2020年10月26日(月)、ASUS JAPANは今年初めのCES2020で発表された同社Chromebookのフラッグシップモデル、Flip C436を国内でも発表しました。
今回ありがたいことに発売前の同モデルのサンプルをお借りすることが出来ましたので、レビューしたいと思います。
追記:2020年10月28日 11:00 更新
リリースと同時にASUS Store等でも予約受付が始まりました。
一般向けモデル(予約受付中:2020年10月28日発売予定)
- ASUS Chromebook Flip C436FA (C436FA-E10161):108,909円 (税別)
- ASUS Chromebook Flip C436FA (C436FA-E10068):136,182円 (税別)
- ASUS Chromebook Flip C436FA (C436FA-E10162):154,364円 (税別)
法人向け・一部販売店向けモデル(予約受付中:12月下旬予定?)
- ASUS Chromebook Flip C436FA (C436FA-E10266):104,364円 (税別)
- ASUS Chromebook Flip C436FA (C436FA-ENG):154,364円 (税別)
【仕様】ASUS Chromebook Flip C436FA-E10162
今回まず私が非常に評価したい点があります。それが、Core i7-10510U、16GB RAMを載せたハイエンドモデル(E10162)からCore i3-10110U、8GB RAMを載せたモデル(E10161)まで構成を比較的豊富に用意してきたことです。
また、一部法人及び一部量販店向けとはなりますが、最上位のi7モデルに関しては、US配列キーボードのモデル(C436FA-ENG)も用意しています。ハイスペックモデル愛用者ほど国内でもUS配列キーボードモデルを求める声も多い、という状況をしっかり捉えているところが、国内でも今まで絶えずChromebookを展開し続けてきたASUS JAPANならでは、とも言えます。
一般向け
- C436FA-E10161:
Core i3-10110U/8GB RAM/128GB SSD/JIS配列KB
USIペン付属 - C436FA-E10068:
Core i5-10210U/8GB RAM/256GB SSD/JIS配列KB
USIペン、専用スリーブ付属 - C436FA-E10162:
Core i7-10510U/16GB RAM/512GB SSD/JIS配列KB
USIペン付属
法人・一部販売店向け
- C436FA-E10266:
Core i3-10110U/8GB RAM/128GB SSD/JIS配列KB
Type-C-HDMIアダプター付属(USIペンは別売) - C436FA-ENG:
Core i7-10510U/16GB RAM/512GB SSD/US配列KB
USIペン、Type-C-HDMIアダプター付属
の5モデルになります。詳細や価格については情報が更新され次第追記していきたいと思います。
そうした中で今回私がお借りしたサンプルモデルは一般向けのJIS配列キーボードの最上位モデルであるE10162となります。
ASUS Chromebook Flip C436FA-E10162 | |
CPU | Intel Core i7-10510U(第10世代 Comet Lake) |
メインメモリ | 16GB LPDDR3-2133 |
記憶装置 | 512GB (PCI Express 3.0 x2接続) |
液晶 / 解像度 | 14″ TFT(IPS) グレア液晶 / 1,920×1,080 / タッチ対応 / USIペン対応 |
キーボード | 78キー日本語キーボード(イルミネートキーボード) |
インターフェース | USB3.1(Type-C/Gen1) x2 , microSDメモリーカードリーダー マイクロホン/ヘッドホン・コンボジャック |
その他 | 指紋認証 / Bluetooth 5.0 / Wi-Fi 6 |
Webカメラ | 92万画素 |
サイズ / 質量 | 319.5mm x 208mm x 13.76mm / 約1.15kg |
スタイラスペン | ASUS USI Pen (SA300) 付属 |
カラー | エアロジェルホワイト |
自動更新ポリシー | 2028年6月 |
今回はこのモデルについて、私が魅力を感じた点と惜しい点について触れ、その後主要ベンチマークの数値から現行競合モデル等との比較をしていきたいと思います。
