[革靴] 「ガラス仕上げの革靴にクリームは必要か。意味があるのか。」そんな素朴だけれど答のない問いに答えてみます。

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[革靴] 「ガラス仕上げの革靴にクリームは必要か。意味があるのか。」そんな素朴だけれど答のない問いに答えてみます。

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先月末から台湾で開催されていたCOMPUTEX TAIPEI 2017から戻ってきました。向こうでは主にChromebook関連を見てきましたが、今回持っていったモノや「私の旅に欠かせないモノ」なども含めて近々こちらでも総括したいと思います。→ 現地から書いた文章はこちら

さて。期間中Chromebookのことばかり書いていまして、肝心の靴関連で書きたかったことがほとんど書けていませんでしたので、今回はここまで頂いているご質問やメッセージなどを参考に、何回かに分けて靴のお手入れについて書いてみたいと思います。

なお、先月発売しました私の電子書籍「靴ブラシで歩き方が変わる」。既に8件のレビューを頂いています。

皆さん厳しいながらもしっかりと読んでくださった上での感想を書いてくださり、本当に感謝しています。私の意図とは全く正反対の意味で伝わってしまったかな、と思うことも幾つかありました。ただ、それらはもちろん私の文章力のなさや表現の仕方の問題であり、読まれる人はどう読まれようとそれが正解です。これからも多くのご感想を頂けたら嬉しいな、と思っています。

今のところ頂いたレビューにはすべてコメントという形でお返事をさせて頂いております。(多少タイミング的にまだ間に合っていないものもあります。)レビューの評価というのはその本を生かしもするし殺しもする、というのはここ半月ほどの「販売数」と「読み放題で読まれたページ数」の推移を見ていると分かりやすいくらいに出ていまして、やはり多くの方は「好評価のレビューよりも低評価のレビューを参考にする」ことが多いのだな、と感じました。(数字にも出ていますが)実際私もそうですしね。お金や時間を使う以上、なるべく失敗は避けたいので、低評価のある本や製品は避ける傾向にあります。今回はユーザー側からだけでなく販売側の視点からも見ることができたのは大きな経験でした。現在改訂版を準備中ですが、頂いたレビューやメッセージを元に、より良い本を出していけるように頑張りたいな、と思っています。

最近は多くのご質問を頂くようになりましたので、なるべく共有していきたいと思います。

もちろんご質問をされた方が特定出来るような部分はなるべく省いた上で、ですが、こうした悩みや気になる部分というのは恐らくその方だけでなく、多くの方が大なり小なり抱かれていたりするものだと思います。そうした質問を共有していくことで、「あ、悩んでいるのは自分だけではないんだ」「あ、そういう悩みもあるんだな」「そういえば、その点気になってたな」といったことの手がかりや解決のきっかけになればいいかな、と思っています。

もし「ブログには載せないで欲しい」という場合には予め文末にでも「載せないでね」とお書き頂けますと助かります。(とはいえ、勿論載せる場合でも前述のようにお名前やプライベートに関わる部分は載せません)

今回は、ネットでもまた店頭でも靴好きを中心に話題に上りやすいこの疑問について、ちょうどご質問も頂いたところでしたので、こちらで書いてみたいと思います。

「ガラス仕上げの革靴にクリームは必要か。意味があるのか。」

購入から2年半、まだまだこれから、といった感じの三交製靴「ラギッドシューズ」

「ガラス仕上げ」「ガラス革」、様々な表現がありますが、全体的に既に光沢があり、ある程度コーティングがされているツヤ革を思い浮かべて頂ければ、何となくお分かりかと思います。お手入れの簡単さ、雨にも強く、ツヤも出しやすい、また革の表情を誤魔化しやすい、などの様々な理由から比較的手頃な価格の靴に用いられますが(その価格帯の靴を求める方の需要とも合致する)、英国靴としてお馴染みのChurch’sにもポリッシュドバインダーカーフという同様の仕上げを施した革が普通に使われていますので、格安靴=ガラス革、という訳ではありません。

革靴に限らず、革好きが陥りやすい落とし穴の一つが「革質」です。そして、革質至上主義の方が軽視(馬鹿に)しがちなものの一つに、ガラス加工(仕上げ)を施した牛革(通称ガラス革)があります。けれど、あなたは店頭でひと目みただけでコードバンとガラス革の違いが分かりますか?なぜコードバンが「良い革」なのでしょうか?雑誌や靴好きの言葉に惑わされず、自分にとっての「良い革」が何かを一度是非考えてみてください。

