TV CMの放映以降、Chromebookに興味を持ち始めている方が増えているな、と感じています。実際ここ数日、改めてまとめた以下の2つの文章も結構お読みいただけているようで嬉しいです。
多くの方が興味を持ち始めたことはChromebookユーザーとしてとても嬉しいのですが、その分情報も多種多様、雑多で古いものから新しいもの、誤解を招きやすいものまでこれから色々出てくることでしょう。そこで、今までChromebookに関して700弱の文章を書いてきた当ブログとして、また日々愛用している者の一人として、今まで誤解を招きやすかったり、分かりにくかったりした話題について取り上げたいと思っています。
今回は、最近ようやく知られるようになってきたものの、却ってそれが不要な不安やマイナスイメージを生んでしまっている気がしているテーマについてです。
Chromebookの賞味期限。自動更新ポリシーです。
まず初めに端末毎のサポート期間である「自動更新ポリシー」について。
Chromebookに興味を持たれた方は、そのうち「自動更新ポリシー」という言葉を見かけるようになると思います。
https://support.google.com/chrome/a/answer/6220366?hl=ja
簡単にいうとChromebookはOSにではなく、各モデル毎にアップデートを保証するサポート期間である「自動更新ポリシー」というものが決められています。大体の目安は「6〜8年」となっています。
また、この自動更新ポリシーは「各モデルの発売日から」ではなく、それぞれのモデルの元となっているハードウェアプラットフォームが登録されてからの期間となるため、発売された時点で既に6〜8年無い場合も多々あります。
この元となっているハードウェアプラットフォーム、というのが少し面倒なのですが、Chromebookは同時期に出たモデルはメーカー各社、そこまで大きなスペック上の違いはなく、同じ構成のものを用いている場合が多いのです。それを各メーカー毎にガワを変えたり、MIL-STG 810Gなどにどの程度通すかなどで違いを出しています。もちろんそうしたこともあり、各メーカー発売日は異なるものの、元となるハードウェアプラットフォームが同じであれば、同じ自動更新ポリシーが適用される、ということです。
ただ、そこまで細かいことを知る必要はないと思いますので、だいたい「そのモデルが発売されてから」6〜8年くらいなんだなぁ、と思っていただければ大丈夫です。
この自動更新ポリシー、以前はあまり知られていませんでした。そのため、発売から既に3〜4年経ち、自動更新ポリシーが残り2〜3年しか残っていないモデルが米Amazonなどで安く販売されているのを見て
「海外は安いのに日本はボッタクリ」と勘違いされている方も多かったのです。
確かに古くてサポート期間もあと2年程度しかないモデルを発売当初と変わらない価格(それも並行輸入で手数料分上乗せ)で販売している日本のセラーから買うのは損ではあるのですが、それと「米国は安いのに」の理屈は別、ということは心に留めておいて欲しいな、と思います。
最近では日本のAmazonでもAmazon正規取り扱いモデルは各商品ページに画像で自動更新ポリシーを明記するようになったり、と改善が進んでいます。
これらも積極的に活用しましょう。
最近はだいぶこの「自動更新ポリシー」が知られるようになってきて、「安いのは発売からだいぶ経って、自動更新ポリシーが残り少ないからだ」という感じで判断基準にされる方も増えてきています。それは大変良い傾向なのですが、同時にちょっと気になる傾向も出てきています。それが、
Chromebookは自動更新ポリシーがあるのが致命的(欠点)
という声が出てきていることです。要は「自動更新ポリシー」という存在を知ったことがプラスに働かずにマイナスに働いてしまったんですね。「サポート期間が数年しかない」から駄目、という話です。確かに購入する段階から賞味期限(寿命)が決められているようで、あまり気分の良いものではないかもしれません。けれど、それが致命的になる、購入を躊躇わせるほどの理由になるものなのでしょうか。
ChromebookはOSにではなく、仮の入れ物であるハードウェアに賞味期限が定められている。
前回、「Chromebookの本体はネット上にあるGoogleアカウントとそれに紐付けられた環境群。ハードウェアはあくまでそれらを「一時的に」下ろしてくる仮の置き場のようなもの。」といった話をしました。
「Googleアカウントが主、ハードウェアはそれを動かすために一時的に入れるための入れ物なので従」という考え方は、今までの「ハードウェアが主」という感覚だといまいちピンとこないかもしれません。ただ、Chromebookにおいては、ハードウェアというのはあくまで一時的なデータの置き場所(作業場所)に過ぎません。
なので、入れ物を乗り換える、使い分けること自体が簡単なので(アカウントが主体のため)ある特定のハードウェアにずっと依存する必要がありません。そう考えると、バッテリーや液晶パネルなどがどんどん劣化してくる消耗品でもあるハードウェアをいつまでも同じモノを使い続ける必要はないとも言えます。感覚としては
その時々の状況に合わせて最も使いやすいハードウェアに、その都度アカウントでサインインして使い分ける
という状態に近いのかな、と思っています。そう考えると、その消耗品であるハードウェアに6〜8年のサポート期間が付いている、というのは十分すぎるのではないか、と思っています。
また、この自動更新ポリシーは前述のように「ハードウェアプラットフォーム」毎に定められています。そのハードウェアが世に出てから6〜8年はサポートされる、ということです。これもある意味で理にかなっていると思うんですね。
