昨年の話なのですが、小さい頃からとても可愛がってもらっている(お世話になっている)親戚の叔母から相談がありました。
「お父さん(叔父)がパソコンを買い換えたいって言うから、今度一緒に買いに行ってくれない?」
叔父と叔母は現在80歳前後。埼玉で暮らしています。このブログでも時々登場する90歳の祖母の妹(叔母)夫婦です。
この叔父叔母には小さい頃から何かと世話を焼いてもらっていて、何かある度にすぐ駆けつけてくれます。80になる今でも、昨年、一昨年、私の妹の出産に伴い母が渡米している1ヶ月強のあいだ、実家が大変だろう、と何度も手伝いに来てくれたり、親戚で何か困ったことがあると動き回ってくれます。正直私はこの叔父叔母夫婦に恩が返しきれるとは思えないほど。感謝してもし尽くせません。
そんな叔母の頼みです。私の役に立てることであれば最大限力になりたい、と少し張りきりまして、埼玉に伺う前にネットでも色々下調べをしておきました。
予算10万円。用途は「年賀状と(お父さんが)競馬の情報と競馬場までの電車の乗り換え時間を調べる」とのことでした。
正直年賀状さえなければChromebookが最適なのではないか、と思ったのですが、突然何か新しいことをしたい、といった不測の事態が起きたときに困ります。素直にWindows PCから探すことにしました。
事前に私の中で想定していた条件は「15.6インチ、ラップトップ、Core i、8GBでSSDで10万円」。
この相談を受けたのは夏頃だったのですが、色々と都合がつかず結局訪れたのは11月の下旬。ちょうどネットではこの記事が話題になっていた時でした。
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/config/1154829.html
「こあいさんかごで、はちじー」
親戚から電話があった。80歳超の女性である。どうやらPCの調子がおかしく、起動して使えるようになるまで30分もかかるという。もはや限界と思って買い換えを決めたという。
(中略)
現行機は、10年近く前の液晶一体型PCだ。ノートPCも考えたが、やはり大きな画面で使える一体型がよいということで、そのサービス氏に相談したところ「こあいさんかごで、はちじー」なら何でもいいんじゃないかというアドバイスがあったそうだ。
サービス氏のアドバイスはそこまでで、結局、ぼくのところにSOSが入った。量販店で「こあいさんかごで、はちじー」と言えばわかるかと訊くので、最初は何のことかと思ったのだが、「Core i3かCore i5で8GBメモリ」ということのようだ。じつに的確なアドバイスだと思う。
まるで私の話か、と思うくらいに一致した内容。叔父が現在使っているPCも液晶一体型のWindows 7 PC。テレビなどで最近盛んに「Windows 7はもうじき使えなくなる」と言うので、もう使えなくなるし、ウィルス検索ソフトが延々と動き続けるくらい遅いし無駄なファイルが消しても消してもあるので、この機会に買い換えたい、とのことでした。
その時に私の頭に浮かんだのもやはり「こあいさんかごで、はちじー」でした。あとは今まで使ってこなかった叔母も折角だからSkypeでテレビ電話がしてみたい、メールも送ってみたい、ということ。であれば、その都度2階の寝室(に液晶一体型のPCがある)に上がるのも大変なので、ラップトップPCにしよう、と思ったのです。ただ、高解像度である必要はないものの、ある程度大きな字でないと厳しいと思ったので、15.6インチ以上に。
SSDにしようと思ったのは、正直叔父や叔母の用途であればHDDでも充分かもしれないのですが、今から新たに買うのにシステム部分にHDDは今後も考えた時にどうかと思ったのです。最近はSSDも安くなってきていますし、実際PCに関しては「今使っているPCが遅い」という方のPCを快適にする一番の近道がHDDからSSDに換えることだったりするので、最初からSSDにしよう、と。
予算10万円は、叔母の「うーん、10万円くらいまでかな。でももちろんもっと安く買えるならその方が良い」とのことで、一つのラインとして設定。
