国内では2018年12月14日に発売されたASUSの14インチクラムシェルタイプのChromebook、C423NA。その兄弟機とも言える15.6インチのモデルがあります。
それが今回レビューするC523NAです。
海外ではC423NAとほぼ同時期に発売されたのですが、国内では(恐らく)ユーザー層が被る、といった事情から(市場自体小さいですし)発売が見送られていたこのモデル、気がつけばいつの間にやら発売されていました。それもASUS Store専売ではなく、ビックカメラやAmazonでも取り扱いが始まっています。
今回、ASUS JAPANよりこのモデルをお借りすることが出来ました。
基本的なスペックがC423NAとほぼ同じため、特長をなかなか見出しにくいモデルではあるのですが、個人的に大きな魅力と感じているのが、
国内では貴重な15.6インチという大画面と、でありながら1.5kgを切る軽量感
です。
ASUS Chromebook C523NA-EJ0130
ASUSのChromebookは一部を除いて、型番からモデルのだいたいの特長が掴めます。
- 頭文字CはChromebook、CTの場合はChromebook Tablet
- 3桁の数字のうち、最初がおおよその液晶サイズ
(11.6”は2、12.5”は3、15.6”は5など、四捨五入では若干ない部分もあり) - 数字2桁目はモデルのタイプ
(0は耐衝撃クラムシェル、1は耐衝撃コンバーチブル、2はシンプルクラムシェル、3はシンプルコンバーチブル。ただし、C101PAや以前のモデルなど例外あり) - 数字3桁目はモデルの世代。主にCPUなど。
(2はN3050/60など主にBraswell世代、3はN3350など主にApollo Lake世代、4はN4000など主にGemini Lake世代。ただし、Core m/iは例外あり)
今回であれば、C(Chromebook)で5(15.6インチ液晶)の2(耐衝撃性はないシンプルなクラムシェルタイプ)の3(Apollo Lake世代のCPUを載せた)モデル、となります。
ただ、最近C434TAの派生モデル的にC425、C433、更にはC436といったモデルの情報も出てきていますので、そろそろシンプルな見分け方がしづらくなってくるかもしれませんね。
ということで、先程も触れましたが、C423NAと同じ世代、液晶サイズが15.6インチのモデルになります。ただ、国内で発売するにあたり(また後発で発売したこともあり)スペック上で若干違いを出しています。完全に競合させずに、そこはニーズに応じて、というところでしょうか。
C423NAとC523NA、2つの国内販売モデルのスペックを並べてみます。
CPU | Intel Celeron N3350 | Intel Celeron N3350 |
メインメモリ | 4GB | 8GB |
表示機能 | 14.0” FHD(1920×1080)ノングレア | 15.6” FHD(1920×1080)ノングレア |
ストレージ機能 | 32GB eMMC | 64GB eMMC |
インターフェース | USB 3.1 (Type-C/Gen1) x 2 USB 3.0 x 2 マイクロホン/ヘッドホン・コンボジャック×1 microSDカードスロット x 1 |
USB 3.1 (Type-C/Gen1) x 2 USB 3.0 x 2 マイクロホン/ヘッドホン・コンボジャック×1 microSDカードスロット x 1 |
キーボード | 78キー日本語キーボード | 74キー英語キーボード |
サイズ | 幅322.6mm x 奥行228.0mm x 高さ16.1mm | 幅357.5mm x 奥行248.5mm x 高さ15.6mm |
質量 | 約1.25kg | 約1.43kg |
価格 | 42,800円(税別) | 59,800円(税別) |
自動更新ポリシー |
液晶サイズなどサイズや質量以外の主な違いとしては、赤線を引いた部分、メインメモリ(4GB/8GB)、ストレージ(32GB/64GB)、キーボード(日本語/英語)になります。
価格差は17,000円(税別)。その中でこの違いでどちらを選ぶか、という話になるかな、と思います。
端末のサポート期間である自動更新ポリシーは同一のハードウェアプラットフォームのため、日本国内での発売時期は異なる(2018年12月/2019年9月)ものの、同じ2023年11月までとなります。(追記修正:ここ最近の自動更新ポリシーの延長により、この2モデルも「2024年6月」に延長されました。)
このあと触れますが、決してN3350のモデルが悪いわけではありませんが、約1年後、更にC204MAやC214MAなど、Gemini Lake世代のモデルが標準になってきている現時点(2019年10月)では、欲をいえばそれらと同じN4000を載せたモデルで出してほしかった。その場合は型番は「C523NA」ではなく「C524MA」になるわけですが。その場合、恐らく自動更新ポリシーもそれらと同じ2025年6月となるだけに、その点惜しいな、と思います。
