前回に続いて、「この6年近くChromebookを使ってきた私なりの、このPC、OSについての考え、捉え方」について書いていきたいと思います。
前回の文章でも5,000字近くになってしまいました。今回はもう少しコンパクトにまとめられると良いのですが、なるべく内容を区切って話していきたいと思います。(無理でした)
尚、文中で恐らく感じられるであろう疑問については、前回の文章で前提として話していますので、こちらも合わせて、サラッとでも流して確認しておいて頂けると嬉しいです。
前回も触れましたが、現在国内においてのChromebookのイメージとして一般的なものは、
- Chromebookで出来ることは基本的にWindows PCやMacBook等でも出来る。
- Chromebookは出来ることが限られているが、その分低価格低スペックでもサクサク動くのが魅力。
- なので、予算があるなら、また高いモデルを考えるなら、普通にそれらを買った方が良い。
といったものかな、と思います。これらが間違っている、という訳ではありませんが、6年近くChromebookを使ってきた私としては「分かるんだけど、ちょっと物足りないかな」と感じてしまうのです。このイメージだけが先行してしまうと、結果としてChromebookの本来の魅力や良さが活かされる将来は来ないのではないか、と心配しています。もちろん導入、きっかけとしては、低価格が心理的ハードルを下げるのは確かなので、どんな理由であれ、買って試して貰えるのは嬉しいことなんですけどね。
ということで、今回はこんなテーマで話してみたいと思います。
GoogleのPCであるChromebookの特長は、Googleのサービスをよく見てみると分かりやすい。
Chromebookは現在、国内外の色々なメーカーから出されていますが、基本的にはGoogleの出しているPCです。もちろん詳しい方からすればツッコミどころはあると思いますが、その辺りはご理解下さい。私、文章長くなりがちなので。
ということは、Chromebookの特長、魅力を知りたいのであれば、Googleのサービスを眺めてみるのが一番分かりやすいと思うのです。中でも今回挙げたいのがGoogleドキュメントやスプレッドシートなどです。これらを挙げたあとで、後半で少し発展させて、そこから広がるWebサービスの将来性について触れたいと思います。
さて、
Googleドキュメント、使われたことありますか?
Chromebookの欠点の1つとして「Microsoft Officeが使えない、使いにくい」ということがよく挙げられます。そうしたこともあって、Googleドキュメントやスプレッドシートって何となく「Officeの代替、無料版」「機能削減版」といった印象を持たれている方も多いのではないでしょうか。実際巷ではそうした評価も多いな、と感じます。
ただ、Microsoft WordとGoogle ドキュメント、Excelとスプレッドシート、全くの別物です。
同じような用途に用いるサービスではあるのですが、得意とする使い方が違うのです。ここではOfficeについては(あなたもご存じだと思うので)省きますが、Googleドキュメント、スプレッドシートの強みは、
自分や他人との共有、及び共同作業(更に言えば同時並行での作業)を行うのに適したアプリ、サービス
です。言い方を変えれば、こうした強みが一切必要のない方、こうした使い方をしない方、Officeが得意とするような使い方をしたい方にとっては、確かに代替としても力不足ですし、思った通りの動きをしてくれないし、あくまで廉価版、無料だしな、といった価値しかないかもしれません。ただ、ここを重視したい方にとっては、Office以上に使いやすく、また快適なのです。
使い方は人それぞれ、は当然ですが、あなたはWordやExcelをどういう使い方をしていますか?それらのファイルはどこに保存していますか?それらは他の方と共有していますか?共有や共同作業をする時には、どういう方法を使っていますか?
