前回、米国のEl Segundo High Schoolに通う従兄弟の学生生活におけるタブレット(iPad)との付き合い方について書きました。
今回はそうした中でふと感じた教育現場におけるタブレットの魅力と、最近何故Chromebookでもタブレット型端末(Acer Tab 10など)やDetachableタイプのモデル(Pixel Slate)が出始めているのか、について考えてみたいと思います。
タブレット型端末が出た時、私は「低学年など今までの穴を埋めるため」のピンポイントのモデルだと思った。
昨年、AcerがChromebook Tab 10を出した時、私に限らず多くの方は「何故Chromebookなのにタブレットなのか分からない」と感じられたのではないかと思います。ラップトップPCの強みでもあるキーボードを除くことに疑問を感じられている方は今も多いでしょうし、またこのChromebook Tabについては「Androidタブレットの代替」的なイメージを持たれている方もいらっしゃると思います。Android OSとChrome OSが今後融合していくのではないか、といった声もありました。
米国の教育現場においては今もChromebookが大きなシェアを持っていますが、AppleやMicrosoftが本腰を入れてきたことで、iPad対抗として出してきた、という見方もあります。また、キーボードをまだ扱えない低学年向けに考えられた、従来のChromebookの穴を埋めるピンポイント的な役割、という捉え方もありました。私自身も正直そう考えていました。
私自身、その後Chromebook Tab 10を実際に購入、使用してみて、思った以上の使い勝手の良さに驚き、今も愛用しているのですが、そんな私でもGoogleがPixel Slateを発表したときには、いまいちピンと来なくて、購入意欲が沸かなかったのは以前書いた通りです。
ですので、上記の文章でも比較的静かな書き方をしていますし、実際使ってみて面白い端末ではあるものの、半ば強引なまとめ方をしてしまったのも正直なところです。
ただ、既に国内で入手された方に開発に携わる、興味を持たれている方が非常に多いように、刺さる方がいるのも確かです。そしてそうした方々がこのSlateを用いて生み出していく様々なツールやサービスは、恐らく今後のGoogleとChrome OSにとっても貴重な財産になっていくと思っています。
正直なところ、今このモデルを「活かしきる」には、余程G Suiteが日常に存在し、仕事や学校においてクリエイティブ(という表現が曖昧ですが)な、積極的な関わりが出来る環境にいない限り、難しいのではないか、と思います。更に言えば、現状の国内の教育現場の授業がそうした環境にある訳ではありませんし、受け身で物事に取り組む学習姿勢であれば、正直不便さすら感じるかもしれません。
ただ、今回従兄弟がiPad+G Suite for Education+αで軽快に不自由なく使っているのを眺めている内に、少しずつそうした疑問や違和感が以前よりもは薄れていくのを感じました。
といっても私自身教育現場の最前線で今活用している訳ではありませんので、的外れな部分や理解の浅い部分もあると思いますが、お時間のある方は引き続き読み進めて頂けたら、と思います。
タブレット型端末の持つ携帯性と機動力の高さ。
前回、従兄弟に話を聞いた時に、彼は目の前で次々と画面を切り替えながら普段の学校や自宅での使い方について説明してくれました。各授業のテキストや資料、動画などを時にはマーカーを入れながら、また次々にページやファイルを切り替えながら使っていくには、タブレット型端末は非常に相性が良いと感じます。
私自身普段はタブレット型端末を電子書籍ビューワー時々Web閲覧程度の用途にしか使っていなかったので、いまいちイメージ出来なかったのですが(なのでiPadも何度も購入しながらも、その度すぐに手放していた)、学校や自宅における学習の道具としては非常に筆記具や教科書、テキストなどに立ち位置が近いな、と感じます。
前回も触れましたが、学校においてもすべての授業、すべての時間、iPadのみを用いて授業が進められる訳ではありません。時には目の前に立てた状態で(自宅での従兄弟がそうでしたが)その前にノートを広げて鉛筆やペンで手書きをすることも多いでしょうし、あくまでテキストとして使うこともあるでしょう。また、彼はスペイン語の授業も取っていましたが、その際にはお馴染みDuolingoなども使っていました。また、テキストに直接書き込む場合にはクラムシェルタイプの通常のノートPCよりもタブレットのほうがやりやすいのではないか、と思います。
彼自身はレポートの作成にもソフトウェアキーボードを特に不便もない感じで使っていましたし、最近は音声入力の精度もかなり上がってきていますので、文字入力に関しても「キーボードがなければダメだ」という訳ではないのかもしれません。
そうした携帯性と機動力の高さ、というのはタブレット型端末の持つ大きな強みです。
とはいえ、タブレットとPCの役割は似ているようでいて時に全く違うものになる。
ではタブレットで良いではないか。必要に応じて外付けキーボードを加えれば良い。
そうした意見もあると思います。実際に「iPad+キーボードで充分」という方もいらっしゃいます。
ただ、私の中ではやはりタブレット型端末+キーボードと通常のPCはやはり何かが違うのです。タブレットとPCの役割は似ているようでいて時に全く違うものになると感じているのです。この辺り、Apple自身が決してMacBookを止めてiPadのみにしないことからも分かるかな、という気がしています。それは単にスペック云々という理由だけではなく、やはりiPadが幾ら大きくなっても、スペックがMacBookと同じことが出来るくらいに上がったとしても、やはりiPadはiPadだと思うんですね。
