ここ最近、単に新しい、というだけでなく、今までのChromebookとは少し違ったモデルが続々と発表されています。それらは薄かったり、美しいアルミ筐体だったり、高精細ディスプレイ(高解像度)搭載であったり、Androidアプリ対応、タッチパネル対応、など、今までの「手軽」「手頃」なChromebookとは少し方向性が違います。
それらは確かに魅力的です。私も毎日新しい情報を楽しみにしていますし、幾つかのモデルは実際に惹かれてもいます。また、実際にAndroidアプリには未対応ですが、高価格帯、ハイスペックのChromebook(HP Chromebook 13 G1)を普段使い、メインとして愛用しています。
とはいえ、Chromebookの魅力が「価格」にあることも確かです。気軽に買えて(試せて)、気軽に使える、あくまでサブとしてのネット閲覧中心のラップトップPCとしてのChromebook。それは大きな魅力だと思っています。
先日、Chromebookを精力的に展開している2つのメーカー、ASUSとAcerの現行モデルを幾つか取り上げました。それらは決して目立った、魅力的な新機能があるわけではありませんが、今までのChromebookの魅力を活かした良モデルだと思っています。
私自身、この内の一つのモデルが大変気になっていまして、Twitter等でもここ最近呟いてきました。それが、ASUS C202SAです。
今回、このモデルを米Amazonから注文、入手しましたので、使い勝手などをご報告したいと思います。結論を簡単に書けば、
2016年時点でのChromebookに必要なスペックを過不足なく綺麗にまとめた、スタンダードな良モデル
だと思います。
ASUS C202SA-YS02 4GB Dark Blue
以前も取り上げましたが、まずはスペックから。
ASUS C202SA | |
CPU | Intel® Celeron® Dual-Core N3060 (第4世代 Atom – Braswell) |
RAM | 4 GB LPDDR3 |
Display | 11.6″ 16:9 HD (1366×768) Anti-Glare |
Storage | 16GB eMMC |
Dimensions | 293 x 199 x 22.6 mm (WxDxH) |
Weight | 1.20 kg |
Battery | 10時間 |
Price(Amazon) | $199.00 |
スペックを見る限りでは特筆するような部分は特に見当たりません。Priceが$200を切っている、ということで、その点に魅力を感じる方はいるとは思います。(先日発売されたAcerの15″が$199ということで少し話題になりました。)
ただ、ここで敢えて触れたいのは、特筆するような部分がないということは、表現を変えれば惜しい点、気になる弱点も見つからないということでもあります。
例えばCPU。IntelのCeleron N3060は第4世代Atom、Braswellですが、発売が2016年ということもあり、2015年4月リリースのCステッピングのN3050ではなく、2016年1月リリースのDステッピング、N3060を載せてきています。
Celeron N3060/Celeron N3710など新ステッピングのBraswellが登場。Celeron N3050との違いは? – こまめブログ
このCPU自体、特に高性能、という訳ではありませんが、Chromebookでよく用いられるベンチマーク、Octane 2.0でも(私のChrome環境で)9201という普及価格帯の現行モデルでは高めの数値を出しています。(普及価格帯の現行モデルは平均8000前後)
もちろんOctane 2.0のスコアが全てではありません。ただ、ここで伝えたいのは、例えば現在Andoroidアプリに対応しているASUS Chromebook Flip(Rockchip RK3288C)が7400、Acer Chromebook R11(Celeron N3150)が8100ということを考えれば、決して妥協している訳でも、手を抜いているわけでもない、ということです。
ASUSの同価格帯のモデルは($100上がるFlipも)Rockchip社のRK3288Cが多いのですが、珍しくIntelのCeleron N3060を載せてきたのは面白いな、と思います。
また、私は最近、Chromebookの海外でのベースモデルの目安は$180と書きました。
このC202SAもほぼそれに近い価格(実売価格ですが$199)でStorageは16GBながらRAMはしっかり4GBです。
バッテリーの持ちも約10時間。こう考えると、現時点で考えられる基本的な条件はほぼ備えていると思います。
IPS液晶でない点、解像度が1366×768である点は惜しいともいえますが、11.6″と考えれば1366×768辺りが見やすさを考えてもバランスが良いですし、またAnti-Glare液晶ということで画面への映り込みも抑えられているため、鮮やかさはないものの目に優しく、見やすいな、と感じます。
11.6″ながら重量が約1.2kgと若干重いのですが、これもコスト削減の結果ではなく、むしろ理由のある重さ。
本体をラバーで覆うことで、3.9feet(約120cm)の高さ(角から落下した場合は2.6feet – 約80cm)から落としても無事な耐衝撃性、また2.23ounces(約70ml)の水をキーボードの上にこぼした場合にも問題なく動き続ける耐水性を備えています。