これだけ技術の進歩が速い世界で6〜8年以上前のハードウェアまでサポートし続けるのは大きな負担ですし、それもOSの中に含めていく、となるとどんどんOS自体も肥大化、もしくはレガシーなプラットフォームをOS自体が背負っていくことになります。常にそのハードウェア構成の発表から6〜8年間サポートしていく、というのは「仮の入れ物」と考えれば「常に新しい入れ物を使ってね」ということだと思っています。
Windowsに関してはOSに賞味期限が定められています。なので、最新のハードウェアを買おうが、極端な話(スペックが一応足りていれば)10年前のハードウェアを買おうが、賞味期限は同じです。これも一長一短だと思うのです。
どんなに古いPCを買っても、OSがサポートを終了するまではそのOSを使い続けられる(サポートする)よ、というのがWindowsです。これに対して、ハードウェアのサポート期間が終了するまでは、そのハードウェア上では常に最新のOSを使い続けられるよ、というのがChrome OSです。
Chrome OSにはWindowsのように7、8、10のような大型ナンバリングアップデートがないので例えが悪い、と言われるかもしれません。また、Windowsであれば最新のモデルを買えば、ハードウェアスペック的には7が10になった時でも継続して使い続けられるので、結果として使い続けられる期間はChromebookとあまり変わらないかもしれません。
ただ、ここでは「OSに賞味期限があるのか、ハードウェアに賞味期限があるのか」の違いについて触れさせて頂きました。そう考えると「ハードウェアのサポート期間が6〜8年しかないのは本当に致命的(欠点)」なのかな、と思っています。
自動更新ポリシーを「端末のレンタル期間(もしくは契約、サブスクリプション)」と捉える考え方もありかも。
こんな内容の話を昨日Twitterでしたところ、結構反応がありまして、その中でこんなツイートがありました。
GSuiteを契約したらChromebookを借りられるってサブスクリプションプランがあればなぁ。
— Anliy (@androidlinux1) February 19, 2020
実際には一般の方がG Suiteを契約することはあまりないとは思うのですが、
この視点、とても面白いな、と思いました。とてもChromebookの使い方とハマると思うのです。
むしろChromebookのイメージってこちらに近いのかもしれないなぁ。実際には大半の人はGoogleアカウントなので契約している訳ではないけど。Googleアカウントを使いやすくする端末を、端末代という形で数年間借りてるような感覚。もちろん実際にはChromebookを買ってるわけだけど。 https://t.co/kWuvmdD9oJ
— おふぃすかぶ.jp (@OfficeKabu) February 19, 2020
実際にはもちろん私達はChromebookを借りている訳ではありませんし、Googleアカウント自体は作成も利用も無料です。その感覚からすると、イメージしづらいかもしれませんが、アカウントを使うにあたって、Googleサービスを含めてWebサービスを快適に使うための道具(Chromebook)を6〜8年分のサブスクリプション(これが端末代)を払って使っている、という発想です。
「Chrome OSは無料なんだから、同一スペックのWindowsに比べて価格が安く出来るはず」といった意見を時々目にしますが、もちろんOSが無料なわけではないのはお分かりかと思います(どうしてもChromium OSなどのイメージがあるので無料と思われがちなのですが)。
ただ、しつこいかもしれませんが「アカウントが主、ハードウェアは仮の入れ物なので従」と考えると、そのアカウントを快適に使うためのハードウェアを借りている(6〜8年のサブスクリプションを買っている)、という感覚が意外と分かりやすいのかな、と思いました。OSのサブスクリプションを買うのか、ハードウェアのサブスクリプションを買うのか、その違いですね。
自動更新ポリシーは発売から約6〜8年です。意識はしてほしいけど、そんな深刻に考えないで欲しいな。
誰でも最初から寿命が決まっているのはあまり気分の良いものではないと思います。ただ、見方を変えれば、最新のモデルを購入すれば6〜8年のサポート期間が付いていて、その間は最新のOSを使い続けることが出来ます。
もちろん愛着のあるモデルもあるでしょう。一生モノとして長くハードウェアの寿命が尽きるその日まで使い続けたい(何ならその後も部屋に飾っておきたい)という方もいると思います。私自身、今メインで使っているChromebookが2026年まで、とわかっているのは寂しくもあります。
ただ、人の生活や好みが変わるように、ハードウェアも6年経てば大きく変わります。そしてChromebookの本体はハードウェアではありません。あくまでクラウド上にある自分のGoogleアカウントに紐付けされた環境とデータ群です。それを一時的に入れる箱がChromebookです。
もちろん残りサポート期間が2〜3年のモデルをわかった上で安く購入して、2〜3年ごとに切り替えていくのもあり。反対にその時々の最新のモデルを2〜3年ごとに買い替えていく、という使い方もあり。要は自分のアカウントをどういう環境で使いたいか、です。
ハードウェア毎にはっきり決められているので、何となく気にはなってしまいますが、意識はしてほしいけれど、そんなに深刻に考えないで欲しい。
Chromebook的な使い方に慣れてくると、自分自身がハードウェア依存からだいぶ自由になっていることに気づかれるのではないか、と思います。それがそのうち、OS依存からも自由になるような未来が来たら(別にChrome OSでなくても良い)面白いな、と思っています。
最後に。もし興味を持って貰えたら、当ブログのChromebookページもご覧頂けると嬉しいです。700弱の文章があるので、なかなか目的の内容に辿り着きにくいかもしれませんが、この3年ほどの流れが掴めるのではないか、と思っています。
ただ、その際にもその文章がいつ書かれたものなのかは確認することは忘れないでくださいね(追記や修正が間に合っていなくてごめんなさい)。