昨年後半に発表され、今年に入りようやく発売された据え置き型Chrome OS端末である、HP Chromebase All-in-One Desktop。
前回は発売を待ち望んだ一ユーザーが、実際に数日間使ってみて感じた魅力や特長について使用レポートに近い形でレビューしました。
今回は、前回触れられなかったスペック部分や、お馴染みのベンチマークスコアの結果などを中心に、もう少し詳しくこのモデルについて見ていきたいと思います。
尚、前回取り上げた部分については、今回は軽く触れるに留めていますので、興味のある方は前回もお読み頂けたら、と思います。
HP Chromebook All-in-One Desktopの主な仕様。
まずは国内販売モデルのスペックについて見ていきたいと思います。その後で、Chromebookではお馴染みの各種ベンチマークテストの結果も載せていきます。
品名 | HP Chromebase All-in-One Desktop |
CPU | Pentium Gold 6405U |
メモリ | 8GB DDR4-2400MHz |
ストレージ | 256GB SSD(PCIe NVMe M.2) |
液晶 | 21.5″ 1920×1080 IPS グレア 90°回転式 |
タッチ | 対応 |
インターフェース | USB Type-C x2 USB Type-A x2 ヘッドホン出力/マイク入力コンボポート |
サイズ | 約507.6mm(幅) x 454.4mm(高さ) x 174.52mm(奥行き) |
質量 | 約6.98kg(参考までに、24インチiMacは4.48kg) |
自動更新ポリシー | 2028年6月(第10世代プロセッサーのため) |
価格 | |
[HP Directplus] |
発表、発売当初の「HP希望販売価格」については色々と思うところもありますが、その辺りについては後述します。
この後のベンチマークスコアからの考察でも触れますが、個人的には実際に使ってみた限りでは「案外バランスの良い構成」だな、と感じています。
唯一惜しいとすれば、ひと世代前、第10世代のプロセッサーを搭載したことで、自動更新ポリシーも2022年発売ながら2028年までと2年ほど短くなってしまっている点です。
まぁ国内での販売も半年ほど延びましたので仕方ない部分もあるのですが、こうした据え置き型のPCはノートPC以上に置き場所だけでなく、使い終わった(処分する)際に悩ましい部分もありますので、より長く使えて欲しかったかな、という気もしています。
重さに関しては、コーン型の本体部分がある程度の厚みがあって、スピーカーもB&Oのものを搭載していることもあってか、それなりに重いです。約7kg。参考としてAppleの24インチiMacの重さを載せましたが、約4.5kgと、このChromebaseに比べて2.5kg近く軽いです。まぁそう頻繁に持ち運んで使うことはないかもしれませんが、この辺り好みは分かれるかもしれませんね。
ただ、個人的には今回の全体のデザインというか雰囲気はとても好みだったりします。実際、この見た目で欲しくなった、という部分も大きいです。
Pentium Gold 6405Uは控えめながら、当初懸念していたことを考えれば、思ったよりも悪くはない。
今回お借りしたChromebase All-in-One Desktopで搭載されているCPU(プロセッサー)はIntel製のPentium Gold 6405Uです。
開発コードネーム的には、Chromebookで採用されている現行モデルは徐々に第11世代(開発コード Tiger Lake)に移ってきていますが、こちらのモデルは第10世代(開発コード Comet Lake)となります。
そのため、国内では今年2022年に発売されたモデルでありながら、自動更新ポリシーは従来の第10世代プロセッサー搭載のモデルと同様に「2028年6月」と、残り6年強となっています。この点は注意が必要ですね。
基本的にはChromebookのパフォーマンスに大きく影響するのは「CPU」と「通信環境」です。後者は各ユーザーごとに環境が異なるため判断が難しいのですが、CPUに関しては一応指標となる定番のベンチマークが幾つか存在しています。ベンチマークがすべての指標になるわけではなく、実際の場面というのはもっと多種多様ではあると思うのですが、ここでは目安として判断材料の一つとお考えください。
今回比較対象として、以下の2モデルを選びました。
- 富士通FMV Chromebook 14F(FCB143FB)
