ここ最近、国内でも普及し始めてきたChromebookについて「この6年近く使ってきた私なりの、このPC、OSについての考え、捉え方」について書いてきています。
今回は一般的に考えられている、Chromebookにまつわる幾つかの「~ない」について考えてみたいと思います。
まずはお馴染みの「ウイルス対策が不要(要らない)」について、です。
Chromebook(Chrome OS)はウイルス対策が不要と言われています。細かい仕組みについてはここでは触れませんが、Google自身も、販売している各メーカーもこれを1つの特長、強みとしています。
Chrome OS ではプロセスがサンドボックス内で行なわれるため、ウイルス対策が不要です。つまり、たとえ感染したページを開いてしまっても、そのタブとシステムは完全に分離されているので、誰もシステムの他の部分をのぞくことができません。
このようなウイルス対策機能などをさらに向上させるため、Chrome OS は日々開発を続けられています。そんな安全で最新の Chrome OS へのアップデートは自動かつ無料です。
ただ、これについてはちょっとした落とし穴があるかな、と思っています。そこで今回はこの点について、私自身の経験も踏まえてお話ししてみたいと思います。結論としては、
Chromebookは今まで言われてきたようなウイルス対策は不要かもしれないけど、今まで以上にユーザー自身の意識は必要になってきた。
というところです。ちょっと分かりづらいですね。
最近「Chromebookがウイルスに感染した」という声を目にするようになった。
私は普段からTwitterでChromebook関連のツイートを眺めているのですが、学校で導入され始めたこともあってか、最近になってChromebookを使い始めた方のツイートを目にすることが多くなってきました。そうした中で、以前に比べて増えてきたものがあります。それが、
「Chromebookがウイルスに感染したんだけど」
というものです。
冒頭でも触れたように、Chromebookは基本的にウイルス対策は不要です。更に、学校で導入されている端末の場合には一括で管理していて、更に制限も色々とかけていることもあって、基本的にそうしたことは起きづらい(起きない)と思っていたのですが、実際に幾つも目にしています。
ただ、その「ウイルスに感染した」という内容を眺めてみると、1つの傾向が見えてきました。それが、
画面上に「ウイルスに感染しました」「あなたのPCが乗っ取られました」といったものや「アダルト系の画像」的なものが表示されるようになった
というものなのです。
PCにある程度知識のある方ならご存じだと思うのですが、これらは厳密には従来のウイルスには当てはまりません。むしろ、こうしたバナーに不安を感じて、表示されたバナーやサイトをクリックしてしまったり、その番号に電話をかけてしまうことで、結果としてそうしたプログラムを埋め込まれてしまったり、個人情報を相手に知らせてしまったり、お金を払ってしまったり、といった犯罪が起きています。
つまり、ウイルスに感染したのではなく、(実際は感染してないのに)ウイルスに感染したと思い込んでしまう、ということですね。
これはChromebookでも充分に起こります。何故なら、基本的な作業はChromeブラウザー上で行うからです。
そして、Chromebookだからこそ、起こりうるリスク、というのも存在します。
私のブログの広告部分がすべて「日本人男性がお好きなロシアのお姉さん」で埋まった日。
さて、ここから少し話が発展します。もう数年前の話になりますが、私自身の身にもこんなことが起きました。
細かい経緯を話すと長くなるので興味がある方は上の文章をお読み頂きたいのですが、簡単にまとめると
- Chromebookとは別のPCのChromeブラウザーで、YouTubeの動画をDL出来るサービスを利用した(当時の話です)
- そのサービスを提供しているサイトはDLする際に自動で広告を表示する仕組みになっていた。
- (恐らく)アダルト系のバナー広告が表示されたか、誤って何かをクリックしてしまった。
- その結果、私のChromeブラウザーの履歴にそのサイトか広告の情報が残ってしまった。
- アカウントで同期されている私のChromebookでも履歴が同期されて、「日本人男性がお好きなロシアのお姉さん」が大量に表示されるようになってしまった。
あまりPCに詳しくない方だと上の説明では良く分からないかもしれませんが、要は私が「アダルト系のバナー広告かサイトを知らない内にクリック、もしくは表示させてしまった」ことで、私のChromeの履歴に残ってしまった。その結果、似た傾向のポップアップ広告やアダルト系のバナー広告が同期している私のすべてのPCのChromeブラウザー上で表示されるようになってしまった。