この設定で、私は事前にネットで、メーカーのオンラインサイトやPCショップのBTOモデル等から候補を絞り込んでおきました。
「ネットは怖いから嫌だ。近所のコ○マさんで買うのが安心だから、そうしたい」の一言で家電量販店へ。
メーカーやPCショップのオンラインショップを探す限りでは前述の条件のラップトップPCは意外とすんなりと見つかります。キャンペーン割引などを適用させれば更に安く抑えることも出来ます。なので、実際に訪れるまでは「その場でネットで注文してあげれば良いかな」と思っていました。
ところが実際に着いてその話をしたところ、叔母が一言。
「インターネットは怖いから嫌だ。カード番号とか盗まれるみたいだし。この前エアコンを買ったときに対応してくれた○○さんがとても良い人だったから、近所の○ジマさんで買いたい。安くしてくれると思うし、それにチラシ入ってて野菜の詰め放題が出来るみたいだから。」
ということで、自転車で20分位行った所にあるコジ○で買いたいとのこと。ここで改めて感じたのは、余程PCに詳しいとかでもない限り、大切なのは「対面」で「この前接客してくれた感じの良い店員さん」、そして「チラシ」というのが今でも非常に大きな効果(影響)を持っているのだな、ということです。あとは「インターネットで買い物をするとカード番号を盗まれるから怖い」という印象もやはり強いようです。
店頭に並ぶPCを眺めて数分で、前述の条件に当てはまるPCなんてないことに気付いた。
コジ○(上記写真は別の店舗です)に着き、並んでいるPCを眺めて数分で気付きました。先ほど挙げたような条件のPCなんて、存在しないんです。
ラップトップPC自体はそれなりにあるのですが、そのほとんどがまず4GB、更にHDDです。眺めるパソコンどれもが4GBで次々と除外されていきます。11.6インチなどになるとeMMCになりますが15.6インチだと大半がHDDです。
次にCPU。Core iと気軽に考えていましたが、確かにCore iモデルであればごく一部8GBでSSDという条件にあったPCは見つかるのですが、完全ハイスペックの20万超え。しかも15.6インチではなく薄くて軽くて12~13インチの高解像度モデルです。予算10万円といっていた叔母には全く論外です。
時々商品のスペックの書かれた価格POPを眺めてみると「メモリ:標準4GB / 最大16GB」みたいな表記があるのですが、確認してみると店頭にあるのはあくまで店頭モデルの4GBだけで、それ以上を希望する場合には別途メーカーにオーダーとのこと。
とりあえずCPUをCeleronにして4GB RAM、HDDにすれば(というか大半がそういうモデル)10万円以内には収まるのですが、それでは何のために私が埼玉まで足を運んだのか分かりません。まったく叔父叔母の役に立てていません。
と、ここまでの相談は、実は前述の「この前クーラーを買ったときに対応してくれた親切な○○さん(良い人)」ではなく、その○○さんが他の人の接客で忙しいのと、「PCでしたら私よりも詳しい者がおりますので」で、と副店長のPC担当の方が代わりに担当してくださいました。親切な○○さん、叔母の期待に応えられず。
叔母「私たち、見てもサッパリだから、この「店員オススメ」で「○万円引き」を普通に選んでたよ」
最終的に副店長さんと相談して、結局条件に当てはまるとすれば「CPUをIntelではなくAMDのRyzen」にすれば何とか10万強で収まるモデルが1~2モデルある、とのこと。上の写真は先ほどと同じく別の店舗のものですが、ちょうどこんな感じのモデルですね。
店頭に上記のDELLのモデルはなかったのですが、NECのモデルでほぼ同様のスペックのモデルがあり、そちらが税込13万5千円強。それを叔母の交渉でしっかりお勉強してくれて13万5千円ジャストに。更に前回エアコンを買い換えたときのポイントが2万ポイントあるので、それを使って11.5万円に。更に店員さんが「お値引きしてもポイントは1万ポイント付けますのでご安心ください!」との言葉で「あ。一応実質10万強か。」となり決定です。Ryzen 7に8GB RAM、256GB SSDにDVDドライブ内蔵の15.6インチだったかな。ちょっと後でモデル再確認してみます。