前述のように、今回ASUS JAPANはこの最上位モデルの他に一般向けにはi5/8GB RAM/256GB SSDモデル(E10068)とi3/8GB RAM/128GB SSDモデル(E10161)の2モデルを発表しています。
多くの方にとってはもしかしたらそれらのモデルで十分(価格的にもスペック的にも)と思われるのではないか、とも感じています。
ただ、これらのCPUやメモリ、ストレージ以外の部分の全体的な使い勝手についてはどのモデルも基本的には同様です。その点だけご了承の上、お読みいただけたら、と思います。
【特長】私がASUS Chromebook Flip C436FAに感じる3つの魅力。
良いモデルです。
ホント嬉しいですよ。ようやく日本でも発表になってくれた。しかも普通にほぼフルのラインナップでの展開です。もうそれだけで私の中ではこれ以上言うことないくらいなんですが、それではレビューにも何にもならないので、私なりに今回試用前、そして試用中を通して感じた魅力を挙げてみようと思います。
魅力①:最上位は第10世代Core i7、16GB RAM、512GB SSD。Parallels Desktop for Chromebook Enterpriseの条件も満たす、2020年10月現在の最高スペックを誇るChromebook。
今回お借りした最上位構成のE10162は国内外を見渡しても2020年10月時点で発売されているChromebookの中では最上位のスペックとなるモデルです。
C436FA自体は海外では今年前半に発売はされましたが、Chromebookのメイン市場である北米においても基本的にはCore i5モデルまでの展開でした。そうした中、今回(国内発売が2020年後半になったのは残念ではありますが)国内でこの構成でも出してきたことをまずは評価したいと思います。
ハイスペック、さらに言えばCore i7にメモリ16GBなんてChromebookに必要なのか、という声は確かにあると思います。ただ、少なくともここ直近の国内外の動きの中で、こうしたハイスペックモデルが(日本でも)求められるような背景があるからです。
先日(10月20日)、以前から話題になっていた、WindowsをChromebook上で直接実行できるParallels Desktop for Chromebook Enterpriseがリリースされました。
あくまで法人向け、CEU(Chromebook Enterprise Upgrade)付きのChromebookで、かつGoogleの管理コンソールで管理運用していることが前提のため、個人ユーザーにはほぼ関係ない話ではあるのですが、こちらのParallelsに必要なシステム要件が「Intel Core i5またはi7 / メモリ 16GB / ストレージ 128GB以上のSSD」となります。
幾つかの推奨されるデバイスがリストになっているのですが、その中で現時点で国内で発売されているモデルの中で、この環境を満たしているモデルは、他にDellのLatitude 5300 2-in-1 / 5400 / 7410 Chromebook Enterpriseのみしかありませんでした。CPUやストレージは満たしてはいても、国内で展開されているモデルでメモリ16GBのモデル自体がほぼ存在しない、というのが現状です。そうした中で、今回ASUS JAPANがこのC436FAにおいて法人向けにこのi7/16GB/512GBモデルだけでなく、一般向けでもこのスペックのモデルを販売してきた、というのは素晴らしいことだと思っています。
魅力②:液晶サイズ14インチでありながら約1.15kgという軽さ。
これ、やっぱり素晴らしいです。この点は国内の競合するハイスペック(ハイエンド)モデルと一味違う部分です。
最近は強度と軽さを両立させたマグネシウム合金を用いたPCが増えてきました。今回のC436FAでもこちらを採用。結果として剛性もありながら、液晶サイズ14インチのモデルで約1.15kgです。実際手にとって見ると数値以上に軽さを感じますし、これなら普段から持ち歩こう、という気持ちにさせてくれます。
もちろん最近ではChromebookでもそれなりに軽い(1kg前後)のモデルは出てきました。もちろん中には700gや800g台になって初めて軽いと言える、と思う方もいるとは思うのですが、私は単に薄くて軽ければ良い、と思っているわけではありません。
