いよいよ今年もあと1週間になりました。クリスマスが終わると急激に街が冷え込み、静かになります。一気に年末モードです。
この1年、雨の日も雪の日も嵐の日も、また酷暑の日も、激しくぶつかり、削られながらもあなたの足もとを支え、守ってくれた革靴に感謝の気持ちを込めて是非お手入れをして欲しいな、と思います。
この時期になると当ブログでもクリスマス、お手入れセット関連の記事へのアクセスが急激に増えます。ただ、個人的には別に気合いを入れてお手入れする必要はないと思っています。
靴磨きしなくて良いです。張り切って靴墨なんて、塗らなくて良いですよ。手汚れますし。疲れちゃうでしょ。
いつもと違ったことを張り切ってやるのが年末ですが、そちらのほうが忙しいんですから、靴は良いです。第一せわしないのに、ゆっくり腰を落ち着けて、手持ちの靴を一つ一つ静かに磨いていくなんて、理想ですが、疲れます。それよりも家族との折角の時間をゆっくり過ごしてください。
かえって年末にならないと腰を落ち着けない、年末は靴磨き、なんてその時しかやらないほうが良くないです。
だから、やらない。
ただでさえやることの多い年末、更にあなた自身が最も消耗、疲弊している時期だと思います。こんな時に無理して気合い入れて靴磨きなんてする必要はないと思います。あなた自身と、支えてくれた家族や周りの方をまずは労ってあげてください。
とは言え、基本的に「ブラシと乾拭き」だけで充分だと常日頃書いてきている当ブログです。冒頭のように、お手入れはしてあげてほしい。お手入れと靴磨きの違いはここでは改めて触れませんが、難しく考える必要はありません。年末、気合いの入ったことは不要ですが、のんびりと気が向いた時に軽くブラシ、無理なら乾拭きだけしてあげてほしい。
このブログでは開設当初から偉そうに蘊蓄垂れていますが、結局靴のお手入れに関しては伝えたい事はシンプルです。
靴に「触れ」ましょう。
「触れ」きれない数の靴を持つのは止めましょう。
これだけです。
靴廃人になってしまった人も、反対に興味が一切ない人も、一番怖いのは「無関心」「存在を忘れてしまう」ことです。それは気負って履くとかそういうレベルの話とは全く別です。存在を忘れないための一番の方法は、接点を増やすことです。人付き合いもそうですよね?幾ら学生時代に親友だ永遠の友情だと誓い合った友人であっても、その後就職して音沙汰が無くなれば自然と消滅してしまうんです。
接点を増やす、そのためには「触れる」のが一番です。
ただ、そこに一つだけ折角なので加えて試してみて欲しいことがあります。
それが、今年1年履いた革靴の靴ひもを交換してあげることです。
靴ひもを替えるだけで革靴は蘇ります。
以前こんな文章を書きました。
靴がボロボロな理由。
理由、と書きました。でも、実際大半の靴はボロボロじゃないんです。
もう目も当てられない状態のものもありますが、そういう人の靴は店頭でもスリッパのように目の前で切なくなるような扱い(踵踏みながら店内歩くなど)をされた挙句、汚いものでも触るかのように半分放り投げる感じで「捨ててもらえる?」と渡されます。
それは別として。大半の人の「ボロボロ」な靴。それは、実は簡単なことでボロボロじゃ無くなります。
その一番のポイントが、靴ひもです。
靴ひもというのは意外と忘れられがちです。靴好きの私でさえも時々気を抜いてうっかり忘れていることがあります。けれど、毎日きちんと脱ぎ履きの際に結んでいる方は勿論、億劫で中途半端に結びっぱなしで強引に靴に足をねじ込んでいる方の紐も酷いことになっています。消耗が激しいのが靴ひもです。
例えば今年1年、特に雨の日の出番も多かったこちらののせモカタイプの革靴。一見したところ大して紐も問題無さそうに見えます。
ところがよく見てみると、既にかなり毛羽立ち、油分も失われているだけでなく、表面が乾燥してパリパリになっています。この状態だと非常に結びづらい。こうした一見分からないものから、
こちらも「問題ないんじゃない?」と思われる方が多いと思うのですが、実際解いてみると既に力を失ってグッタリしています。ただ、こうした文章を常に書いている私の革靴でさえこの程度は充分にあります。そして、この程度であっても紐を新しくしてあげるだけで一気に蘇ります。
1セット150円。10セット買っても2千円弱です。
今回は先日別件で東急ハンズに行った際にまとめて買ってきました。別に写真のモノに拘る必要はありません。長さは主に65cmと75cm、基本的には黒と濃茶で充分。平紐、丸紐は好みで問題ありません(実際締め具合は平と丸でだいぶ違いますが)。ただ、今回私は折角なので少し淡い、明るい色も加えています。
もちろん、中には1セット千円を超えるコダワリの靴ひももありますが、無理にそれらに手を出す必要はありません。それなりに魅力もありますし、私も好きですが、とりあえず今大切なことは、気負わず、
「65cm」「75cm」あたりの「黒」「濃茶」の「丸(平)紐」を何かのついでにまとめて購入しておく。
ということです。1年持ちませんから、気が向いた時にいつでも交換出来るように少し多めに買っておきましょう。
早速試しに幾つか交換してみました。参考までにサラリと眺めてみてください。