でも今考えてみたら10%ポイント還元でも11,500ポイント付く筈なんだけど、なんで10,000ポイントだったんだろう・・。
会計に向かう途中で叔母から一言。
「来てくれてホント助かったよ。私たち見てもサッパリだから、多分最初に見た店員オススメって書かれてたのを言われるままに買ってたと思う。○万円引き、って書いてあったし。」
この○万円引き、モバイルWi-Fiルーター契約で○万円引き、というよくあるパターンです。ちなみに実家の父が以前Windows 7のNECの一体型VALUESTARを購入した際にも「ネット契約込みで○万円引き」に惹かれて購入。更に「セットアップサービス付き」ということだったのですが、セットアップに来たお兄さんが勝手にブラウザのブックマークに「アフィリエイトタグ付き」のオススメと付いたブックマークを作っていくというオマケが付いておりました。更にネット契約はひかり電話だTVだオプションお試してんこ盛りで、後日母が一つ一つ長時間のナビダイヤルでの電話(しつこい引き留め付き)の末に解約する羽目に。それに比べれば優しいかもしれませんが、人の良い叔母だったら「○○さん良い人だから」で契約していそうです。
ちなみに叔母期待の「野菜の詰め放題」は細長い、野菜数個しか入らない小さなビニール袋を1つ渡されただけで、それをちょうどその日が叔母の誕生日だったこともあり、「誕生日だから」とお願いして叔父叔母一袋ずつにさせてもらい、タマネギとジャガイモを数個ずつ強引に詰め込んで終わりました。
帰りに焼肉屋で焼き肉ご馳走してもらい、なんか私はお役に立てたのか、それとも結局またご馳走になってお世話になって帰ってきただけだったのか分からなくなってしまいましたが、PC発送は後日、ということで(自転車だと持ち帰れないし)その日は帰りました。
ちなみに購入はPayPay開催数日前でした(でもPayPayなんて説明しても「怖いから嫌だ」って言われそうなので関係なかったかもしれません)。
ちょっと補足。叔父の使っているPCが遅かった理由。
購入前に叔父からは予め今のパソコンの不満点(気になる点)を訊いていました。
「孫の写真とかたくさん入れてたらなんかパソコンの中身が一杯になっちゃったみたいで、幾ら消してもよく分からない警告が出るんだよ。それにウィルス検索ソフトが起動すると延々と何万ものファイルを読み込んで終わらないんだよ。」
ストレージの容量不足も考えられたので、その点では今回もHDD搭載モデルにした方が良かったか、とも考えたのですが、叔父のPC自体が既に10年近く使っているモデルです。当時の容量を考えてみても今回のSSDの容量256GBで充分ではないか、必要であれば外付けHDDなりを加えても良いし・・くらいに考えていたのですが、
その後叔父のPCからデータを移行しようとしたところ、2つのパーティションに区切られたHDDの中にはシステム以外には10~20GB程度しかファイルが入っていませんでした。半分どころか4分の3近く空き容量があったのは驚きでした。ちなみにファイル移行はUSBメモリで1回で終了。
では何故そんなにファイルが多かったのか、と見てみると、結局メーカー付属の不要なアプリ群だったんですね。叔父も「勝手に出てくるし邪魔なんだよなぁ」と使っていない様子。ところがしっかり常駐して無駄に居座っていました。これが大きな原因。
「最近読み込みが遅くなっちゃったんだよ。多分Windows 7が使えなくなるって言ってるから、それじゃないかな。」
これ、前記のメーカー付属の無駄なアプリ群が原因かと思っていたのですが、調べて気付きました。前回購入時に一緒に契約した○:COMの回線速度が10Mbps出てないんです。5Mbpsとか。そりゃ、競馬サイト見てても重いよ。実際その後セットアップで数回訪れたのですが、この回線速度の不安定さ(ほとんど速度が出てない)ことによる影響は解決出来ていません。J:○OMに関してはリモートサポートを契約しているようで、何かあればすぐに電話でも聞けるから便利なんだ、と頼りにしているようなので、回線を変えるわけにもいきませんし、ここはJ:C○Mさんに頑張って頂くしかないのかな、と。
