このまとめも気がつけば9つめになりました。いつも以上にメッセージも多く頂いていて、とても嬉しいです。今年は色々と考えていることもありますので、その前段階としてこのまとめが少しでも多くの方の役に立てば嬉しいな、と思っています。
さて、突然ですが私は男です。自然とこのブログの革靴や靴のお手入れに関する内容も紳士靴向けの内容が多くなってしまいます。お手入れに関しては基本的には男女共通ではあるのですが、印象としては男性向けと感じられるかもしれません。
ただ、その中でも時々ありがたいことに女性からも質問を頂くことがあります。ただ、200以上も靴関連の文章があるため、その中から女性に向けて書かれたものが見つけにくい、というご意見も頂いています。その通りで、申し訳ないなぁ、と思っています。
正直な気持ちとしては、私は男性以上に女性にこそ伝えたいと思っています。以前店頭に立っていた時もお客さんの大半は実は女性でした。基本的にお店においては男性よりも女性の方がコミュニケーション上手です。話していて素敵な方がたくさんいらっしゃいました。けれど、男性以上に靴に関しては悩まれていて、また誤解もされていて、またお手入れもほとんどされていない。素敵な方たちばかりなのに、とても勿体ないと思うのです。そこで、数少ない中から主に女性に向けた内容をまとめてみたいと思います。
女性が気になる「外反母趾」「内反小趾」と靴の選び方。
お店で出会った多くの女性の共通の悩み。それが「外反母趾」です。(内反小趾の方もいるのですが、皆さんどちらも「外反母趾」と思われているようなので)
既に足の形も変わってしまっていて、長い間足に負担をかけながら頑張ってこられたのだなぁ、という私の母親世代の方も多くいらっしゃいました。地元の方も多かったので、街で見かけると今でも気軽に声をかけてきてくださる方もいて、かわいがって頂いていたんだなぁ、とありがたく思っています。
さて。そんな外反母趾。本当に外反母趾なのかどうか、というのはきちんと専門医に診て頂く必要があるのですが、そこまでではなくても一般的な外反母趾と呼ばれる症状に悩まれている方も多いと思います。そこで、まずはこの「店頭においてバンビロと同じくらい日常の挨拶と化してしまった外反母趾」の方の靴の選び方についてポイントを挙げてみたいと思います。
外反母趾。どこの部分が何故痛いか正確に分かりますか?
外反母趾。どこの部分が何故痛いか正確に分かりますか?
外反母趾の人が痛い場所。そんなの、当たり前でしょ、と親指の付け根外側部分の、骨が出てしまった部分を思い浮かべた方。半分正解です。
では、何故痛いんですか?
これを聞くと、皆さん、なんでそんなバカみたいな質問をするんだろう、と怪訝な顔をされます。
骨の出た部分が硬い革靴に当たるから痛い。そもそも狭い、小さい靴を履いたから、この部分が当たって、出てきちゃったんでしょ?こう思われている方がとても多いんです。
実際には、出てしまった部分が靴に当たるから痛いのではなく、そうしたサイズの合っていない、もしくは既に合わなくなってしまっている靴を履いていることで、指が益々内側に圧迫されることによる付け根の痛みのほうが圧倒的に多いと思っています。
この二つ、似ているようで全く対策が正反対になってしまうので、注意が必要なのです。多くの方は、
「出てしまった部分が当たって痛い」→「だからもっと大きいサイズの靴が必要」→「益々痛くなる」→「私はやっぱり外反母趾なんだ、幅広なんだ、と悩む」
という悪循環に陥ってしまっています。靴の中、つま先側に足が突っ込んでしまって足を圧迫する、という悩みは男性以上に女性の方が深刻です。男性で外反母趾っぽかったり、内反小趾っぽい人って、革靴マニアにも結構いて、それは極度のキツメ嗜好で小さめ履いて無理矢理馴染ませるのが好きな人に結構いるのでまた別の話になりますが、女性の場合には多くはこの靴のサイズが大きい、大きくなってしまったことが原因です。
大きめ選んで中敷きは逆効果。自己判断が一番怖いです。
自己判断でなく、専門のドクターに診て頂いた上で、オーダーでインソールを必ず入れるように薦められた。
それなら別です。それはもうドクターとの相談の上で靴も選んで欲しいと思います。
