[革靴] 合皮だからダメ?安っぽい?そんなことはありません。手入れされ愛用されているあなたの靴は素晴らしいと思います。

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[革靴] 合皮だからダメ?安っぽい?そんなことはありません。手入れされ愛用されているあなたの靴は素晴らしいと思います。

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今回も引き続き、お問い合わせフォームから頂いたご質問を元に書いてみたいと思います。なお、頂いたご質問に関しましては、「これはこの方特有の悩みではなく、是非多くの方にも共有したい悩みだなぁ」と思ったものはこちらで紹介させていただく場合があります。その際にはもちろん個人を特定する情報(お名前やプライベートに関わる部分)は省いた上でご紹介しますが、それでも「いや、私の質問はちょっと載せないでください」という場合にはご遠慮なくフォームの最後に書いて頂けますと助かります。

今回は、靴に興味を持ち始めると気になり始める悩みの一つ。そして、靴関係の話題になると時々やり玉にあげられることもある「合成皮革」「人工皮革」の靴の話です。

「合皮の靴」「人工皮革の靴」は安っぽい?本革のほうがやっぱり良い?

「合成皮革」「人工皮革」(以下、ここでは合わせて「合皮」とさせて頂きます。)については以前こんな文章を書きまして、その後ありがたいことに株式会社不織布情報が1972年より毎月発行している「月刊不織布情報」に掲載して頂きました。

革靴の値段はどんどん上がってきています。私が靴に興味を持ち始めた10年以上前の時点でも、既にそれ以前の革靴の相場を知っている方から見れば「最近は革靴が高くなった」と言われていましたし、私が見ても今の革...
株式会社不織布情報が1972年5月より毎月発行している「月刊不織布情報」の2016年3月号に、当ブログの記事「 紳士靴から革が無くなる日。合成皮革、そして人工皮革。」をコラムという形で掲載して...

それぞれの細かい違いについては今回は触れませんが、店頭にいた頃にもお客さんが気にされることの一つが「本革か本革でないか」という点があります。本革でないものは、どうも「安い靴」「アジが出ない」「馴染みにくい」などのイメージがあるからか、好まれない方も多いようです。また、一部ネットにおけるいわゆる靴好きの言動を見ているとこの「合皮」、かなり蔑まれてもいるようです。

ちなみに少し脱線しますが、「革」と「皮」は厳密には違います。動物の皮を鞣して作ったものが革です。鞣す前の状態が皮。あくまで言葉上の定義ではありますが、革に拘って「合皮はクソ」含め革について蘊蓄披露している割に基本的な部分が抜けている方も意外と見られるので(ワザと使い分けてるなら別ですが)発信する時には気をつけましょう(私も時々指摘を頂くことがあります)

「人から見たら本革と合皮の違いは分かるのか。また長く履くなら本革が良いのか。」

例えばこちらのお値段は6,112円。税込みで6,600円です。

今回ご質問をくださった方は、先日2足で1万円以下の合皮の革靴を買われ、その後お手入れをしっかりされながら今日まで履かれているそうです。ただ、足もとに意識がいくようになるにつれ、「周りから見たら、この人靴綺麗だけれど合皮だよ」と思われているのではないか、と少し気になり始めてしまったようです。また、「長く丁寧に履くつもりなら、本革の靴を買った方が良いのでしょうか」とこと。その気持ち、分かります。それに対して、私はこんなお返事をさせて頂きました。

結構じゃないですか。合皮、まったく問題ありません。合皮には合皮の良さがあり、また大切なことは、○○様がその靴を気負わずに履ける、ということです。さらに言えば、きちんと意識出来ていて、お手入れも出来ている、ということです。この時点で、どんな高級で稀少な本革を使っている革靴にも勝るとも劣りません。

実際、以前ブログで書いたこともあるのですが、靴好きが陥りやすい「ガラス仕上げの革はクソ(最近は何でもすぐ気軽に「クソ」と言う方が増えましたね)」という表現。非常に馬鹿らしいと思っています。けれど、そんなガラス革でも、一般の方から見れば「靴好きが手放しで喜ぶ」コードバンと何ら違いが分からないのです。むしろ光っている分、多くの方は「ガラス革」のほうがコードバンだと思い込んだり、高い靴だと思われることも多いです(店頭での経験より)

本革か合皮かは周りの人が見てもさっぱり分かりません。ただ、もし○○様が「気にされて」「自分のは合皮だからなぁ」と何となく「愛情を持てなかったり」「いまいち好きになれなかったり」「引け目を感じてしまう」のであれば、それはもしかしたら悪い意味での合皮かもしれません。けれど、少なくとも今、○○様はきちんとマメにお手入れをされています。お手入れをしている靴というのは、冗談抜きで元気があります。魅力があるんです。それを忘れないで欲しいな、と思っています。