‥現行モデルの上位機種。
Core i3-1115G4を搭載。現行Chromebookでは一応ハイエンドに近いプロセッサーです。 - 富士通FMV Chromebook WM1/F3(Amazon限定)
昨年から今年初めにかけてのミドルレンジ、普及価格帯スタンダードなモデルの一つ。
プロセッサーの世代としては上記14Fと同じくChromebookとしては最新世代(開発コードTiger Lake)。
HP Chromebase All-in-One Desktop |
富士通 FMV Chromebook 14F(FCB143FB) |
富士通 FMV Chromebook WM1/F3(Amazon限定) |
|
CPU | Pentium Gold 6405U | Core i3-1115G4 | Celeron 6305 |
ブラウザーベンチマーク | |||
Octane 2.0 | 25,272 | 57,855 | 21,557 |
Speedometer 2.0 | 77.1 | 174 | 78.7 |
CrXPRT2 | 73 | 146 | 73 |
Androidアプリ版ベンチマーク | |||
Geekbench 5 | single : 559 multi : 1,248 |
single : 1,143 multi : 2,279 |
single : 507 multi : 990 |
PCMark Work 3.0 | 7,334 | 11,277 | 7,909 |
3DMark – Sling Shot | 2,932 | Maxed Out! | 3,867 |
ChromebookではChromeブラウザー上で作業を行うことが多くなります。そのためベンチマークもブラウザーベンチマークを中心に評価されます。上記の表の内、最初の3つがそうしたブラウザーベンチマークです
2番めのSpeedometer 2.0はAppleのWebKit開発チームが公開している、モダンなWebアプリケーションのための応答性ベンチマークになります。
3番めのCrXPRT2は最近使われるようになりました。Chrome拡張機能として使うことが出来、Chrome OSの総合性能を計測できる、HTML 5ベースのベンチマークテストになります。
このモデル、海外ではPentium Gold以外にもCore i3-10110Uを搭載したモデルも発売されています。自宅据え置きを想定しているベースモデルでもあり、個人的にはある程度のスペックが欲しいな、と思っていました。その点では、国内発表モデルがCore i3ではなくPentium Goldだったことは、正直少し残念でした。
Chromebook以上に恐らく長く使いたい、更にいえば自宅といえば私にとってはデスクトップPCもありますので、出先で使うノートPCよりも処理速度が控えめなモデルで果たして使うのか、という気もしていたんですね。
実際にベンチマークスコア的にも、ひと世代前のプロセッサーということもあるのですが、まぁ現行普及価格帯のCeleronモデルと同じくらいのスコアとなっています。(まぁそれでも最近のCeleronプロセッサーは捨てたものではないのですが)
Celeronというだけで馬鹿にされることが未だに多い気もしますが、最近のCeleronはなかなか侮れません。実際Chromebookで普通に使っている分にはそこまでパワー不足を感じません。
そんな中で、Chromebaseとして考えた時にPentium Gold、実際どうなのか、と不安はあったのですが・・心配するほどでもなかった、意外に気にならなかった、というのが正直な感想です。むしろ、(数値には出にくいですが)メモリ容量8GBのほうが安心感に繋がっています。
前述の海外モデルでも、折角Core i3-10110Uを搭載していながら4GB RAMモデル、という場合もあって、結構バリエーションが豊富なんですね。ストレージも国内モデルは256GB SSDですが、海外では128GB SSDという場合もあります。そう考えると、下手にプロセッサーをCore i3にして価格が上がるよりも、既にある程度普段使いであれば不足のないPentium Goldですし、そこに8GB RAMというのは案外バランスは悪くないのかもしれないな、と思いました。
個人的にはCore i3だったとしても4GB RAMモデルだとしたら、何となくバランスが悪いと感じてしまう方なので。実際メモリ容量がそこまで差が出るか、というとChromebookにおいてはあまり変わらない気もするのですが、まぁ気持ちの問題です。
