最近はおとなしい方ですが、当ブログは以前は「元靴屋の甲高幅広ブログ」として一部で有名でした。何か他の話題を気合を入れて書いても「甲高幅広」のアクセスが大半でした。
でも今では相乗効果で「辿り着いたきっかけとは別の話題」にも興味を持ってくださる方が増えているようで大変嬉しいです。
先日久しぶりに「靴紐」について触れましたので、せっかくですので「靴紐って飾りじゃなくて、様々な問題を解消してくれるすごい奴だよ」ということを書いてみたいと思います。
日本に限らず、多くの人が似たようなことを考えています。
革靴に限らず、靴を履くときに、次に挙げるようなことをした覚えはありませんか?
- 紐なんて面倒だからいちいち解きません。脱ぎ履きしやすいように緩めに結んでます。
- 自分は甲高幅広だから(外反母趾だから)紐は緩めに結んでます。
- 革靴履くと足が当たって痛いです。多分幅広だから。
もし一つでも当てはまった方、安心してください。これは日本人に限らず、比較的世界共通の常識です。正しい常識かどうかは別としても、別に甲高幅広の日本人に限らず、脱ぎ履きの多い日本人に限らず、どの国の人でも、靴に興味のない人はたいてい同じこと考えてます。統計は取ってませんが、実際にお店で出会った様々な国の方が同じことやってたので。多分そんなもん。
多くの人が、自分の足が痛いのは日本人は甲高幅広だからとか私は外反母趾だからとか革靴は痛いものだから、とか考えています。もちろん本当に靴が合っていない場合もありますが、けれど今回挙げる点を忘れていると、どんな靴を履こうが痛いしキツイしむくみやすいし疲れるし足が臭くなりやすいのです。
何故なら「靴ひも」を軽視しているからです。
なぜ「面倒な」靴ひもがあるんでしょう?
それも、あれっていろいろな通し方がありますよね?2つか、せいぜい4つくらいの穴を通して縛っちゃえば良いと思うのに、複雑にからみ合って面倒くさい通し方をしていたりします。あれ、別にデザインに凝りたいから、ってわけではないんです。
紐ってどこに付いていますか?甲周りですよね?最終的に足首周りの広さ(大きさ)まで左右します。これは何故でしょう。
敢えて誤解を恐れずに極端に言えば、靴って甲と踵で履くものだからです。
幾ら何十万もする高級革靴や、フルオーダーの靴であっても、世紀の名作ラストを使っていたとしても、結局この甲と踵がしっかり押さえられていなければフィットしないんです(この辺り、細かく書いていけばおそらく靴職人や本業の方は突っ込みどころもあるとは思いますが、今までの私のこのブログの書き方で察していただけますと幸いです。)
それくらい大切な部分が甲と踵。けれど、人間の足は朝と夜、日によって体調によって天気によって、様々に大きさも形も変わります。歩く一歩一歩で重心のかかり方も変われば、その都度また足も変化します。
それらの変化をその都度吸収し、うまく流し、逃し、かつきちんと固定する。そうした同時に複数の難しい仕事を健気に一手に担っているのが、数ヶ月でみるみるボロボロになってヨレヨレになってしまう、あの細い紐なんです。
靴ひもをきちんと結べれば、多少サイズや木型の合わない靴でも、大きな問題は起こりません。
けれど、靴ひもを軽視していたら、どんな素晴らしい靴であっても、足には常に大きな負担がかかります。
一日に何回、靴ひもを結び直していますか?
「えっ?そんなの一回も結び直さないよ。せいぜい解けちゃった時に、お情け程度にとりあえず形だけ結んどくくらいかな。」
「あまりしっかり結んじゃうと、脱ぐとき解かないといけないでしょ。面倒じゃん。だから紐自体ちゃんと結んでないよ。」
そんなあなた。足、痛くなりませんか?痛くならないまでも、ふくらはぎや足首周り、疲れてませんか?腰痛くないですか?頭痛ありませんか?