やはり薄さや軽さを重視すれば、その分何かしら犠牲になる部分、削らなければならない部分が出てきます。それは剛性かもしれませんし、キータッチの快適さかもしれません。もしくは耐久性。CPUパワー的には若干劣る省電力タイプのCPUを載せざるを得ない、など。コストが上がる、というのもありますね。
そうした中、前モデルであるC434TAでは、同時期に出た他メーカーの競合モデルに比べて(ハッキリと違いが分かるほどではないものの)薄くて、同じ14インチでも比較的軽め(1.5kgを超えない)のが魅力であり特長でした。ただ、その代わりに競合モデルがより処理速度の速い、パワーのあるタイプのCPUを載せていたのに対して、C434TAは持ち運びも重視した分、省電力タイプの若干パワーの落ちるCPUを搭載していました。
それが今回は前述のように、現行Chromebookの中では妥協していないCore i7-10510U(Uシリーズ)です。
処理速度にも妥協せず(TDPは15Wですが)、i7モデルでは4コア8スレッドです。以前に比べるとマルチタスク(複数ウィンドウでの同時作業だけでなく、そこにAndroidアプリ等も加わる)も行われるようになってきたChromebookにおいて、コア数、スレッド数の多さは地味に効いてくるようになりました。
そんな諸々も含めて、Chromebookでも、14インチ台で約1.15kgのしっかりした作りのハイエンドモデルが出てきた、というだけで私にはもう本当にたまりません。
魅力③:指紋認証にWi-Fi 6、USIペン対応(しかもペンホルダーと合わせて標準で付属)。
USIペンの書き味に関しては情報解禁になってから動画にして改めて上げたいと思います。にしても当初は世界を見渡してもほぼラインナップ自体なかったUSIペンが今では地味にChromebookでの対応モデルが増えてきましたね。そしてありがたいのが今回、USIペン自体が本体にマグネットで(右側面、microSDカードスロット部分を覆う形で)取り付けるペンホルダーと一緒に標準で付いてくる、という点です。
ちなみに今回のUSIペンは充電式ではなく乾電池式です。もちろん先行して発売されているHPのUSIアクティブペンなども互換性があるので併用が可能です。
また、今回国内ではHPのx360 14cに続く、指紋認証リーダー付きです。電源ON時のサインインは指紋認証では出来ません(従来どおりパスワードもしくはPIN入力等が必要)が、スリープからの復帰時に指紋認証が使えるのは従来どおり(最初の採用はGoogleのPixel Slate)。これ、慣れるとなかなかに便利です。
またWi-Fi 6にも対応、とここ最近の主要どころはしっかり押さえてきているのも嬉しいところかな、と思いました(ただ、我が家は未だにWi-Fi 6に対応させていないので、その恩恵を受けられず)。
【特長】私がASUS Chromebook Flip C436FAに感じる3つの惜しい点。
ということで、ここまで見てきたとおり、スペックを上から眺めていけばほぼ魅力に感じてしまうくらい、今回も前モデル(C434TA)同様に非常にバランスもよく完成度の高いモデルに仕上がっています。実際CES2020(今年1月)に発表されたときには私、完全に買うつもりでしたし。
買わなかったのは、昨年までのASUS JAPANであれば間髪入れずに国内でも即発表してきたからです。だから今回も前回同様国内モデルを買おうと思ってたんですよ。そうしたら昨今の事情でその後静かになってしまいまして。
うん、一番の惜しい点は国内での発表と発売のタイミングを少し逃した点かもしれないな‥裏を返せばこれだけ国内Chromebook市場が盛り上がりを見せ始めてきた今だからこそのベストタイミングなのかもしれないけど‥個人的には「他メーカーはどんどん新モデルを発表してるけど、肝心のC436FAはまだか」と何度思ったことか。
ということで、ここからはそんなC436FAに感じる3つの惜しい点を挙げていきたいと思います。
惜しい点①:相変わらずイルミネートキーボードが明るい場所だと見にくい。
今回のキーボードも非常に打ち心地自体は良好です。また、タッチパッドも大型でパームリジェクション機能にも対応してるとのこと。この辺り、流石に妥協がありません。本体自体も軽量ながら剛性感もありますし、天板を開くと3°の角度が生まれるエルゴリフトヒンジも健在です。
ということで、JIS配列が好きな方にとっては変な癖もない非常に好印象なキーボードなことは、今までのハイエンドモデルであったC434TA同様です。で、C434TAは素晴らしいモデルだったのですが、こんな部分まで踏襲する必要はなかったのではないか、と思います。
