明日はイヴです。家族や恋人に、また友人に、贈り物をと考えている方もいるでしょう。クリスマスに贈りものの是非はひとまず置いておいて、何を贈ろうか迷っている方も多いはず。今日は直前の祝日ですし、恐らく街はそうした人が結構いるんじゃないかなぁ、と思います。
私が靴屋だった頃、流石に靴を贈りもの、という人はご一緒に来られる場合を除いて、それ程いなかったのですが、靴のケア用品を買って行かれる方はそこそこいました。
簡単で、決して困るモノではなく、それなりに見映えも悪くない。良いアイデアだと思うんです。実際靴屋に限らず、ケア用品コーナーはここぞとばかりにそうした展開をしていると思います。
ただ、そんな中で、ちょっとだけ気に留めておいて欲しい事。
靴のお手入れセット、と称したセットは止めましょう。
なんか、全国の靴屋さんを敵にまわすようで申し訳ないのですが、その理由について書いてみたいと思います。
あなたが豪華一式セットを貰って、靴磨きしますか?
2つの立場から考えてみます。一つは元々「靴磨きが好きな人」、もう一つは「靴磨きなんてしない人」
大抵一つのメーカーの商品が組み合わさった豪華セットか、
こんなお試しセットのどちらかです。
あ、MOWBRAYに恨みも何もないです。良い商品を展開されていると思います。個別には好きです。愛用しているアイテムもあります。単に今シューケアキットで検索したら真っ先に目に飛び込んできただけです。
まずは「靴磨きが好きな人」
さて。まずは「靴磨きが好きな人」。
豪華なセット、いいですねぇ。格好いい。勿論自分では買いません。そうした点では良いところを突いてはいます。自分ではなかなか買わないけれど、あると嬉しいモノ。プレゼントの王道です。
では、どうか。先ほどの上のボックスセットなら、嬉しいですよ。私ならボックス「だけ」使います。あ、でもボックスも私のお気に入りの一式が入らなかったら、邪魔になるだけかもしれない。
そう、靴好き、靴磨き好きにとっては、自分にとって不要なものがだいぶ出てしまうんです。
このご時世に靴磨きが好きな時点で既に少数派ですが、そんな人はとっくに一式揃えています。自分なりのこだわりの組み合わせで。クリームはここ、ブラシはどこのが良い、ワックスはこれ。私もある程度決まっています。
[0408-201412] ボーナスでも出たことだし、一式揃えてこの週末は靴でも磨こうか、というあなたへ私が薦めるお手入れ用品。
そんな人に、靴磨きセット、買えますか?
では、お試しセット。これ、こだわりのある人が貰って、嬉しいでしょうか?勿論愛する人、大切な人からのプレゼント、嬉しいに決まっています。けれど、使えるか、と言われると、私だと申し訳ないけど大半のモノは使いません。
だって、お試し的なセットは、だいたいお試しなんです。でもお試し程度の量と中途半端なクリーム等じゃ使いようがないんです。今選ぼうと思っていた方、キツい言い方してごめんなさい。
では、「靴磨きに興味がない人」は?
