ここ一週間ほど、Microsoftが5月2日に「Chromebook対抗の新しいWindowsデバイス」を発表するのではないか、と(改めて)話題になっています。
記事自体は幾つも出ていて、私が知ったのは上記の記事(2017年04月15日)がきっかけだったのですが、関連記事などを読み進めていくと、「そういえば少し前にWindows Cloudとか少し話題になってたな」など、(当時はSamsung Chromebook ProなどChromebookの話題で私の頭の中はいっぱいだったので)Microsoftの戦略と合わせてなかなか興味深い内容に感じました。
例えば今年初めのこちらの記事(2017年01月31日)の後半部分で
正直なところ、単にシンクライアントの仕組みを導入するのであれば、現在の最新のARMプロセッサほどの性能は必要としない。最近のCortex-AシリーズはIntelの省電力PC向けプロセッサと比較してもパフォーマンス的にそれほど遜色なく、より多くのタスクをこなすことが可能だ。
また、シンクライアントの問題として画面描画のために常にネットワーク帯域を消費する問題があり、回線事情の悪い場所では画面のリフレッシュもままならない。
2017年の念頭記事でMicrosoftがWindows 10の方向性の1つとして「常時接続」を目指していることを紹介したが、現時点ではまだまだシンクライアントと携帯電話回線との組み合わせは早いと筆者は考える。
Cloud Shellの可能性の一つとして考えているのは、この「回線事情」と「ローカルPCのパフォーマンス不足」の両方を補完すべく「作業内容によってクラウドとローカルでアプリの実行を使い分けることが可能」なハイブリッドな仕組みだ。
この時点でイメージされていたWindows Cloudの一つの形は個人的にはなかなか興味深いな、と思っています。この「作業内容によってクラウドとローカルでアプリの実行を使い分けることが可能」なハイブリッドな仕組みをMicrosoftが今回のChromebook対抗として考えているのであれば、それはそれで現状を考えると面白い方向性かもしれません。(さじ加減によっては従来型のWindowsとさほど変わらない恐れもあるのですが。)そこに最近になって「SIM内蔵の安いSurface」が出てくるのではないか、という話(下記の記事。2017年04月18日)もあり、単純なSIM内蔵だけでなく、また従来型のWindowsとはまた違った方向性のデバイスとなれば、この組み合わせは面白い、と思ったのです。
私はここ最近、ChromeOSの魅力について色々な表現で書いてきました。
その中で、ChromeOSが本領を発揮するには一般的な(普及価格帯の)モデルではまだまだ処理能力自体が追いついていないのではないか、といったことも書きました。
とともに感じたのが、マシンスペックだけでなく、「通信速度」や「常時接続」など通信環境もまだまだ追いついていない現状もあるな、ということです。今一般的にChromebookが「便利」と思われている用途においては例えば日本のMVNOのSIMを使ったテザリング等でもさほど不便を感じませんが、教育現場やビジネスの最前線においてはこの程度では不足、不満を感じることも多いでしょうし、通信環境の悪い地域となれば尚更です。また、常時接続を考えれば「SIM内蔵」は以前からChromebookにも望まれてきた一つの形ではあります(僅かに過去にSIMスロットのあるモデルも存在しましたが)
ただ、どうも流れを追っていくと、今回発表される(のではないか、と噂されている)デバイスはそういうものでもないようで(2017年02月06日)
Windows 10 Cloudとは「UWP(Universal Windows Platform)アプリのみが動作可能なWindows 10」で、機能的には「Modern UIアプリのみが動作可能なWindows RT」に近く、マーケティング的にはサードパーティーに無料で提供された「Windows 8.1 with Bing」に相当するという。
その後もこの可能性が高いのではないか、と言われている様子。
これだと印象としてはChromeアプリをChromeウェブストアからインストールできるChromebookとさほど変わらない気もしますし、より常時接続との相性はChromeOSのほうが良さそうな気がして、残念なような物足りないような気分です。
- ストアアプリのみインストール許可、MSの「UWPアプリ推し」戦略 – 阿久津良和のWindows Weekly Report | マイナビニュース
- Windows 10 Creators Updateで、UWPアプリへのシフトが加速する (1/2) – ITmedia エンタープライズ