あと、今回のモデル、確かに発表、発売当初の価格である96,800円は割高感があったのですが、この文章を作成時点で行われているキャンペーン価格(70,950円)は海外と比べても比較的適正価格に近いかな、と感じます。実際海外では500ドル程度で販売されていますが、こちらは同じくPentium Goldで4GB RAM、ストレージも128GBだったりします。
500ドルというと単純に5万円とイメージする方も未だに多いのですが、文章作成時点(2022年2月21日)の時点で57,495円です。また米国の価格は各州、自治体の税の入る前の価格です。つまり税別なんですね。場所によっては日本同様に10%程度加算されますので、となると単純計算でも63,000円くらい。4GB RAM、128GB SSDモデルで63,000円、8GB RAM、256GB SSDモデルで71,000円と考えると、単純に国内でのサポート等も考えると悪くはないのではないでしょうか。(もちろん北米価格も時期によってキャンペーン等で更に安くはなりますので、ここではあくまで目安としてお考え下さい)
また、これがCore i3モデルになると、海外でも10万円前後に一気に上がってしまうんですね。ということは、国内でもHP希望販売価格は12〜13万円程度になる可能性もあります。このモデルの特殊性、ニーズを考えた時、いきなりこの価格でこうしたハイスペックモデルを出して売れるのか、という問題もありますし、そう考えると今回のこのモデル、ひと世代前のプロセッサーである点は若干惜しくはありますが、それ以外ではスペックと価格のバランスは悪くないのかな、と考えています。(もちろん悪くないのと、実際に買うか買わないかは別。)
キーボードとマウス:日本語キーボードは比較的バランスは悪くない。ただ、拘る人は別途お気に入りのキーボードを用意するのがオススメ。
個人的に1番気になっていたのがキーボードです。
キーボードもマウスもワイヤレス(Bluetooth接続)で電池のタイプ。型番はHP 910 Bluetoothキーボード・マウスです。
キーボードは現在国内では日本語キーボード(JISかな配列)が主流ですが、今までにも何度か触れてきているように、国内で販売されている日本語キーボード、特にChromebookのものは、Googleの規格の影響もあるのか、本当に日本語入力に適している、とは言いにくいキー(とサイズの)バランスのものが多くなっています。また、実際にそのバランスを事前にチェックしたくても、メーカーの公式サイトの製品画像を見ても、米国モデルの画像をそのまま流用しているため、英語キーボード(US配列)しか分からないことも大半です。
如何にメーカーがキーボード、文字入力を重要視していないか、が分かる部分でもあるのですが、更に残念なことに、例えば英語キーボード(US配列)を愛用している方でも、国内ではほとんど選択出来ない、別売りもされていないんですね。つまり、今回のChromebaseに関しても、このキーボード次第で使い勝手が大きく左右されてしまう、とも言えます。
その点では、キーバランス的には今回のHP 910 Bluetoothキーボード、悪くはありませんでした。
ちなみに接続に関しては、最初に電源を入れた際(初期セットアップ時)に最初に上記のような画面が表示されて、タッチスクリーン対応の有無、マウスとキーボードの有無(それぞれBluetoothかUSB接続か)を自動で検出して認識するようになっています。
仕方なく、手元にあった別のWindows PC用の有線のキーボードを繋いでひとまずセットアップを終えたのですが、その後も一応設定画面からBluetoothペアリング設定で追加は出来るものの、スリープからの復帰時や電源を入れ直した際には必ず接続が切れていて復帰されない(結果として、毎回一旦リストから削除した上で、再度ペアリングし直す必要がある)という不具合が出ていました。
ちなみにワイヤレスキーボード自体は、例えばWindows PCなどと試しに繋いでみると普通にペアリングされました。また、Chromebase自体も、他のBluetoothキーボード(Windows PC用など)をペアリングした際には、普通にスリーブからの復帰時や電源を入れ直した際にもすぐ使えたので、恐らくキーボードの何らかの初期不良だとは思うのですが、こちらについては現在メーカーの担当の方に確認中です。