私の出る幕じゃありません。
ただ、もしそのインソールも持ってきた上で、ちゃんとフィッティングをする気持ちがあるなら、店員さんもそれに合わせた相談は出来ると思うのです。自己判断が一番怖い。
何度も書いてますが、自己判断で「腰痛持ちだから」「膝が痛いから」と適当に「それっぽい」中敷きを買ってきて入れている方が一番怖いです。
結構訊いてみると、もっともらしい症状の名前(難しめの漢字だったり、横文字)を、自信持って言われる方が結構いたのですが、実際見ると正常だったり、そもそも「そんな気がする」だけの方も多い。
自己判断が一番怖い、ということは、こんなどこの馬の骨とも分からない靴ブログの情報を鵜呑みにするのも危険とも言えるのですが、それはひとまず忘れて下さい。
結構皆さん、お店に来ると言われるんです。「外反母趾だから大きめの靴探してる」「幅広の靴が欲しい」「大きめ買って中敷き」。けれど、こうした方には中敷きはいつも以上に薦められません。
サイズが合わないから。
これに関しては難しいのですが、どうしてもその靴が履きたい、そのサイズじゃないとイヤだ、ということでなければ、それでも私は薦めないかな。
ただ、勿論ちょっとした中敷きで変わることも多々あるので、その際には適当な中敷きではなく、ちゃんと選んで欲しいと思います。特に踵部分が厚くてクッションがあるものって、踵の痛みを軽減してくれるかもしれませんが、踵周りが緩くなりますので。
踵の位置が上がってしまう分、ちょっと脱げやすくなることも多いのです。
そういう方ってそもそもサイズ大きくて、元々踵周りブカブカで浮きまくっていることも多いので、更に踵の位置上げると、(全てとは言いませんが)ますます浮くことがあります。
幅広や靴擦れ、靴の中で足が当たって痛い、といったものから外反母趾の悩みまで、多くの原因は当たるから、痛いから、と大きめのサイズを選んでしまうことで、押さえが効かずに足が靴の中でつま先側に突っ込んでしまう、踵が浮くことに因ること、というのが店頭に立っていた時の経験から感じることです。
もちろん例外も多々ありますが、今までそう思っていた方は一度はこの原因も考えてみる価値はあると思っています。
となると、ポイントは踵です。実際に街で歩いている多くの女性の足もとを見ていると、踵がパカパカと浮いてしまっている方が目立ちます。大抵がローファーやパンプスです。スニーカーなどの場合には比較的少ないのですが、それでも簡単に脱ぎ履き出来るように緩めに履いているので、結果として足と指を酷使させていることに変わりはありません。
対策としては応急処置としては中敷きではなく、半敷き、靴の前半分だけ敷くタイプの滑り止めのモノを使う、ということが考えられるのですが、折角であれば半敷きも検討しつつ、一度信頼出来る靴屋の店員さんに相談してみるのが一番だと思っています。
なぜ足に合わない靴ばかりを選んでしまうのか。特に多いフィッティングに関する悩み。
一番の原因は、男性以上に足のことを考えて作られている靴が少ないからです。これは女性であるあなたが問題なのではなく、靴自体に問題があるんです。
とはいえ、仕事、学校などでそのような靴を履かなければならない方も多いと思います。そこで、なるべく足に合う靴を選ぶポイントというのは存在します。(一番は相性の合う、長く付き合える信頼出来るプロの店員を見つけることですが)
その1:お店で試し履きをする時は、両足とも履いて、少し早足気味でお店の端から端まで歩くくらい試してみましょう。
その2:片足だけ履いてその場でぐりぐり足動かしても無意味です。いや、素人がそれやると、かえって間違える可能性があるので、止めた方が良いです。
その3:本当に裸足で履くなら別ですが、ちゃんとストッキングなり、その靴を履くのと同じものを履いて試してください。裸足は全くフィット感が変わります。
上記はパンプス選びについての文章で書きましたが、パンプス選びに限らず覚えておいて損は無いポイントだと思っています。つまり、
自己判断の履き心地チェックをしない、(子どもにも)させない
ということです。
足を入れた後、その場で足に体重をかけて履き心地を見ていませんか?
