そろそろボーナスが出たところも多いのではないかと思います。今回は何を買いましたか?買われますか?
革靴が好きな方は、ここぞとばかりに奮発してちょっと良い靴や狙っていた一足を考えたり、興味を持ち始めたばかりの人はウキウキしながら憧れのあのネットや雑誌で「最高峰!」と持て囃されている高級ブランドに手を出そうと考えたり。楽しい時期ですね。
逆に全く革靴に興味はないけれど、手持ちの靴もボロボロだから一足くらい買い足しておくか、という方もいらっしゃると思います。
そんな全国の皆さん、いえ、もしこの日本語が通じるのであれば全世界の皆さん、これだけは押さえておいて欲しい一足があるんですよ。持ってます?既に持っているなら、魅力はお分かりだと思うので、もう一足いっておきましょう。当分安心です。持ってない?もしかして魅力感じてないとかですか?それなら勿体なさ過ぎます。履かず嫌いをする前に、わかった顔する前に、一度は買っておきましょう。
お足に合わなければそれはそれでいいんです。雑誌の激賞する「これぞ一生ものの革靴の至高の一足」も買っていただいて構いません。でもその残ったお金でも構いませんから、一回いっておきましょう。知らないと人生損しますよ。
それが、日本が世界に誇る革靴メーカーの雄、リーガルが自信を持って毎年出し続ける定番中の定番、2504NAです。
なぜいま、リーガル2504NAなのか。
さて、改めて2504を見てみましょう。
定価は税込25,920円です。これがREGAL SHOES各店での通常価格。セールでもなかなかこの値段は下がりません(アウトレットは別。大体2〜3割引き)。何故なら、生産終了が無いからです。来季も、そのまた来季も変わらず同じように出るからです。下げる必要が無い。下げる意味が分からない。いつでもこの値段(価格改定はあっても。最近ちょっと値上げした。)これが定番です。
昭和から平成に続く日本人の足元を支えてきたベンチマーク的革靴だから。
いつかはリーガル、と言われたかどうかは不明ですが、男で普通に革靴履くサラリーマンやってきて、リーガル知らない人はなかなかいません。履く履かないは別として。とにかくVANの頃から、日本にアイビー華やかなりし頃から日本人の足元はこの2504なんです。
そして、木型が替わりません。ということは、ここ大切ですが、恐らく最近のお若いあなたには合わない可能性もあります。
けれど、それが良いんです。それだから良いんです。
この靴を履くと気づくんです。あ、自分の足って思っていた(勝手に想像していた)ような日本人の典型的と言われるような足じゃないんだ、と。
自分の足は思うほど甲高ではないのかもしれない。いや、甲高だけれど意外と薄いのかもしれない。幅広だと思ったけれど、思ったより広くない。なんでこんなに履きにくいんだろう。などなど。
そこから、自分の足について意識するようになります。
逆にピッタリ合う人もいる。それはもちろんめでたいですし、嬉しいことです。この靴のまさに本領が発揮できるからです。
日本の靴文化の流れが分かるという意味でもベンチマーク的革靴だから。
リーガルはもともとアメリカのメーカーです。当時の老舗日本製靴がリーガルをブランドごとごっそりアメリカのブラウン社から買い取りました。だから今は日本のブランド。そして社名も最近になってリーガルコーポレーションになりました。
なんて歴史はどうでも良いですが、ここに戦後日本の服飾文化、革靴文化が詰まっているんです。どれだけアメリカに影響を受けてきたか。そしてそれをどう日本なりに消化吸収してきたのか。その過程で、もともと革靴の歴史の浅い日本がどう革靴というものに向き合ってきたのか。
そんなことに想いを馳せられるほどに、この靴と、このリーガルという会社のもつ歴史と積み重ねは大きい。その基本となるのがやはり私はこの2504だと思うのです。
そんなベンチマークだからこそ出来ること。全国どこでも買える強み。
最近は直営店に徐々に絞られてきてはいますが、それでもREGAL SHOES専売モデルにはなっていません。ということは、あなたの街の小さな古くから続く靴屋さんでも売ってるんです。普通に。そして、ネットであろうが街の靴屋であろうがとにかく広く展開していることの強み(弱点かもしれませんが)として、そうしたお店だと安いんです。全く同じモノなのですが。2〜3割引き。何故ならそうしたお店はメーカー直営ではないから、基本買い取らなければならない。在庫が余ったからと言って返品が気軽に出来るわけではない。
となると、長く保管する前に売る必要がある。それを昔はどうしたか。普通に値引きしたんでしょうね。それが今も続いている。だから、実際利益は少ないかもしれない。けれど、定番中の定番だから、求めている人は全国にいる。そしてそれだけ在庫を用意する必要があることは、決して欠点ばかりではないのです。それが、次の理由。
毎年ものすごい数の2504が作られている。
誤解を恐れず言えば、世界でも一つのブランドでこれだけ大量のグッドイヤーウェルト製法の革靴を全く同じ品質で作っているメーカーは皆無だと思います。唯一無二。もちろん世界でどこかで見つけてきたら教えてくだされば修正しますが、それでも考えてみてください。この価格、そして全国どこでもとりあえず売ってるか取り寄せられる、この作りで毎年作り続けられるだけのメーカーがそうそうありますか?
