引き続き、最近国内でも普及し始めてきたChromebookについて「この6年近く使ってきた私なりの、このPC、OSについての考え、捉え方」について書いていきたいと思います。
前回はなかなか理解されにくい、ハイスペック、高価格帯のモデルについて考えてみましたが、今回は今、恐らく最も売れていると思われる価格帯のモデルについて考えてみようと思います。
それが2万円前後のモデルです。
これらのモデルはAmazonやメーカー公式のセールなどで出てくることが多いのですが、その価格のインパクトも大きく、格安情報サイトやオススメPCサイトなどでも薦められることが多くなっています。確かに2万円前後という価格は魅力的ですし「この価格なら失敗しても良いや」と思われる方も多いのではないでしょうか。実際に販売台数的にもランキングで常に上位に来ているモデルもあります。
今回の結論から先に書いておくと、
- これらのモデルのおかげで心理的なハードルが低くなって「お試し」で買ってみよう、と思ってくれる人が増えるのは、ユーザーとしては嬉しい。
- ただ、ハイスペック、高価格帯のモデル以上にストライクゾーンがかなり狭いので、普通のChromebook以上に当たり外れが大きい。
と考えています。以下、その理由について書いていきたいと思います。
「Chromebookは低価格低スペックでもサクサク動くのが魅力」が招く誤解。
ここまでの数回の文章を読まれてきた方は繰り返し目にしているので「またか」と思われるかもしれませんが、現在一般的にPCに詳しい方も詳しくない方も、Chromebookの特長として挙げることが多いのが、
- Chromebookは低価格低スペックでもサクサク動くのが魅力なのに、高スペックや高価格になったら価値がないんじゃない?
- 高スペック、高価格のモデルが買える予算があるなら、普通にWindows PCやMacBook買うよね?
というものです。Chromebookは安くてもサクサク(起動も爆速)動くのが魅力、というのが一般的な印象です。これを否定するつもりはありません。ただ、この言葉がかなり一人歩きしてしまっているのではないか、と感じています。
Chromebookがどういう用途に向いた、特化されたPCか、という話は2回目で話していますので、興味のある方はそちらをお読み下さい。
また、次回以降でも触れていきたいと思っていますので、今回は細かい説明は省きます。
ただ、この言葉、すごく漠然としていて曖昧です。「Chromebookは」と主語がとても大きい。前回触れた高価格ハイスペックのモデルもあれば、今回のテーマである2万円前後のモデルもある訳です。「安くても」とひと言で言っても、人によってどの辺りの価格帯が安いのか、もバラバラです。またサクサク動く、も人によって、用途によって、としか言いようがありません。ただ、Chromebookを触れたことのある方に比較的多いかな、と感じる感想としては、
「同じ価格帯の他OSのPCと比べると、用途によっては快適に動く」
というものです。この「同じ価格帯の」「用途によっては」という部分がポイントなんですね。つまり、今回の2万円前後のモデルに関しては、
同じ2万円のWindows PCやMacBook(あれば)と比べると、用途によっては快適に動く
と感じる方が多い、ということです。
ただ、眺めていると何となく「Chromebookなら(値段は関係なく)低スペックでもサクサク動く」から2万円のモデルも快適に動くだろう、という印象を持たれている方も多いのではないか、と感じます。
ただ、そうしたこともあり、冒頭で結論として「高価格帯のモデル以上にストライクゾーンがかなり狭い」と書きました。高価格帯のモデルはお財布が許すのであれば、少なくともまだ快適、サクサク、という意味では2万円のモデルに比べれば影響を受けにくいと思うからです。
そして、もう一つ、ユーザーとして頭に入れておいてほしいことがあります。
何故2万円なのか。それは古いモデルだから。そして安い理由があるから。
もちろん例外もありますが、基本的にはこの視点を頭に入れておいて欲しいな、と思うのです。
先ほどの「Chromebookは低価格低スペックでもサクサク動くのが魅力」という言葉から、Chromebookというのは安いものだ、と思われている方もいると思うのですが、とはいえ基本的にはノートPCです。パソコンです。安くするのにも限界があります。
ちなみに現時点で一般的なChromebookの平均価格帯は3.5~5万円くらいです。それでも一昔前に比べて下がってきました。
一足早く一般に普及していた北米市場では、数年前に今の日本の状況が生まれていた
ということです。普及した時期が早かった分、市場に出回ったモデルも多く、その分型落ちのモデルが多く出回って、それらが100ドルや200ドルで販売されていた、ということです。
ネットで出来ることって数年前も今も大して変わらないように見えるかもしれませんが、実際には違います。出来ることも増えてきましたし、サイト1つ表示させてそこで何かを行うのにも、毎年少しずつ必要なパワーが上がってきています。
つまり、現時点での「Chromebookで想定している用途をとりあえず無難に行える」のは、平均価格帯は3.5~5万円くらいのモデル、ということです。
つまり、2万円前後ということは、基本的には型落ちのモデル、古いモデル、ということですね。
さて、もしかしたらあなたは「別に型落ちだろうが古かろうが、安ければ良いじゃん」「割り切って使えば良いんだよ」と思うかもしれません。ただ、ここで忘れて欲しくない点があります。それが、
Chromebookには各モデル毎に定められた、OSのアップデート(サポート)期限がある
ということです。自動更新ポリシーというものです。基本的には「そのモデルのハードウェアが開発されてから8年(2019年以前のモデルは6年)」となっています。ただ、これが厄介なんです。
今、市場で2万円前後で販売されているモデルの中には、昨年(2021年)発売されたばかりのモデルがあります。これだと普通は2029年まであるように思われがちですが、この期限は発売日から、ではなく、中身のハードウェアが開発されてから、なんです。つまり、発売されたのは昨年でも、中に入っている機械が4年くらい前、というモデルもあるんです。
