2017年11月1日に届きました、Googleの新しいChromebookである、Pixelbook。前回は外観を中心に、細かい部分もしっかり考えられて作られている、という点に触れました。今回から使用感に入っていきたいと思います(あとで気がついた部分はその都度追記していきます)。
今回は第7世代Intel Core i5(KabyLake)を積み、8GB RAMを載せたこのモデルの全体的な処理速度と体感速度をベンチマークと私自身の感覚から見ていきたいと思います。また、同時に多くの方が関心を持たれているであろう、Androidアプリの使い勝手についても触れたいと思います。
第7世代Intel Core i5-7Y57は快適、かつファンレスにも関わらず発熱はほんのり温かい程度。
前回も載せたスペック評価からCPU等の処理速度に関わる部分を改めて載せてみます。
CPU | Intel Core i5-7Y57 (Intel HD Graphics 615) Octane 2.0 : 30234 / speedometer 1.0 : 111 |
RAM / Storage | 8GB LPDDR3 (1,866MHz) / 256GB SSD |
Display | 12.3-inch QHD (2,400 x 1,600, 235 ppi) LCD touchscreen (400 nits, 72% NTSC color, 3:2 aspect ratio) |
Resolution | 600×400 / 750×500 / 960×640 / 1200×800 1350×900 /1500×1000 / 1800×1200 / 2400×1600 |
Dimensions / Weight | 290.4 x 220.8 x 10.3mm / 1.1kg |
CPUは第7世代Core iの中でも今年発表されたYシリーズ(Kaby Lake-Y)のi5-7Y57です。こちらは通常のノートPCに用いられているTDP15WのCore i5 7300Uなどに比べるとパワフルさでは劣るものの、その分TDP4.5Wと低消費電力なシリーズ。主に薄型・軽量2 in 1やタブレットPC向けに提供されているそうです。
最近はCore mシリーズを載せたモデルも出てきていますが、ChromebookがIntelのCore iシリーズを載せる事自体は何も珍しいことではありません。昨年辺りまでは比較的低発熱、低価格に重点が置かれていたためか、こうしたパワーのあるCPUは用いられることが少なくなってはいましたが、私の愛用しているLenovo ThinkPad 13 Chromebook(Core i5 6300U)など最近でも採用されています。
ちなみにこのThinkPad 13 Chromebookは、以前よく用いられていたブラウザーベンチマークであるOctane 2.0のスコアは31191、またその代替として最近注目されているSpeedometer 1.0でも110と非常に高い数値を出しています。ただ、このThinkPadのCore i5 6300U、高負荷時にはそれなりに熱くなるようで、ファンと吸排気口が付いていまして、それなりにファンの音も(耳障りなほどではないものの)していました。
今回のPixelbookは前回触れたように、10mmと非常に薄いモデルです。こちらにファンを搭載せず、発熱もそれほど多くない、けれど高性能のCPUを載せるとなると、なかなか難しくなってきます。考えられるのはやはりCore mになってくるのかな、と思っていたのですが、前述のように第7世代(ChromeOSでは初)のCore iを載せてきたのは意外でした。発熱は大丈夫なのか。そしてもし低電力版であれば処理速度に影響が出ないのか。
けれど、全くの杞憂でした。
Octane 2.0のスコアは30234。堂々の3万超えです。更にSpeedometer 1.0でも、
TDP4.5Wという非常に低消費電力なCPUでありながら、しっかりこのあたりの数値を出してくることもあって、実際にChromeOSにおけるブラウザーベースの動作でストレスを感じることは全くありません。また、個人的な印象としてはこの薄くて美しい本体と高解像度の画面で展開される様々な処理を眺めていると、従来よりも更に快適なのではないか、と錯覚を覚えてしまうほどです。
実際にはCore m以上は体感差にそこまで大きな違いはないはずです。元々ChromeOS自体はOctaneスコア10000を切る普及価格帯のモデルでも十分に心地よく使うことが出来ます。ただ、これは実際に日々使ってみないとなかなか分かりにくいのですが、一つ一つの動作のテンポ、リズムが全然違うのです。これが非常に心地よい。一つ一つの処理にまったく不要な間を感じさせず、思った通りのものを思ったタイミングで軽快に表示してくれる。ここにPixelbook自体の薄さとファンレスによる静かさ、ChromeOS自体の気軽さや手軽さといった軽さが組み合わさって、とても身軽で心地よく感じさせてくれます。
ChromeOSにおけるこの軽さを一度体感してしまうと、「Chromebookにハイスペックなんて無意味。無駄。」とは思えなくなってくることでしょう。正直私はこのあと発売される予定のCore i7、16GB RAMの最上位モデルも既に欲しくなっています(Googleアシスタント未対応なのに)。
多くの方にとって関心が高い部分であるAndroidアプリの使い勝手について。
