前回までは主に革靴のお手入れについて、今までに書いた200以上の文章の中から内容毎にまとめてみました。まだまだテーマ自体は豊富にあるのですが、一休みして今回から革靴の選び方について書いてみたいと思います。
革靴の選び方といっても大きく分けて2つの方向性があると思います。一つがサイズなど「自分の足に合った靴」の選び方。もう一つが状況に合わせた形やデザインなど「どの靴を選べばよいか」という点です。
今回は後者。ちょうどこれからの時期に多い、(成人式は終わってしまいましたが)就職活動や新社会人、更に常に不意に訪れる冠婚葬祭など、その時どきに合わせた革靴の選び方です。
当ブログでは基本「内羽根ストレートチップ」一択ですが。
正直、好きなもん選べば良いと思います。内羽根じゃなくても、ストレートチップでなくても、特に困りません。大半の人は他人の靴なんて見てもいませんから。
私がストチを薦めようが、スワールトウを叩こうが、履きたい靴履けば良いんです。今の世の中、大半の人の革靴なんてボロボロで汚れと意味不明な皺と変なもの大量に踏んだ靴底でいっぱいなんですから、何履こうが大して影響ありません。
ただ、履きたい靴という基準は大切にして欲しいと思っています。履きたい、という気持ちは、その靴への関心を持続させてくれます。常に靴に意識を向けられるようになれば、不必要な皺や傷が気になり始めますし、なんでこの靴が合わないんだろう、と考えるようになります。好きな靴なら、長く履き続けたい、と思うようになる。それがお手入れの必要性に気づくようになります。
ただ、何故その靴を選ぶのかの意味を知っていて、敢えて選ばないのと、知らない、知ろうとしない言い訳を個性だセンスだという言葉で誤魔化して、適当に選ぶのとでは大きく違ってきます。分かるんですよ、どっちなのかって。意外と。
もしそれがやる気や励みに繋がるのであれば、高級靴もどんどん買ってください。
同様に、私はこのブログでは特に今まで高級靴と呼ばれるジャンルのブランド靴に関してはあまり取り上げてきませんでした。別に嫌いではありません。ただ、多くの人にとっては不要ですし、そこまで奮発しなくても、良い靴は世の中幾らでも見つけられるからです。そして、幾ら高い靴を買おうが、お手入れちゃんと出来なければ結局どれも同じだからです。
ただ、もしあの一生モノの、至高の一足を手にすることで、また明日から仕事を頑張ろう、いや、手に入れるためにますます頑張っちゃうぞ、という方には是非手に入れて欲しい。そうした靴はあなたにとって貴重です。
きっと靴もあなたの想いに応えてくれることでしょう。何故なら、あなたが本当に欲しくて、頑張ってようやく買うことが出来た、あなたにとってかけがえのない大切な一足なのですから。
ご購入おめでとうございます。高級靴の世界は素晴らしいです。もちろん靴は価格だけではありません。自分の足に合う靴が、必ずしも名ラスト、一生モノの逸品と世間一般で呼ばれているものあるとは限りません。けれど、たくさんのことを教えてくれます。
今度は、その靴の魅力を、ご自身の言葉で是非多くの人に伝えていって欲しいと思います。それは、メディアが押し出す作り上げられたストーリーやヒストリーではなく、自分で履いて感じたこと、買うに至った思いや想い出。そういう血の通った話が、きっとより多くの人の心に響くでしょうし、靴って良いな、と思うきっかけになると思います。
是非どんどん買って欲しい。それがきっかけで、靴って良いな、と思ってもらえれば嬉しい。ただ、高級靴は時々私達の目を曇らせます。
私は20代~30代にかけて、一時期ジョンロブ好きでした。1ヶ月手持ちのジョンロブを1日1足ずつ順番に履くだけでローテーションが組めてお釣りがくるくらい棚に並べていたことがあります。同僚に付けられた呼び名が「ジョンロブ」でした。ちなみに2009年のイヤーモデル(国内販売価格33万6000円)はもちろん定価で色違いで3足買いました。
今思うと大変に恥ずかしいのですが。私が何故そこまでジョンロブが好きだったのでしょうか。単にジョンロブだったからです。恐らくジョンロブが好きな、ジョンロブをたくさん持っている自分が好きなだけでした。
高い靴を持っているからといって革靴好きだとは限りません。また良い靴であるわけでもありません。その点だけ初めに伝えておきたいな、と思います。
サイズ合ってない方の歩き方って一発で分かります。姿勢も変わるんです。どんな高いブランド物履いていても、身につけていても、分かっちゃうんです。
人はその靴や服が幾らかなんてどうでもいいんです。サイズが合ってるか合ってないかだって、普通の人には分かりません。
けれど、何となく合ってないな、何となく変、というのは感覚で分かるんです。それが出やすいのが、適当に思い込みで選んだ自分のサイズ感。
まずは「スーツ」とそれに付随する「革靴」に連想される「没個性」について。
そこで、まずは「スーツ」「革靴」に連想される誤解、「没個性」について考えてみたいと思います。
本当にスーツって没個性なんでしょうか。スーツが没個性だと勘違いしてしまうと、せめて革靴で個性出そう、という方向性に走ります。その結果起こってしまうのが、「なんかよくわからないけれど飾りがたくさん付いているほうがドレスでしょ。」ということで、ダークスーツにカントリーブーツやワークブーツ履いてきちゃうパターンです。冗談のようで結構いたんです。店頭で選ぶ人。
どんな靴が格好いいと思いますか?