$200を切る価格帯でありながら、スペックにも手を抜かず、更に実用上の安心感を与える付加価値(耐衝撃性、耐水性)を備えている、というのは素晴らしいことだな、と思っています。
細かい部分を見ていきます。
開封の儀のようなことは行いませんが、中身に関しては他のモデルとほぼ同じです。
ケーブル用の結束バンド等がさり気なく付いているのはちょっと嬉しいかな、というところ。
世界で積極的に展開させているASUSだけあって、このモデルも日本の技適認証は通っています。日本国内でも問題なく使うことが出来ます。
右側面には写真右から、ケンジントンロック、電源LED、バッテリー(充電時)のLED、ACアダプター端子、USB3.0端子があります。
左側面は、左からHDMI 1.4端子、USB 3.0、イヤホンジャック、SDカードスロットが。また、先ほどの右側面の写真には写っていませんでしたが、この写真右側の窪み(左右両側面手前)がスピーカーです。
特徴的なものが、この底面の台座部分です。持った時に手が滑って落としたりすることのないよう、握りやすい、手を引っ掛けやすい持ち手となっているのですが、単にそれだけではなく、置いた時にこの部分の厚みで若干傾斜が生まれ、キータッチがしやすくなります。
また、滑り止めや、キー入力時の衝撃を和らげる(キータッチの向上)にも効果があるかな、と感じます。
そして評価が高いのが、このキーボード。本体自体にそれなりに厚みがあるため、キーボードの配置にも少し余裕ができることもあり、深めのキーストロークで個人的には好みです。最近は薄い本体のモデルも多いのですが、その分何となく頼りない印象のものも少なくありません。このモデルは久しぶりに多少手荒に扱ってもびくともしない安心感(実際手荒に扱う気はありませんが)があります。
もともと教育機関で学生向けを想定して作られたようですが、教育機関で安心して使える、ということは、一般的な使い方であっても安心して使えるだけの実力を備えている、ということでもあると思います。
それを感じたことの一つが、このACアダプタ端子部分。かなりしっかりと挿さります。ちょっと引っ張られたくらいでは抜けたり折れたりすることのなさそうなくらいです。何度も抜き差しする部分ですので、大切なはずなのですが、この部分が弱く心もとないモデルも多いので、この点も高評価です。
また、左上ESCキー横にWi-Fi用のLEDが付いていて、Wi-Fi接続中は点灯しています。だからどうした、と言われればそれまでですが、地味に細かいところに凝っていて個人的には好みです。
高級感はないけれど、かと言って悪い意味でのチープさは全くありません。
キータッチ、トラックパッドともに反応も良く、また11.6″モデルと考えれば、それほど大量のタブを開いて様々な処理を行わせる訳でもありませんので、現行モデルとしては十分なCPUとRAMを載せています。
ただ、$200以下、と考えると確かに本体仕上げに高級感はありません。
ただ、かといって悪い意味でのチープさもないな、と思うのです。
先日も書きましたが、カジュアルリュックに無造作に放り込んで、気軽にどこにでも連れていけるような気安さ、親しみやすさがあると思っています。
これ、結構大切なことだと思っていて、確かに本体の重量は1.2kgあるのですが、その分レザースリーブだ、ケースだ、といったことを考えなくて良いのです。
もちろんこのモデルより軽いものは幾らでもありますが、せっかく本体が軽くても、傷ついたり衝撃が心配でスリーブに入れたら、結果として1.2kgを超えてしまう場合もあります。本体重量だけでなく、用途を考えた時に自分がどういう状況でChromebookを使うか、ということをイメージすることが大切かな、と改めて思いました。
実際、わざわざ手荒に雑に扱う気はなくても、普段小キズやちょっとした衝撃を過度に心配する必要がない、というのは、かなり楽です。この辺り、以前も触れましたがChromeOS自体の「楽さ」との相性も良いのかな、と思っています。
どこでも安心して気軽に使える気さくな相棒。そんな感じでしょうか。
一点だけ注意。現時点では初期設定後、ゲストモードでアップデートが必要です。
この文章で果たしてどれだけの方がこのモデルに興味を持ち、欲しいと思われるかは分かりませんが、もし購入された場合には一点注意が必要です。それが、ChromeOSのバージョンです。
私の手元に届いた時点で、このC202SAのOSのバージョンは51.0.2704.106でした。(2016.10.27時点でのC202SAの最新バージョンは54.0.2840.79)
この状態で、いつものように自分のアカウントでログインして設定すると、場合によって強制終了、再起動を繰り返す恐れがあります。おそらく普段自分が使っている他の機種でのChromeの設定もしくはアプリの何らかが51.0.2704.106より後のバージョンに最適化されていて、それをこのバージョンのChromebookで読み込んだことで何らかの不具合が起きているのかな、と思います。
Twitterで最近Chromebookを買われた方でも、このモデルに限らず、同様に到着時のOSバージョンのままログインしたら再起動ループを繰り返して焦った、という方が見つかりました。