長く丁寧に履く、という点では2点ポイントがあります。

1つは作りの点。例えばその靴が底が接着されている、など修理を前提として作られていない場合には、合皮云々以前に修理が出来ない、という点で長くは履けない可能性はあります。この場合は合皮、本革関係ありません。

2つめは、先ほども挙げましたが、合皮だと思うことが愛情を薄れさせてしまって、何となくその内扱いが雑になってしまうこと。これによって寿命が短くなることはあります。

それよりも、折角手元に来た2足のその靴を、今は「長く丁寧に履くつもり」で履いてください。もしかしたら数年で履けなくなってしまうかもしれません。けれど、それは必ずしも合皮だったから、安かったから、という訳ではありません。年を重ねるにつれて、足がどんどん形が変わっていきます(メンテナンスを怠ると足の形も退化しますし大きさも変わります)
そうなれば、今ジャストの靴であったとしてもその時の足に合うか合わないかは、普段どれだけその靴を愛用し、足に馴染んでいるかに因るからです。そして、そうして付き合ってきた靴との時間は、○○様にとっても靴にとっても素晴らしい時間の筈です。

だから、合皮だから、といって気後れする必要はまったくありません。堂々と履いてください。巷のお手入れされていない、○○様が気にされている「本革」靴よりも、遙かに素敵だと思います。

少し長くなってしまいましたが、一部修正(お名前の部分など)した上でそのまま載せました。

革靴の寿命を決めるのは素材でも作りでもなく、「愛情」と「相性」です。

どんな靴であろうが、何足持っていようが、何も変わりません。結局は自分にとって心地よい靴と、把握出来る心地よい足数(器)というのは存在します。

また私得意のスピリチュアルな話になってしまいますが、私は本当にそう思っています。もちろん素材や作りの良し悪しは結果としてそのモノの寿命に影響を与えはします。(高級革だから長持ちする、といった単純なことではありません。)けれど、それ以上に、結局は「その人がきちんとその靴に意識を向けられているか」「その人の足や用途に合っているか」が最も影響が大きいと思っています。

少し話はズレますが、「一生モノ♫」と奮発して購入したモノの内のどれだけが、日常においてきちんと本来の役割を果たしながら長く手元で愛用されているでしょうか。「一生モノ」やそれにまつわるメディアやブランドが作り上げた諸々のストーリーは気持ちを持続させるには十分な効果はありますが、それでも結局は一生モノにするのは持ち主自身なのです。そして、それでも一生手元に残るとは限りません。

また最近は本革よりも見た目が本革らしい合皮もどんどん出てきています。そして人は他人の革質など興味もありません。

合皮だから長持ちしないのではありません。
「合皮だから」とイマイチ引け目を感じてしまって扱いが雑になるから長持ちしないのです。

安い靴だから長持ちしないのではありません。
「安靴だから」履き潰せばいいや、買い直せば良いや、と扱いが雑になるから長持ちしないのです。

もちろんコストはある程度までは作りと耐久性と、更には足への相性に直結します。価格には価格なりの理由があり、そうした点では価格が長持ちに繋がる場合もあります。修理も同じですね。直そうと思えばお金を出せば余程の状況でもない限り、直すことは出来るんです。ただ、そこまでのお金をその靴にかけてまで直すのか、それとも新しい一足を買ってしまうのか、そこを分けるのが難しいのです。

また、確かにより多くの人にとって履き心地の良い、より手間をかけたことで馴染みやすい名ラストと呼ばれるものは確かに存在します。けれど、名ラストが必ずしもあなたの足に合うとは限りませんし、同じ靴を長く履くには、ご自身の足の常日頃のメンテナンスも必要になってきます。何故ならあなたの足は日々成長もし、また衰えもするからです。足の形や太さはどんどん変わります。

合皮の靴にお手入れは必要か。クリームは無駄か。

これは前回書いた内容にも通ずるのですが、

先月末から台湾で開催されていたCOMPUTEX TAIPEI 2017から戻ってきました。向こうでは主にChromebook関連を見てきましたが、今回持っていったモノや「私の旅に欠かせないモノ」なども...