一部の靴好きからは馬鹿にされがちなこのガラス革。そもそも馬鹿にする時点で本当に靴好きなのかどうか、という疑問はありますが、その中でよく話題に上るのが「ガラス革にはクリーム塗っても浸透しないから無駄」というものです。

「革に栄養」ってそもそも何?という根本的、専門的な話は置いておいて、ここでは私の考えを挙げるとすれば、

余計な蘊蓄はいいから、クリーム塗りたければ折角だから塗ったらどうかなぁ。効果あると思うよ。

というところです。あれ?そもそもあなたは「お手入れにクリームは不要」って言ってなかった?と思われた方、その通りです。その基本は変わらないのですが、ここでは「ガラス革にクリームは意味がない」という話に対する私なりの考えです。

科学的な効能云々よりも、クリームを塗りたい、というあなたの想いに意味がある。

紳士靴S型(千葉)4E 25.0 ¥6,600-(税込)

理由は、

クリーム塗ってツヤが出たら、気持ち良いよね?何となく靴も綺麗になった気がする。それに、クリームを塗るってことは、その靴に意識を向けていて、愛着を持っている、ってことでしょ?もうそれだけで、その靴はあなたに応えてくれるから。

という簡単なことです。論理的でも何かの科学的な証拠があるわけでもありません。とてもスピリチュアル系な話だと思われるかもしれません。けれど、私、結構大切なコトだと思っています。(もちろんいつも以上にしっかりブラシとから拭きはして欲しい、というのは私の一貫した考えです。そして、無理に使う必要は全くありません。)

繰り返しますが、今回はあくまで「ガラス革にクリームは意味があるのかないのか」という視点で書いています。それに対する答です。革に栄養だ浸透だ何だ、という以前に、クリームを塗る(ペネトレイトブラシでも布を指に巻き付けてでも)という行為とそれに続くブラシとから拭きという一連のお手入れは、靴の表面に刺激を与えます。例え革のツヤではなくクリームのツヤであったとしても、もしそれが「靴がキレイになって気持ちがいいなぁ」というやる気に繋がるのであれば、それは大きな効果です。そして、それはガラス革は目に見えて分かりやすいのです。綺麗になると、ツヤが出ると、何となく嬉しくなりませんか?

長年クリームでお手入れされて美しい独特の表情を持ったガラス革の靴を私は何足も見てきました。

以前から時々ご紹介させて頂いているRebootreboot(@rebo_ot)さんのツイートです。こちらのガラス革の靴も綺麗ですね。このツイートを見かけた時、以前店頭にいた頃に出逢った素敵なガラス革の靴のことを思い出しました。

私が店頭にいた頃、オールソールを既に3回した12年以上履き続けているREGALの靴を再オールソールに持ってこられた方がいらっしゃいました。表面は靴好きの一部が忌み嫌い馬鹿にするあのガラス革です。けれど、その表情が本当に美しいんです。実際中底も交換していますし、履き口周りも補修したり、と購入時とは比べものにならないほどくたびれてはいるのですが、それが全くみすぼらしくないどころか、私はその革靴が本当に素敵に見えました。活き活きとしていました。

REGALのその靴自体はオールソール、中底まで交換すれば、実際同じモノを新しく一足買い直せます。けれど、その方にとっては「その靴でないとダメ」なんだそうです。革の表情がとても奥の深い黒のツヤ(けれど別にクリームの厚塗りというわけではない)だったので、お手入れについて訊いたところ、隣にいらした奥様が毎日されているそうです。奥様は、旦那さんの靴がツヤでピカピカなのが好きだそうで、クリームも時々塗るものの、それ以上にしっかり布で毎日磨いていたそうです(「私、面倒くさがりやだから、そんなに毎日は靴墨は塗らないんですけど」と謙遜されていましたが)

旦那さんも、修理が完了して受取に来られた際には、きちんと紐を緩めて、靴べらを使って履いていました。「うん、これだ。これからも長く履きたいからね。」と言って履いて帰られたその靴は、お店に並んでいる他のどんな靴よりも素敵に輝いて見えました。

私だけでなく、同僚や先輩も多くのガラス革の綺麗な靴を見てきていました。

光沢仕上げ(ガラス仕上げ含む)のツヤ革のツヤは独特ですね。

いや、それはクリームとはまた別の話だ。クリーム自体に意味は無い。そう思われるかもしれません。私は実際に科学的な根拠を挙げて話している訳ではありません。あくまで店頭での経験がベースです。だから、研究所で徹底的に調べてみたらもしかしたら全く効果はないのかもしれません。それでもいいじゃないですか。

