ちょっと待って、何を言ってるのか分からない、と言われるかもしれません。
2020年に向けて日本の教育現場でもどのPCを導入するのか、といった競争が激しくなってきています。ネットで眺めていてもiPad(Apple)やChromebook(Google)、Surface(Microsoft)それぞれにユーザーがメリットとともに他のOSのデメリットを挙げて一部では盛り上がっています。
日々Chromebookを愛用していて、その魅力を感じつつ、また今回のような文章を時々書いていることもあって、「Chromebook、そんなに捨てたものじゃないと思うよ」と思う気持ちはあるのですが、個人的には何入れても良いと思っています。
ただ、ここ最近そうした話を眺めていてふと気がついたのですが、やはり皆さん常日頃からそれぞれのOSやPCを愛用されている方からの視点ということもあって、結構本格的な使い方や、あれができる、これができない、という具体的な話になってきています。でも、考えてみると学校でPCを使う時間って、せいぜい1日1時間とか、週2〜3日に1回とか、その程度だと思うんです。
また、別に今回初めて教育現場にPCが導入されるわけではなく、そんなもの私が中学生だった30年近く前(FM-TOWNSでした)からとっくに導入自体はされていたんです。クーラー効いた貴重な部屋ということで、全く関係ない保健の授業や視聴覚室代わりに使われていた思い出しかありませんが。そして、大学でもとっくに何らかのアカウントは発行されていながら、その実ほとんど授業でも活かされていない、というのが現状ではないか、と。
他OSの端末についてはよく分からないのですが、少なくともChromebookを導入する際のメリットとして最も挙げられるのが管理のしやすさや導入コストの低さといった導入する学校側のメリットです。学生や保護者側ではなく、あくまで導入、管理する学校側にとってのメリット、都合が良いということがChromebookの強みであり特長であって、それがなければ敢えて導入する魅力はない、といった空気も時々感じられることがあります。
https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00157/013000048/
「2年間の検証事業では低価格を理由にChromebookを採用したが、実際に活用してみると、端末が管理しやすかったことが本格導入の決め手になった」と話す。Chromebookは、全ての端末をクラウド上の管理コンソールで一元管理できるのがメリットで、サーバーもMDM(Mobile Device Management)も要らない。アップデートの対応などに現場の教師が追われることもなく、教師がICT活用に専念しやすいと考えたのだ。
こちらの記事は別にそういう意味で書いている訳ではないのですが、確かに教員の負担が減る、というのはとても大切ですし、大きなことだと思っています。
そんなとき、こんな文章を目にしました。
http://qualnz.net/blog/nzit/
IT化が進んでいて便利なのは、生徒だけじゃない。
保護者も学校のオンラインポータルサイトにログインして、生徒の出席状況を確認、時間割や成績のダウンロード、単位の取得状況などが確認できるのも便利なところ。生徒用ログイン、先生用ログイン、保護者用ログインと分かれていて、出来ることが異なる。
学校によっては学校の専用アプリも開発されていて、数タップで校長先生に電話できるらしいw
これも確かに管理側にとってのメリットでもあるのですが、前述のように「学校でPCを使う時間って、せいぜい1日1時間とか、週2〜3日に1回とか、その程度」と考えると、実はまったく別の魅力やメリットというものがあるのではないか、と思っています。それが今回のタイトルでも触れた、
教育現場にChromebookを導入するメリットは「Chromebookや特定の端末、OSに縛られない」ことだと思っています。
という点です。つまり、単純に学校側、管理側のメリットだけでなく、それを利用する学生側、保護者側にとっても、「特定の端末やOSに縛られないG Suite for Education」に最適化されたChromebookの導入というのは様々な意味での魅力、メリットがあると思うのです。
私は常々「Googleが普及させたいのはChromebookという箱物ではなくG Suiteというサービス」と書いてきました。そして、そのG Suiteを利用する上での使い勝手に最適化された端末としてChromebookがある、と。(もちろん個人ユーザーの中には単純に安いから、楽だから、ネット閲覧専用だから、といった様々な理由があると思いますが、今回は論点がズレるので省かせてください。)
G Suiteの良さというのは、比較的端末や他OSで使う際のハードルが低い、という点です。
学校にChromebookを導入することのメリットって、逆説的だけれど「Chromebookなり特定の端末やOSに縛られない」ことじゃないかと思ってます。学生がiPhone使ってようが問題ないし、学校側、管理側次第だけど、家庭で何使ってても影響を受けにくい。それは学校側だけのメリットではないと思ってます。
— おふぃすかぶ.jp (@OfficeKabu) 2019年1月31日