靴なんて何でも良いと思っているあなたに質問です。靴見ながら白飯で三杯はいける方はどーでも良いです。
興味ない方ほど、同じような靴を選ぶ傾向があるんです。色気出すと。幾つかパターンを挙げてみます。
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スーツも革靴も没個性だと言われますが、充分すぎるほど個性出てます。
ただ、それは本人の個性ではなく、その職業の個性ですが。もうその服装見ただけで、どの程度の収入レベルで、どういった仕事で、どの程度の教育を受けているのかまでわかるような。怖いですよ、服って。人間外見じゃなくて中身なんて綺麗事言ってる暇があったらそんな強烈に個性が出る外見が何であってもそれ以上に表面に浮き出てくるような中身を磨いてください。それこそが個性です。
良い意味ではなく悪い意味で外見で判断されている人は、そもそも中身見るまでもなく既にダメなんです。だって外見に負けてるわけですよね?
ちょっと革靴からズレますが「成人式」も同じです。
さて、まずは「成人式」です。本当はもう少し早く、年末辺りにこのテーマを書けば良かったのですが、張り切ってお手入れについて書いている内に成人式終わっちゃいました。
大抵、ネットの知識層ぶった何か言わないと気が済まない人たちが言うセリフです。大抵そういう人たちはスーツを着てこなかったか、もしくはスーツを知ろうとしなかった人たちです。何故か。偉そうに言ってる人達のスーツ姿が没個性だったからです。
何故没個性だったか分かりますか?理由は簡単。スーツだからじゃありません。「スーツは没個性だから」「リクルートスーツは云々」と斜に構えて、ちゃんと知らずに自分勝手に崩して適当に着るので、結局みんな同じような適当に着た感じの没個性で異様な光景になってしまうんです。
そこで今回は伝えたい。まだ就活まで数年ある20歳の今、思い切って気合入れてスーツを着こなそうとしてみませんか?
成人式も同じです。結局没個性になります。何故か。
怠いからです。で、結局何着ていいか分からないので、適当に周りの友人に聴いて同じような服装にするか、もしくはネットで調べて出てくる無難そうな「冠婚葬祭の服」とか「リクルートスーツ」みたいなガイドページに載っているイラストや写真を参考に適当に買ってきます。
最近は成人式のために頑張って働いてお金貯めて、この一世一代の大舞台のために100万超えの衣装をレンタルしてくる豪の者もいるようですが、そういうのは素晴らしいと思います。ただ、その結果自分だけ目立ってしまって、他の人にとっても大切な記念日だということ忘れてぶち壊してしまうのは、今後の人生を考えると決して良いとは思えませんので、少しずつ素敵な大人になっていきましょうね。
とともに、せっかくそこまで金かけるなら、適当なセンスで選ばず、しっかり服装学んで凄いもん着てきて欲しいものですが。そういうもの着こなせれば(もしくは着こなそうと頑張っている姿というのは)かなりかっこいいと思うからです。
20歳でスーツと革靴を着こなせる人はいません。
そりゃそうです。でも、それを目指してみませんか?目指す先は、適当にその辺に転がっているオッサンのスーツ姿ではなくて、国際標準の紳士のスタイルとしてのスーツスタイルです。もちろん20歳でいきなりそれは無理です。私も37歳ですが、まだまだひよっこです。
ただ、これを30過ぎてお金に余裕が出来始めてから金にあかせてやるのと、20歳の今、少しずつでも何とかそうした姿に近づこうと少ないお金で頑張った先の10年後では全く違います。
そして、そうした一生懸命さのにじみ出る、ちょっとまだ着慣れていないスーツ姿の20歳は素敵です。心から尊敬します。茶化しているわけではなく、本当に。それは37歳の私が今思えばやりたかった20歳の時の自分の姿だからです。
正直なところ、成人式に何着ていったって大して影響はありません。ただ、せっかく大人になるんですから、是非一度大人の服装というものを楽しんでみて欲しいと思うのです。もちろん興味があれば別ですが、その際に、様々な歴史やその服装、靴のデザインの意味するところなんて最初から調べる必要はありません。ただ、あなたが思っている以上に、スーツと革靴というのは奥が深いですし、それを楽しめる良い機会だよ、ということをここでは伝えたいと思います。
ということで、当ブログとしての「成人式用の靴」の結論です。好きなもん履けば良いと思います。でも、個人的に薦めるとしたら、
スーツなんて興味無い?そもそも仕事も多分スーツ着ない?