続いて、多くの方にとって関心が高い部分であろうと思われるAndroidアプリの使い勝手について、です。先日、AdobeがCreative Cloudシリーズを更新し、Lightroomにおいてクラウド保存をベースとし、PC版、スマホ版、Web版のどこからでも同じ操作感で使うことが出来る新しい「Lightroom CC」を発表しました。
Adobeのイベント会場でもPixelbook上で快適に動作するLightroom CCの様子が紹介されていました。また、つい最近ですが、利用者の大変多いサービス、Evernoteでも、
https://blog.evernote.com/jp/2017/11/01/57641
Evernote で手書きメモをとるために Pixelbook を使い始めた瞬間から、アプリの使い心地が違うことにすぐ気づくはずです。タッチスクリーンに触れてからノートに表示されるまでの時間差を無くすために、アプリの反応を今までよりも速くしました。Pixelbook Pen (または自分の指でも)で Evernote に手書き入力する時に、まるで紙とペンを使っているような感覚を体験できるはずです。手書きメモを Evernote に保存した後は、編集したり、画像内の文字認識技術 (OCR) を利用して検索したりすることが可能になります。
いち早くPixelbookを想定したアップデートを実施。今後こうした流れは更に増えてくるかもしれません。
そんなPixelbookですが、スマートフォンのベンチマークとしてお馴染みのAnTuTu Benchmarkの結果は
170897と好結果。もちろん、載せているCPUがIntelのCore i5ということでARM系ではないこともあり、アプリによっては相性も出てくるでしょうし、また32bitと64bitでの違い、更にChromeOS自体のGoogle Playストア(及びAndroidアプリ)への最適化がどの程度進んでいるかによって使い勝手は大きく変わってきます。実際、私が昨年初めてChromebookでAndroidアプリを使い始めた頃にはまだまだ「ベータ版と呼ぶにも程遠いおためし版」のような印象もありましたし、今年発売されたSamsung Chromebook PlusやProにおける「モデルによって対応(インストール出来る)しているアプリに差が出たり、動作が不安定だったりする」こともあって、個人的には現時点ではまだAndroidアプリの動作に関してはあまり期待していなかったというのが正直なところです。
ところが、久しぶりに使ってみた、そしてPixelbookというハイスペックなモデルで動かしたAndroidアプリは、思っていた以上に違和感なく、また快適でした。
主なAndroidアプリの対応(インストール可否)状況と使い勝手について。
上の写真は少し編集したこともあって持っている左手が血管が浮き出まくってかなりグロテスクになっていますが、実際12.3インチ、1.1kgの本体を片手だけでタブレットのように使うのは厳しいです。ただ、何もスマホやタブレットと全く同じように使う必要はなく、キーボード付端末(ノートPC)であることを活かしてAndroidアプリを活用することも十分に出来ると思います。
私はメインのChromebook(前述のThinkPad)がStableチャンネルで正式に対応していないこともあって、ここ最近ほとんどAndroidアプリに触れていなかったのですが、知らない間にかなり使い勝手が良くなっている(改善されてきた)んですね。
一番大きいな、と思ったのが、以前はスマホサイズか最大化しか選べなかったウィンドウサイズが自由に変えられるようになった(アプリが増えてきた)という点です。ひとまず今回試してみたMicrosoftのWordやExcel、PowerPoint、更にAdobeのLightroom CCといったメジャーアプリだけでなく、Androidアプリとしてはお馴染みの「Jota+」や「1Password」「Evernote」、更に我が家では夫婦で愛用しているスケジュール共有アプリの「TimeTree」などほとんどのアプリでウィンドウサイズを自由に変えることが出来、またウィンドウ位置も変えられるので、意識しなければ思わずWindowsを使っているような錯覚に陥りそうになりました。
そして、これらのアプリがまた違和感なく(フォントサイズが変えられないものなどもあるとはいえ)、そこまで動作自体も不安定さを感じさせずに、普通に使う事ができる、更にいえば、ハイスペックを活かして非常に快適に動作してくれる、というのは新鮮な驚きでした。
もちろんすべてのアプリがAndroidスマホやタブレット同様に使えるわけではありませんが、先程も書いたようにまったく同じ使い方をする必要はないとも言えます。スマホやタブレットではやりにくかった、出来ればノートPCなどで使えたら助かるような文章作成アプリや、常駐してくれることで必要なときに通知してくれるようなツールアプリ(天気予報や防災アプリなど)などをうまく組み合わせると、従来のタブレットとは全く違った使い方が出来るのではないか、と思います。
また、前回も触れましたが、ChromebookにおけるAndroidアプリの対応において一つの障壁になっていたのが、「外部ストレージとの連携」がアプリによってうまくいかず、本体ストレージにしかデータを保存できない、というものがありました。けれど今回のPixelbookは$999のスタンダードモデルでも128GB、最上位モデルで512GBもあります。
外部からデータを持ってくるには若干不便ではありますが、外部ストレージがなくても十分に快適に、かつ前述のような本体ストレージにしか対応していないアプリでも問題なく、空き容量を心配することなく使うことが出来ます。KindleアプリやAmazonプライムビデオ、更にLightroom CC等における写真データを作業用スペースとして一旦内部ストレージに保存しておく、といった様々な使い方が出来そうです。