それは、iPadに限らず、Androidタブレットであっても同じで、私にとってはこのブログに限らず、様々な作業や仕事の諸々はやはりラップトップPCやデスクトップPCになります。すべての仕事をスマホだけで完結させられる方もいるとは思いますが、そうした個別の事情は抜きにすれば、やはりPCにはPCの、タブレットにはタブレットの、活きる場所があり、重なるところはあっても決して完全に一致することはありません。
Chromebookの普及には確かに「安さ」は大きな理由ではあった。けれど、それだけではない。
Chromebookが米国で普及したのは安かったから。それと学校側の管理がしやすかったから。
一般的にはそう思われている方も多いのではないか、と思っています。確かにそれはあります。個人ユーザー以上に企業や学校では導入時のコストというのは重要視されます。そして管理のしやすさも大きい。
ただ、それだけではなく、そこにPCとも非常に相性の良い、そして余計なことを考えなくても自然に連携が出来るG Suiteというツール(システム)がピタッとハマったから、というのも大きいと思うのです。
ここで「またG Suiteか・・」と苦笑された方もいらっしゃると思うのですが(私自身何かにつけてG Suiteを連呼していますので)、そこで今回従兄弟の使い方に繋がります。勿論たまたま、とか学校側の導入の事情等々色々あるとは思うのですが、彼の学校ではiPadでありながら、ベースとして使っているのはG Suite for Educationなんですね。
今後はもちろん分かりません。Appleがとんでもねぇものを作り上げてくるかもしれませんし、その役割はMicrosoftかもしれません。ただ、やはりChromebookに私が惹かれる大きな理由の一つとしての、Chrome OS自体の持つ軽さとともに、共有や共同作業、そして場所や端末を選ばずに自然に連動するG Suiteの存在というのは大きいと思っています。
そしてChromebookの強みはPCであること(これはPCではない、という声も聞きますが)。それは先ほども挙げた「タブレットとPCの役割は似ているようでいて時に全く違うもの」とも繋がります。私がタブレット型のChrome OS端末に惹かれる大きな理由は「PC版の(フル機能の)Chromeブラウザが使える」というのも確かにあるのですが、UIが完全にタブレットでフル機能のChromeブラウザが使えても、やはり何かが違うのです。
この辺り、まだどう表現して良いのか分からないのですが、それくらいPCとタブレットって些細なことのようでいて意外と使い勝手も違えば、思考の広がり方も変わってきます。
タブレットの強みを活かしたハイブリッドをChromebookとG Suiteの視点から作った形が最近の諸々のモデル。
さて、また訳が分からなくなってきました。あなたも読んでいて疲れてきているかもしれません。ここまで半分読み飛ばしてきたかもしれません。それでも構いません。
その上で、ここまで書いてきたことをここでまとめてみると、個人的にはタブレットとPCのそれぞれの良さを掛け合わせたものが理想的なものになってきます。でも言うのは簡単でも実際に実現させるのは難しい。だから今までもChromebookだiPadだSurfaceだ、とそれぞれにそれぞれの良さを言い合ってきて、競ってきている訳です。
ただ、その中で考えた時、Chromebookも従来のラップトップPCとしてのみの役割だけでは足りなくなってきます。そこで出てきたのが最近のタブレット型端末(Tab 10など)であり、Detachable端末(Pixel Slateなど)なのではないか、と思っています。今回の文章の前半でも挙げたような、タブレットの特長、強みや魅力を活かしながらも、従来のChromebookの強みも失わない。それが、タブレット単体にすればタブレットモード(タブレットUI)になり、キーボードが繋がった途端に従来通りのPC(Clamshell UI)になる。
先ほどから何度も挙げてきた「タブレットとPCの役割は似ているようでいて時に全く違うもの」である点をChromebookとG Suite側からの視点で限りなく近づけようとしたもの。その結果生まれる、生み出そうとした物が、今回のPixel Slateなんじゃないか、と思います。
その試みは、実際の現場にいる訳ではない私ではまだまだ想像の域を出ません。ただ、今回従兄弟のiPad+G Suite+αを眺めていてタブレットの自由さと魅力をとても強く感じながらも、どこか感じる物足りなさに対する現時点でのGoogleとしての回答の一つが、ここ最近のタブレット型端末やPixel Slateなんじゃないかな、と思っています。
ね、宗教でしょ。あまり真に受けない方が良いよ。私、Chromebookユーザーですから。
ただ、だからと言ってこれはGoogleにしか出来ない、とか言いたい訳じゃないです。先ほども書きましたが、AppleやMicrosoftがとんでもねぇものを出してくるかもしれません。いや、むしろそういうものを望みたい。iPadやSurfaceの単に延長線上にあるものではなく、そこに何か変異が加わって思いがけない進化を遂げたもの。
それはきっとGoogleとは違ったアプローチになるはず。
そして私は、そんな三つ巴から生まれる何かに、単なるPCマニアとしても期待してしまうのです。