年末になり、靴のお手入れに関しての質問やメッセージを多く頂くようになりました。男女問わず。どうしても私自身が男のため、情報が男性の革靴に偏ってしまうこともあり、女性にとって果たして参考になるのか少し心配ではありました。(お手入れの基本は男女共通です。)
それらについて個別に今お返事をしているのですが、この時期靴のお手入れ方法だけでなく、何を買えばよいのか、という点もやはり気になる方もいると思います。実際問題として、このブログだけでも既に靴関連の話で200近くありますので、どこに必要な情報があったか、わかりにくくなっていると思います。それらを定期的にまとめておく必要があるな、と感じました。
ちょっと量があまりにありすぎるので、どの程度まとめきれるか既に不安でもありますが、少しずつまとめていきたいと思います。
新しいことを伝える、というよりも、この3年間のお手入れ関連の記事を振り返る索引として。
といっても、方法に関してはここ最近も度々書いてきているので、今更新しい情報も何もありません。どちらかと言えば今回はそれらの情報を整理する目的も含まれています。そこでせっかくですので、これから何回かに分けて改めて革靴のお手入れについて書いてみたいな、と思います。
ひとまず今回は、
とりあえずの基本として、まずは何を揃えるかというモノの視点から考えてみる。
ということで、基本的な靴のお手入れ用品について書いてみたいと思います。
まずは基本の2アイテム。ブラシとグローブ(布)
ブラシとグローブ(布)です。(布)と書いたのは、布で全く問題はないのですが、毛羽立って靴に付着したり、意外と使い勝手が悪いこともあるので、いっそ専用の磨き用のグローブを持っていたほうが何かと楽だからです。
この楽というのが非常に大切で、靴のお手入れを継続させる上でも一番のハードルは「何となくお手入れ用品一式取り出すのが面倒」になって、「またでいいや」と放置してしまうことです。
既に手元にある方はそちらを使いましょう。私も既に持っているので今回は敢えて買いませんが、黒靴茶靴とあるので、せっかくの年末、少し奮発してグローブを黒と茶で分けても良いかな、と思っています。
ブラシは、基本的には1つで問題ありません。あまり小さいものではなく、ある程度大きめのモノを選んだほうが、ブラッシング自体が楽です。
ブラシとしては、私が前職を辞める際に、先輩から頂き、今も大切に使っているモゥブレイ HIRANOブラシが生産終了ということで、気がついたら取り扱い店舗が急減しています。
なかなか使い勝手の良いブラシだったので残念ですが、既に後継モデルとして「SANOHATAブラシ」が発売されているようですので、この年末、ちょっとボーナスも入って懐も潤い気味で奮発して、という方は選んでおく価値はあるかな、と思います。5,000円前後ですが、一回買えば当分は買い換える必要もありませんので。
ブラシについては挙げていくとそれだけで今回の文章が終わってしまいますし、当ブログ内のブラシ関連の記事に溢れかえっていますので、今回は先に進みたいと思います。
クリームの前に、まずは意識して欲しい「全体の汚れ」「靴ひも」「コバ周り」。
年末のこの時期だからこそ、靴ひもを交換してあげてください。これだけで見栄えが大きく変わります。
何となく靴がボロボロだなぁ、と思った時、捨てるかどうか判断に迷った時、試してみて欲しいのは、クリームよりもクリーナーよりもまずは、
「全体の汚れ」と「靴ひも」と「コバ周り」
です。汚れは何もクリーナーを使う必要はありません。濡らしたタオルや布を固く絞って、全体を拭いてあげるだけでも構いません。ガラス革であればこれで十分なくらいです。もし乾燥が気になるようであればその後保湿も考えても良いですが、基本的にはそこまでは不要。ただ、この項の後で少し触れたいと思います。
「靴ひも」は盲点ですが、最も安く、けれど見た目が一気に蘇ります。更に、紐を変えることでフィット感が蘇るので、結果として靴自体への負担も減ります。まずは靴ひも。
続いてコバ周り。コバ、といっても分かりにくいかもしれませんが、特につま先周りの少し出っ張ったバンパーのような役割をしている部分を思い浮かべてください。靴自体の傷よりも、普段歩く中で、またどこかにぶつかるなかで、このコバが削れて色が落ちてしまっています。この部分は補色が可能です。
