2022年に入ってから書き始めたこちらのテーマも気がつけば7回目になりました。ありがたいことに結構お読み頂いているようで嬉しいのですが、中には興味のない内容、求めていた内容ではなかった、と感じられた方もいるのではないでしょうか。
その点は申し訳ないな、と思っています。ただ、もう少し続きますので、もし宜しければ引き続きお付き合い頂けたら、と願っています。
私自身、今までこのブログでChromebookについての文章を6年間で800以上書いてきましたが、未だにシンプルで分かりやすい説明が出来ずにいますし、ネット上を眺めていても、まだまだChromebookについてはここまで取り上げてきたような漠然とした魅力や特長の捉え方をされていることが多いな、と感じています。また、どうしても従来のPCと同じ捉え方で考えてしまいがちです。
そりゃそうですよね、新しいものに触れた時には、自分の今まで経験してきた、知っているものを基準にして考えるのが普通です。
そんな中で、この2~3年、何かにつけて比較に挙げられることも話題に上ることも多いものの、個人的には疑問を感じているテーマがあります。それが学校教育におけるPCの導入とChromebookについての考え方です。よく見られる考え方として
- Chromebookなんて仕事で使えないんだから、社会に出たら役に立たない。
- 社会に出たときのためにWindows(やOffice)に慣れさせておくべきだ。
といったものがあります。今回はこれについて考えてみたいと思います。
結論としては、私は、
大切なのは「どのOSやPCを選ぶか、採用するか」ではなく、「それをどう学習に活かすのか。」
あくまでPCやタブレットは学習を進める上での道具の1つ。正直何を使っても良いと思っています。
確かに「社会に出たときの為に、WindowsやOfficeの使い方を身につけておく、慣れさせておく」ことは意味があるとは思いますが、それと今進められているGIGAスクール構想や学校でのPC導入による教育の目的とは分けて考える必要があるのではないか
と思っています。
はじめに:あなたは最近の学校教育についてどのくらい知っていますか?
冒頭で挙げたような考え方、分かるんです。今既に社会人の方ですと、恐らく大学生活や社会に出て、PCに初めて触れた、と言う方もまだまだ多いと思うんですね(最近はようやく高校でPCを使った、という世代が社会人になり始めているようですが)。
現代日本社会の一般的(と多くの方がイメージされる)な社会人生活において、PCといえばMicrosoft Windowsであり、世の中はWindowsが主流で、それは今後もしばらくは変わることはない。また多くの企業ではMicrosoft Officeが使われており、その意味でも使い方に今から慣れておく必要がある。実際、入社しても碌に使えない新社会人も多い。また大学でもレポート1つとってもWordすら扱えない奴も多い。
そうした思いを持たれている先輩方も多いでしょうし、もしかしたら自分自身がそれで苦労した経験をお持ちかもしれません。もしくは、今も自分自身使えないので、「学校にPCが導入されるのなら、社会に出たときのことを考えて、そうしたことを学校で教えておくべきだ」と思う方が多いのも分かる気がします。
また「学校でプログラミング教育が始まる」と聞いて、既にプログラミングに馴染んでいる、ある程度PCに知識のある方ですと、自分の基準に照らし合わせて、ある程度レベルの高いプログラミング教育が行われるのではないか、と期待している方もいると思います。
実際、ネットを眺めていても、私のようなPC歴は25年近くあったとしても、プログラミングなどほとんど触れたことがない人間にとっては充分にハードルが高い、そんなよく分からない専門用語が色々出てくるような内容を学校教育に求めているような声も目にします。そういうものを学ぶためにはChromebookでは力不足だ、と。恐らくそういう方は全国の中学校や高校で、そうしたレベルのプログラミング教育が行われることを期待されているのだと思います。
そうですね。
「プログラミング教育」の部分がどうしても注目されがちなんですが、リーフレット眺めていても、あくまで各教科の内の一つに過ぎないんですよね。あくまで端末は各教科の授業の学びを深めるためのツールであって、プログラミングやPCの知識を得るのはその内の一つに過ぎないので。
— おふぃすかぶ.jp (@OfficeKabu) January 11, 2022
ということで、ちょっと考えてみて欲しいのですが、
あなたは最近の中学校や高校の授業ってどんなことをしているかご存じですか?
もしあなたが現役の学生だったり、教育関係の仕事に就かれている方、もしくはお子さんが現在学生でしたら申し訳ありません。ただ、もしそうでなければ、学校生活、学校の授業内容って、自分が卒業した時点で知識や情報が止まってませんか?