「えっ?当たり前のことでしょ?」と思われるかもしれません。
いつも何気なくやっているかもしれませんし、それが当然だと思っているかもしれません。
「色々な角度で体重かけてみないと、痛いか痛くないか分からないじゃないですか」
その疑問もごもっともです。その気持ちは大変分かります。
その場で立って、体重かけてるだけじゃ駄目です。第一片足だけ履いて体重かける時というのは、自分が本来歩いていてかけないような角度の体重のかけ方もチェックしているんです。無駄というより間違えます。
あなたにとって大切なことは、あらゆる角度であっても痛くない靴なのではなくて、自分が歩いている、一日履いている中で痛くない靴だと思うのです。
この二つ、似ているようで全く違います。
何故なら、人それぞれ歩き方に癖があるからです。
これはローファー選びでも同じです。一番して欲しいのは両足履いて「早足」で店内を歩くこと。その際に履き心地を見ようとしないでください。
もちろんまだ馴染んでいない、購入前の新品の靴です。履き心地を細かく見ていけば痛い部分は出てきます。けれど、それ以前にまずは早足で歩いた時に歩きにくい、踵が浮く、といったことがないかをチェックして欲しいのです。
とにかくローファーはフィッティングが難しいと思ったうえで選んで下さい。
更に、娘さんに適当にお店で履かせて、立たせただけで履き心地聞いて「痛くない」「キツくない」からそれで決定、とかやめて下さいね。
「キツくない」はこと革靴に関しては、余程履きなれていない限り、特に革靴が初めての娘さんの場合にはかえって間違えやすい判断になります。
逆に全くキツくない靴の場合、大きい可能性も多々あります。
あと、今の時点で幅広だなんだといった先入観は捨てて下さい。
実際にお店にいた頃はこのパターンが大半でした。そこで早歩きで店内を歩いてもらうのです。
数歩で踵が浮きます。
お店ではとにかく歩かせてください。それも慎重に一歩一歩歩き心地を試させるようなことはさせないで下さいね。
まだ革靴履きなれていない状態で履き心地を聞いても分かるわけありません。
むしろ履き始めから分かるような靴は合っていないことが多い。そして、お店で履いた時点で既に踵が少しでも浮くような靴は必ず靴ずれを起こしますし、実際に登校時に履かせたら初日は更に踵が浮いて歩けなくなります。
お店のほうが浮かないんですよ。慎重に歩くので。
足は無意識に靴が脱げないように庇って歩きますから。そして、靴ずれに関しては、基本的には靴が小さくて起こる(と思われがちですが)よりも、靴ずれを心配して大きめを履いて起こる場合のほうが圧倒的に多いです。
この辺りは紳士靴以上に影響が出やすい点なので、もし信頼出来るプロの店員さんが他の方を接客中などで、仕方なく自分ひとりで試すしかない、というような時には参考にして欲しいと思います。
ただ履けばいいから楽だと思っていませんか?
けれど、ローファーって痛かった思い出もあるはずです。なぜなら、足をしっかり支える部分が少ないんです。
また紐靴のように紐でその時の足の状況に合わせて微調整が出来ません。どんどん伸びて広がっていきます。そして、足をきちんと支えられなくなる。
どうなるか。
足がどんどんつま先のほうに突っ込んでいってしまうんです。踵がどんどん浮いてくる。スリッパやサンダルと同じになります。
足もローファーもなんとかそれでも歩けるように適応しようとします。
その結果、指がどんどん当たり始め、足に無理な力が入り、庇うように歩き方が変わっていきます。
足への負担が大きくなります。
足の幅や甲の高さを気にする女性ほど、意識して欲しいのはカカト。
少し極端な表現かもしれません。現役の靴関係、医療関係の方からは厳しいご指摘を頂くかもしれませんが、敢えてそう書きたいと思います。
外反母趾や内反小趾なら、踵が浮かない靴を選ぶこと。
これらの人は、自分の甲高や幅広の足を気にするあまり、必要以上に大きめのサイズを選びます。けれどそれが結局靴の中で足が安定しない状態でゆったり履こうとするから、足の前部分に重心がかかり、無意識に常に力が入った状態で靴を履いています。
足の幅や甲の高さを気にする人ほど、意識して欲しいのはカカト。
多くの男性女性を見てきて思うのは、これらの悩みを持つ人の大半が踵の浮きには無頓着だということです。浮いてはいけないわけではありません。ただ、大抵カカト周り、足首周りがブカブカな状態で履いているんです。
カカト周りがブカブカで浮いている、ということは、多かれ少なかれ足が靴の中で前に突っ込んだ状態にあります。足の前の部分で靴を履いています。足の前部分に意識がいき、更に前部分で靴を履けば、どんな人でも窮屈でキツく、また指の部分を圧迫します。そりゃ、外反母趾にもなります。