外観:国内では貴重な15.6インチながら、外観は非常にライト。
外観から見ていきます。といっても真新しいものがあるわけではありませんが、まず目を引くのが本体の大きさ。
ちょっと分かりにくい比較になってしまいましたが、今年40周年を迎えた学研の月刊誌、ムーを横に2冊並べた大きさ(若干奥行きがはみ出る)になります。ちなみに先日ムー基準だと分からない、というご感想を頂きましたので別の例えをするなら、先日Googleが作成、全国のビックカメラ等で配布している「はじめてのChromebook – Chromebookスタートガイド」も同じ大きさです。「はじめてのChromebook」を横に2冊並べた感じですね。
ただ、C423NA同様、左右は狭縁ベゼル(ベゼル幅6mmずつ)を採用しているため、思ったよりも幅は大きいという印象はありません。昔の15.6インチの大きさに慣れている方だと「あれ?思ったよりも大きくない」と新鮮に感じるかもしれません。
奥行きに関しては上下のベゼル幅(上15mm/下33mm)がそれなりにあるため、それなりにあります。ただ、個人的には上下に関しては(ベゼル下側のASUSロゴの好みは別としても)ある程度あったほうが画面が見やすい(その分液晶の位置が若干高くなるため)ので、このくらい大きめ(15.6インチなど)のモデルを使う場合には、むしろ使いやすいのではないか、と感じます。あとベゼルだけ黒で本体はシルバーになっていますが、黒縁になることで液晶画面が締まる見た目の効果もあると思いますので、こちらも個人的にあり。
先ほど触れましたが、15.6インチながら重さが1.5kgを切っている(約1.43kg)というのはこのモデルの大きな魅力だと思っています。どうしてもこのサイズになってくると、1.5kg超え程度であれば優しい方、中には1.7kgだ2kg弱だ、とどうしても重くなってしまうものも多いですから、12.5インチ辺りのモデルでも時々剛性の高いモデルであれば最近は1.4kg超えはザラにありますし、その中で15.6インチ、というのは一つの長所だと思います。
ただ、流石に幅が控えめ、とはいっても、そこは15.6インチモデル。お使いの鞄(やリュック等)によっては、PC専用のスリーブ(ポケット)部分にギリギリ入らない場合も出てきそうです。
ちなみに私が愛用しているBellroyのClassic Backpack(17リットル)ではギリギリ入らず、他の荷物と一緒に入れるしかありませんでした。
この場合、どうしても天板が他の荷物と擦れたりしやすくなり、その分傷が入りやすくなります。決して剛性の高い本体ではないので、その辺り気遣いが若干必要かもしれません(気にならず放り込んでいる方であれば何ら問題ありませんが。あとステッカーなどを色々貼る方。)。
インターフェース:必要十分な端子類。USB3.1(Type-C)は2つとも充電、外部モニターへの出力可能。
本体の厚みと側面インターフェースを見ていきます。
液晶側(天板側)の厚みは約6mm、天板側がシルバー、液晶側がブラックのツートンのため、実際よりも更に薄く見えます。液晶面は180度まで倒せます。ただ、後述しますが、ここまで倒すと上下の視認性については問題が出てきます。
本体側面です。厚みは8mmです。まずは左側面から。
流石に奥行きがあるので、インターフェース部分のみを写していますが、左からUSB 3.1(Type-C/Gen 1)、Power LED、microSDスロット、マイクロホン/ヘッドホン・コンボジャック、USB 3.0(Type-A)となっています。
続いて右側面。こちらはシンプルにUSB 3.1(Type-C/Gen 1)、USB 3.0(Type-A)のみとなっています。
先日発表されたPixelbook Go辺りからChromeobokのBluetooth周りが改善されてきた、という話もありますが、まだまだBluetoothの相性が出やすいのはスマホ同様なので、USBドングル(レシーバー)等が使えるUSB(Type-A)端子があるのはありがたいです。中にはUSBメモリを使う人もいるのかな。
なお、左右どちらのUSB 3.1(Type-C)端子からも充電は可能。付属の充電器はコードと一体型ですが、C423NAなどシンプルなモデル(耐衝撃タイプではない)に付属しているコンパクトなタイプです。
また、左右どちらの端子からでもUSB-C接続で4Kの外部モニタに出力可能です。ただ、4Kで出力すると確かに見やすく便利なのですが、その分CPUの負担も大きくなるのか、若干本体は熱を持ってきますので、その点「ちょっと無理させてるかな‥」という気になります。
キーボード:日本発売モデルながら英語キーボードである点に注意。
続いてキーボードについて。一般的なフルサイズのキーボードです。
先日エイサーが国内でも初のテンキー搭載の15.6インチChromebookを発表しましたが(Amazon限定)こちらのC523NAは従来通りのテンキーなしのモデルです。キー自体はC423NAなどとほぼ同じですが(キータッチも)左右に余裕がある分、比較的シンプルな印象を受けます。今回は国内販売モデルながら英語キーボードのみ、というのも印象を左右しているかもしれません。
