今回も引き続き、ここ最近、国内でも普及し始めてきたChromebookについて「この6年近く使ってきた私なりの、このPC、OSについての考え、捉え方」について書いてきています。
前回、Chromebookにまつわる幾つかの「〜ない」の中から「ウイルス対策が不要(要らない)」について考えてみました。
これはChromebookに限った話ではないので、あまりピンとこなかった方もいるかもしれません。ただ、「ウイルスに感染したっぽい」というのは意外と目にする声だったので、触れておきたいと思いました。
今回は私たちPCにある程度知識があるユーザーがChromebookについて話す際に、どうしても使いがちな表現について考えてみたいと思います。それが、
「クリエイティブな用途には向かない」
というものです。そこから広げて
「出来ることが限られているから、色々やりたいなら他のPCを選んだほうが良い」
という話になります。
これが違う、とか否定したい、ということではありません。むしろ、私もこうした不特定多数の方が読まれるネット上、ブログやTwitterなどでは、やはりこういう表現をすると思います。何故なら、それが選ぶ人にとっても失敗が少ないと思うからです。
今回も結論から先に書けば
- そもそもクリエイティブな用途、色々、って何ですか?
- とはいえ、基本的には自分が「欲しい」PCを選ぶのが一番です。だって、それが一番「使いたい」という気持ちに繋がって、使うことになるからです。
ということになります。以下、これについて考えていきたいと思いますので、お時間がまだある方はお読み頂けると嬉しいです。
まずは一般的な話として。目的や用途が明確になっているなら、そもそも自分で選べます。
PCを選ぶときに限らず、何かを選ぶ際や、目標の設定のようなものであっても、よく言われることが
目的や用途を明確にする
というものがあります。でも基本的には無理です。正直、考える時点で目標が明確になっている(出来る)のであれば、既に「どれを選ぶか」なんて悩んだり、他人にアドバイスを求めたりしないと思うんです。そういう段階まで来ているのであれば、自分で決められるんです。
だいたい上のようなアドバイスが出来るのは、既にPCをある程度使っていて、自分の用途もはっきり決まっている人なんですね。そういう人が「自分の場合」に照らして評価しているだけに過ぎません。
では、まったく参考にならないか、というとそういうわけでもなく、明確になっていないからこそ、これから何をやりたくなっても、そしてそんな何かは今後訪れることはなかったとしても、なるべく出来ることの種類は多いほうが、もしものとき、念のためには助かります。
そうしたことを考えるのであれば、確かにChromebookを現時点で誰にでもオススメ出来るか、というと難しいですし、私も「今まで古いWindows PCを長年使ってきたのですが、そろそろ遅くなってきたのでChromebookに変えようと思います!」というような方には「いやいや、ちょっと待って。完全な置き換えはオススメ出来ないし、まずは併用から考えてみて。」となると思いますし、無難に他OSのPCを薦めると思います。
と、今回も一般的な話から入ってしまいましたが、ここからは少し発展させて考えてみようと思います。
とても曖昧な「クリエイティブな用途」と「出来ることが限られている」という表現。
ここで読まれているあなたに考えてみてほしいのですが、
クリエイティブな用途って何ですか?どういうものをクリエイティブな用途って言うんでしょうか?
Chromebookはクリエイティブな用途には向かない、とよく言われるのですが、この辺りの定義がすごく曖昧なんですよね。まぁだいたい動画編集とか画像編集みたいなことを指す方が多いな、という印象なのですが、更に発展させて動画(ゲーム)配信とか、更に専門的に「開発環境として考えると〇〇が出来ない」みたいなことを例に挙げる方もいます。
その全てを考えていくとキリがないので、ここでは比較的多い「動画編集」や「画像編集」について考えてみたいと思います。少しこれらについて掘り下げてみます。
Chromebookは動画編集に向かない、とよく言われるのですが、どんな動画編集をイメージされていますか?
