「Chromebookは出来ることが少ない(限られている)」と言われます。
「出来ることが限られているから安い」と言う方もいます。
前回、出来ること、出来ないことについて書いてみましたが、このテーマってとても難しいな、と思っています。
「出来ること」って何でしょうか?本当に少ない、限られているのでしょうか。
確かに言いたいことは分かりますし、私もそれについて違う、とは思っていないのですが、それでも「うーん・・」と思ってしまう部分があるのです。今回はちょっとその辺り、私の感じていることを書いてみたいと思います。
「出来ることが多い」にもいろいろある。
いきなりですが、ちょっとたとえ話をしてみたいと思います。
AとBの二つのPCがありました。
Aは「出来ること」が100個あります。
その内、私が実際にやりたいと思っていることは10個当てはまりました。
Bは「出来ること」は30個あります。
その中で私が実際にやりたいと思っていることが20個当てはまったとします。
どちらのほうが「出来ることが多い」のでしょうか?
この場合、一般的にはAのほうが出来ることが多く、Bは出来ることが少ない、となります。
でも、私にとってはBのほうが出来ることが多いわけです。
ツッコミどころは色々あるとは思いますが、こういうことって結構あると思うんですね。
ではこれをWindows PCとChromebookに当てはめてみると、どうでしょうか。多分、大半の方はWindows PCのほうが出来ることが多い、と言われると思います。一応同じPCというカテゴリーで、多くの方がイメージされることで考えるのであれば、確かに私もそれは否定しません。流石に「いや!Chromebookのほうが出来ることが多い!」なんて言うつもりはありません。そんなことは分かった上で、でもちょっとだけ私の話、もう少し付き合って下さい。
私、先日こんな文章を書きました。
この中で私はこんなことを言いました。
私、メーカーからよくChromebookをお借りするのですが、貸出期間中、Chromebookでの作業環境をほぼ完全にその貸出機に移行して検証が出来るんですね。それは復元と削除、元の環境に戻すのが楽だから。いつもの環境での使用感を試せる、試しやすいのはChromebookの強みだと思ってます。
— おふぃすかぶ.jp (@OfficeKabu) February 5, 2022
- 「普段の作業環境を、ほぼ完全に別の端末に気軽に移行出来る。」
- 「移行しても、普段の作業環境でも引き続き並行して使うことが出来るし、移行先の環境をいつでも気軽に削除することが出来る。それらをすぐに同じ環境に同期することが出来る。」
- 「複数台をその時の用途や状況に合わせて、気軽に切り替えて使い分けることが出来る。」
「何それ、屁理屈じゃん。」
「そんなの、出来ることに入れるなよ。」
あなたはそう思われたかもしれません。でも、別に負け惜しみでも何でもなく、私にとっては、これが出来る、って凄く価値があることなんです。そして、これは他のOSのPCでは、まったく出来ない訳ではないものの、Chromebookほど気軽には出来ません。
「Microsoft Officeが使えない(出来ない)」ことは私にとっては別にどうでも良くて、先ほど挙げた屁理屈のようなことが出来ることのほうが魅力的に感じる。
さて、ここでこうした意見も出てくると思います。
「いや、出来る、ってのはそういうことじゃない。もっと例えばOfficeが使える、とかAdobeのソフトが使える、とかWindowsの豊富なソフトをインストール出来る、とかそういう具体的なことだと思う。」
「Windowsではプリンターやスキャナーなど幅広い周辺機器を繋げられるし、、DVDドライブで映画を見たり、e-Taxも出来る。」
こういうことを「出来る」というのであって、その意味ではChromebookはWindowsに比べて「出来ることが少ないし限られている」。それなのに、何だ、さっきのあなたの言い分は。「気軽に複数台を使い分けることが出来る?」「簡単に引き継ぎや復旧が出来る?」そんなのは出来ることには入らない。
確かにそう思われる気持ちも分からなくはないのですが、これってChromebook、Chrome OSの特長であり、強みでもあるんです。それは安いから出来る、機能が限られているから出来る、という訳ではなくて、元々そういう使い方に強いのです。
また同様に、先日こんな文章を書きましたが、
これもChromebookなら容易に出来ることの一つなんですね。保守管理が非常に簡単に出来る。時間がかからない。
つまり、これらも立派に、Chromebookが出来ることの一つだと思うのです。
「いや、そんなことならWindows PCでもやろうと思えば出来る」という疑問に対して。
こう書くと、ある程度知識のある方からはこうした反論が出てくるかもしれません。
「いや、それはWindows PCでもやろうと思えば出来るから」「Windows PCでもそこまで難しくないよ」
でも考えてみて下さい。それを言うのであれば、例えばChromebookでも
- Windows用ゲームもすべてではないですが、クラウドゲームサービスを使えば出来ます。
- Microsoft Officeも通常のアプリ版はParallelsを入れればWindows自体が入れられるので、使えます。
- プリンターやスキャナーも設定が多少癖がありますが、使えないわけではありません。
同じことが言えてしまうんです。要は本人の意欲と工夫次第なんですね。やろうと思えば、自分の必要な度合いによっては全然出来てしまうわけです。ただ、それらの用途、出来ることを本人がどれだけ必要としているか、手間をかけてまでやりたいと思っているか、というだけの違いです。
そして、ここまで読まれてきて、気付かれた方もいるのではないでしょうか。ここまでの話。
すべて、Windows PCの土俵で優劣を決めていませんか?
