ASUS Chromebook Flip C213NA-BW0045(文教法人モデル)はWacom Feel IT Technologiesに対応したEMR(電磁誘導方式)ペンに対応しています。この辺りのことについては前回のレビューで少し触れました。
厳密なところは分からないのですが、現在ChromebookでEMRペンに対応している5モデル(近日発売予定のLenovo 500eも合わせると6モデル)では、それぞれに付属しているデジタルペンを交換して使うことが出来ます。また、別売りの評価の高いEMRペンを購入して使うことが可能です。
そこで先日発売されたSamsungのスマートフォン、Galaxy Note8に付属のSペンとともに併用する形で愛用している方の多い、そして大変評価の高い、STAEDTLERと共同企画したSTAEDTLER Noris digitalを購入し、Chromebook C213NAで試してみました。
(尚、同じC213NAでも個人向けに販売されているデジタルペン非対応のモデルではこのペンは使えませんのでご注意下さい。)
STAEDTLER Noris digital Designed for SAMSUNG
製品の詳細については本家のサイトをご覧頂くのが早いのですが、
正直に告白します。私、EMRペンならどれも同じでしょと思っていました。更に酷いこと言えば、Chromebookの大半のタッチスクリーン対応モデル+静電式のスタイラスの組み合わせでも大差ないでしょ、とも思っていました。元々それほどデジタルペン自体に必要性を感じていなかった、というのもあります。
もちろん今でもお前はデジタルペンの何を知っているのだ、と言われたら全く自信はないのですが、それでも前述の考えは撤回したいと思っています。面白い。私の好きな万年筆などの筆記具の世界と同じです。
興味ない人にはどの万年筆だって同じだと思うのではないか、と。更に言えば、ボールペンだって、書けりゃどれでも同じでしょ、と。でも世の中にこれほどまでに筆記具に、文房具にこだわる人がいるのは何故なのか。それと同じ世界がきっとこのデジタルペンやペンタブレットの世界にはあるんだろうな、と感じました。もちろんまだそのほんの片鱗を感じられたに過ぎないのですが、自分の万年筆好きの感覚と照らし合わせてそう感じました。
だって、他にもいろいろなペン、試してみたくなったもん。
改造する人の気持ちもちょっとわかった気がするし。
大切なポイントの一つ。替芯が付属しているのは好印象です。
Samsung Chromebook Plus/Proにも本体に収納できるSペンが付属しているのですが、その時は「それが当たり前」なんだと思っていた「デジタルペンの替芯」。ところが、ネット上を眺めてみると、替え芯の入手に苦労される方が結構多いようです。実際Google Pixelbookで使えるPixelbook Pen(アクティブ静電結合方式AES)には標準で替芯は付属しておりません。ただ、こちらはありがたいことに本家Google Storeに替芯のみで販売しております。
日本までどうやって発送してもらうか、という点はあったとしても、やはりよく使う方にとっては替芯が入手出来るかどうか、しっかり用意されているか、というのは使いやすさに大きく影響してくると思います。
Noris digital純正の替芯のみを今後買い足すことが出来るのかどうか(汎用の他ペンの替芯で使えた、という話も出ていますので、大丈夫だと思いますが)は分かりませんが、ひとまず購入時点で+5本の替芯が手元にある、というのはやはりありがたいですね。まだデジタルペンの良さを本当には分かっていない私のようなユーザーでも、これだけあれば思う存分に試せます。
そうしたことを考えると、是非ASUS JAPANに限らず、日本エイサー、そして先日日本での展開を発表したLenovoも、教育市場向けに販売する際にはこの「替芯のみの入手」のしやすさ(販路)をしっかり作って欲しいな、と思います。これ、しっかり作れるだけで、違いの出しにくい教育市場向けモデルで他と差別化が図れると思います。
それか、流石にSTAEDTLERのNoris digitalはSamsung Galaxyのアクセサリーとして展開されているので諸々難しいかもしれませんが、先日の英国ロンドンで開催された、ICTの教育利用に関する展示会であるBETT(British Educational Training and Technology)において、このStaedtler Noris DigitalのChromebook Stylusが出展されたそうなので、教育市場向けにはセットで展開する、とか出来たら魅力的ですよね。
https://www.geeky-gadgets.com/staedtler-noris-digital-chromebook-stylus-30-01-2018/
って、おっと、まだ使い勝手について書いていないのに、先にそんな話をしてしまいましたが、書き心地について少し触れてみたいと思います。
鉛筆。でもその鉛筆であることが「筆記具」と考えた時、非常に大きな強みになると感じました。
ちょっと万年筆の話になりますが、あれって確かにペン先自体の大きさ、太さ、柔らかさ、調整具合から諸々で大きく書き心地は変わります。それはわかった上で、なのですが、それだけじゃないんですね、やはり。軸に何を使っているか(材質)で指に、手に触れたときの吸い付き具合が変わりますし、収まり具合も変わってくる。また重量バランスも大切で、だからメーカーによって単なるペン先の太さだけでなく、様々なバリエーションがあるんです。