自己判断をするな、と書きながら、自己判断のポイントを挙げていることに矛盾を感じるかもしれませんが、少なくとも多くの方が抱いている誤解が解けるだけでも、それで多くの悩みが解消されるのではないか、と思っています。
その上で、信頼出来るプロの店員さんを見つけて下さい。
とともに、もし自分の子どもに限らず、子どもの靴を一緒に選んであげる機会があったら、自分のこと以上に真剣に考えて選んであげてください。
もしあなたが今何かしら足や腰、背中や頸といったどこかに歪みや辛さを感じていて、外反母趾など色々抱えているのであれば、今のままなら当然のように大切なお子さんも同じ障害を抱えます。将来。必ず。何故なら、あなたが教えられないからです。
だから、あなたの靴は適当に選んでくれて構いません。けれど、お子さんが本当に可愛いと思うのであれば、靴だけはあなたが真剣に考えてあげて下さい。
ここで高校生たちを責める気は全くありませんが、彼らは「ウオークラリーのため午前4時に同校多賀城校舎(多賀城市)を出発。約22.5キロ先の同校松島研修センター(松島町)へ向かう途中」だったそうです。22.5キロもの長距離を歩くにも関わらず、簡単に靴が脱げてしまうような履き方をしていた、ということです。
私が靴屋で働いていた頃も、子どもの靴は親が買いに来ていましたが、しっかり時間をかける親子は稀でした。そして、よく訊かれたのが「成長期ですぐ大きくなるから、少し大きめのほうが良いですよね」ということ。その大きくなった時には、今それを見越して買った大きめの靴はとっくにボロボロになって履けなくなっているか、むしろ履かないでほしいくらいにバランスが崩れてしまっているというのに。
もちろん子どもの靴選びというのは女性だけの役割ではありません。男性も同じです。多くの大人がしっかりと子どもに履き方と選び方を教えてあげられたら、今抱えている多くの身体の不調の悩みも解消されるのではないか、と思っています。
最後に。今回もっとも伝えたい大切なことを改めて。
この文章を簡単に信じないでください。
一番は、私を信用しないことです。
散々書きましたが、これに尽きるかな、と最近思っています。
私を信じちゃ駄目です。
どこの馬の骨とも分からない人間がこれ見よがしに分かったようなこと書いているブログを鵜呑みにするのが一番危険。
といっても、別に責任回避をしたいのではありません。むしろ、気になることはどんどん質問して欲しいと思っていますし、誤っている部分があれば、それはお詫びした上で訂正したいと思っています。また、もし考え方が違うのであれば、なぜ私がそう考えているのかきちんと説明する責任もあると思っています。
では何故こういうことを改めて書くかというと、特に最近は問題にもなりましたが、責任の所在を明らかにしない、誰が書いたのかも分からない無責任なまとめ専門情報サイトが相変わらず幅をきかせてしまっているからです。
何も分からない状態で検索すれば上位には未だに「靴や足とは全く関係ない仕事をしてきたライターによる切り貼りされただけの」大量の情報が並ぶからです。先日閉鎖された大手企業が運営していた医療系まとめサイトと同じです。
外反母趾や足、といったことはある意味では医療的な面もあり、また誰にでも通用する絶対的な一つの正解があるわけではありませんので、本来であればネットで幾ら調べてもあなたに適した情報というのは見つかりません。それが前回も、そして今回も盛んに書いている「信頼出来るプロの店員さんを見つけるのが一番大切」と書いている理由でもあります。
自分にとって相性の良い店員さんと出逢えるかどうか、というのはもちろん運(縁)もあるとは思います。ただ、決してそうした店員さんというのは特殊な存在ではなく、案外身近にいたりするものです。ただ、靴のプロである店員さんを「失敗をすることももちろんある、同じ一人の人間」と思って素直に相談できるかどうか、に過ぎないのかな、と思います。(別に店員さんが偉いと言いたいわけではありません。本来であれば店員さんの側にも努力は必要です。)
フィッティングにたった1つの絶対的な正解はありません。ただ、自分の中だけで判断しているだけでは解決はしません。是非気軽に相談してみてくださいね。
それでも私としては、何気なくいつものように足と靴の悩みも検索してみた、という方にとって、今まで思い込んでいた誤解が一つでも解けたら嬉しいと思って、この文章を書いています。
このブログに書かれていることも、誰がどういう考えで書いているのか、ということをきちんと疑った上で、読んでみて下さい。