例えば、私は昨年からYouTubeでも情報を発信しています。環境としては自宅のハイスペックなWindowsのデスクトップPCとAdobe Premiere Proで行っています。撮影機材もFUJIFILMのカメラや三脚やライティング機材も用意しています。
これも確かに動画編集です。これを動画編集、クリエイティブな作業というなら、確かにChromebookでは出来ません。まぁ全く出来ないわけではなく、似たようなことは出来ますが、敢えてやろうとは思いません。この辺りは「出来る」「出来ない」の話ではなく「ChromebookよりもWindows PCのほうが快適だから」Chromebookではやらない、というのが近いかもしれません。
では次に、最近も書評で話題になったTikTok(モバイル端末向けショートビデオプラットフォーム)はどうでしょうか?
もちろんウェブから例えばスマホで動画を撮って、それらをアプリ上で編集して共有して楽しむ。これはクリエイティブではないのでしょうか?むしろこうした動画こそ、多くの人の興味や心を掴むのが難しいかもしれません。これだってかなりのクリエイティブなことだと思っています。
これ、先程私が動画編集で挙げたようなPCが必要でしょうか?それでも出来るかもしれませんが、快適かどうか、スマホもあるのに敢えてそれらのPCを選ぶかどうかは別だと思います。だとしたら、TikTokでの動画編集をクリエイティブな作業とするなら、先程の私のWindows PCの環境は「クリエイティブな作業には向かない」となります。
さらに言えば、Windows PCやMacBookでの動画編集こそがクリエイティブ、というのであれば、そもそもこれらのPCには実用的な撮影用のカメラはついていません。つまりスマホと違って単体では完結できないんです。またWi-Fiを除けば通信機能も付いていないので、単独で動画を公開することも難しい。
これのどこがクリエイティブなんでしょうか?
なんか屁理屈を言っているように感じるかもしれませんが、そういうことなんです。これは画像編集に関しても同じで、PhotoshopやLightroom(Adobe製品ばかりで申し訳ありません。私が使っているので。あくまで他社製も含めて、です)でプロ顔負けの加工を施すことや、写真等を管理することがクリエイティブだ、と言われるかもしれませんが、Instagramに画像を挙げる、なども含めて
それが多くの人の興味関心を惹くのであれば、それが何かを生み出すのであれば、それもクリエイティブ
だと私は考えています。
そして、これらも多くの人にとってはPCで作るよりもスマホで作ったほうが作りやすいし、作ろうかな、という気持ちにもなると思うのです。
また、今こうして私はブログで文章を発信していますが、こうした文章で発信していくことは、クリエイティブな作業ではないのでしょうか?
そう考えていくと、「Chromebookはクリエイティブな作業に向かない」とは、どういうクリエイティブな作業を指すのか、わからなくなってきます。確かにクリエイティブな作業の中でも出来ないこと、出来るけれど快適ではないから敢えてやろうとは思えないことはあります。ただ、とても乱暴な表現だと思うんですね。
「出来ることが限られている」けれど、そもそも「出来ないこと」をどの程度やりますか?
さて、前半で私は「だいたい上のようなアドバイスが出来るのは、既にPCをある程度使っていて、自分の用途もはっきり決まっている人」と書きました。そういう人の視点で考えれば、Chromebookって不自由も多いのです。自分がやろうと思っている作業の内の多くが、自分の思ったようには使えません。
例えば私も自分がよく行うような動画編集をする、という意味で考えれば、そういう編集をしたい、と相談されたのであればChromebookは勧めません。
ただ、考えてほしいんですね。そういう動画編集、しようと思ってますか?そういう詳しい人がイメージしているようなクリエイティブな作業や、やっていることをあなたもしますか?同じような使い方を考えていますか?