ボールペンだって同じですよね?高級ボールペンが必ずしも最良の書き心地とは限らず、むしろ日本製の量産されている100円ボールペンのほうが書きやすい、という人もいるように、また水性と油性でも書き味が全く違うように、またインクの違いでも、そして同じく軸の太さや素材によっても、まったく書き味が変わってきます。
ある程度多くの方に共通する「書きやすい」ものはあったとしても、あとは個々人がどこまでのめり込むか、こだわるか(大抵その沼に、深みにハマっていくと、出口もなければ、結局大した成果もない場合も多いのですが)になってきます。
それと同じことを、このデジタルペン、Noris digitalでも感じました。これ、鉛筆です。
もちろん厳密には鉛筆ではないのですが、敢えてこの鉛筆を模したのは、そうした筆記感を想定して作っているからだと思います。芯が削られて軸が徐々に短くなる、ということはないので、この長さの鉛筆を手にした時に手や頭が「こんな感じかな」と思い浮かべるような反応をするデジタルペンなんだろうな、と思います。なので、このペン、多分(芯の減りは早くなりそうですが)、恐らくペーパーライク素材の液晶保護フィルムを貼った状態だと更にその感覚に近い気がします。
長さ的には標準でC213NAに付属するEMRペンとそこまで長さに大きな違いはないですし、太さも似たようなものです。
ただ、文章を書いていて気がついたのですが、やっぱり付属のペンのほうが指や手が疲れるんですね。これは本体に収納できるタイプのSamsungのSペン(Chromebook Plus/Proにも付属しますが)だとより顕著かもしれません。
それはペン芯にも左右されると思うのですが、この普通の木の鉛筆を手に握ったときのような、少しだけ力を吸収してくれる適度な硬さの軸と、自然な太さ、長さの重量感が、(私自身そこまで鉛筆を使った記憶はないのですが)書くという行為においては自然なのだと思います。これ、Pixelbookでも使いたかったなぁ。なんでEMRじゃなくてAES(アクティブ静電結合方式)にしたんだろう‥。
前回も使ったAndroidアプリの「Squid」。今回はペンの太さをNoris digitalと同じ0.7mmに設定して書いています。上の黒がNoris digital、グレーが付属のEMRペンです。
ほぼ同じように書けるんです。ただ、芯の柔らかさの違いもあるのでしょうが、書いていて疲れにくい。無理してる感がないのはNoris digitalです。
実際、多分握っているときの力の入り具合が違うのだと思うのですが、標準のペンだと徐々に痛くなってくるんです。あと、なんとなく力入ってるな、という感じがある。Noris digitalはそれがない。元々私、少し鉛筆やペンの持ち方不自然で人差し指に過度に力が入ってしまう癖があるので、余計にそう感じたのかもしれません。
あとはこのペン先かな。柔らかさ、というのではなく、Noris digitalのほうがペン先が分かりやすい、見えやすいんです。なので、自分がどこに何を書いているのか分かりやすいんですね。
こちらが付属のEMRペン。単純にペン芯が引っ込んでいるのは摩耗等もあるかもしれませんが、全体が真っ黒なので、ペン芯と軸の見分けも付きにくい。どちらかと言うと鉛筆やペンというより、チョークのような軸と書く場所が一体になっている筆記具のような印象です。
筆記具好きにとっては「目的もなく何か書きたくさせる」目的と手段が逆転するペン。
デジタルペン愛好家からすれば「またこういう主観入りまくり感情入りまくりの冷静に判断できないレビューは役に立たない」と言われてしまうかもしれませんが、やっぱり「目的もなく、なんかとにかく書きたくなってしまう」というのはかなり大きいと思っています。感情ってバカにされがちだけれど、物を愛用する上で、また長く使う上で非常に大切な要素です(私のもう一つのブログでは主に革靴について、その大切さを経験から発信しています)。多くの方にとっては、「何となく良い」といううまく表現できないけれど、そこから離れるのが容易ではない感情に大きく左右されます。
なので、個人的には、是非国内の教育市場向けのEMRペン対応のChromebookには、日本の筆記具メーカー各社に頑張ってもらって、こうした筆記具としても魅力的なペンを出して欲しい。出せると思うんですよ。そして、この市場はまだまだチャンスが大きいと思っています。
唯一悩ましいのは、少し長いのでお気に入りのペンケース2種類どちらにも普通には入らなかった、ということです。斜めにすれば何とか入れられるんですけどね。それと、やっぱりデジタルペンはこれに限らず、持ち運びが悩みどころです。
追記:2018年3月17日 23:00 更新
C213NA側面にペンループを付けられないか、と考えて見つけてきた「LEUCHTTURM 1917」のペンループを試しに使ってみました。
しっかり固定できて、側面インターフェース類にも干渉せず、一体感もあってなかなか好印象です。
追記ここまで
既にChromebook以外では愛用者の多いこの製品(STAEDTLER Noris digital)、Chromebookでも対応モデル自体がまだ少ないですが、かなり楽しく使えると思いますので、是非試してみてほしいなぁ、と思います。
C213NAは週明けに返却するのですが、それでもこのペンは買って良かったです。これから他のEMRペン対応機種で愛用していこうと思っています。
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また、「そりゃ、良いかもしれないけど、でもASUSのこのモデルは法人モデルだから個人ユーザーは買えないじゃん。」と思われる方も多いと思いますが、このモデル、個人でも普通に買うことができます。
量販店の店頭等では販売していないものの、ASUSの法人向けのサイトから10台未満であれば個人でも買えるようです。
興味のある方は是非ご検討下さい。