これも好みにはなりますが、このC523NAでも左右のスピーカーは底面にあります。折角左右にスペースもあるので、ここはAcerのモデルや先日のPixelbook Goのように、キーボードの左右にスピーカーを配置してほしかったかな、と思います。ただ、そうなってくると、色々ハードウェアプラットフォーム的にも作り的にも別物になってしまうので、コスト面も含めて難しくなってくるのかもしれませんね。
タッチパッドに関してはC223NAやC423NA同様、手前左右が深く沈み込むタイプのものになります。タッチ自体の反応は悪くありませんが、結構沈み込むので人によっては少し気になるかも。操作的には不便は感じません。
液晶:左右の視野角は広いが、上下が若干気になるところ。全体としては”悪くはない”。
液晶です。ASUSのChromebookはメーカーページ上でもカタログでも、「TFTカラー液晶」という表記がされます。基本的に「型」についての記載はありません。「型」というと分かりにくいかもしれませんが、よく一般的に使われる「IPS型」「VA型」「TN型」といったものですね。そのため、「TFTだからIPSじゃない」といった誤解を生みやすいのですが、TFT液晶の中に型(IPS、VA、TN)がある、と思ってください。
一般的にVA型やTN型よりもIPS型のほうが高級で見やすい、といったイメージを持たれがちですが、実際には(コスト面は別として)それぞれにメリット、デメリットがあります。
個人的には「自分が普段使いで見やすければ、何型でも良くない?」と思っています。まぁそうなると一般的に求められる状況だとIPS型が見やすくはなる気もするのですが、例えTN型であっても、本人が「見やすいしOK」と思ってれば、それはその人にとって見やすい液晶です。
そうした視点で改めてこの15.6インチの液晶を見てみると、”悪くはない”液晶ではあります。左右の視野角(横から見て)も比較的色味に大きな変化もなくきれいに見れますし、その点では従来の普及価格帯(C202SAなど)のモデルに比べると最近の液晶は見やすくなったな、と感じます。
ただ、一点気になるのは、上下の視野角が狭い、ということです。これは恐らく同じ液晶を使っている、と思われるC423NAに比べて目立ちました。液晶の大きさなどもあるのかな、という気もしていますが。
このモデル、一応液晶は180度まで倒せますし、商品ページにも「タブレットのように置いて使える」として、
ASUS Chromebook C523は、180°回転するヒンジを備えており、デスクにフラットに置くことで、友人や同僚と簡単に画面共有ができるのでグループディスカッションもスムーズに行えます。
とあるのですが、左右の友人や同僚は良いのですが、上下側から覗く友人や同僚は色味がかなり変わるので、ちょっと厳しいかな、という気がします。
14"のC423NAの時にはそこまで感じなかったのですが、上下の視野角が人によっては気になるかも。僅かな角度で意外と色味が変わります。左右は特に気にならず。画面が大きい分、この辺り影響受けやすいのかもしれないですね。 #Chromebook pic.twitter.com/NTr3bzdDJd
— おふぃすかぶ.jp (@OfficeKabu) October 14, 2019
一応製品ページには「タブレットのように倒して使える」とあるように180度まで倒せるのですが、この段階で斜めから見ると、上下方向から見る人はちょっと画面が見辛い。左右はそこまで気になりませんが。
それくらいかな、使い始めで気になるのは。#C523NA #Chromebook pic.twitter.com/WroaL7Xhzi— おふぃすかぶ.jp (@OfficeKabu) October 14, 2019
ちなみに「タブレットのように」とはなっていますが、液晶自体はタッチ非対応です。
Androidアプリ対応状況:C423NAなど23世代とほぼ同じ。Kindleアプリ非対応が痛い。
気になる方も多いと思われるAndroidアプリの対応具合です。といっても、すべてのアプリを並べるわけにはいきませんので、私が普段いろいろなモデルを使っていて、気になる(最初にチェックする)アプリで挙げてみると、基本的にはC423NA世代の対応状況になります。そりゃそうだ、同じハードウェアプラットフォームなので。
ということで、文章作成時点(2019年10月21日)では動画編集が行えるCyberLink社のPowerDirectorなどは対応。ここ最近新しい動画を公開できておりませんが、YouTubeチャンネルで公開しているようなレビュー動画も同様に比較的快適に編集が行なえます。画面サイズが更に広くなったので、スマホで作業するよりもこのアプリは使いやすいのではないでしょうか。実際にChromebook正式対応となっています(ただ、未だにGemini Lake世代、冒頭の区分けでいけばC**4MA、TAシリーズは未対応です)。
