけどあまり深く考えずに流しちゃって大丈夫です。大した内容じゃないので。
正直なところ、この靴と私の足の相性はあまり良くありません。リーガルの定番モデル全般に言えることなのですが、私の足の薄さや体重のかかり具合、歩き方や諸々を考えると、まず第一に外踝が履き口周り(の縁)に突き刺さって血豆が出来るし、
サイズも難しい。ちなみに私は2504NAは25cmで履いていますが、2235NAは25.5cm。足の長さを考えると25.5cmは欲しいのですが、2504NAだとちょっと私の足の薄さでは押さえきれないのでワンサイズ下げて無難な履き心地になるくらいです。この2235NAだと25cmと25.5cmのちょうど間くらい。実際25.5cmだと羽根は完全に閉じてしまいますし、日中に何度かその時々で紐の締め具合を調整しないと左小指がやられます。結構手強い。無理してまで履く靴じゃないし、私が店員なら足のことだけ考えたら私自身にはあまり薦めない靴です。
でも履いちゃうんです。好きなんです。
今回もたまたま地元のアウトレットにマイサイズ(25.5cm)だけが一足あって、縁だと思って購入したのですが、そこからほぼ毎日のように履いています。毎日履くのが靴にとっても足にとっても良くはないのはわかった上で。
先日の台風の時も、またその後の雨の鎌倉旅行の時にも普通に履いて歩き回りました。履き始めということもあって、まだ固くて、ちょっと油断すると痛いんだけど、それでもどうしても履いて旅行に行きたかったのです。結構降ったので、相当濡れました。
濡れたって良いんです。履き終えた後にちゃんと汚れと水分落として、しっかり陰干しして、その過程で飛んでしまった油分補うために普段より少し意識してクリーム塗っておけば。革底も相当濡れたんですが、濡れたら水洗いしちゃえば良いんです。放置するから革が傷むのであって、革と相談しながら、過保護になりすぎない程度に気を配ってあげれば、革はちゃんと応えてくれます。今回も全く無事。むしろ雨に濡れると表情が豊かになるような気がして嬉しくなっちゃうくらい。
そんなこんなでほぼ毎日のように履いている2235NA。流石にこれだけ履いていると短期間でも馴染んではきますし、馴染んでくればきたで馴染んだなりの悩みも出てくるのですが、とりあえず多少痛かろうが気にせず、履きたい時に履いてます。
正直こうした履き方はオススメは出来ません。
でも、薦めはしないけれど、もしあなたがしたい、と言ったら、私は多分「良いと思うよ」と答えると思います。
好きって靴と付き合う上で、とても大切な要素だからです。
履きたい、という想いは、きっと様々なハードルを乗り越えてくれるからです。
何故こんな、今までブログや電子書籍で書いてきた、散々発信してきたような「してはいけない」的なことを突然言い出したのか。それは別に、今まで言ってきたことが間違ってた、とか、意味がないからでは決してありません。
革靴が趣味でもなければ、靴磨きは不要です。だけど毎日のお手入れはして欲しい。そして、出来ればたくさんの靴を買い揃える必要はないけれど、複数足でローテーションを組んで欲しい。更に、興味がない人ほど、変に好みで選ばずに、定番のデザインを選んで欲しい。
全部今でも変わらないし、これからもそう言い続けると思います。
ただ、少しだけ思うのです。ここで冒頭の話に少し戻ります。
ネット上を眺めていると、最近は革靴に興味を持っている方が増えてきたな、と感じますし、そうした方の知識や経験は年齢関係なく、正直私なんかより遥かに上の方も多いです。また、そうした方々は日々最前線で情報や自分の知識をアップデートし続けています。素晴らしいな、と思います。
私に限らず、今はネットを少しでも検索すれば、いくらでもこうした情報は出てきます。また、「成功する男は靴が」的な本もあれば、靴磨きも素晴らしい技術を持った人たちが競うような素敵な環境も出来つつある。それって素晴らしいことだと思うのです(成功する男は余計だけど)。
ただ、そうした中で、きっと知識や情報ばかりが増えてしまって身動きが取れなくなっている人もいるのではないか、と思うんです。
木型の相性って確かにあります。そして、確かに人の足のことを考えて作られていない靴も多々存在します。靴が好きになったら、自分の今履いている靴に何か違和感を感じ始めたら、そうした知識や情報はとても有益になるかもしれません。
ただ、それは意識して靴を履いて、靴というのが自分の人生の中に存在として認識されてからで十分だと思っています。
大切なのは、まずは靴を履きたいと思うこと。そして実際に履いてみること。
そんな時、実は大切なことは、この靴履きたいなぁ、履いてみたいなぁという憧れだったり、勝手な先入観だったり、思い込みだったり、そんな気持ち的なものだと思っています。
履いてみたら、足に合わなかった。痛かった。辛かった。でも、履きたいという強い想いを持って履いた靴からは、例え木型が合わなかろうが、サイズが合わなかろうが、何かしら得られるものがあります。それは、自分で意識して体験したことだから。そして、先程少し触れたように、
そんな履きたい、という想いは、きっと様々なハードルを乗り越えてくれる
からです。
今回、私は2235NAの購入に合わせて、折角なのでこの靴専用に純正のお手入れグッズを新調しました。この靴でしか多分使わない組み合わせ。けれど、そんな形から入ることも意外と効果的だったりします。
だって楽しいからです。
たくさんの情報に触れてしまって、たくさんの「してはならない」や、たくさんの「やり方」を知ってしまって、却って身動きが取れなくなってしまった時には、一度そんなものを全てリセットして、自分が履きたいと思う靴を探して、思い切って買ってみて下さい(もちろんサイズなどは店員さんと相談しながら)。
履きたいから履く、靴なんてそんな選び方で良いと思うんだ。
革靴って、楽しいよ。
その靴は結果として一生モノにはならないかもしれない。けれど、自分の中には一生残り続けます。
そんな靴が見つかるのって、幸せなことだと思います。
私にとってのREGAL 2235NAは、決して足との相性が良いとは言えないけれど、永遠の定番の一足です。
そしてありがたいことに、今回買ったこの靴自体が一生モノにはならないかもしれないけれど、恐らく今までの46年間があるように、これから先リーガルがあり続ける限り、10年後も、20年後も、また履きたくなった時にお店に行けばいつでも買える、そんな世の中の定番でもあるんだろうな、と思っています。