ブラシとから拭きによるお手入れが有効であることに変わりはありません。そして、本革の靴同様、毎日のお手入れは欠かさずして欲しいと思っています。

では、靴クリームは無駄でしょうか。革に栄養?本革じゃないじゃん。という意見は尤もですが、それでも私は、

クリーム塗りたければ折角だから塗ったらどうかなぁ。効果あると思うよ。

とお答えしたいと思います。

こちらでも、また電子書籍上でも度々触れていますが、靴クリームで出る艶の大半は、革本来のツヤではなく、クリーム自身が持つツヤです。例え合皮であろうと、やはりクリームを使えば綺麗な艶が出ます。そしてツヤが出た綺麗な靴は、やはり気持ちが良いものです。塗りすぎ、厚塗り、放置はもちろん良くはありませんが、朝出かける時に綺麗な靴であれば、気持ちも良いですし、仕事中も足もとが落ち着かないということもなく自信を持って臨めると思うのです。綺麗な靴は足もとを変えるだけでなく、その姿勢や歩き方まで変えてくれます。

靴クリームというとすぐに「革に栄養」と思われがちですが、実際には本革であっても、敢えて上から日々塗り重ねなければならないほど必要な栄養があるわけではありません。「栄養を与えた気になれる」という精神的な面が多いと思っています。(全く無いわけではありませんが、一般の方にとっては栄養云々よりも塗りすぎのデメリットの方が多いと思っています)

だから、時々クリームを入れたくなるなら、是非入れてみたらどうでしょうか。いつもと少し違ったツヤも出ます。一時的ではあっても、それは気分も変えてくれます。またその際に念入りにブラッシングと乾拭きをすることで、靴にとっても良いメンテナンスになると思います。

革の素材や作りに拘るのはとても楽しい世界です。でもまずは靴に目を向けて下さい。

以前もこんな内容を書いた時に「いや、革質は大切だから。」「名ラストには名ラストである理由がある」といったご指摘を頂いたことがあります。今回少し触れましたが、別に私はその点は否定はしません。

昨日あるショップブログで一時アップされたものの、その後恐らく諸般の事情により削除された文章。ここではどこのお店だとかそういったことは触れませんが、個人的には非常に共感できる内容も含まれていたので、改め...
先日たまたま見つけた記述だったのですが、少々気になったので書いてみたいと思います。尚、特定の誰かやサイトを批判したい訳ではありません。あくまできっかけであり、私の考え方を改めてまとめておくのに良い機会...

高級革靴は確かに素晴らしいと思います。私も好きです。一時期身を滅ぼしかけましたが、その魅力と履き心地は確かに存在しますし、とても深い世界ではあります。けれど、誰もが必要なモノではないですし、傷付くのが勿体ない、皺が入るのが勿体ない、履くのがもったいない、と常に足もとばかりが気になってしまって疲れてしまうのであれば、その靴はその人にとっては快適でも何でも無い、単なる高い靴なんです。

私はそれよりも、今自分の履いている靴を大切にして欲しいし、引け目を感じず、日々愛用して、ご自身の仕事や活動に専念して欲しいと思っています。そして、一日が終わったら、その日一日のあなたの足もとを支え続けてくれたその靴にも目を向けてください。ブラシをかけて埃を落とし、から拭きをして、「お疲れさま」と靴箱の定位置に戻してあげてください。

もしかしたら、その靴はあなたの生活においては、頑張っても半年しか持たないかもしれません。その原因は様々です。ただ、毎日お手入れされたその靴は、本革であろうが合皮であろうが変わりません。靴は何も特別なモノではありません。けれど、どーでもいいモノでもありません。普通に接して欲しいのです。そして、もし更に興味を持ったら、そこからはご自身の好きなように深く入っていってください。それはもう誰も(家族を除く)口を挟むことではありません。

合皮だからダメ?安っぽい?そんなことはありません。手入れされ愛用されているあなたの合皮の靴は素晴らしいと思います。だから、自信を持って今日もお仕事頑張ってくださいね。

2016年末から2017年はじめにかけて、当ブログで今までに書いた200以上の革靴関連の文章の中から、テーマ別に分けてまとめています。その10回目。今回は少し趣味寄りの話です。 必須の情報ではあ...

「合皮の靴」「人工皮革の靴」は安っぽい?本革のほうがやっぱり良い?

「人から見たら本革と合皮の違いは分かるのか。また長く履くなら本革が良いのか。」

革靴の寿命を決めるのは素材でも作りでもなく、「愛情」と「相性」です。

合皮の靴にお手入れは必要か。クリームは無駄か。

革の素材や作りに拘るのはとても楽しい世界です。でもまずは靴に目を向けて下さい。

  • 「合皮の靴」「人工皮革の靴」は安っぽい?本革のほうがやっぱり良い?
  • 「人から見たら本革と合皮の違いは分かるのか。また長く履くなら本革が良いのか。」
  • 革靴の寿命を決めるのは素材でも作りでもなく、「愛情」と「相性」です。
  • 合皮の靴にお手入れは必要か。クリームは無駄か。
  • 革の素材や作りに拘るのはとても楽しい世界です。でもまずは靴に目を向けて下さい。