Chromebook以外のPCでChromeOSが使えるようになる(ここでは敢えてChromebook化できる、とは書きません)ChromeOS Flexが正式に公開されたことで、様々なところで「古いPCを再利用できる!」というテーマで取り上げられるようになりました。
PC 版または Mac 版 ChromeOS Flex を入手 – Chrome Enterprise
実際これをきっかけにChromeOSに触れた、おかげで自宅で出番がなくなっていた古いPCが再利用できた、という方も結構いるのではないでしょうか。
ネットの声を眺めていても、比較的好印象なものが多いのも、Chromebookユーザーとしては嬉しい限りです。
ということで、今回はこのChromeOS Flexについて書いてみたいと思うのですが、どちらかというとちょっとネガティブな評価の印象を受けてしまうかもしれません。
予め触れておくと、私は冒頭のようにChromeOS Flex自体には好意的です。
ただ、だからこそ、ダメだと言いたいのではなく、ChromeOS FlexをきっかけとしてChromeOSに興味を持たれた、好印象を持たれたのであれば、ぜひその次はChromebookも試してみてほしいな、と思ってます。
そういう意図でお読みいただけると嬉しいです。
ChromeOS Flexを試されたあなた。その後、しっかり活用されていますか?
「もちろん!もう普段からかなり活用してるよ!」という方は、多分今回の内容はピンとこないかもしれません。ただ、こんな考え方もあるんだなぁ、程度に読んでください。
で、何が言いたいか、というと、私、ChromeOS Flexが公開される前からこのブログでも時々触れているのですが、
ChromeOS FlexはChromeOSではあっても、Chromebookではない
と思っているのです。
どういうことかというと、それがこの見出しのような不安があるからです。
その後、しっかり活用されていますか?
これ、どういうことか、というと、ChromeOS Flexを入れたPC、確かにサポートしている2010年〜2013年頃のPCであっても、それなりに快適に動くと思います。実際入れた方も多いと思うんですね。で、その後なんですが‥
入れる前のWinows 7や8の頃に比べてChromeブラウザーは確かにサクサク動くし、ウェブ閲覧程度なら快適に出来る。YouTubeもしっかり見られる。
で‥
実際にそのChromeOS Flexを入れたPC、その後どういう使い方していますか?
というか、ちゃんと日々使ってますか?
私たちのようなブロガー、YouTuberは趣味でもありますが、様々なPCを購入したり、メーカーからお借りしたりして、レビューをします。
そうした時にやることって大体決まってるんですね。ベンチマークと何となくある程度のアプリをサラッと撫でる感じで触ってみて「快適」「この辺が惜しい」みたいな評価をします。だって貸出期間も限られてますし。
よくMacBookの新モデルが出るたびに「2週間使ってみてのレビュー!」がたくさん生まれますが、あれもそれ以上使うと返品出来る期間が過ぎてしまうからです。
で、何が言いたいか、というと、そういうときって「評価、判断する」目線なんです。
実用的か、ベンチマークのスコアはどうか、実際にサラッと動かしてみて、そこそこ快適に動くか、気になるところはないか、といった感じです。
つまり、どうしてもレビューの場合には、長期間使用レビューを除けば、自分の環境をそのまま移行させて、完全に自分の日々の道具として毎日使い込んでみて「うん、これなら便利だわ」「ここは惜しいな」といった視点は難しくなってしまうんです。返すとなれば、自分の普段の環境から使用ファイルまでガッツリ入れて移行させるのは難しいからです。
と、ちょっと脱線というか、話がズレていると感じたかもしれませんが、そこで先程の質問(疑問)に繋がります。
古いPCにChromeOS Flexを入れても、確かにそれなりに快適に動きます。でも「動く」のと「実際に使う」かは別です。
恐らく多くの方にとっては、確かにChromeOS Flexを入れてみると、前述のように動くんです。で「お、意外と使えるじゃん」と感じると思うのですが‥
その後、使って精々気が向いたときのWeb閲覧や動画視聴PCとして、時々使うかどうか、くらいになってしまうと思うんです。
もちろんそうした使い方がダメだ、それはけしからん、みたいな話ではありません。
そうした使い方ももちろん有効な、また便利な使い方です。
ただ、Chromebookの評価って「でも結局メインにはならないよね」「出来ること限られてるし」「イマイチ用途が思い浮かばないから出番が減った」みたいなものをネットでは結構目にするんです。
何が言いたいか、というと、結局ChromeOS Flexを入れても、快適さ、サクサク感は確かに得られても、じゃあそこから次に繋がるなにか、といった用途が思い浮かばない、結局ピンポイントでの用途に限られてしまって、「でも結局あまり使わないよね」「用途限られているよね」となってしまう気がするんです。
さて。Chromebookの良さは何か、という話をしていくと、結果としてそれだけで何回も書けて(だからこのブログでも過去900以上の文章を書いてきたのですが)しまいますし、それぞれに感じる魅力は様々だと思いますのでここでは省きますが、例えば私、今この文章をChromebookで書いています。