暗い場所では非常に重宝するイルミネートキーボード。でもフォント自体が光るようになっているため、ONにしっぱなしだと明るい場所や昼間だとキーフォントが非常に見づらくなるんですね。もちろんマメにOFFにしておけばよいのですが(ONとOFFはalt+最上段の明るさキー)、この点はちょっと難点です。実際他社の一般的なキーボードバックライトだと縁回りが光ったりと、明るい場所で例えONになったままでも見にくくならないようになっているのですが、ここはデザイン重視だった、ということかな。
そんなイルミネートキーボード。もちろん美しさ的にはキーフォント自体が光ってくれたほうが見やすいですし美しいとは思うので、その辺りを狙ったのかもしれませんが、前述の写真をご覧いただくと気づかれると思うのですが、
均一に光ってくれるのであれば嬉しいのですが、意外とところどころフォントの一部が暗めだったり、と明るさにムラが見られます。まぁ大したことではないんですけどね。前回のC434TAでも同様の意見(感想)が出ていたと思うので、この辺りもう少し詰めてほしかったなぁ、と欲張ってしまいます。
惜しい点②:天板が素晴らしい。美しい。でも皮脂やスレ傷も合わせて虹になる。
今回発表されたC436FA、今年のCES2020で発表された際には天板色が2種類あったのです。その中から今回、国内モデルは統一して白、エアロジェルホワイトを採用してきました。
これ、私の中では非常に嬉しい部分でした。何故なら従来のASUS Chromebookにはない雰囲気を持っていたからです(ちょっとHP製のChromebookに似てると言えなくもないですが)。もし日本で発表されるのであれば、是非、せめて自分が購入するであろう最上位モデルだけでも白天板にしてほしい、と思っていたら、見事に全構成白ですよ。ホント、それだけで国内モデル買う理由になりました。
で、このエアロジェルホワイトの天板、単なる白ではなく、さりげない加工が施されていまして、見る角度、天板の角度や光の当たり具合によって、天板に様々な色の光が表れてなんとも言えない表情を見せてくれます。
ってここまでだったら全然惜しい点じゃないじゃん、と思われたあなた。確かにその通りなんですが、この天板が少しだけ手強いんですよ。それが、
皮脂やさりげない表面の擦り傷っぽい痕もしっかり虹になって表れるんです。
「いやぁ、この天板がまた良いんだよ、ホント‥」
とか思いながらあまり天板ばかり撫でたり、カバンに無造作に放り込んだりしてると、ある時ウットリしながら天板眺めようとしたら虹のような天板よりも虹になった皮脂汚れや線痕のほうが目に飛び込んできてしまうかもしれません(実際今回私が見つけた虹の線痕は傷ではなく単なる皮脂汚れでしたが)。
汚れが目立つ、というようなことはありませんが、キレイな天板なだけに、雑に扱い過ぎるとちょっと切なくなるかもしれませんので、出来ればスリーブケースなどをオススメします(本体自体軽いですし)。
なぜ最上位モデルには付属させないんだ。
惜しい点③:C434TAから続く僅かな不安要素。まれに液晶(表示)が震える。(個体差の可能性大)
今回挙げている3つの惜しい点は、3つの魅力に比べると数合わせ的に無理矢理に取ってつけたようなものである印象を受けるかもしれません。実際それくらい完成度は高いです。ただ、意外とこうした些細な惜しい点が積み重なって、「凄く良いんだけどツメが甘い」「イマイチ購入にあと一歩が踏み切れない」ということが時々あります。
さて。私は昨年、同社のハイスペックモデルであるC434TAというモデルを国内で購入しました。非常に満足していたのは当時のレビューをお読みいただけたら何となく伝わるのではないか、と思います。
あれから間もなく1年半が経ちます。そして今回、ある意味でこのC434TAの後継とも言えるようなモデルである今回のC436FAが日本で発売されました。私にとっては待望の、待ちに待った、と言っても良いくらいです。
なのですが、正直なところ、私の中で結局この前モデルであるC434TA(今回お借りしたC436FAではない)はメインのChromebookとなれませんでした。理由を無理やり挙げていけば色々出せるのかもしれませんが、一番の理由は恐らくここで触れた些細な惜しい点なのです。
それは、私のC434TA、購入後少し経ってから、結構頻繁に、けれど不規則に、作業時に、
液晶画面の表示が震える(揺れる)
