「大分ボロボロになってきちゃって。そろそろ新しい靴を買ったほうが良いですよね?」
靴屋にいた頃、お客さんが靴を買いに来るきっかけで最も多いのがこれです。よく聞く言葉でした。
ボロボロの靴ではみっともない。そう思うようになってくれただけでも嬉しいことです。本当は今回買う靴ももう少し、今までよりほんの少しで良いので、靴磨きはしなくても良いので、お手入れくらいはして欲しい・・。
そんなことを願いながら、なかなかお手入れというのは広まらないものだなぁ、と感じてきました。
靴がボロボロな理由。
理由、と書きました。でも、実際大半の靴はボロボロじゃないんです。
もう目も当てられない状態のものもありますが、そういう人の靴は店頭でもスリッパのように目の前で切なくなるような扱い(踵踏みながら店内歩くなど)をされた挙句、汚いものでも触るかのように半分放り投げる感じで「捨ててもらえる?」と渡されます。
それは別として。大半の人の「ボロボロ」な靴。それは、実は簡単なことでボロボロじゃ無くなります。
その一番のポイントが、靴ひもです。
数百円の靴ひもが、靴の雰囲気を大きく変える。
今履いている革靴の紐、いつ頃変えましたか?半年前?一年前?そもそも紐を結び直すのすら面倒なので、紐のことなんて忘れていた、という方も多いのではないかと思います。
[革靴] 靴紐ちゃんと結べますか?デビッド・リースの人生の教科書で「正しい靴紐結び」を学ぶ。
けれど、そういう人の靴ほど、紐が相当に傷んでいることで、見た目の印象が大きく変わります。靴墨なんて塗ってる暇があったら、もう紐変えてしまうほうが余程綺麗になります。
例えば、この靴。私の愛用中の三交製靴ラギッドシューズ三足目。のせモカ茶です。
[革靴] 靴好きの私が三足目に選んだラギッドシューズは、のせモカの茶でした。
購入から3ヶ月半です。上の写真だと分かりにくいですが、結構ヨレヨレになっています。特に向かって右側(左足)の紐、張りが無くなっていますよね?
これくらい、大したことないじゃん。
多分、そう感じた方、多いと思うんです。特にいつも普通に履いていると気付きません。こんなものかと思っていますから。
そこで今回、思い切って三交製靴ラギッドシューズの最初の三足の靴紐を全て新しくしました。
勿論、靴紐なんて近くの靴屋に行けば幾らでも種類も色もありますが、今回は折角なので純正に拘ってみました。三交製靴の場合は送料は別ですが、一組¥324-です。
修理のご依頼方法 – ラギッドシューズ(マナスルシューズ) 三交製靴株式会社
一昨日届いたので、早速替えてみたのが下の写真。まずは最初に買ったペッカリー茶です。
[革靴] 私の二足のラギッドシューズ -三交製靴株式会社 ラギッドシューズ-
紐を替えるだけで気持ちも変わる。
何となく全体的に元気が出た気がしませんか?
2足目のペッカリーのショートブーツです。これはちょっと分かりにくいかもしれませんが。
単なる精神論や気持ちの問題と言うかもしれませんが、その気持ちの問題が最も大切です。(勿論替えた後で今までの靴紐を見ていただくと分かりやすいのですが、かなり毛羽立って、ヨレヨレになっています。よく今まで頑張ってくれたなぁ、と思わず感謝の気持ちが起きるくらいです。)
靴紐を替えたついでにちょっとやってみて欲しいこと。
ついでにちょっとその靴を拭いてみてください。ブラシ使っても良いです。急に甦りませんか?さっきまであんなにボロボロだと思っていた靴なのに。
[革靴] クリスマス直前。贈るならシューケアセットではなく、上等なブラシ一本渡して、ブラシかけとけ、で充分です。
靴紐を替えるために普段より革靴が手元に来ることで、汚れに大分気づくようになります。そしてボロボロの大半の原因は単なる汚れや紐などの細部のヘタリです。あとはコバ周り。
これ、どれも新しい靴をワザワザ買わなくても、まして靴墨塗りたくらなくても、あっという間に解決出来てしまうことです。
靴のポイントはつま先周りと紐。なぜ紐を結び直すことが大切なのかは、単純なフィッティングの問題だけでなく、結ぶ、緩める、という行為がその人の精神であったり、気持ちを表している、とも言えるかもしれません。ピシっとした紐は、それだけで気持ちも引き締まります。
今回、先日ご紹介した銀座ヨシノヤのストレートチップの靴紐も合わせて新調しました。ちょっと贅沢な紗乃織靴紐(さのはたくつひも)です。
こちらは前回上げた購入当初とあまり雰囲気は変わりませんが、蝋引きになったことで、(最初はベトつきがありますが)解けにくく、またよりしっかりとした雰囲気に変わります。先端にアンティーク仕上げのセルが付いていることもまた雰囲気の変化に一役買っています。
革靴がボロボロ
人って、新しい物が買いたくなると、今まで使っていたものの悪い部分、買い換えなければならない理由を挙げたくなります。
革靴がボロボロ、というのも、本当にボロボロなわけではなく、そろそろ飽きたから新しい靴買いたいよね、という気持ちもあると思うんです。
それを否定するつもりはありません。
けれど、その前にちょっと紐だけでも替えてみる。更に先ほどチラリと触れましたが、コバ周りをちょっと手を加えてあげるだけで今まで酷使してきた靴が元気になります。
もし捨てるのであっても、その前に最後にちょっと、今まで黙ってあなたの体重を支え続け、固い地面に散々削られ続けたその相棒を、ありがとうという気持ちを持って最後に紐だけでも替えてみてあげませんか?
もしかしたら、一番ボロボロなのは、靴でも靴紐でもなく、ちょっと最近余裕が無くなってしまったあなたの心かもしれません。
[革靴] ボーナスでも出たことだし、一式揃えてこの週末は靴でも磨こうか、というあなたへ私が薦めるお手入れ用品。