であれば、余計に他で使えもしないデザイン靴なんか気分で選んで買ってないで、このつまらない靴だけ手元に持っていてください。
今からそのつまらない靴をつまらない顔して、怠そうな顔して履かないようにするだけで、就職活動でも、その後の長い仕事でも、靴で悩まなくなります。
同じ悩むなら、別のことにお金と頭を使いたいと思いませんか?
長くなりました。そろそろ3分でしょうか。最後にその靴の名前だけ覚えておいてください。
もし何もデザインもない、シンプルな靴ならプレーントゥ。横に一本だけ線が入っていたらストレートチップ
です。
就職活動を迎えるあなたへ。これからの25年間に差が出る革靴とスーツの選び方。
無駄に「べきべき」論が続いてしまったので、ここからもう少しスッキリいきたいと思います。「就職活動」です。
以上です。
というくらい、この文章結構気合入れて書いたのですが、補足しておくと、東急ハンズでも靴屋さんでも素直に店員さんに教えてもらうのが一番だということです。変な知識仕入れて店頭で披露しようとせず、素直に店員さんに教えてもらいましょう、と。
皆さん、要らないもの売りつけられるのが嫌なのか、話しかけられるのが鬱陶しいからなのか、過度に店員さんを拒絶するのですが、こと分からない分野に関しては、素直にプロに聞いたほうが確実です。とはいえ、中にはダメな店員もいます。そこで、靴屋、スーツ屋において、こと革靴に関して聞く際に良い店員を見分けるコツが、
「着ているスーツ」ではなく「履いている靴」
です。それも綺麗かどうかの一点のみです。
就職活動の靴選びだけでなく、自分の足に合う靴を選ぶ際にも一番のポイントとなるのが、信頼できる店員を見つけられるかどうか、です。足に合う靴、○○に合う靴を探す以上に大切なこと。それが自分に合う店員を見つけることです。
就職活動の時期に揃えるスーツ(靴もですが)となると、まだそれ程高いものではないと思います。実際高級店でも時々酷い靴履いてる店員さんがいますが、一般に行くスーツのお店だとボロボロの靴の店員さん、結構多いです。そういう店員さんは論外。
そういう店員さんがもし愛想が良くても、現時点で大切なのはきちんとスーツと革靴を着こなす、履きこなせること。その手助けをしてくれるプロを見つけること。仲良くなるのはまたの機会にしましょう。
きちんとお手入れ(靴磨きでは無い)されている靴を履いている店員さんを見つけたら、その方に声をかけてください。その時に一つ試してみて欲しいこと。
「このストレートチップに合うスーツを探しているのですが」
先ほどの靴屋さんの時と同じように、変に知ったかをせずに素直に、丁寧に聞いてください。あなた自身と年齢と、ストレートチップから判断して、最適のスーツを選んでくれる筈です。
新しく社会人になるあなたへ伝えたい靴選びに関する幾つかのこと。
この春、新しく社会人になるあなた、おめでとうございます。革靴に興味を持たれたか、そろそろ面倒になってきたか、全く興味を失ってしまったかは分かりませんが、社会人になるにあたって、まずはじめの靴選びのポイントをまとめておきたいと思います。
「うちの職場は比較的服装緩いみたいだし、こんな堅そうな、冠婚葬祭や就活の時しか履かないような靴でなくても良いんじゃないか」
(後述しますが冠婚葬祭靴、就活靴というものは存在しません)「もう黒靴は持っているし、折角だから少しお洒落な靴でもいいんじゃないか」
(かなりの確率で数年後、数十年後、思い出すだけでも恥ずかしい若気の至りの記憶になります)そこで、今回は店頭で悩んだ時に仕事用の靴を選ぶ際のたった一つのポイントをお伝えしたいと思います。
繰り返しますが、好きな靴選べば良いんです。ただ、知っているのと知らないのでは全く違ってきます。とりあえず眺めてみて、基本を踏まえた上で「でも自分はこれを選ぶ」という主体的な目を持ってほしいな、と思っています。
ポイントは「休日には絶対履けない(履きたくない)革靴を選びましょう。」ということです。
また是非2回目の給料日では、この辺りのモノを揃えて欲しいと思っています。3,000円程度ですが、その後の靴人生に大きく影響してきます。
最後に、この辺りチェックしておくと意外と役立ちます。40歳近くなっても多くの人が陥りがちな「なんか変」なことです。
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既に社会人のあなたへ。ストレートチップって、そんなに駄目ですか?