という不具合が起こったのです。これについては当時も少し触れたのですが、その後何度かASUS Store Akasaka(当時)に実機を持ち込み、店頭で目視で症状を確認してもらい、また動画にも撮って、それも見てもらいました。けれど、基板の交換等修理を行ったにも関わらず、原因は不明のままでした。また修理後も再発し、何度か修理に出して最終的に安定した(その後再発なし)のですが、そうしたことがありました。
それもあって、私の中で何となく気持ちが入り込めなくて、結局メインにし切れなかった、という事情がありました。ただ、それもその時、C434TAにだけ起きたのであれば個体差で済んだのですが。
今回お借りしたサンプルのC436FAでも2度ほど似たような症状が起きたんですね。
これはもう、単純に私の皮膚になにか精密機器の液晶部分をおかしくさせる静電気か微粒のなにか、もしくは体質的な問題があるのかもしれません。また、こういう不具合は、起きない人には何百台買っても起きないのに、起きる人の元では立て続けに(しかも原因はメーカーで調べても不明)起きるようです。だからタチが悪い。
今回のモデルはここまで散々挙げてきましたが、国内外でも最上位スペックを持つChromebookです。となれば、価格もそれなりにします。正直一般的なChromebookユーザーの大半はこの構成のモデルには手を出さないかもしれません。それだけに、それだけの想いで購入するであろうモデルであるだけに、こういう症状が改めて私のもとで(発売前のサンプルとはいえ)起きてしまったことが、何となく心に引っかかってしまうのです。
もちろんこうした製品である以上、不具合率が0%ということは絶対にあり得ません。もしそれを求めるのであれば、そもそもこの程度の価格では買えません。というか、ビジネス自体成り立たないと思います。
最近になってASUS JAPANは独自の「ASUSのあんしん保証」というサービスを開始しました。
https://asus-event.com/anshin/
そして今回のASUS C436TAにもこの保証が1年間無料で付いてきます。そう考えると非常に安心して使えるとも考えられますが、とはいえ不具合が起きればその間そのモデルは使えなくなるわけです。
現行Chromebookの実質フラッグシップモデルであるだけに、こうした不安がなるべくでも軽くなるように、よりしっかりした製品品質を期待したいところです。
【比較】主要ベンチマークの結果から同世代Core i3-10110UやCeleron 5205U、第8世代Core i7-8665U搭載モデルとの比較する。
今回国内で発表されたC436FAは2020年10月時点での最高スペックのChromebookとなるわけですが、多くの方にとっては「そもそもChromebookにCore i7とか必要なの?」「他のハイスペックモデルと違いがあるの?」といった疑問も持たれることではないか、と思っています。
もちろんPC(Chromebook)の快適さはベンチマークの数値だけで図ることは出来ませんが、少なくともそのモデルの持つ処理速度等の一つの目安や他との比較としては参考にはなると思っています。
そこで今回、幸いにも手元に同世代のCore i3-10110Uを載せたAcer CP713-2W-A38P/E(Spin713)、今年後半の普及価格帯の一つの指標となるCPUであるCeleron 5205Uを載せたAcer C871T-A14N(712)がありますので、合わせて計測してみました。
また、前述のように、国内では貴重なChromebook EnterpriseモデルであるDell Latitude 5400 Chromebook Enterpriseの最上位構成(Core i7-8665U)や、GoogleのPixelbook Goと同じCPUを載せたPixel Slate(Core i7-8500Y)も合わせて載せてみたいと思います。
お馴染みのWebブラウザー系ベンチマーク比較
Chromebookでは以前からお馴染みとなっているブラウザーベンチマークです。Chromebookは低スペックでもサクサクと言われますが、それでも特にこの中のOctane 2.0の普及価格帯モデルにおける結果はここ数年、急激に上がってきています。
数年前まででしたら8,000前後あれば十分と言われていましたが、それが11,000前後(Celeron N3350)になり、昨年の標準(Celeron N4000)が14,000前後まで上がっています。今年はPentium Silver N5000やそのReflesh版であるN5030などが出てきましたし、また第10世代であるCeleron 5205Uも徐々に出始めています。そうした状況もあり、ここからはこのCeleron 5205U辺りの数値(17,000前後)が基準になってくるのではないか、と考えています。