普段iPhoneを愛用している学生でもアプリとしてG Suite関連のアプリを入れれば授業以外の時間(休み時間や通学時、自宅など)でもアクセスができますし、課題や連絡事項の確認、Classroomへの参加が可能です。またAndroidスマホであれば更に使い勝手は向上します。今回私自身G Suite Businessを契約して気づいたのですが、一台のスマホの中に「個人用」と「仕事用」の2つのプロファイルを持つことが出来、それぞれに別々にアプリ、アカウントを設定することが出来ます。
(上記は私のスマホ(Pixel 3 XLの仕事用プロファイル側の画面の一部です。鞄アイコンの付いているこれらのアプリは通常のアプリとは別アプリとして認識されていて、例えばこちら側のドキュメントを開けば私の仕事用のG Suiteアカウント内のドキュメントのみを開けます)
自宅にPCがある家庭でも、それがWindowsであろうとMacであろうと、それほど影響は受けません。
なので「一人一台」が理想と言われていますが、別に学校生活のすべての時間でPCが必要な訳ではないと思うので、別に学生に買わせる必要もないのかな、と。授業で使うときだけ学校保管のChromebook使わせて、それ以外の時間は連絡事項やレポート、出欠確認含めてG Suite Eduとスマホで充分だし。
— おふぃすかぶ.jp (@OfficeKabu) 2019年1月31日
先程引用させて頂いたようなニュージーランドの学校の例のような、授業以外の様々な場面でのITの活用、という点を考えると、端末やOSに依存しない(依存しづらい)システムを学校側で導入することのメリットというのは大きいはずです。
そう考えると、別にChromebookでなくても良いのです。ただ、それらをより学校側で保守管理しやすい、またそうしたG Suiteとの相性が良い、ということを考えるとChromebookの強みというのはかなりあるとは思っています。
その上で、そんな環境を整える上で、学校で一括導入(100台とか)してもマルチアカウントで対応しやすく、管理も楽で、壊れても大きな影響を受けにくい、という点でのChromebookの強みが「学校側、管理側にとってのメリット」としても活きてくるのかな、と思ってます。
— おふぃすかぶ.jp (@OfficeKabu) 2019年1月31日
先程も触れたように毎日毎時間授業でPCを使うのでもなければ、わざわざ通学時に重たいPCを持ち歩く必要はありません。
そう考えると、「一人一台」のPC環境を目指しているとはいえ、実際には授業の内容と使う時間を考えたら、生徒一人ひとりに買わせる必要はなく、50台や80台といったちょうど2クラスくらいが同時に使える程度のPCを学校で導入するという形で良いのではないか、と思うのです。それ以外の時間は各自のG Suiteアカウントとスマホ、もしくは各自希望があるなら自由に自分のPCを持参させる、という形で十分だと思うのです。
もし学校側で授業の諸々を考えるとiPadのほうが良いというのであればiPadで構いませんし、Windows PCでも良い。ただ、単なる週数時間の授業のみで終わってしまうのではなく、それ以外の日常でも活用できるような体制を整えておく。そうした用途にG Suiteというのは相性が良いのではないか、と思っています。
生徒一人一人がgoogleのログインを持っていて、全科目でgoogleクラスルームを活用している学校も。
科目ごとに特設ページに招待され、そこでクラスメイト一覧や先生の情報も見られる。
先生が授業で流した動画やスライド、メモが授業の度に更新されるから、もし風邪などで学校を休んでも内容が確認出来る!
(この辺り、「いや、AppleにもG Suite同様の管理ツールがあるから」という意見もあると思いますし、それらが端末やOSに依存せずにすぐにサインインサインアウトが出来、復元も早く、データが残らず、学校でもスマホでも自宅でも全く同様に使える、というのであれば、それでも良いと思います。)
長くなりましたが、今回伝えたかったこと。それは「どの端末を導入するか」ということ以上に大切なことがあるのではないか、ということです。私たちのような普段からPCに慣れ親しんでいる者にとっては、冒頭のように「結構本格的な使い方や、あれができる、これができない、という具体的な話」などは確かに楽しいですし、分かっているだけに一家言お持ちの方も多いと思っています。
ただ、実際に学校で授業の中でPCを使う時間というのは限られています。であれば、それ以外の時間でもIT、ICTに慣れ親しむような機会が増える、そのハードルが低くなる、そんな学校の日常の中でのツールとしてのシステムの導入、という視点で考えても良いと思っているのです。ただ箱物を入れて終わり、ではなく、教職員も学生も保護者も負担の軽くなるトータルとしてのICTシステムの導入。その選択肢の一つとしてG Suite for Educationがあっていい。
そしてその中で、学校側、もしくは学生、保護者側の希望の端末として、Chromebookという選択肢が増えてきたら、Chromebookユーザーとしても嬉しいな、と思っています。
写真は昨年のGoogle Education around the World(Google Cloud Nextの教育版)でお会いした高校生が日常で使われているChromebook(ご本人と同伴の先生に撮影と掲載の許可は頂いています)。サラリと開いてスケジュールの確認をしている姿がとても素敵でした。