これはそれだけ、グッドイヤーウェルト製法に慣れ親しんでいる、ともいえます。
職人さんの高齢化によって、一時恐らく縫製その他の質が低下した時もあったでしょう。狂牛病以降、また最近の世界的な革の価格の高騰で、以前のような革は使えていないかもしれません。
けれど、それでもリーガルは恐らく2504は妥協しないと思うのです。しても最低限。だって顔ですから。
四季のある日本の環境にまさに特化している。
例えば表面のガラス仕上げ。これは別にリーガルに限らず、英国の良心と以前は言われたChurch’sにもShannonなどで採用されています。けれど、この2つの靴、同じように雨が降る国でも、同じグッドイヤーウェルト製法でも、値段も違えば考え方も違います。
英国Church’sのShannonは基本革底なんです。ダブルソール。日本のREGALの2504は合成底。シングルソール。
これ、大したことないように思いますか?そして、もちろんバリエーションもあって、Shannonにも革底以外のモデルもあることはあるので、必ずこうだ、と言いたいわけではありませんが、同じ雨でも英国の雨と日本の雨は違うんですよ。だから日本では合成底、シングルソールなんです。
そして雪国用にはコロバンショソールなる更に滑らない(転ばない)底や、冬底用も用意されている。これもリーガルならではです。
お手入れ簡単、修理も安心。それはそう出来ているから。
そういう体制が整っているから、とも言えます。まずは修理。木型があるので、街の修理屋さんに出すよりも正確にオールソールが可能です。もちろん純正パーツ。家電製品と違って、この2504が廃盤になることは今後もリーガルが潰れない限り無いと思うので、当面心配はないでしょう。そして、通常中底と呼ばれる靴の中の部分。ここも純正修理なら4320円(多分)くらいで追加で修理が可能です。普通中底まで含めたオールソールなんてしたら、かなり嵩みます。これがリーガルだからこれで出来てしまう。
お手入れ簡単。これは良いかどうかはこんなブログを書いている私には複雑な気持ちでもありますが、とりあえず汚れたらタオル濡らして絞って拭いておけばひとまず艶は出ます。それがガラス靴の強み。
そして、もともとタフな作りなこの靴は、もちろん酷使したらやられますが、それでも下手にマメにお手入れするよりも、手軽なお手入れのほうが長持ちします。この辺りも日本らしいじゃないですか。
ということで、2504のお手入れに関しては(何か特別なことがあるわけではないのだけれど)長くなってきたので回を改めて。
そして何よりの理由。単に私が好きだから。
このブログを今まで多少なりともお読みいただいてきた方ならとっくにご承知のように、私リーガル好きなんですよ。私の定番靴の一つです。決して完璧だとは思いません。そして、どうなの?と思うようなモデルが出たりもします。大量生産大量廃棄がどうなのか、という気持ちもあります。
けれど、長年日本人の足を支えてきたことは確かなんですね。だからこれからも頑張って欲しい。
ということで、久々に暑く語ってみました。リーガル2504を履くということは、日本の革靴の歴史も一緒に履くということ。それくらい偉そうに一ブロガーが調子に乗って言いたくなってしまうくらい、良い靴です。最初痛いけど。
このブログの「靴のお手入れ」と「靴の選び方」が一冊の本になりました。
今回の文章も含め、今までこのブログで200以上書いてきた「革靴のお手入れ」と「革靴の選び方」に関する内容に加筆、修正してまとめたものをAmazonのKindle書籍として発売しました。
前半で皆さんが「何か特別で面倒なもの」と考えてしまいがちな靴磨き(本書では「お手入れ」)について、また後半では多くの方が陥りがちな革靴の間違った選び方(主にサイズ)についての誤解を解きたいと思います。
Kindle書籍、というと「Kindle端末」が無いと読めない、と思われている方も多いのですが、お使いのスマートフォンやタブレット端末でも「Kindleアプリ」を入れることでお読みいただけます。スマホに入れて、いつでも気が向いたときに目を通せる、いつも手元に置いておけるものを目指して書きました。また、Kindle Unlimited会員の方は、今回の書籍は無料でお読みいただけます。
この文章をきっかけに、より多くの方にとって「革靴って痛いと思っていたけれど、ちゃんと選べば意外と快適なんだな」「靴磨き(お手入れ)って何も特別なものじゃなくて、毎日の歯磨きや洗顔のような日常なんだな」と感じて頂き、より革靴を身近なモノに感じてもらえたら、と願っています。