CPU / 世代 | Octane 2.0 | Speedometer 2.0 | Speedometer 1.0 | |
ASUS C436FA-E10162 | Core i7-10510U 第10世代 Comet Lake |
46520 | 116.5 | 198 |
Acer CP713-2W-A38P/E | Core i3-10110U 第10世代 Comet Lake |
43428 | 118 | 199 |
Acer C871T-A14N | Celeron 5205U 第10世代 Comet Lake |
17277 | 57.4 | 93.3 |
Dell Latitude 5400 Chromebook Enterprise |
Core i7-8665U 第8世代 Whiskey Lake |
45742 | 119 | 195 |
Google Pixel Slate | Core i7-8500Y 第8世代 Amber Lake-Y |
33446 | 74.8 | 136 |
それに対し、ハイスペックのモデルは遂に40,000超えが一般的になってきました。1~2年ほど前であればGoogle Pixel Slateのように、i7モデルであっても35,000弱くらいまでが一つの基準となっていたのですが、それが今年はi3モデルであっても43,000程度(Acer CP713-2W-A38P/E)と一気に上がってきています。
もちろん数値ほどの劇的な体感差というのは前述の普及価格帯のここ数年の推移に比べると緩やかなものにはなってきていますが、それでもこの文章の前半でも触れたように、最近では多コア、多スレッドによる並行処理やAndroidアプリ、Linux、更には今後EnterpriseモデルではWindowsも走らせる、といった用途も一部では想定されてきています。
とはいえ、もちろんそうした特殊な使い方をしなくても、この辺りの数値(40,000前後)が出るようであれば、一般的な用途からリモートデスクトップのような使い方まで幅広く、より快適に使えることは確かです。
今回の比較で言えば、Core i7-10510U(C436FA)とCore i3-10110U(Acer CP713)の差が1割弱となっていますので、正直なところ体感ではほとんど気づかないくらいではあります。ただ、この後挙げるAndroidアプリのベンチマークではコア数やスレッド数の違いがそのままハッキリと出てきます。この辺り意識しながら眺めていただけると、より分かりやすいのではないか、と思います。
Androidアプリ版の主要ベンチマーク比較
私自身、実はほとんどChromebookではAndroidアプリ自体を使っていないのですが、最近はユーザー層の拡大により、積極的にAndroidアプリを使いたい、と考えている方も増えてきているのではないか、と思います。
ChromebookのOSはAndroidではありません。あくまでChrome OSです。
ただ、対応開始初期に比べると、Androidアプリへの対応具合もだいぶこなれてきたのかな、という印象も受けています。実際AdobeのLightroom Mobileで写真の編集をされている方やPowerDirectorやここで挙げるKineMasterなどで動画編集を行っている方も見かけます。私自身も以前普及価格帯のモデル(Celeron N3350)でPowerDirectorでYouTube動画を作成したこともあります。
ということで、ここでは幾つかのAndroid版のベンチマークアプリで計測してみました。また、折角なので参考として(最新端末ではありませんが)GoogleのPixel 4でも同じベンチマークを行っています。
Geekbench 5 | 3DMark Sling Shot Extreme OpenGL ES 3.1 |
PCMARK Work 2.0 Performance |
KineMaster | |
[参考] Google Pixel 4 (Snapdragon 855) |
Single: 680 Multi: 2012 |
Overall: 4776 (Graphics: 5386) (Physics: 3421) |
Performance: 9705 Web Browsing: 7166 Video Editing: 6978 Writing: 9456 Photo Editing: 20327 Data Manipulation: 8959 |