また、最近はOfficeはほぼ使っていないので、基本Google DocumentやSpreadsheetになっています。また、数年前に比べると画像編集などのWebサービスも充実してきていますし、ChromeOSって設定部分のほんの僅かな部分を変更(カスタマイズ)するだけで使い勝手が大幅に変わるので、そうしたことに使おうとすれば、かなり使い勝手は良いのです。
私自身、もちろんすべてChromebookで出来る、PCはこれしか使っていない、と言うつもりはまったくありませんが、かなり使用頻度は高い。
それは、うまく伝わるか分かりませんが、Chromebookって、使おうと思えば、特に現行普及価格帯モデルくらいのスペックがあれば、かなり使い勝手は良いんです。
つまり、Googleの基本的なサービスを本格的に使おうと思えば、結構仕事でもプライベートでも活かせるし、それ以外のWebアプリ、Webサービスも加えれば、かなり自分なりにカスタマイズ出来るし、しかも基本的にクラウドベース、アカウントで管理されているので、普段のメンテナンスも楽、など色々と使い道があるんですね。
ただ、何となく、ChromeOS Flexで古いPCをChromeOS化しても、先程のような「うん、そこそこ動くね。確かにこれは軽くて便利だわ。」という印象には繋がっても、そこから(そのPCで)次に繋がる、繋がっていく可能性が低くなってしまう気がするんです。
なぜChromeOS Flexで古いPCをChromeOS化しても、あまり使われなくなってしまうと思うのか。
それには幾つか理由があります。例えば、
- 古いPCだと、幾らプロセッサーが当時としてはハイスペックのCore iだとしても現行モデルのCeleronと大して変わらない。
- 「あくまで古いPCの再利用」という意識のため、恐らくお試し感覚になってしまって、基本的な用途は別途メインPCやスマホを使ってしまいがち。
というのがあるかな、と思います。
まずは性能面。
2010年〜2013年頃、ということで、例えば2013年あたりのCore i7モデルで考えてみましょう。
世の中「Core i7搭載!」というだけで、どの年代のどの世代でもとても性能が高いような錯覚を覚えがちですが、例えば当時のIvy Bridge世代のCore i7-3520Mを例にとって見ると、例えばベンチマークでもGeekbenchでも「Single 648」「Multi 1436」です。
これに対して、例えば私が今よく使っている、富士通のFMV ChromebookのAmazon限定モデルに搭載されているCeleron 6305。こちらは大体「Single 600」「Multi 1100」前後です(検索結果一覧しか出なかったので、大体の数値になってしまいました)。
Intel Core i7-3520M Benchmarks – Geekbench Browser
Geekbench Search Celeron 6305- Geekbench Browser
また、Passmarkの結果でもCore i7-3520Mが2882、Celeron 6305が2154です。
PassMark – Intel Core i7-3520M @ 2.90GHz – Price performance comparison
PassMark – Intel Celeron 6305 @ 1.80GHz – Price performance comparison
いや、十分に上回っていて速いじゃないか、と思われたかもしれませんが、これ、Core i7ですよ。当時のPCを再生させたい、という人の多くがこのCore i7使っているなら別ですが、結構眺めていると、Core i3や、Core 2 Duoあたりの方も多いんです。
更に、当時のモデルだとストレージがHDDだったりします。メモリ容量も4GBあるものもありますが、意外と2GBで動かしている(動いた!という)人もいる。
そして、Chromebookにおいては、基本的な用途はほぼブラウザー作業メインになります。
既に古くはなってしまっていますが、今でもChromebookのパフォーマンスを図る一つの指標となっている(過去のモデルのデータも蓄積されているので)ブラウザーベンチマークであるOctane 2.0の数値では、Celeron 6305は「21,557」となっています。
この数値、結構高いんです。
ちょっと先程のCore i7-3520MのOctane 2.0の数値がないので、当時2016年にプロセッサー毎のOctane 2.0のスコアを比較した文章を挙げたことがあるのですが、それを眺めてみると、
2016年当時のハイスペック、Core iやmのモデルでも20,000強なんです。
もちろん数値に差があるとはいえ、6年前のハイエンドでも、現行普及価格帯、実売3万円前後のChromebookと数値的にはそこまで大差ない(現行ハイエンドモデルだと数値は6〜7万になります。)だけでなく、体感差もこの辺りだとほとんど違いが分からないんですね。
となると、ChromeOS Flexを入れる過去のPC、そうした過去のハイスペックのノートPCなら何とか現行普及価格帯、実売3万円強のモデルと同じくらいのCPUパワーはありますが、それ以下のモデルであれば、当然モタツキが出てきます。
また、当然昔のPCであれば、そろそろ液晶の使用時間的にも輝度が落ちてきていたり、そもそも画質や解像度的にも不十分だったり(15.6インチでも1,366×768のTN液晶なども結構ありますし)色々と古いモデルなりのヘタリも出てきています。