Googleドキュメントやスプレッドシートは基本的には作成すると、クラウド上の自分のGoogleドライブ内に作られます。Chromeブラウザー上で行っているので、人によってはブログやWebサイトを更新しているような感覚に陥るかもしれません。ネット上にある、とあるデータを、自宅なり出先なりからネットに繋いで編集する。これがベースです。
これ、「ネットに繋がないと何も出来ない」と言われることが多いのですが、裏を返せば、ネットに繋げればどの端末でもどこからでも、このデータにアクセス、編集が出来ます。更に言えば、毎回アプリをインストールしたり、ライセンスを管理したりする必要はありません(自分のGoogleドライブにアクセスするためにGoogleアカウントは必要ですが)。つまり、私が複数台、PCであろうがスマホであろうが、ネットに繋げる端末を持っていれば、基本的には環境にあまり依存せずに、同じドキュメントやスプレッドシートの画面で編集が出来ます。
そして、例えば誰かと共有したい場合には、共有相手に指定するか、そのファイルのある場所のURL(アドレス)を教えるだけです。
その誰かの端末がPCであろうがスマホであろうが関係ありません。まして、Officeのように、それぞれが購入している必要もありませんし、バージョンが違う、といった心配もありません。
要は、ネット環境さえあれば、どこでも、誰(自分も含めて)でも、ほぼ同じ環境で、アプリを購入したり、バージョンを合わせたり、ライセンスを心配したりする必要もなく、共有が出来る、ということですね。
これが、各々の手元のある特定のPCのHDDやSSDといったストレージの中にファイルが入っているのであれば、そこまで簡単ではありません。「日本では社会に出たらOfficeが必須だからOfficeの使い方を学生の内から身につけておいた方が良い」と言われますが、それでも未だに企業によってはかなり昔のバージョンのOfficeを使っていたり、ファイルをメールでパスワード付Zipファイルで送ったり、といった商習慣が行われていることを考えると、どちらのほうが社会に出てから便利なのか、という話にもなってきます。
そしてもう一つの強みが、共有先を知っている人間であれば、同時刻に同じタイミングで、同じファイルにアクセス出来て、同時に編集が出来る、また編集をしながら横でチャットやミーティングが出来る、ということです。
これ、大したことがないように思えるかもしれませんが、ネット接続が前提だからこそ出来る強みであり、少しクラウドサービスや共有を(自分の中だけでも)利用されている方であれば、差分や同期の扱いに悩まれた経験のある方も多いのではないでしょうか。
ということで、そろそろ長くなってきたのでいったんまとめます。今回ここで挙げたような使い方を一切しない方、またそうした使い方が想像出来ない方や、価値を感じられない方にとっては、先ほども触れたように、Googleドキュメントやスプレッドシートは単なるWordやExcelの劣化版、細かい(自分にとっての必要な)機能の使えない、使い勝手の悪いサービスだと思います。あくまで無料だし、程度の評価になってしまっても仕方がありません。
そして、世の中においては、まだここで挙げたようなドキュメントやスプレッドシートの使い方は一般的ではありません。ニーズもそこまでありません。何故なら、まだまだ圧倒的にOfficeのほうが普及していて、Office的な使い方のほうが馴染みがあり、使われているからです。だから一般的には「社会に出たらOfficeは必須」となります。
さて。ここで先ほどのツッコミの話になります。「他OSでも使える」の部分ですね。
それでは何故今回、Chromebookの特長、といいつつ、他OSのPCでも使えるGoogleのサービスの話をしたのか。
Chromebookの考え方、使い方って、こうしたGoogleのサービスで例に挙げたような、
自分や他人との共有、及び共同作業(更に言えば同時並行での作業)を行うのに適した、
いや、むしろ、そこに特化させた作りをしているからなんです。それ以外に使えない訳ではないのですが、そうした使い方をしやすいようなOSやUIになっているんです。なので、同じ価格帯、ほぼ同じようなスペックの他OSのPCと比べた時にも、こういう使い方をしたときには「より快適」になります。
補足と今回のまとめ:世の中の仕事や作業の形が、共有や同時並行での共同作業に変わってきたら?