豪華なセット、いいですねぇ。それは同じです。その気持ちはとても嬉しいです。中にはそれで靴磨きに目覚めちゃった方もいると思います。だから全否定は出来ません。けれど。
・・そもそも靴磨きなんて奥さん任せ、もしくは完全放置状態だった人が、豪華セット貰って、何をどう使うか、分かりますか?大半は私から見たら不要なアイテムです。
そして、豪華一式セットは、好きな人が見れば「お、こんなモノまで入っているんだ」と分かるので、その中で使い分けが出来るかもしれませんが、そもそも靴磨きなんてしない人にはどれが不要かなんて分からないので、全部使わないといけないのかと思ってしまう。
毎回全部使ってたら面倒でやってられません。元々靴磨きしないんですから。
「お試しセットなら気軽に始められていいんじゃない?きっかけになるし。」
もちろんその発想は間違ってはいません。けれど、お試しセットって、中途半端なんです。例えばブラシが微妙に使いづらいミニサイズだったり、初心者には不要なブラシが余計に付いてたり、必要なものがなかったり。
物事は最初の一歩が肝心です。元々靴磨きに興味が無い人にとって、最初の一歩の印象が良くなければ、その後続けようとは思いません。
お手入れセットは良く考えられているとは思うのですが
きっと各靴メーカーも練りに練って考えた入魂の作(セット)だと思います。けれど、自社一括ですよね?しかも組み合わせは予算と売りたい在庫との兼ね合わせもしくは万人に無難なセットになりがちです。
またそこにはそのメーカー担当者ごとのこだわりも入っています。靴磨きなんて、正解が一つじゃないので、その中で無難な線を出そうとすると、組み合わせが多くなってしまうんです。
第一、私の言っていること自体、私の拘りビンビン偏見たっぷりですから。
なので、もしその方と一緒にお買い物をしていて、どーしてもそのセットが欲しい、という人でも無い限り、止めたほうが無難です。
あなたが既にお手入れ好きなら、要るものと要らないものがあなたなりに分かるでしょうし、であればセットでなくて良いはずです。
そして、あなた自身がお手入れそもそもよく分からないのであれば、そのセットの何が必要か、分からないですよね?使い方も。
そこで出てきた、私が薦めるお手入れ用品
はい。ようやく本題です。これが言いたかったのに、前振りが長くなりました。お手入れは書き出すと止まらなくなるので。
ここまで書いてお手入れグッズを贈るの止めようと思っていた方、ちょっとだけ待ってください。既に読み疲れし始めていると思いますが。
では、何を贈れば良いのか。
ブラシです。それも、お手入れセットで買おうと思っていた予算全額、ブラシ一つに注ぎ込む。
[0194-201405] 靴選びも靴磨きもシンプルが良いと思う。
本当はそれなりのお店に行って、相談するのが良いのですが、ネットで探しても拘り蘊蓄満載の特集記事とか山ほど出てくると思います。
ブラシって、ピンキリです。けれど、全てのお手入れの基本です。正直、ブラシさえあれば、他要らないくらい。ブラシに始まりブラシに終わる。
ブラシの毛自体、豚毛だけでなく、馬毛からその他諸々、色々あるんです。
そして、ブラシって(私はこの言葉は好きではないのですが)一生ものなのです。ブラシの毛先を切りながら、ずっと使い続けるプロの方もいらっしゃるくらいです。
ブラシ一つ満足に使えない内に、下手にクリームに拘りだしちゃったり、色々使い始めると、失敗します。塗って拭いて(磨いて)終わり、って考えている人、多いですから。
そして、以前から何度も書いているように、ブラシって幾つあっても困らないんです。
例えばこれで13500円。馬毛ブラシ1本と豚毛ブラシが2本入っています。「平野ブラシ」は好きな人なら一度は聞いたことがあるはず。
山羊毛です。一本あると便利なんです。埃落とし含め、さらっと表面をブラシしたいときに最適。私は別のブランドのモノを使っていますが、とても便利で助かっています。これでも3500円。
出ました、江戸屋。創業280有余年。七代将軍家継の時代にお抱えの「刷毛師」に任じられ、その後亨保三年に将軍家より「江戸屋」の屋号を与えられ江戸刷毛の専門店として開業したのが始まりとされています。私も一本愛用していますが、非常に気に入っています。
シンプルに、「ブラシかけとけ。」
これが一番です。出来れば長く愛用出来るものがいい。それは好みの問題も勿論あるのだけれど、これからもし靴磨きが趣味になっちゃっても、変わらず使い続けられるだけのしっかりしたつくりもものが一番です。それでもこの辺りなら1万円しないんですから。素晴らしいです。
そして、「お手入れ、靴磨き=クリーナーで汚れ落として靴墨塗る」と思っている、思っているけれど結局やらない、そんな人には、ブラシ一本渡して、家にあるどこで買ったのかワカランような、半分固まって変色してるチューブの正体不明の物体を全て処分して、「いいから黙ってブラシかけとけ」と言えば良いんです。
ブラシだけでだいぶ変わりますから。特にブラシなんてしたことない人の場合。
で、ブラシし始めると欲が出てくるんです。ムズムズしてくる。そうしたら、その時に初めて、先ほどのシューケアセットなり、個別に選ぶなり、好きなように楽しんだら良いのでは無いか、と思います。
[革靴] それでもシューケアセットを贈りたいあなたへ。数多のセットの中から選ぶ際のポイントを3つ挙げてみます。