もう一点、現時点でChromebookのAndroidアプリ対応において混乱を生んでいるものがあります。それが「モデルによって、またバージョンによって、インストール出来るアプリが都度変化したり、全く異なる」という点です。同じモデルでもバージョンが上がった途端に突然アプリが使えなくなったり(主な例としてMicrosoftのOfficeアプリは非常に多いです。)、単に「ARMだから」「IntelのCPUだから」といった単純な区切りでは説明が出来ないほど、モデルによってインストール出来るアプリが異なります。
今回のPixelbookは私が昨夜から気がついたところを入れた限りでは「かなり素直」な部類に入ると思います(というか、Pixelbookで不安定だったら、実質Googleも今後のAndroidアプリへの対応を諦めたほうが良いのかもしれませんが)。一例を挙げてみますと、
アプリ名 | インストール | ウィンドウサイズ変更 |
Microsoft Word | ○ | ○ |
Microsoft Excel | ○ | ○ |
Microsoft PowerPoint | ○ | ○ |
Adobe Lightroom CC | ○ | ○ |
Amazon Kindle | ○ | ×(最大化状態のみ) |
Perfect Viewer | ○ | ○ |
1Password | ○ | △(変更の度にパスワード入力が必要) |
Jota+ | ○ | ○ |
*もし「このアプリインストールできますか?」「これ、動きますか?」というものがありましたら、Twitterなどで質問してください。あまり来過ぎると対応できませんが、ある程度は調べてお答えしたいな、と思っています。
「こんなの当たり前じゃん」と思われるかもしれませんが、こんな基本的なアプリであっても、モデルによって「インストール出来る」「出来ない(対応していません、と表示される)」が分かれるのです。今回IntelのCore i5ということでこのあたりの対応具合は大変心配していましたが、今のところ私の用途におけるアプリはほぼインストール、普通に使うことが出来て、ほぼ不自由は感じていません。また、動作自体も軽快で、複数アプリを起動させての作業も快適に出来ています。
ちなみに、今この文章を「Chromeで複数タブを開きつつWordPressで作成」しながらも、裏でChromeアプリで「TweetDeck」を動かし、Androidアプリ版の「Google Playミュージック」で音楽を流しっぱなしにしながら「Perfect Viewer」で本を開き、更に試しに「Lightroom CC」を起動させたままにしています。また、「Y!天気」アプリが時々「世田谷区に雨雲が〜」と通知ウィンドウを出してくれています。これだけ使っても、Chromeアプリの「Cog」というCPU使用率やメモリ使用率をリアルタイムに表示してくれるアプリで確認しても、まだメモリ(8GB)の8割方の使用率で留まっています。ただ、これ見ちゃうとちょっと16GB欲しくなってきてしまいますが。
Chromebookの可能性を十分に見せてくれる、Googleの出すフラッグシップモデル。
完璧とは言いません。いや、むしろまだまだ穴も多いと思いますし、ChromeOSやChromebookの良さを活かせているのか、というといろいろな意見が出てくるとは思います。また価格も一般的には「高い」と思われるでしょう。これだったら十分にハイスペックのMacbookやWindows PCが買える、と思われる方も多いと思います。
まったく構わないと思います。それで良いと思います。
ただ、使わない内からなんとなくウェブ上に流れるニュースサイトの新作情報やスペックシート、先入観だけで判断しないでほしい、いや、してもいいけど、クソだゴミだなんだと言わないでほしいと思っています。私、誰にでも合うとは思わないけれど、けれどこれ以外のOSをそんな風に言う気は全くありません。それぞれに良さがあります。ただ、その中で私にはChromebookが肌に合っていて、魅力を感じていて、だからこそその魅力をもっと知ってもらいたいな、と思っているだけです。
お互い、人の好きなものをバカにしたり攻撃したりするの、そろそろやめません?
少し脱線しましたが、今回のPixelbookの発売前に、海外のメディアがそれぞれに動画レビューを公開しました。その中で、あるメディアが「90%の人には合わないかもしれないが、残りの10%くらいにとっては、このモデルは倍近い価格の他OSでも満たされない部分を満たす可能性が十分にある。」といったような評価をされていました。私も同感です。正直、誰にでも薦められるモデルではありません。ただ、使っていての楽しさはあるし、「何がどの位できるんだろう?」といったワクワクもある。可能性も感じさせてくれる。そういう部分に興味がなければ、正直単なる高いだけのChromebookです。
いや、それ以前に日本語環境においてはウリの「Googleアシスタント」使えない時点で他のモデルとの差異がほとんどありません。(Pixelbook Penは除く。これに関しては私には力不足なので、なんとも言うことが出来ません。)
まだ使用2日目ではあるので、これから「ナニコレヒドイヨ」と思うことが多々あるかもしれませんが、その都度TwitterやこのブログでこのPixelbookの魅力について発信していきたいと思います。