基本は靴の色に合わせて。黒靴なら黒、茶靴なら濃茶を選びましょう。合成底用と革底用があるのは、油性と水性の違いがあるからです。これも特にメーカーは気にする必要はありません。
汚れを拭い、ブラシを全体にかけ、グローブで念入りに磨く。その上で靴ひもを替え、削れてしまったコバ周りをコバインクで補色する。
これで年末年始、普段のお手入れ+α程度を考えられているのであれば十分です。
それでもせっかくなのでクリームを使いたいあなたへ。
クリームといえば革に栄養を与える、と考えられがちです。もちろん全くないとは言いませんが、基本的に普段普通に使っている分にはクリームの主目的は栄養補給というよりも、むしろ何となく淡くなってしまった色合いを艶も出すことで補う意味合いのほうが大きくなります。
私がこの年末、クリームを買い足すのであれば、まずはデリケートクリームを一瓶買っておきます。
デリケートクリームは塗りすぎてもそれほど失敗がないので、つい多用してしまいがちですが、これも薄く使う程度で十分です
せっかくなのでこの年末、すべての靴に一回薄く塗った上で、いつも以上に念入りにブラシとグローブによる磨きを行おうかな、と思います。
そうした用途では上記のプレステージである必要はありません。普通のデリケートクリームでも十分だと思います。その上で、先ほど少し触れた、ぼやけてしまった色合いを補う(色艶で)という目的で、通常の靴クリームを使っても良いかな、と思います。
値段は若干高めながら、私が買うならこの2つのどちらか。ENGLISH GUILDのほうが若干光沢重視。
クリームナチュラーレは保革重視です。どちらも良いクリームです。
そこまでこだわりがなければこの辺りが定番です。個人的な感覚としては、コロンブス(ブートブラック含む)は光沢を如何に出して美しくするか、という点を重視している印象です。艶が綺麗に出るな、と思います。モゥブレイと方向性が多少違うな、と思っているのですが、そこまで深く考える必要はありません。瓶のデザインなど、使いたくなる好みのものを選んで問題ありません。
黒靴はブラシと乾拭きだけでは少し色がぼやけてしまって、せっかくならもう少し引き締まった色合いが欲しい、という方もいるでしょう。私はほとんど使わないのですが、そうした時に靴クリームは非常に便利です。色艶が出るとやる気と愛着が全く違いが出ますから。
ただ、削れてしまった靴表面に幾ら靴クリームを塗っても補色にはなりませんので、その場合には全体的に靴クリームで艶を出して、反射とツヤで傷を目立たなくさせるのが一番です。何故なら、周りの人は、あなたの靴を手にとって判断するのではなく、靴を含めた全体の服装の中で、あくまで靴も目に入るだけに過ぎないからです。
その時に汚らしく映るか、この人綺麗だな、と思ってもらえるかは、実は単純な「汚れ」「紐」「コバ周り」といった、一見忘れられがちだけれど、周りからはまず眼に飛び込んでくる部分だったりします。
傷があることがダメなのではなく、傷があっても靴自体が(ホコリなどで)汚れておらず、「あ、ちゃんと気にかけているんだな」と分かる靴は素敵です。靴が素敵かどうかは、高いか安いか、傷があるかないか、ではなく、ちゃんと気に留めているかどうかです。それは如実に現れます。
今回は以上です。これだけでも十分すぎるくらいです。
えっ?あれは要らないの?スムースレザーはそれで良いかもしれないけれど、スエードやブーツのお手入れは?
いろいろと戸惑った方もいるかと思います。ただ、それらを一気に一度に書いてしまうと、おそらく眺めた途端に嫌気がさしてしまうと思うのです。「えっ、なんか長いけど、これだけ全部しなければいけないの?」「結局いろいろ買わなきゃいけないんでしょ?」
選択肢が増えるということは、ありがたいようでいて、結果として混乱させてしまう結果を生んでしまうと思っています。
基本的に私が伝えたい根っこの部分は「ブラシと乾拭きで十分だよ」ということです。もちろん個別の状況によってはそれ以上に必要だったり、せっかくなら+αで試してみて欲しいこともあります。ただ、それらはこの根っこの部分が十分に出来た上で、と思っています。
ということで、単なるお手入れ用品の羅列によるカタログ的なモノにならないように、けれど後で振り返りたい時に「ひとまずこの記事に戻ってくればそこからたどり着ける」というものは必要だな、と感じています。
それをこの年末年始で作っていけたらいいな、と考えています。