誰もがそうした動画編集をするわけではない。誰もがそうした画像編集をしたいわけでもない。誰もがプログラミングをしたいわけでもない。
そうした用途を満足に行うためには、Chromebookでなくてもそれなりのスペックと予算が必要です。
そして、そうした用途を最初から考えているのであれば、そもそもChromebookって選ばないと思うんです。いや、Chromebookに限らず、3万円前後でPCを選ぼうとはしないはずです。
ちなみに、先程の動画や画像の編集で言えば、ChromebookでもWebサービスやAndroidアプリを使うことで、むしろそうしたサービスやアプリが得意とするような編集であれば快適に行えます。
例えば、最近話題になってきているCanva。世界的にも急成長してきていますが、国内でも利用者が増えてきたこともあって、最近はどんどん出来ることが増えています。
動画編集や画像編集にも幾つかのアプローチがあります。Canva的なアプローチが使いにくい、むしろこうしたテンプレート機能などが余計なお世話な人にとっては使いにくいかもしれませんが、反対に気軽に作れて活用できるのではないか、と思います。
つまり、
「Chromebookはクリエイティブな用途には向かない。」
「Chromebookは出来ることが限られている。」
と言われがちですが、クリエイティブ、出来ること、の定義がいつも曖昧で広すぎると思っています。
その内容によっては、他OSであったとしても、20万、30万といったハイスペックのモデルを買わなければ快適には出来ないこともあります。
その場合、確かにChromebookではハイエンドのモデルでも向かないけど、Windows PCやMacBookなら向いている
のではなく、ハイエンドのWindows PCやMacBookなら向いている(手頃な価格のモデルでは向かない)
というだけの話なんですね。
今回のまとめ:その「クリエイティブな用途」、あなたに必要ですか?
今回は私にとっても身近な動画編集や画像編集を例に挙げて考えてみましたが、他にもゲームなどでも同じですね。
ChromebookでWindows PCでなどの豊富なゲームはインストールして遊ぶことは出来ません。ただ、Windows PCでも本体のみで完結させてゲームを遊ぶとなれば、それなりのスペック、更に欲を言うならゲーミングPCのようなものが必要になってきます。また、Chromebookでも最近はGeForce NOWやXbox Cloud Gamingなどを使えば、普通にPCゲームが遊べるようになりました。
今回の話、あなたがPCに詳しい方であれば、ツッコミどころ、屁理屈だろ、と感じられた部分もあったかもしれません。
ただ、ネット上を眺めていても、まだまだこうした、あくまで自分の用途や環境がベースであるにも関わらず、それをPC全体の一般的な考え方のような感じで評価してしまうことが多いのではないか、と思っています。主語が極端に大きくなってしまう、曖昧になってしまう、ということです。
「クリエイティブな用途」「出来ること」「Chromebookは」「Windows PC」
どれもそうですね。
ただ、私も冒頭で挙げましたが、
私もこうした不特定多数の方が読まれるネット上、ブログやTwitterなどでは、やはりこういう表現をすると思います。何故なら、それが選ぶ人にとっても失敗が少ないと思う
のは変わりません。ここで冒頭でも挙げた結論に入りますが、
- そもそもクリエイティブな用途、色々、って何ですか?
- とはいえ、基本的には自分が「欲しい」PCを選ぶのが一番です。だって、それが一番「使いたい」という気持ちに繋がって、使うことになるからです。
というのが、私の考えです。先程「主語が大きい」とは言いましたが、とはいえ、もしかしたら、1ヶ月もしない内に急にあなたもプロ顔負けの動画を、本格的な機材も揃えて編集したくなるかもしれません。そうしたときに、Chromebookでは力不足、まったく使い物にならない可能性もあります。それなら、そうしたときのために、念の為に30万円、40万円の他OSのPCを買っておいたほうが潰しが効くかもしれません。
またそこまでいかなくても、例えばMicrosoft Officeだけは使うか使わないかは別としても、使えるPCにしておきたい、というような理由もあるでしょう。それなら他OSをオススメします。
だからこそ、私は「欲しい」PCを選んでほしいと思っています。用途なんて正直余程使い込むか必要性が既にない限り、明確になんてなっている筈がないんです。
そういうものは、使っていく内に気がついたり、自分の使い方によって何となくイメージが出来ていくものだからです。そのためには、まずはPCに触れている時間が多いことが大切だと思っています。使わなければ、使い方も役に立つかも分からないからです。
そのためにいちばん大切なのは「使いたい」と思えること。多少不便でも、このPCなら普段から持ち歩きたいな、開いて使いたいな、という気持ちになれるのが大切です。これは価格やスペック、機能とは別の話です。
ということで、今回はChromebookにまつわる、非常に言われることの多い表現である「クリエイティブな用途には向かない」「出来ることが限られている」について考えてみました。あなたにとって役に立つ話かどうかは分かりませんが、考えるきっかけにでもなってもらえたらいいな、と思っています。