先ほどのご夫婦であれば、いつもご主人がツヤのあるピカピカの革靴を履いて仕事に行くのが好きで、毎日しっかり磨いていた。クリームももしかしたら多めかもしれません。けれど、12年以上経っても、よりツヤが深まっているように私は感じました。そして旦那さんのほうも、そんな奥さんが磨いてくれる靴が本当に足に合っていて、好きで、だから修理してでも長く履きたいと思っている。だから普段から紐も緩めて履くし、靴べらも使う。だから、靴もそれに応えてより輝いて見える。

そして、そんな気持ち的なことだけでなく、実際に長く履き込まれたガラス革の靴を、私は店頭で多く見てきました。革も適度に柔らかくなって、ツヤも優しい感じ、何となく深みも増しているように見えるのは、もしかしたら私の思い込みかもしれません。けれど、同僚や先輩も同じ事をよく口にしていました。

これは、何が理由かは分かりません。クリームの効果かどうかも長い年月が経てば分からないとも言えます。というよりも、様々な要因が絡んではいると思います。でも、クリームがきっかけになって、ツヤが出るのが好きで、結果お手入れをマメにして丁寧に履くようになるなら、それは素晴らしいことだと思うのです。

そこに「ガラス革はクソ」だの「格安靴の代名詞」だの「クリーム乗らないから」だのといった蘊蓄なのか何なのか分からない言葉は一切不要です。

基本はブラシとから拭きであることに変わりはありません。

けれど、難しく考えないで欲しいのです。そして、ご自身の革靴に引け目を感じないで欲しいのです。そして、私が伝えたいことは、自分の足もとに意識を向けて欲しい、ということです。その最もシンプルで、効果的な方法が毎日の「ブラシ」と「から拭き」です。それは変わりません。

「靴磨き」というと、複雑で面倒で、気が向いた時に行う特別なもの、と考えている方が多いな、と思います。だから雑誌やメディアでたびたび「特集」が組まれ、様々なモノがオススメされるのでしょう。けれど、実際に必要なことは実はたった1つです。次に挙げる「一般的な」お手入れに3分を割り振るとしたら、あなたならどうしますか?

ただ、例えばお手入れにおいて、「ちょっとクリームを入れたいな」「今日はちょっといつもよりピカピカにしたいな」と思う時もあるでしょう。そんな時には心配せずにクリームも使ってください。ガラス革には効果がないんじゃないか?いえいえ、ガラス革にクリームって、とんでもなくピカピカのツヤが出ます。それは気持ちがいいものです。ちょっとクセになるかもしれません。ただ、ちょっといつもよりブラシとから拭きは念入りにして下さいね(その方がより綺麗になります)

あなたのガラス革の靴は、ガラス革だから長持ちしないのではありません。クリームが入らないから長持ちしないのではありません。ガラス革を軽視する気持ちだったり、そもそもがお手入れを一切していなかったり、サイズが合っていなかったり、と別のことの方が大きな要因になります。

クリームは必須ではありません。場合によっては害になることもあります。けれど、そのツヤは、例え「浸透しない」と思われているガラス革であっても、長く履く上では確実にその革と履き主に変化をもたらしてくれます。もちろんそれはクリームだけに限りませんが。

ガラス革も、合皮も、そして巷に存在する稀少な高級革でも、基本は同じです。どんな革でもクリームは必須ではありませんが、無駄かと言われれば、無駄ではありません。そして効果が無いわけではありません。最初から敢えて使う必要はありませんが、気にせず、いつも以上にブラシとから拭きをマメにして、不安がらずに使ってみて欲しいな、と思っています。

最近は多くのご質問を頂くようになりましたので、なるべく共有していきたいと思います。

「ガラス仕上げの革靴にクリームは必要か。意味があるのか。」

科学的な効能云々よりも、クリームを塗りたい、というあなたの想いに意味がある。

長年クリームでお手入れされて美しい独特の表情を持ったガラス革の靴を私は何足も見てきました。

私だけでなく、同僚や先輩も多くのガラス革の綺麗な靴を見てきていました。

基本はブラシとから拭きであることに変わりはありません。

  • 最近は多くのご質問を頂くようになりましたので、なるべく共有していきたいと思います。
  • 「ガラス仕上げの革靴にクリームは必要か。意味があるのか。」
  • 科学的な効能云々よりも、クリームを塗りたい、というあなたの想いに意味がある。
  • 長年クリームでお手入れされて美しい独特の表情を持ったガラス革の靴を私は何足も見てきました。
  • 私だけでなく、同僚や先輩も多くのガラス革の綺麗な靴を見てきていました。
  • 基本はブラシとから拭きであることに変わりはありません。