コーデック性能: 39.6MPixel /s 編集&共有: 2160p レイヤー枚数: 3x2160p 8x1080p 8x720p |
ASUS C436FA-E10162 (Core i7-10510U) |
Single: 1054 Multi: 3720 |
Overall: 3599 (Graphics: 3294) (Physics: 5324) |
Performance: 12287 Web Browsing: 10939 Video Editing: 5661 Writing: 16168 Photo Editing: 29029 Data Manipulation: 9638 |
コーデック性能: 15.8MPixel /s 編集&共有: 1080p レイヤー枚数: 5x1080p 5x720p 4x540p |
Acer CP713-2W-A38P/E (Core i3-10110U) |
Single: 1017 Multi: 2196 |
Overall: 3082 (Graphics: 2923) (Physics: 3806) |
Performance: 11715 Web Browsing: 9443 Video Editing: 5844 Writing: 15862 Photo Editing: 26065 Data Manipulation: 9671 |
コーデック性能: 12.0MPixel /s 編集&共有: 1080p レイヤー枚数: 5x1080p 5x720p 4x540p |
Acer C871T-A14N (Celeron 5205U) |
Single: 464 Multi: 885 |
Overall: 1756 (Graphics: 1864) (Physics: 1460) |
Performance: 8493 Web Browsing: 8994 Video Editing: 5542 Writing: 8387 Photo Editing: 15680 Data Manipulation: 6742 |
コーデック性能: 15.8MPixel /s 編集&共有: 1080p レイヤー枚数: 4x1080p 4x720p 4x540p |
Google Pixel Slate (Core i7-8500Y) |
Single: 610 Multi: 1386 |
Overall: 2174 (Graphics: 2327) (Physics: 1766) |
コーデック性能: 15.8MPixel /s 編集&共有: 2160p レイヤー枚数: 3x2160p 5x1080p 5x720p |
数字の羅列で分かりにくいと思いますので、個人的に注目した部分を赤字にしています。
まずはGeekbench 5。CPUの細かい性能を見ることが出来ます。個人的に目を引いたのはMultiの数値の差。Core i7-10510UとCore i3-10110Uで(Singleの数値はほとんど変わらないものの)2倍弱近い差が出ています。最近はこのMultiの差がChromebookにおいても意外と体感差(ちょっとしたモタツキなど)に表れることが出てきています。この辺りはまた回を改めて触れてみたいと思います。
続いてPCでも3D性能を見る際によく使われる定番のベンチマークである3DMark。一部Chromebookでは適用されない機能があるため、単純比較は出来ませんが、Chromebook上における3Dを用いたゲーム等の動きを見る際の指標の一つとして眺めていただけたら、と思います。
Core i7-10510UとCeleron 5205UでOverallで倍近い差が付いていたのも印象的でしたが、意外と個人的に注目したのが[参考]としてのスマートフォン、Pixel 4との数値の違いです。Overallでは差がそれなりに開いていますが、例えばPhysicsの値ではむしろCore i7-10510U(C436FA)のほうが上回っていたり、となかなかおもしろい結果になったな、と感じました。実際今回のASUS JAPANの発表会でも3Dゲームなども快適に楽しめる、といったことを一つの強みとしていたくらいです。
同じくPCでお馴染みの総合的なベンチマークであるPCMARK。こちらはChromebook上ではフルスクリーンで計測していないので、あくまで参考程度に眺めてみてほしいのですが、それぞれの項目がそれなりにスマートフォン(Pixel 4)と比べてもなかなか良い勝負をしている辺りを見ていただけたら、と思います。(Pixel Slateはなぜか今回最後まで計測出来ず)