そして反対に残念なのがAmazon関連。Kindleが非対応なのが痛いですね。この1.43kgのクラムシェルモデルをタブレットのように手に持って、Kindleで書籍等を読むことはないかもしれませんが、Chromebookの一つの魅力として、Kindleアプリで書籍を開いて読みながら、横にGoogle DocsやGoogle Keepを開いて読書メモが出来る、といったことがあります。これ、15.6インチといった広めのモデルであれば、雑誌等を開いた状態でも読みやすいと思うので、その辺り非常に惜しい。これはAmazon側の対応次第になるとは思うのですが、今後の対応が望まれるところです。
楽天系のアプリは比較的順調。Kindleは読めませんがKoboは読めます。また、楽天ミュージックはスマホアプリ版しか存在せず、WindowsなどPCからは聴くことができない(ブラウザー版もない)のが不便なのですが、この点ChromebookはAndroidアプリが使える、というのが大きなメリットになっていますね。
CPUのN3350はまだまだ現役世代。8GB RAMの効果は限定的。
CPUは昨年までの現行普及価格帯モデルのスタンダードCPUであった、Intel製Celeron N3350。Chromebookにおいては少しずつこなれてきましたので、アプリの対応具合や動作などについてもだいぶ落ち着いてきたかな、と思っています。
おなじみOctane 2.0ベンチマークでも11,000台と1万を超えていますし、まだまだ現役世代。少し前のChromebookを使っている型であれば、それなりに体感的にも違いを感じられることでしょう。8GB RAMに関しては、普段8GBや16GBのChromebookをこよなく愛する私ではありますが、正直なところまだまだ限定的だと思われます。ここは好みと自分の中での安心感に依ると思っています。
ただ、そう書くと「漠然としてるし必要ない」と思われるかもしれませんが、つい先日まで4GBが標準だったChromebookも今年に入り、6GB、8GBのモデルがサラッと出てくるようになりました。Chromebookはサクサク、といってもChromeブラウザでタブを大量に開けばそれなりにメモリも食いますし、更に快適だとつい色々とウィンドウやアプリも開きたくなってしまいます。そうなると、「4GBで大丈夫かな‥」といった不安が漠然と出てくることもあると思っています。そんな不安をなんとなく抱えながら、気にしながら使うくらいであれば、それなりに長く使うものですし、選択肢にあるのであれば8GBを選ぶのもアリになってきたんじゃないかな、と思っています。
C423NAと並ぶ広い画面のシンプルスタンダード。ただ、2019年後半の現時点では他の選択肢が色々あるのが悩ましい。
15.6インチで1.43kgというのは他ではまだなかなか選択肢がありません。薄さと合わせて「意外と持ち歩ける」15.6インチとして、C423NA発売から間もなく1年近くが経とうとしている現時点でも同様に、シンプルChromebookのスタンダードとしてオススメしやすいモデルです。
実際この軽さ(絶対的な、ではなく、15.6インチとして)と見た目、そして開いた瞬間の「画面広い(解像度ではなく)」というのは非常に新鮮ですし、また私のような、つい集中しすぎると画面を凝視して首が前に出てしまい、首肩に負担がかかって頭痛や首の辛さに悩まされているような人には、出先でも使えるラップトップPCとしても(実際膝上に乗せて使ってもそれなりに安定感がある)有力な選択肢になりうるな、と思います。同じFHDでもフォントサイズ自体が大きくなりますしね。小さい文字が辛くなってきた不惑を迎えた私には救世主のようなサイズ感です。重すぎないからリュックに入れてても肩辛くなりにくいし。ってどこまで身体ボロボロなんだ、という気もしますが、実際悩んでいる方もいると思っています。
気になるとしたら「選択肢」の部分。価格的に、もそうなのですが、59,800円(税別)となると、ここ最近は国内でも14インチから15.6インチで比較的選択肢が増えてきているんですね。そしてそれらはCPUパワー的にも液晶の視認性的にも上で、価格差もそれほどなかったりします。その点でちょっとそれらのモデルが選択肢に上ってきてしまって悩ましい、という点はあります。
ただ、それらのモデルが軒並み1.5kg以上、ということも多いので、その中で軽さ、トータルでのライトさを求めるのであればまだまだ十分に戦えるな、と思います。特に前述のGemini Lake世代のモデルだとPowerDirectorが非対応だったりして、個人的にはそれが一番痛いので、その点でもこのモデル、個人的にはアリです。
数少ない15.6インチ、シンプルスタンダードを家電量販店も含めた全国の販売網で展開するようになり、ASUS JAPANの国内現行ラインナップは更に充実したものになりました。
まだまだ店舗数は限られているとはいえ、実際に店頭でその大きさやキータッチなどを体感することが出来るのも魅力です。今回のレビューがそんな購入検討の際のなにかの助けになれば嬉しいです。
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