それでは最後に補足と今回のまとめ、です。
ChromebookはChromeブラウザーで出来ることしか出来ない、と言われます。また、ネットに繋がないと何も出来ない、はよく言われる評価ですね。
でも、それは裏を返せば、そうした作業に特化させて作られている、ということです。ネットに繋いで、自分や他人との間でデータや作業の結果を共有したり、同時並行で作業を進める場合に使いやすい、その場合に「より快適になる」ような作りをしています。
ただ、ここで前回の後半でも触れた「高い、ハイスペックのChromebookの存在意義が分からない」という疑問が生まれてきます。それを感じられる方も多いのではないでしょうか。それだったら、低価格モデルで充分じゃん?と。
ただ、もし世の中の仕事や作業の形が、共有や同時並行での共同作業に変わってきたらどうでしょうか?そうした作業が仕事や趣味において増えてきたら。そういう世の中になってきたら。
例えば、今はまだまだ不十分で、不向きと言われている本格的な動画編集や画像編集といった作業。私も昨年YouTubeで動画を上げるようになりましたが、これも自分1人で、ある特定のPCのみで編集作業をするのであれば、圧倒的に他OSのPCのほうが便利です。というか、Chromebookでは現状それはほぼ難しいし、やれてもやりたいとは思いません。
ただ、今後仕事の形として、例えば動画編集を他人と同じ時間帯に一緒に編集するような未来が来たらどうでしょうか?
1人が映像側を編集しながら、もう1人がほぼ同時にキャプションやエフェクトを入れていく、同時にもう1人が音楽の細かい部分を編集していく。
これを今行うとしたら、相当な環境が必要になってくると思います。少なくとも私たち一般のユーザーには出来ないでしょう。
でも、例えば学校教育でPCが導入され始めました。そうした場では、みんなで(例えばグループに分かれて)一緒に1つの動画やプレゼン用の資料を作る、といった共同作業も必要になってくると思いますし、私はそういう人との共同作業の感覚をどんどん経験、身につけて欲しいと願っています。
それらが先ほど挙げたようなGoogleドキュメントやスプレッドシートみたいな感覚で、ネットに繋げれば、どの端末からでも、どのPCからでも行えるようになったら・・
それはまだまだ先の話かもしれません。それが、前回も触れた「まだそうした状況に現実が追いついていない」「現代社会がまだそこまでのニーズがない、限られている」にも繋がってきます。
社会がそうした自分や他人との共有、及び共同作業(更に言えば同時並行での作業)へのニーズが増えてきたとき、そうした用途に特化させた、そうした使い方が「より快適に」使えるモデルは輝いてくるのではないでしょうか。
そうなれば、そうした使い方が主流になってきたら、当然同じクラウド上、ネット上、ブラウザー上(その頃には特定のブラウザーではないかもしれませんが)で行う場合にも、本体内にもそれなりのスペックは必要になってきますし、そのためには快適なキーボード、見やすい液晶、持ち運びやすいサイズや軽さ、といったものも重視されるようになってきます。
そうして生まれたハイスペック、高価格帯のChromebookを見た時、あなたは同じような考えを持つでしょうか。
「Chromebookで出来ることは基本的に他OSのPC(Windows PCやMacBook)でも出来る」
「であれば、同じ価格出すなら他OSのPCを買ったほうが良い」
「高いChromebookの存在意義が分からない。その価格を出すなら出来ることの多い〇〇(他OSのPC)を買う」
確かに現状ではそれらはその通りかもしれません。ただ、それでもChromebookが初めて発表された2011年5月(今から10年以上前)に比べると、まだまだ道半ばとはいえ、そうした共有や同時並行での共同作業で出来ることも増えてきました。とともに、求められるスペックも、時代とともに少しずつ上がってきています。
今はまだ、そのバランスが取れておらず、それが冒頭でも挙げたようなイメージに繋がっています。また、今後もそうしたイメージが続き、仕事に求められるものも変わらなければ、Chromebookの本来の魅力や良さが活かされる将来は来ないかもしれません(その可能性も充分にあります)。
今回の文章は夢物語のような話かもしれませんが、あなたが抱いているChromebookのイメージに少し別の視点が加わったのであれば、嬉しいです。