その状態のPCを、先程のようにじっくり使い込もう、という気になるでしょうか?この辺の懸念が、先程の2番目に挙げた、
「あくまで古いPCの再利用」という意識のため、恐らくお試し感覚になってしまって、基本的な用途は別途メインPCやスマホを使ってしまいがち。
という部分に繋がってしまいそうな気がしてしまうのです。
これらは何か非常に意地悪な比較や意見かもしれません。
実際には前半で触れたように、もしかしたら多くの方が、そうした古いPCにChromeOS Flexを入れて、実際に便利に、現行のChromebookを使うのと遜色ないくらいに快適に、便利に使いこなされているのかもしれません。
ただ、もちろんこれは私の個人的な意見に過ぎませんが、私だったら多分使いません。
だって、それ使うなら、手元の他のPC使ったほうが快適だからです。
第一持ち運ぶには重いですし、バッテリーもそろそろヘタっているのでACアダプター必須。第一、ChromeOSと他OSってキーが微妙に異なっているので、Windows PCのキーボードをChromebookで併用するのも、慣れないと意外と面倒くさかったり戸惑ったりするんです。
そういうこと重なっちゃうと、面倒になって、結局「時々Web閲覧に使うか」くらいになってしまう気がしてしまうんですね。
で、これは私、このブログではChromebookに限らず、革靴や腕時計でも同じことを言い続けているのですが、道具の使い勝手や愛着って、結局、そのモノをどれだけ普段からマメに触れて使っているか、存在を忘れないか、が大切だと思っています。
存在を忘れたり、使用頻度が減ってしまうと、結局慣れないし、愛着も沸かないし、そうなると使いにくいし、で結局使わなくなってしまう。使わなくなってしまうと益々慣れないし、存在自体忘れてしまうので、愛着も薄れていってしまう。そうした悪循環に陥ってしまいます。
私が心配なのは、折角ChromeOS Flexを入れて復活したはずの10年近く前のPCが、結局数日から数週間で飽きてしまって、結局使われなくなってしまう。
で、先程挙げたような、ネットでよく見かける「Chromebookって結局使いづらいし」「でも結局メインにはならないよね」「出来ること限られてるし」「イマイチ用途が思い浮かばないから出番が減った」「Chromebookって結局おもちゃ」みたいな印象で終わってしまったらもったいないな、と感じています。
ChromeOS FlexはChromeOSの魅力の一部を感じるのに良いきっかけになる。だから魅力を感じられたら、是非Chromebookも試してみてください。
長々と書いた割に、あまり根拠がなくて申し訳ないのですが、私、常々モノに関しては、単純なスペックやベンチマーク結果的な数値的な部分以上に、こうした感覚や気持ちの部分が長く使う上では重要だと考えています。
今回の文章は冒頭でも触れたように、まるでChromeOS Flex自体を否定するような内容に思われたかもしれませんが、全くそういうつもりはありません。
むしろ「入り口」として非常に有効で、面白いと思っています。
実際にここまで書いてきたように、実際に入れてみて「思ったより快適に動く」「Web閲覧や動画視聴くらいなら普通に出来る」と新鮮に感じられた方も多いと思います。それってとても嬉しいことなんですね。
だからこそ、それを入り口、きっかけとして、ぜひChromeOSを使い込んでみてほしい。
実際に使おうと思えば、先程も書いたように、結構色々な使い方が出来るからです。
だから、少しでも「面白いな」「使えるな」と思ったら、ぜひサブ用途で構わないので、Chromebookを買ってみて欲しい。人によってはAndroidアプリとの併用が相性が良いかもしれませんね(Chrome OS FlexはAndroidアプリは非対応)。
私がChromeOS Flexを入れたPCをChromebookと言わないのは、やはりChromebookはChromeOSを使うために特化した端末になっているからです。
よくChromeOSはタダだから(ChromeOS Flexが無料なので、そう思われがち)と思われている方がいるのですが、実際には違います。
モデルごとにOSのアップデート期限がある自動更新ポリシーがあるのも、細かく仕様やスペックが定められているのも、どれもがChromeOSが最適化されて動くように設計しているためなんです。
そして、やはり本家の現行普及価格帯のスタンダードモデルは、その時点でのChromeブラウザー、Web中心の作業に特化させた用途が十分に快適に行えるようにスペックも上げられています。よく言われる「低価格低スペックでもサクサク動く」は、あくまで「現行のモデルであれば」という条件付きなんですね。
もちろん過去のモデルがサクサクではない、というわけではありませんが、単純なWeb作業のように見えても、実際にはネットでの作業に必要なスペックも年々上がってきているからです。
ということで、今回も長々と書いてしまいましたが、私としては、ChromeOS Flexに興味を持たれたのであれば、是非試してみてほしいし、もしそこで少しでもChromeOSの魅力を感じられたのであれば、現行普及価格帯のスタンダードなモデルで全然OKなので、是非本家のChromebookを買ってみて、実際に使い込んでみてほしいな、と思っています。