ストレートチップって、そんなに駄目ですか?
私は店頭に立つとき、お客さんから靴の相談をされると、お持ちの靴の種類と足数をまずは聞きます。で、大抵はストレートチップを勧めることになります。けれど、ストレートチップはあまり受けが良くありません。
「冠婚葬祭の靴」「就活用の靴」というイメージが先行してしまって、普段履くのは面白くない、格好悪いと言う方が多いです。何故かストレートチップは恥ずかしい、という漠然としたイメージが強いようです。デザイン上、シンプルなので、何となく物足りないのと、堅いイメージを与えてしまうのが何となくイヤ、という気持ちが表情から伝わってきます。
なので、40を過ぎた方でも、いや、定年間近の方でも、ストレートチップを一足も持っていない、と言う人が結構多い。特に年を重ねれば重ねるほど、脱ぎ履きが面倒、と紐靴自体敬遠される人が多くなってくるので、益々見かけなくなってきます。
ストレートチップって、ベーシックでシンプル、スタンダードな靴でありながら、実はかなりの人が持ってすらいない靴でもあります。
書籍レビューのようなタイトルだったため、意外と目に留まりにくいのですが、宮崎俊一さんの著書を取り上げながら、自分の店頭での経験を振り返りつつ、革靴の選び方に関して書いてみた文章です。自分で言うのもなんですが、意外とまともなことを2年前の時点で書いてたんだなぁ、と思います。
「靴にあまり予算はかけられない」という人ほど無駄遣いをしていることが多いと思います。
革靴に興味がない人ほど革靴に無駄なお金の使い方をしていると思います。早々と履き潰す、使い回しが効かない、その上見る人が見たらすぐ分かる「ちぐはぐ感」。無駄に使えない靴が増えていく。けれど必要だから、嫌々(渋々)また適当に買ってしまう。
カジュアルスタイルもスーツスタイルも、興味も無いのに下手に自分の(興味がない=知識も経験もない)感覚とその日の気分で「何となく」選んでしまう。これほどお金の無駄で、身にも付かず、ただモノだけが増えていくのにどれを合わせてもいまいちになってしまうことはないと思います。
しつこいですが、履きたい靴を履いて欲しいと思います。ただ、多くの方にとっては、革靴に関しては「履きたい」と主体的に思えるほど靴のことをご存じないのではないか、と思うのです。
何となく世間一般的なイメージであったり、雑誌やネットなどの情報や不要なストーリーに惑わされてしまって、何となく分からないまま選んでしまっているような気がしています。
だから、私は主体的に「履きたい」と思える靴に出会って欲しいと思うのです。靴は外にいる間は毎日履き続けるモノです。嵐の日も雪の日も、更に酷暑の中も、様々な障害から足元を支えてくれるものでもあり、またあなたの印象を引き締め、また足元を安定させてくれるものです。
「靴にあまり予算はかけられない」という人ほど無駄遣いをしていることが多いと思います。多くの人は無駄に靴にお金を使いすぎています。一部の靴マニアは別。あれは好きで使っているので。
確かに興味がなければ、いちいち調べることすら面倒かもしれません。けれど、基本的なこと(ブランドストーリーなどではなく)を知るのに30分もかかりません。知った上で、あとはどうするかは好きに決めれば良い。けれど、知るのと知らないのとではかなり違います。
今回のまとめが果たしてまとめになっているか分かりませんが、もし何らかの興味を持たれたのであれば、その部分からで構いません。ちょっと知ることから始めてみてほしいな、と思っています。