- 特集:UWPとは何か:Windows 10 UWPで業務デスクトップアプリ開発はどう変わるのか? (1/3) – @IT
ただ、Microsoftとしては前半で挙げたような「作業内容によってクラウドとローカルでアプリの実行を使い分けることが可能」なハイブリッドな仕組みをChromebookの対抗として持ってくるよりも、現時点ではそれ以上に一般的にChromebookが受け入れられているような「もうこれで十分」と感じさせる手頃さや安さによる急激な普及という側面のほうが脅威かもしれません。
こうした中でChromebookに人気が集まりつつあったのは、「もうこれで十分」というユーザー層が多く現れたことが大きいのではないだろうか。
その後もChromebookの市場は拡大している。例えば、調査会社NPDが2015年夏に出した資料によれば、毎年Chromebookの市場シェアは増えており、WindowsやMacなど他のプラットフォームの拡大ペースを上回っている。
最も顕著なのはIDCが2016年8月に出したデータで、同時期に米国では初めてChromebookの出荷台数がMacを上回った。Chromebookができることと言えば、WebブラウジングとWebアプリの利用のみで(後にAndroidアプリに対応)、WindowsやMacと比較しても限られている。それでもシェアが拡大しているのは、やはり「もうこれで十分」という層が支えているからだろう。
正直に言えば、Chromebookの購入層と教育分野がどれだけオーバーラップしているのか疑問を抱く部分もある。しかし、「値段が安いので収入の少ない学生でも買いやすい」「親が子供に贈るプレゼントに向いている」といった事情を考えれば、Chromebookと教育分野は潜在的に結び付いている可能性が高い。
実際今、教育市場や法人向け市場だけでなく、個人向けも合わせれば一般的なChromebookの魅力って、私がこのブログで暑く語っているような部分ではなく、「割り切って使えばお手軽でこれで十分」だというお得感だと思うのです。その点ではMicrosoftの今回の「UWP(Universal Windows Platform)アプリのみが動作可能なWindows 10」を手頃な価格で、という方向性は間違ってもいないのかな、とも感じます。
私自身はWindowsのストアアプリは全く使っていなくて、むしろ最初から勝手に入っていたりして邪魔くらいにしか考えていなかったのですが、ChromebookにおけるChromeアプリが最近使ってみると思っていた以上に便利だと思い始めているように、実際にはそれ程敬遠するようなものではないのかもしれません。
また、前回Microsoft Officeについて書きましたが、
やはり市場にはOfficeを望む声は強いと思います。実際「滅多に使うことはなくても保険としてはあったほうが安心」と思われている方も多いでしょう。私自身、滅多に使いませんが、かといって全く手元になければないで、何となく落ち着かないような気がするから不思議です。(それだけ一般的には広く使われているのも大きいと思います。)
最近のMicrosoftは教育方面で運に恵まれていないが、でもWord, Excelなどの人気はまだ衰えていないから、同社の再参入を望む声も教育界にはあるはずだ。Googleはクラウド上のプロダクト集合G Suiteで大きく躍進しているが、プロフェッショナルたちのあいだではOfficeのイメージがまだ強い。Windowsというほとんど遍在的なエコシステムがそこに加わるとなれば、この市場の将来も簡単には予言できない。
ただしもちろん、Microsoftが教育の世界に食い込むためには、単純にChromebookのWindowsバージョンを出すこと以上の、もっと大きくて多様な努力が必要だ。
個人的にはOffice Onlineがもう少し使い勝手が良ければそれだけでも十分なんですけどね。
でもそれもChromebookと対抗すること考えるとMicrosoftとしてはOnlineに力入れるよりもはStoreアプリとしてのOfficeに力を入れたいところかもしれません。Androidアプリに関してもChromebookも対応し始めているのでちょっと悩ましいところでしょうし。
ひとまず分かるのは現地時間の2017年5月2日。
ここ最近、Microsoftの動向に関してはほとんど意識していなかったのですが、Chromebook好きの私としても、果たして単なる価格的な対抗に過ぎないモデルなのか、それともChromeOSと対抗するような面白い動きが見えてくるのか。引き続き楽しみに追っていきたいな、と思っています。