さて、4年前、となると2018年ですね。となると先ほどの基準だと8年ではなく6年になります。更にこの期限は発売日からではなく、開発されてから、になるので、2018年から6年で2024年。つまり、この文章を作成時点であと2年しかない、ということになります。2年経ったら、セキュリティのアップデートも機能の追加もありません。OS自体が自動でアップデートされなくなります(まったく使えなくなる、という訳ではありませんが)。
この自動更新ポリシーについては最近はだいぶ国内でも知られるようになってきたので、ご存じかもしれません。ただ、ここでも意見が分かれるんです。なので難しい。つまり、
「元々ノートPCなんて5年も8年も使わない(使えない)んだから問題ない」
と言う人と、
「8年後には使えなくなるなんて、使いものにならない。Windowsならいつまでも使えるのに。」
と言う人です。
これが難しいんですね。気持ち的なことを考えれば、購入時点で寿命が決まっている、というのはあまり気持ちがよい話ではありません。ただ、バッテリーや液晶の寿命を考えても、私の感覚では果たして5年、8年と同じモデルを使い続けるかどうかは難しいところです。なので、
「とりあえずお試しで買ってみて、気に入ったら新しいモデルに買い換えれば良いんだよ」
と考えるユーザーも多いと思います。ただ、私としては、この部分が難しいかな、と考えているんです。不安に感じている、と言っても良いかな。何故なら、
2万円前後のChromebookを買おうと思っている人の内、果たしてどれくらいの人が、頻繁にPCを買い換えているのか
と思うからです。ちなみに私の父は10年以上前のWindows 7が入った一体型のデスクトップPCを今も使っています。PCが趣味だったり、ある程度知識のある人でもなければ、そう頻繁にPCって買い換えないと思うのです。不便を感じても「そんなもの」だと思って壊れるまで使ってしまう。何故なら動いているから。使えるから。
ネットを眺めていても、8年前、10年前に買った古いWindows PCが壊れたので、そろそろ新しいPCが欲しくなった、ということでChromebookを検討、購入している人もそこそこ見かけます。そういう方が意外とChromebookについてあまり分からないまま、これらの2万円前後のモデルを買ってしまっているのを目にすることも多いので、どうしても心配になってしまうのです。
「すべて分かった上で、割り切って使える。2~3年で買い換える前提。」
これはある程度PCに知識と割り切りが出来る方でないと難しいと思っています。その意味でも「高価格帯のモデル以上にストライクゾーンがかなり狭い」と思っています。
今回の補足とまとめ:はじめてのChromebookとしては当たり外れが大きいことは心に留めておきましょう。
さて、今回のまとめです。
といっても、結論は最初に書いた通りです。
- これらのモデルのおかげで心理的なハードルが低くなって「お試し」で買ってみよう、と思ってくれる人が増えるのは、ユーザーとしては嬉しい。
- ただ、ハイスペック、高価格帯のモデル以上にストライクゾーンがかなり狭いので、普通のChromebook以上に当たり外れが大きい。
2番目については文中で書いてきましたが、これがネット上でも色々な方が積極的にはオススメしていない理由だと思っています。ただ、ここで悩ましい部分が出てくるんです。今回これだけの理由を挙げたのですが、この部分が曖昧になってしまっているため、非常に混乱を生んでいると感じているからです。それについて最後に補足しておきたいと思います。
それが、前半でも触れた、巷に溢れるChromebookに対しての、こういったイメージです。
- Chromebookは低価格低スペックでもサクサク動くのが魅力なのに、高スペックや高価格になったら価値がないんじゃない?
- 高スペック、高価格のモデルが買える予算があるなら、普通にWindows PCやMacBook買うよね?
今までにも何度も書いてきましたが、私はこれを間違っているとは思いませんし、多くの人にとっては失敗が少ないのではないか、とは思っています。ただ、今回触れたように、この「低価格」「低スペック」の定義がとても曖昧です。そのため、PCに詳しい人の中でもChromebookについて話すときに、こうした印象を前提にして
「○○なのが魅力なんだから、精々1万円~2万円でしょ」
「最近のChromebookは高価格化していて迷走している。安いことが良さなのに。」
といった曖昧な表現をしてしまうんです。私としては、この曖昧な「安さ」のイメージが一人歩きしてしまうのが心配です。つまり、
「安さ」を特長、良さとして挙げて薦める方ほど、その安さの定義や範囲が曖昧になりがち。
ということです。もちろん安さは魅力ですが、安くなればなる程、ストライクゾーンも狭くなっていきます。幾ら安くするにしても程度があります。でもそこはあまり触れられることがありません。
ようやく少しずつ普及し始めてきた、とはいえ、Chromebookはまだまだマイナーな存在です。だからこそ、より多くの人に、どんなきっかけであれ、実際に手に取ってもらって、買ってもらって、良さを知って欲しい、というのがユーザーとしての私の願いです。だから、2万円前後のモデルに今回挙げたような注意点があったとしても、それでも売れている、というのは嬉しいです。
ただ、「Chromebookは安さが魅力」だから、といって、これらの2万円前後のモデルこそがChromebookだ、と思って欲しくないな、と思っています。何故なら、これらのモデルはChromebookの中で考えても「理由があるから安い」からです。だから、これらのモデルを買う時には、このモデルの印象イコールChromebook、と考えないで欲しいな、と思っています。
もちろんこれらのモデルでChromebookに好印象を持って貰えたら嬉しいですが、使いにくいと感じても、それがChrome OS自体の使いにくさからくるものか、たまたま買ったこの2万円前後のChromebookだったからなのか、は分けて考えてもらえたらいいな、と思います。