出来る出来ない、といった指標を、すべてWindows PCの視点で選んでいませんか?
これって前回の文章の後半でも例えとして触れましたが、
そういう人たちって好きなんです。まったく違うOSのPCの優劣を決めたり喧嘩したりするのが。
「総合格闘家とプロボクサーが路上で喧嘩したら(でも何故か喧嘩なのにルールは総合格闘技)どっちが強いか」
みたいな路上の伝説みたいなことですぐ口論になって、時には喧嘩寸前にまでなる迷惑な人たちと同じです。
これと似たような事だと思うのです。
そもそも全く別のOS(例えであれば格闘技)を同じ土俵で比較することなんて出来ないんです。同じ土俵と言っておきながら、大抵それぞれ自分の慣れ親しんだ土俵(ルール上)での優劣を比べたがる。
上の例で言えば、「路上の喧嘩」と言っておきながら、何故かルールは「総合格闘技のルール(禁止事項あり)」みたいな話になっちゃうわけです。そりゃ総合格闘技のルールで総合格闘家とプロボクサーが戦えば、総合格闘家が強いですよね。でもそれは総合格闘家のほうが路上の喧嘩では強い、ということにはなりません。
あなたは何のために、どうして、PCを使おうと思っていますか?
確かに今、世の中、特に日本ではMicrosoftのWindows PCが社会(職場)でも学校(大学等)でも広く使われています。そしてその傾向はまだまだしばらくは変わることはないでしょう。
でもだからといって、「出来ることと出来ないこと」を、必ずしも毎回、Windows PC基準で考える必要があるでしょうか。そこで「出来ることが限られている、少ない」というのは、あくまでWindows側の視点に立ったときの見方に過ぎないのではないでしょうか。
これは(まだユーザー自体が少ないので想像しにくいとは思うのですが)もしChromebook側の視点に立って考えてみたら、世の中がChrome OSが主流で動いていたら・・「Windows PCはChromebookに比べて出来ることが少ない」と考える人が出てきてもおかしくはありません。
「いや、社会に出たらWindowsを使うんだから」
「社会に出たらChromebookなんて役に立たない。何故ならWindowsと使い方が違うから、Windowsで使えるソフトが使えないからだ」
如何にも尤もらしい理由にも聞こえますが、でも、
あなたは社会に出て通用するために、PCを使うんですか?PCを選ぶんですか?