対策としては、ひとまずゲストモードでログインして、OSを最新バージョンに更新させてから、自分のアカウントでログインするのが一番簡単かな、と思います。
「Chromebookらしさ」を手軽に楽しめる、今年オススメのモデルです。
今年はAcer R11、HP 13 G1、そしてこのASUS C202SAと3モデルを新たに使いました。性能だけ見れば圧倒的にHP 13 G1ですし、私の中でこれからも変わらずメインになると思っています。
それに比べれば(比べてしまっているだけに)このASUS C202SAは、体感速度的にはAcer R11よりもは快適ではあるものの、HP 13 G1に慣れてしまうと、細かい動作で多少ワンテンポくらい待たされる感覚があります。また、タブを複数開いていても、改めて開くと読み直していることもよくあります。RAMも4GBあるのでそこまでモタツキはないのですが、一度HP 13 G1に慣れてしまうとそう感じてしまうのが困ったものです。
ただ、だからといって動作が重いわけではありません。あ、Chromebookって今までこんな感じだったな、という懐かしさも。起動も早いですし、余計なアプリやバックグラウンドプロセスがない分、余計なことを考えなくて良い気持ちよさもある。むしろそれを考えるとやっぱり単に安いだけじゃない魅力があるな、と改めて思います。
私はすべての人にとって、Chromebookがベストだなんて思っていません。そして、どちらか一方、というものでもなく、必ずしも現在の自分の環境を置き換えなければならないものでもない、と思っています。
今すでにWindowsやMacを使っている方でも、Chromeを使われている方は多いと思います。またGmailを使っていれば、もしくはAndroidスマホを使っていれば、Googleのアカウントは既に持っていると思います。
であれば、例えば気軽なネット散策だけ、もしくはメールの送受信だけちょっと試しにChromebook「も」使ってみる。別にChromebookを使ったから、といってこれから今の環境でネット散策やメール送受信をしてはいけない訳ではないのですから。
そうして使ってみると、意外と「楽だな」とか「こんな用途にも使えるな」「意外と自分の用途だったらChromebookのほうが相性合うかもな」という部分が出てくると思います。そんな気付きがあるだけでも大きな収穫だと思っています。
そんな時に、確かにここ数週間で続々リーク情報が出ている噂(話題)の新型Chromebookである必要はないと思うのです。価格も$500や$800と結構高めですし、相性もあります。ある程度ChromeOSが自分に馴染んでから、欲が出てからでも遅くはないと思います(実際まだ発表すらされていませんし)。
それよりも、ある程度定まってきた、落ち着いて安定してきた、従来のChromebookの形を試してみる。そんな時に、スペックや使い勝手を考えると、このASUSのC202SAというモデルは非常に魅力的です。
実際に私は妻の海外での使用を考えて(何度も触れていますが、医療支援でイラクやチェルノブイリを時々訪れる妻のメインPCは以前からChromebookです)このモデルを追加で選びましたが、この気軽さは私の普段使いにも組み込まれそうです。
そうした点で、もし2016年の現時点で誰かにChromebookを薦めるのであれば、価格面も含めて安心して候補に挙げられるモデルの一つだな、と思っています。
この文章もC202SAで書いています。
米Amazonは日本のAmazonとは別途アカウント作成が必要ですが、このモデルに関しては追加料金を払えばAmazonGlobal Priority Shippingが可能で、この場合数日で届きます。実際に私は月曜日に注文して水曜日の夕方に届きました。合計で$240ほどになってしまうものの、個人的には欲しいと思って数日で届くのは大きいかな、と思います。
日本のAmazonからでも並行輸入品を購入することが出来ますが、価格が倍になります。米AmazonでもAmazonから発送ですので何か初期不良があった際にもAmazon自身が対応してくれます。返送等の手間はあっても、送料も含めて返ってきますし、交換の場合も交換品が同様に数日で届きます。
「並行輸入品」ということは別に日本語キーボードの日本モデルなわけではなく、全く同じものを業者が一旦輸入しただけに過ぎません。個人的にはこのモデルに関しては米Amazonからがオススメです。
海外でもASUS C202SAのレビューは意外と少ないので、最後に挙げておきます。
海外でもこのC202SAは動画レビューがほとんどないので、いつもご紹介しているLonさんのレビュー動画です。
サイトでのレビューはそこそこあるのですが。これらの数少ない動画と写真を眺めながらここ最近悩んでおりました。
Asus Chromebook C202 – Full Review and Benchmarks
Asus Chromebook C202SA-YS02 Review & Rating | PCMag.com
ASUS Chromebook C202SA-YS02 Review | PC Verge
My review of the ASUS Chromebook C202SA : chromeos
追記:2016年11月20日 22:30 更新
1ヶ月弱が経っての感想を改めて文章にしてみました。