最近はだいぶ知られるようになりましたが、例えば日本史でも、今年の大河ドラマで話題の鎌倉幕府。成立年は今では1192年以外にも様々な説が出てきていて、教科書の記載も違うようです。他の歴史でも同じですね。
ただ、多くの方にとっては、知識って卒業とともにアップデートはなかなかされなくなってしまいます。
つまり、今学校で何が行われていて、どういう授業なのか分からずに、自分の頭の中にある、自分の頃の学生生活を基準に考えてしまっている恐れがある、ということです。
なんて偉そうなことを言っている私も、教育関係の仕事に就いている訳ではありませんし、子どももいませんので、正直よく分かっていません。精々知識と言えば、コロナ禍前にChromebookがきっかけで教育関連のイベントに色々と参加させてもらった中で、当時比較的積極的に授業にPCを導入されていた学校の話を伺ったり、そうした場で先生方と色々とお話をさせてもらった程度です。
いきなり長々と書いてしまいましたが、何が言いたいか、というと、学校におけるPC導入について、私たちは冒頭で挙げたような考えを持っている訳です。
- Chromebookなんて仕事で使えないんだから、社会に出たら役に立たない。
- 社会に出たときのためにWindows(やOffice)に慣れさせておくべきだ。
けれど、実際には私たち一般の人間と、教育の現場との間には、かなりの隔たり、見えない壁が存在しているのではないか、と思っています。要は、
何のために最近学校教育へのPC導入が考えられているのか、ということを、私たち自身が最も分かっていないのではないか
ということです。それを考える上で、もう一つ例を挙げてみたいと思います。
あなたはGIGAスクール構想について調べたことがありますか?
さて。ここで伺いたいのですが、盛んに話題になっているGIGAスクール構想。結構ネット上では叩かれていますが、ちなみに文部科学省のGIGAスクール構想についてのサイトと資料に目を通されたことがありますか?
GIGAスクール構想ってどういうものか、そして何を目指しているか、ご存じですか?
恥ずかしながら、私もしっかりと熟読したことはありませんでした。ただ、もしGIGAスクール構想について多くの人が前提となる知識や考え方を共有出来ていたら、今のような議論や意見にはならないと思うんですね。少なくとも、
- Chromebookなんて仕事で使えないんだから、社会に出たら役に立たない。
- 社会に出たときのためにWindows(やOffice)に慣れさせておくべきだ。
という話は、(今回前半で触れたように、私も気持ちは分かりますが)GIGAスクール構想や学校へのPCやタブレット端末の導入においての議論のテーマとは少しズレていることが分かると思うんです。
少なくとも、この部分の前提の共有が出来ないまま、それぞれが自分の経験で見えない壁の外部から言いたい放題現場に対して文句を言っている。そんな気がしています。
そして、大抵はそうした外野の無責任な声が、最も現場を混乱させ、疲弊させているのではないか。
この3年ほど、私はそれが気になっています。
ちなみに、私の考えについてはこのブログでもTwitterでも度々発信していますが、
もちろん私自身のこうした考え方が正解だ、と言うわけではありませんし、私の考えもそうした外野の声の1つに過ぎません。ただ、そうした意識は常に持っておきたいな、と思うのです。
今回のまとめ:何を言うのも自由なんだけど、言うからにはせめて前提となる情報だけは知っておきたいものですね。
今回の話はいつも以上に漠然とした内容になってしまったかもしれません。また、現役の、現場の先生方が読まれたら、「違う、そうじゃない」と思われることもあると思います。現場の先生方が一番大変だと思います。そうした声は(もちろん発信出来ないことも多いとは思いますが)発信していって欲しいな、と思っていますし、反対に私たちのような外野の人間も、よりそうした今の教育現場やそこで行われている授業についても興味を持っていきたいものだな、と思っています。
繰り返しますが、私は、
大切なのは「どのOSやPCを選ぶか、採用するか」ではなく、「それをどう学習に活かすのか。」
あくまでPCやタブレットは学習を進める上での道具の1つ。正直何を使っても良いと思っています。
確かに「社会に出たときの為に、WindowsやOfficeの使い方を身につけておく、慣れさせておく」ことは意味があるとは思いますが、それと今進められているGIGAスクール構想や学校でのPC導入による教育の目的とは分けて考える必要があるのではないか
と思っています。
もちろん、意見は色々あって良いと思いますし、それを言うのも自由です。
また、皆さんそれぞれに自分の生活があるわけで、自分の専門分野以外のことにまで興味を持つ暇はない、と思われるかもしれませんが、もしそうであれば、せめて外野から心ない声や無責任な声を上げて、却って混乱させたり疲弊させたりすることのないようにしたいものですね。
もちろん学校によって「うちの授業で最も使いやすい、活用しやすいのがWindows PCだった」というなら、それは大切だし必要なことだと思うんです。
でも何か2年経っても、未だにその逆のことが言われているような気がして、今回改めて文章にしました。
— おふぃすかぶ.jp (@OfficeKabu) January 11, 2022
ということで、今年の私ですが、余計なお世話ですが、部外者ではあるものの、1人のChromebookユーザーであり、こうしたブログやYouTube等で情報を発信している者として、教育現場の先生方と、見えない壁の外側にいる私たちを繋ぐことが出来るようなことが出来たら、と考えています。