なんで腰?なんで頭?と思われる方もいるとは思いますが、人間は器用なもので、靴紐ちゃんと結んでない靴でも脱げないように、足に負担がかからないように、と無意識に歩き方を変えて適応させようとします。その結果、腰や、背骨を通って頭にまで衝撃が伝わるんです。
また既に結ばずに歩くことに慣れてしまった方は、足自体もかなり形が変わり、痛みに慣れてしまっています。だから気づきにくいのです。多少痛くても、多少むくんでも、全部自分の甲高幅広の足が原因だと思ってしまっています。
多くの男性女性を見てきて思うのは、これらの悩みを持つ人の大半が踵の浮きには無頓着だということです。浮いてはいけないわけではありません。ただ、大抵カカト周り、足首周りがブカブカな状態で履いているんです。
カカト周りがブカブカで浮いている、ということは、多かれ少なかれ足が靴の中で前に突っ込んだ状態にあります。足の前の部分で靴を履いています。足の前部分に意識がいき、更に前部分で靴を履けば、どんな人でも窮屈でキツく、また指の部分を圧迫します。そりゃ、外反母趾にもなります。
日本人と靴の歴史はまだ浅いです。ちゃんとした履き方をまだまだ知りません。だからこそ、一度踵が浮かないサイズの靴を履いて欲しいと思います。
先ほど、こう書きました。
「人間の足は朝と夜、日によって体調によって天気によって、様々に大きさも形も変わります。歩く一歩一歩で重心のかかり方も変われば、その都度また足も変化します。」
これらをその都度ひもが修正してくれているわけですが、足に違和感を感じた時に、その都度結び直してあげると、一気に足が楽になります。
その際には、先ほど挙げたように甲と踵が大切です。踵を忘れないようにしましょう。
靴ひもを結ぶときには、靴の中で足をつま先の方に突っ込んでから結ぶのではなく、履いた後一旦靴の踵周りに自分の踵を合わせてから、その状態で甲を押さえます。甲を靴ひもで固定するんです。
これ、一日の中で何度か意識的に結び直していると、自分の足の癖が分かるようになってきます。
紐の通し方一つ変えるだけでも、様々な足と甲の形に対応できる。
ここではそれぞれの紐の通し方については触れませんが、様々な通し方がデザイン上だけの話だと思っていた方、ぜひ一度試してみてください。これは通し方だけでなく、靴一足一足によって、自分の足との組み合わせでベストな通し方があります。更に、丸紐を使うか、平紐を使うか、たったそれだけでもフィット感が全く変わってきます。
常に理想の一足、コンフォートシューズを探している時間があったら、新しい靴ひもを買ってきて、普段と通し方を変えてしっかり結んでみるだけでもだいぶ足が楽になるはずです。
理想の一足はどこか遠くの名店にあるのではなく、手元の靴かもしれません。そのためには、ただ、靴ひもを意識するだけです。
「一日数回の脱ぎ履きの楽さ」と「長年続く足腰の痛みや疲れの解消」。どちらを取りますか?
それでも多くの方は言うと思います。
「そりゃそうだけど、実際面倒じゃん。」「仕事柄脱ぎ履きが多いから。」「そんなこといちいちするのは神経質な靴マニアくらいだよ」
ならば、毎回結び直す必要はありません。中には法事などで急いで脱ぎ履きしなければならない時もあるでしょう。そういう時はひとまず除きましょう。
それでも一日の中で、ひとまず朝出かけるときだけでも、きちんと紐を解いて、きちんと履いた上で、踵を付けてから、甲を心地よい強さで押さえてあげませんか?それだけでも日々の積み重ねでかなり変わってきます。
既に普段から靴ひものことを意識されている方は、今度はぜひ、通し方や紐の種類をいろいろ試してみてください。驚くほど違いが出てきます。
靴ひも、なぜあんなにすぐボロボロになるんでしょう?ほんの少し靴ひものことを考えてあげるだけで、その理由と健気な努力に気づかれるのではないかと思います。
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