ということです。なんだ、大したことないじゃん、と思うかもしれません。でもたったこれだけのことでも、実際に起きてみると結構焦ります。
例えばこの場合、原因はChromebookにあったのではなく、Chromebookと設定を同期していた私のWindows PCにもあったから、です。
今回は詳しくは触れませんが、Chromebookの本体は、PCというよりも、サインインしているGoogleアカウントになります。Googleアカウントさえあれば、Chromebookに限らず、Windows PCやMacBook、AndroidスマートフォンやiPhoneなどの別の端末でも同じアカウントでChromeブラウザーを開けば情報が同期されます。
それがChromebookの特長でもあり強みでもあるのですが、それが今回は裏目に出てしまった、ということです。
同期されてしまうので、いずれかのPCなりスマートフォンでそうした怪しいサイトやバナー広告をクリックしてしまうと、そうした情報が全ての(同期設定をONにしている)端末で共有されてしまうのです。
私の場合はブラウザの設定をリセットすることで、すべてのPCから「日本人男性がお好きなロシアのお姉さん」が消えましたが、
ここで例えば「あなたの端末は乗っ取られました」的なバナーが表示されていて、私があまりこうした知識がなかったら、焦ってそこに表示されているボタンを押してしまったり、電話をかけてしまったかもしれません。
漫画村から始まり、最近の巣ごもり需要で無料の漫画サイトを利用する人が増えているようですが。
さて、ここで最初の話に戻ります。先ほどの「Chromebookがウイルスに感染したんだけど」と心配されていた学生さんの内の1人は、ツイートを辿ってみてみると前述の私と似たような行動を取っていました。
そこでふと思い出したのです。最近話題になっている「無料の漫画サイト」などの無料系のサイトです。
もちろん無料といっても、きちんと作者と契約していて、広告等を表示することで作者に利益が還元されるサイトも数多く存在しますが、問題にもなっているように、海外にサーバーを置いた違法のサイトも多く存在します。漫画に限らず、こうした違法な手段で無料で色々なデータを手に入れられるサイトというのはいつの時代も無くなりません。そうしたサイトのお世話になった方も多いのではないでしょうか。
その行為の違法性はひとまず置いておいても、確かにそうした情報を色々得ようとすることで、結果としてネットやPCの知識を身につけることが出来た、という方も多いと思います。
ただ、ここで思うのです。以前であれば、PCユーザーもまだまだ限られていましたし、そうした行為を働くユーザーはある程度リスクもありながらも、自分で何とか調べようとする、もしくはそうしたことが出来る人も多かったかもしれません。
ただ、今はスマートフォンで気軽に違法なサイトで漫画を読むことも出来るようになりました。スマートフォンでも(実際にウイルスに感染したかどうかは関係なく)そうした手口に騙された犯罪が起きていますが、これがChromebookなどでも起きたらどうなるでしょうか?
スマートフォンで今まで見ていたように、気軽な気持ちで友人から教えてもらったサイトで違法なサイトにアクセスしてしまった。何も知らずに、分からずに、リスクも考えずに、クリックしてしまった。
もちろん、その場合でもChromebookであれば、他OSに比べればまだまだ被害は少ないと思います。実際に今まで考えられていたような直接的な被害を被るようなものをウイルスと呼ぶのであれば、ウイルスの危険は少ないですし、ウイルス対策は不要かもしれません。
ただ、個人のネットに対する知識は別です。特にバナー広告、詐欺メール1つとっても、最近は手口が非常に巧妙になってきています。
そして、私たちは「Chromebookはウイルス対策は不要」と思ってしまっています。
確かにウイルスの心配はないかもしれません。ただ、ウイルスと誤解して誤った行動を取ってしまうのは、私たち人間です。
これはChromebookが危険だ、という話ではなく、どのOSのどのPCやスマートフォンでも起こりうるリスクではありますが、その対策、解決方法も含めて、私たちも発信、共有していく必要があるのかもしれないな、と思っています。
あと思うのは、「ウイルス対策」って気軽に使うけど、コンピュータにとっての「ウイルス」ってどういうものを言うのか、結構人によって認識も違えば、イメージしているものもバラバラだと思うんだよね。私も正しく理解しているのか、と言われると自信はない。
— おふぃすかぶ.jp (@OfficeKabu) January 9, 2022