最後が動画編集アプリのKineMaster。なかなか分かりやすい操作感で使い勝手の良い動画編集アプリとしてChromebookユーザーでも評価の高いアプリの一つですが、こちらの設定項目に、コーデック性能や同時に使えるレイヤー数の目安などを計ることが出来る簡単なベンチマークがあります。
ここでは今回挙げたChromebook間ではそこまで大きな違いは出ませんでしたが(レイヤー数に多少の違いが出たくらいで、編集&共有はいずれも1080pでしたし)、Pixel Slateだけ2160pと高めに出たのが少し驚きました。あとはコーデック性能的にはやはりスマートフォンのほうが高そうですね。
スマートフォンの小さな画面で指のみで細かい動画編集をするのが合う方もいるとは思いますが、Chromebookの場合、大きめの液晶サイズを生かして、更にマウスでも指でも作業が行なえ、更に文字入力等もキーボードから行える、というのは作業のしやすさに大きく影響してきます。最近はこのKineMasterや前述のPowerDirectorなどChromebook対応を謳ったアプリも出てきていますので、一つの選択肢として参考にしてみていただけたら、と思います。
今回は項目が増えると更にわかりにくくなりそうなので割愛しますが、今後この辺りの結果や違いも蓄積していきながら活用、公表していきたいな、と思っています。
【まとめ】国内での発表、発売が遅れたのが惜しいが、今でもその魅力は全く褪せない良機の予感。
この半年以上、どれだけ待ち望んだことか。そして、待ち望むあまり、私としては珍しく既に先行して発売されていた海外モデルを個人輸入に至れなかったモデルでした。それは実物を今回手に取る前から、前モデルC434TAの完成度の高さから想像できるくらい、このモデルは名モデルになる予感も匂いもプンプンしていたからです。だからこそ、日本での発表を心待ちにしていたし、何度も買おうと思いながら「いや、でも間もなく日本でも出るから」という葛藤を繰り返していたわけです。
だから本当に嬉しい。
正直、価格を考えたら、誰にでも薦められるモデルではありません。この価格出すならWindows PCやMacBookなど他のOSのPCを買うよ、という声が出ても全然不思議じゃないし、それで良いんだと思います。そういう選択肢ももしあなたの中にあるのなら、是非そうした他OSのPCも考えてみてほしいと思ってます。
ただ、それでも、それだとしても、今回のC436FAは、本当に素晴らしい形で出してくれました。
最上位モデルが私の望んでいたエアロジェルホワイトで、USIペンもペンホルダーと一緒に付属してくれていて、しかもUS配列キーボードまで用意してくれたんです。ここまでしてくれたら、応えないわけにはいかない。というか、そういう義務感じゃなくて、素直にやっぱり欲しいよ。そりゃ文中でも触れたけどさ、以前の考察では様子見とか書いたけどさ、それは全部この国内モデルの影がちらついていたから、だから。
スペックだけ考えれば、正直現在の国内ではHPやAcerなどから近いものが、またそれぞれに違った魅力や特長を備えて展開されています。そしてそれらは10万円を切っています。その価格差だけの価値を見いだせるかどうか、という点を考えたら、今回何度も触れているように、
国内での発表、発売が遅れたのが惜しい
んです。どうもここ最近、ASUS JAPANは相変わらず良いところ突いてくるモデルをしっかり出してくるんだけど、どこかタイミングが微妙にズレてしまっているんです。もしかしたらそれが却って吉と出るかもしれないけれど、常に期待して、かつ応援しているからこそ、どうしてももどかしく感じてしまうんですね。
さて、今回のレビュー。ここまで読んでくださったあなた、本当にお疲れさまでした。そしてありがとう。なんとここまでで16,500字を超えました。まだまだ語りたいことはいくらでもあります。
要は結論としてはそれなんです。
まだまだ語りたいことは山ほどある。もう既にレビューの体を成してない。そんな想いが溢れてくるモデルが、このC302CA→C434TA→C436FAと続く(私が勝手に続けただけ)ここ最近のASUSの名モデルの系譜です。
ホント、好きなんだよなぁ。
正直そこまで売れないかもしれない。それくらい価格的には手強いんだけど‥。
でもむしろ今の日本のユーザー層が、こうしたモデルを受け入れてくれるだけの土壌が出来つつあるんだ、ということを願いたいと思っています。