もちろん、職場がWindows PCで、仕事で使うためのノートPCを選ぶ、という目的であれば、他の選択肢は全くありません。素直にWindows PCを買うのが一番です。
ただ、PCの用途や目的って別に「社会に出て役に立つから」だけではないと思うんですね。
ネットで調べ物をしたい。メンテナンスとか細かいことはあまり考えたくないから、なるべく楽なPCが欲しい。気軽にYouTubeが大画面で見られるものが欲しい。少し家計簿をつけてみたい。小説や日記を書いてみたい。
人によってはAndroidアプリを大画面で使ってみたい、電子書籍を読みたい、といった目的もあると思います。
用途なんてそれぞれに違って、それは私が今回前半で触れたように、
AとBの二つのPCがありました。Aは「出来ること」が100個あります。その内、私が実際にやりたいと思っていることは10個当てはまりました。Bは「出来ること」は30個あります。ただ、その中で私が実際にやりたいと思っていることが20個当てはまったとします。
どちらのほうが「出来ることが多い」のでしょうか。
この場合、一般的にはAのほうが出来ることが多く、Bは出来ることが少ない、となります。でも、私にとってはBのほうが出来ることが多いわけです。
ってことだと思うのです。誰もがWindows基準で出来ることが多い必要はない。それよりも、自分にとって必要なこと、魅力を感じることが「出来る」ということが大切だと思うんですね。
結局はPCは道具です。使わなければ意味がありません。というか、勿体ない。であれば、目的なんて何でも良いと思うんです。誰もがOfficeを使ったり、本格的なクリエイティブな用途に使う必要もなければ、アプリを駆使したり設定をゴリゴリに弄ってカスタマイズして使う必要もないんです。むしろ私が先ほど挙げたような、
- 「普段の作業環境を、ほぼ完全に別の端末に気軽に移行出来る。」
- 「移行しても、普段の作業環境でも引き続き並行して使うことが出来るし、移行先の環境をいつでも気軽に削除することが出来る。それらをすぐに同じ環境に同期することが出来る。」
- 「複数台をその時の用途や状況に合わせて、気軽に切り替えて使い分けることが出来る。」
といったことが出来ることのほうが魅力的、と感じる人もいてもいい。そういう人にとっては別に「出来ることが限られている」なんて考えもしません。
また、こうした「出来ること」ってイメージしにくいし説明もしづらいので、なかなか表には出てきません。ただ、そういう言語化するのが意外と難しいけれど、それ自体が実は強み、みたいな「出来ること」もChromebookに限らず、たくさん存在すると思います。
一般的に考えられている、イメージされている「出来ること」が多いか少ないか、よりも、自分が不便を感じなければ、むしろ自分にとって快適に使えたり、ある出来ることが便利だったりすることが大切なのではないか、と思います。
そして、多くのことは、何を使っていても、今回文中で少し触れたように、少し工夫すれば出来ることも多いんです。
その上で、使ってみて、「あ、この辺りちょっと不便だから、出来ると良いな」みたいな自分にとっての必要なことが見えてきたときに、その先を考えても遅くないんじゃないか、と思います。というか、むしろその過程を経なければ、なかなかそういうことって分からないと思います。
その時に、新たに買い直しても良い、買い足しても良い。Chromebookは先ほど「出来る」ことで挙げたように、そうしたときの併用がとてもしやすいPCであり、実際にサブとして使っている人や、こちらをメインにしつつ、必要に応じて時々別のOSのPCやスマートフォン、タブレットなどで補っている人もいます。
今までイメージしたこともなかった「出来ること」に気付くことがあるかもしれません。だからまずは試してみて。
世の中に出回る「Chromebookで出来ること、出来ないこと」「メリット、デメリット」は確かに便利で親切です。イメージがしやすいし、そこに自分の用途を当てはめていくのも失敗が少なく、楽かもしれません。誰でも失敗はしたくないですよね。だからそれはとても分かります。ただ、そうした説明を聞いて腑に落ちる方も多いとは思うのですが、イマイチよく分からない、という方もいると思うのです。
実際Chromebookに関してはネット上を眺めていても
「いろいろ調べてみたけど、使っている人のレビューを眺めてみたけど、何が魅力なのか全く分からない。それだったら出来ることの多いWindows PCやMacBook買った方が良くないか?」
という意見を結構目にします。確かにそれも分かります。そして、多分それが失敗するリスクは小さいのかもしれません。
もしかしたら、世の中の多くの人は、今回私が挙げたような、またこのブログで度々触れてきているような魅力やメリット、出来ることには何の魅力も感じないどころか、魅力とすら感じないかもしれません。それはそれで良いと思います。
最近普及し始めてきたことで様々なメディアが「Chromebookとは」「Chromebookの出来ること、出来ないこと」といった特集を組んでいます。それらを読んでみて、頭で考えて分からないのであれば、それでも興味を持たれたのであれば、ちょっと試しに使ってみて欲しいな、と思います。
もしかしたら、今まで自分の中では「出来ること」と定義していなかったことが、案外自分にとっては思った以上に魅力的な「出来ること」であることに気付くかもしれません。