また、それ以外にも、例えばLogicoolやHPの、専用のUSBドングルを使ったワイヤレスキーボードを繋げようとしたところ、USBドングル自体は認識しているものの、肝心のキーボード(だけでなくマウスの場合も同じ)を認識してくれなかったり、といった不具合もありましたので、この辺り少し気になるところです。
単なるお借りしたデモ機のみの個体不良であれば良いのですが。
尚、サイズ的には極端に小さい、ということもなく、私の場合ですと机下のトレイに、キーボードとマウスを並べて収納できました。
細かい作業をする時以外は、液晶自体がタッチ対応なのでソフトウェアキーボードも使えますし、ワイヤレスである利点も活かして、机まわりをスッキリさせられる、というのは見た目的にも良いかもしれません。
今回は先日提供いただいた、ダイシン工業株式会社製の「デスク下収納トレー」を使いました。こちらの製品化も楽しみにしています。
4年前の「出るのが早すぎた」Pixel Slateの時と似た何かを感じさせてくれる、据え置き型Chromebaseの可能性。
ということで、前回触れられなかった部分を中心に今回は触れました。実際に使ってみての良かった点、魅力や、惜しかった点などについては、前回のレビューで触れていますので、興味のある方は合わせてご覧頂けると嬉しいです。
この数日間使ってみた印象はとても良好です。
今回触れたワイヤレスキーボードの不具合はありましたが、それが単なる個体不良、初期不良であれば、特に心配する部分ではないと思いますし、前回挙げたような「単純に据え置き型になった」「液晶が大きくなった」という表面的な変化だけではない、実際に使ってみることで気付く、その結果としてもたらされる使い方の変化がかなり大きいと思っています。(これ、とても感覚的な部分なので、文章にするのが難しいのですが)
もちろん惜しい面は色々あります。ただ、どれもが致命的な訳ではなく、「欲を言えば」といった細かい部分であるのも、そこまでマイナス評価にはなっていないのもあるかもしれません。
前回も触れましたが、正直このモデルの評価は難しいです。何故なら、私も含めて多くの方は、まだ据え置き型のChrome OS端末というものにあまり触れたことがないからです(Chromeboxを使われていた方はある程度感覚は分かるかもしれませんが、一体型ならではの魅力、というのはまた別にあるので)。
ただ、それも、振り返ってみると、4年前、Googleが出した2-in-1タイプのモデルであるPixel Slateに初めて触れたときに似ているかもしれません。
あの時、世の中では、Chromebookユーザーの間でも、あのモデル(Pixel Slate)の評価は「微妙」で「いまいち」で「何の魅力があるのかいまいち分かりにくい」、といったものでした。つまり、
4年前はChromebookにおいては、今ではDuetやDetachable CM3などですっかり主流にすらなりかけている2-in-1デタッチャブルタイプは、まだまだ否定的に捉えられていた、人気もほとんど出なかった、そこまでChrome OS自体も用途的にまだ2-in-1は強く求められていなかった、とも言えます。
そう考えると、今回のChromebase、もちろん今回が初ではなく、以前から存在はしていましたが、こうして個人向けにも発売されたことで、現時点ではまだまだ「?」と感じる方も多いかもしれません。ただ、数年後には普通に「便利だよね」と使われている可能性も十分にあります。だからこそ、前回も書いたように、
自分の中で、このモデルを見た時に、何となくでも「こんな使い方をしてみようかな」といった妄想、想像が出来た方であれば、かなり面白い、魅力的なモデルになる
と思っています。
もちろん今の自分の用途に合わなければ、イメージ出来なければ無理に選ぶ必要はありませんが、もし少しでも興味を持たれたのであれば、「Chromebookの本来の方向性」とか「Chromebookとはこうあるべき」みたいな先入観を一旦捨てて、試してみて欲しいな、と思っています。個人的にはこのモデル、とても好きです。
- HP Chromebase All-in-One Desktop 製品詳細 | 日本HP
- 【Chromebookお試しキャンペーン】送料無料!HP Chromebase All-in-One デスクトップPCキャンペーン(コンフォートモデル):
96,800円→70,950円(税込)
現在、日本HPでは2月24日まで、「期間限定!Chromebookお試しキャンペーン」を開催しています。
このChromebase All-in-One Desktopもその対象となっていて、HP希望販売価格より25,850円オフの70,950円となっています。