以下、写真が多くなりますが、大したことは書いていませんので、既に靴ひもを替えたくなった方はお店に走るか、もしくはネットでさくさくっと注文してしまいましょう。興味のある方は参考程度に眺めてみてください。
先ほどの「のせモカ」タイプの茶靴。こちらには少し気分を変えて今までワインの靴ひもを使っていました。明るめの色や靴の色と違った色というのは失敗も多いので、靴好きか興味のある方のみ試してみて欲しいのですが、気に入った組み合わせが見つかると結構ハマります。今回はワインが見つからなかったので、普通に「濃茶 丸紐 75cm」に替えてみました。
まずは左足のみ替えましたが、色が変わるだけでかなり印象が変わると思います。
元々の靴ひも自体が前述のように油分を失ってパリパリになっていただけなので、張りはあまり変わらず見た目の違いはさほどありませんが、実際替えてみると結び心地が変わってきます。
左右とも交換。今回はロー引き 丸紐にしましたが、この辺りはあまり深く考えずに色々試してみて欲しいと思います。
続いて黒のプレーントゥ。こちらは4穴ということで、65cmにするか75cmにするか若干悩みました。今回は丸、平は特に替えず、そのまま新しくしてみたいと思います。
先ほども挙げましたが、よく見るとヘナヘナと力なく垂れているのにお気づきかと思います。写真以上に実物は既に擦り切れて力もありません。
左足のみ、まずは「65cm」で替えてみました。目安としては「65cmが3~4個穴」「75cmが4~5個穴」となっています。ところが、替えている途中から既に短いことに気付きました。紐の長さは意外と見た目の印象にも大きく影響します。
実際、この靴は左右羽根の開きが比較的あるタイプのため(羽根が完全に閉じきっている場合は65cmでも充分だったと思います。)75cmが良いような気がします。若干見づらいですが、先ほどの力なく垂れている元々の靴ひもと見比べて頂くと元気になっていることに気付かれるのではないでしょうか。
左右とも75cmで交換しました。
同じ4穴でも、私の履き方では完全に羽根が閉じてしまう、こちらの靴では65cmで充分でしたので、この辺り靴と相談しながら色々試してみましょう。
続いて、少し変わった例。
比較的明るめのブラウンのプレーントゥ。こちらは先日かなり紐がよれていたものの、手元に黒の平紐しかなく、とりあえず試しに交換しました。慣れると悪くはないものの、折角なら好みの色の組み合わせにしてみたいところ。そこで今回、茶、濃茶それぞれに試してみました(実際はベージュも買っていたのですが)
写真左(右足)が濃茶、右(左足)が茶です。今回は65cmを選択。前述の靴同様、4穴ですがこちらも羽根が閉じきってしまうので、65cmを選んでいます。
どちらも悪くないですし、無難にいくなら「濃茶」なのですが、この靴自体スーツ等で履くことはないですし、側面の穴飾りなど若干カジュアルに寄っていますので、気分も変えて「茶」を選択しました。
革靴の見た目を決める大きなポイントは3つ。「汚れ」、「つま先」と「靴ひも」です。
もちろん紐自体が新品になることでの見た目への影響というのも大きいのですが、このブログ定番の視点で考えてみたいと思います。
靴ひもを替える、ということは、その靴に触れるということに繋がります。
触れてみれば、埃や傷に気がつきます。履いていなくても、少し放置しただけで靴の表面にはうっすらと埃が乗ってきます。また、普段あまりブラシや乾拭きをしていなければ、靴が予想以上に汚れていることにも気付くでしょう。
革靴の見た目を決める大きなポイントは3つ。「汚れ」、「つま先」と「靴ひも」です。触れることでこれら3つに気付くことが出来るのです。
それらをきれいにしてあげるのです。別にクリーナーなんて使わなくても良いです。濡らして固く絞った布やタオルで軽く拭ってあげるだけでも良い。ブラシがあれば、是非ブラシをかけてあげてください。
また普段靴ひもがあってなかなかブラシや乾拭きが出来なかった部分も、交換の際にお手入れしてあげられます。ちょっと汚れを落としてあげる、もし乾燥していたら、軽くクリームを塗ってあげても良いかもしれません。(私はクリームを全否定している訳ではありません。)
今回まとめて5足を交換しましたが、10分程度で終わりました(写真を撮りながらだったので少し時間がかかったくらいです。)
そして、靴に触れることで、再び靴へ関心が向きます。折角だから少しブラシもかけとこう、乾拭き少ししておくかな。この靴、ちょっとツヤがなくなってきたら、少しクリームを足そうかな。つま先ちょっと削れちゃったな、埋めるのは難しいけれど、ツヤで誤魔化そう、などなど。気がつくと靴が元気になっています。また新しい気持ちで靴を履いて出かけたくなります。
この年末年始で新しい靴に全部替えてしまう、という方もいるでしょう。ただ、年末にこの作業をしてみると、自分の中で今まで使い捨て、履き捨てだと思っていた靴に対する意識が少し変わってきていることに気付かれるのではないか、と思っています。
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