ただ、今回何かあった時用に叔父叔母にちゃんと説明した上でTeamViewerのQuickSupportを入れさせてもらったので、連絡をもらえれば東京の自宅からでもサポートが出来るんですけどね(既に実家の両親のPCにも入れてあります)。
様々な事情はあるとは思うのだけれど、大きな機会損失が生まれている気がしてなりません。
先ほど挙げた記事から再び引用します。
彼女同様に、以来10年間使い続けてきたPCを新たに買い替えたいというようなシルバー世代は少なからずいるんじゃないか。かなり確実な潜在需要だ。スマートフォンにも置き去りにされ、一通り使えるPCだけが頼りだからだ。
そういう人たちに、あまり難しいことを考えずに、リーズナブルな価格で、リーズナブルな環境がオールインワンで手に入るような施策を、各社ともに考えた方がいいと思う。
そうでなくては買い換えをあきらめるシルバー世代の続出だ。
この記事が出たときにも話題にはなりましたが、ただPCに詳しい方々の意見には「いや、そもそも普通のPCって定義が曖昧だから」とか「誰もが快適に使える普通のPCなんてないから。人それぞれ。」といったものを幾つも目にしました。
確かにその通りです。そして、私が今回選んだPCだって、人によってはツッコミどころ満載でしょうし、そんなスペック要らないから、という意見もあるでしょう。また、細かい部分で「それよりも○○を○○にしたほうが」といったことも言おうと思えば幾らでも言えると思います。
ただ、それは自分も含めて、それなりにPC事情や知識に明るい人の視点なんですね。
今回、叔父と叔母と欲しいパソコンについて相談するときにも、結構説明に苦戦しました。また、用途も曖昧です。では低価格で低スペックのお手頃PCで良いのか。
よく「大して使わないなら手頃で低スペックの入門パソコンが良いんだよ」といった意見もありますが、そういったパソコンはそもそも知識もあって色々分かった上である程度割り切りも出来る人にとっては最適でも、私の叔父や叔母のような人には正直難しいと思っています。
もちろんその辺りの事情を一番よく分かっているのが現場の最前線、家電量販店の店頭に立たれている販売員の方々でしょう。メーカーの思惑と現場の事情、そしてよく分からないけどとりあえず買いに来た、というお客さんの間でとても苦労されていることと思います。
だから、これは単純に販売員の方々やお店を責めて解決する問題ではないと思っています。
ただ、見出しでも書きましたがここに大きな機会損失が生まれている気がしてなりません。売れないのではなく、うまく需要側と供給側の思惑がマッチしていない。すれ違っている。
今回叔父が買い換えを決めたように、Windows 7のサポート終了で、ちょうど当時一体型PC+回線契約などで何となく買った人たちがそろそろ買い換えの時期を迎えています。文中で少し出てきましたが、私の父も恐らくそろそろ買い換えの時期です。でも、正直パソコンを選ぶのは難しい。
また、毎年春になると店頭では学生さんがPCを探している姿を目にします。ただ、何となく眺めていて切なくなる光景が販売員と学生さんの間で繰り広げられているのです。本当にそれで良いのでしょうか。
ここは大きなビジネスチャンスなのかもしれません。何かが少し変わるだけで、きっとこの両者はうまく繋がれる。
今回、果たしてどれだけ叔父叔母の役に立てたのか分かりません(自己満足で終わってる可能性も)が、これからもサポートがてら今まで以上にマメに顔を出せたらいいな、と思っています(それが一番の恩返しかもしれませんね)。
PCを使いこなせなくても良い。PCに詳しくなくても良い。でも、PCが良い意味で人や家族を繋げるツールとしてこれからも役に立ってくれることを願っています。