2018年11月末に発売されたGoogleの新しいChrome OS端末、Pixel Slate。日々Pixelbookを愛用している私としては当初はさほど真新しさもなく惹かれる部分もあまりなかった端末でした。その辺りは当時の私のTwitterでのツイート等を見ている方には分かりやすかったのではないか、と思います。
Detachableであることの必要性と意味が見いだせなかった。
これはその前に何とか入手し、外観も雰囲気も気に入っていながらも、結局使用頻度が減ってしまっていたHP Chromebook x2でも感じた印象です。
私の中ではPixel SlateはこのHP Chromebook x2の上位互換モデルのような位置づけであり、価格(最上位で$1599)を考えても、通常のClamshellもしくは精々Convertibleのほうが使いやすい、と感じていた私にとっては同じGoogleの最上位モデルであるPixelbookがあるし今回は見送り、という気持ちがあったことは確かです。
とは言いつつも、割り切れなかったのも事実です。正直気にはなっていました。
- 何故Googleは今回、Pixelbook 2ではなくPixel Slateを出してきたのか。
- Apple(iPad)、Microsoft(Surface)、そしてGoogleまでがこの種のタブレットもしくはタブレット+キーボード的なモデルに力を入れているのか。
実際に使うまでは疑問を感じつつも、実際に使ってみた途端に印象がガラリと変わってしまったChrome OSタブレット、Acer Chromebook Tab 10を経て、「使いもせずに評価するのは勿体ない」と感じるようになってきました。そして年が明けて2019年。たまたま機会とタイミングに恵まれ、この度ようやくPixel Slateを入手することが出来ました。
今回は入手から2日目の時点でのファーストレビューとなります。今後この印象が変わる可能性は大いにあります。ただ、最初の印象として、またこのSlateというモデルについて予め一通り押さえておくために、今回一度文章にしてみようと思います。
Google Pixel Slate
今回購入したモデルはIntel® Core™ i7、16GB RAMに256GB eMMCを搭載した最上位モデル($1,599)です。こちらに上記の写真のようにGoogle純正のPixel Slate Keyboard($199)を加えました。Pixel Slate Pen($99)に関しては今回は既にPixelbook Penを持っている為、購入していません。購入先はAmazon.com。日本直送が出来ませんので、通常通り転送サービスを用いました。
トータル金額は$1,798(Pixel Slate + Keyboard)+ $41(日本への送料)+ $9(転送手数料)で$1,848(約205,000円)に国内到着時の消費税(関税はなし)等で9,200円。合計で約214,000円です。
まずは国内で使用するにあたり必須の「技適認証」について。
おふぃすかぶ.jpでは海外発売モデルをレビューする際には必ず最初に技適マークの有無(技適認証の有無)について確認をしています。技適マークについての私の見解についてはここで改めて触れると長くなりますので省きますが、これ以降の文章を読むにあたってこの点がスッキリされていない方は以下の文章等を予めお読みいただいた上で、ご自身の主義と解釈に基づいてご判断下さい。尚、私は技適マーク(とそれに伴う法律)に関しては必要だと考えていますし、技適マークのないモデルに関しては「購入・ご使用は自己責任でお願いします」といったお茶を濁す表現をする気はありません。むしろ自己責任、という表現を快く思っておりません。その点ご理解頂ければ、と願っています。
ということで、今回のPixel Slateに関してですが、技適マークの有無以前に、Googleに関しては日本国内で販売されていないモデルに関しては基本的にサポートは一切ありません。私自身、昨年購入したPixelbookの修理を検討した際にGoogleに相談をしましたが、結果として修理は受付自体不可でした。
その上で、前回のPixelbookに関しては当初購入したi5モデルでは本体を開腹して中の通信モジュールを確認しました。その結果、用いられている通信モジュールが国内では技適認証の通っているものの多いIntel製7265ではあるものの、その中でも認証が通っていない7265D2Gだということが分かりました。Pixelbookは現時点でも技適認証は日本では取れていない通信モジュールを使用しています。
そうしたこともあり、同じGoogle製、同じPixel銘のモデルでもあり、同様に7265D2Gが載っている可能性が高いな、と思っていました。ただ、Pixel Slateは本体部分がタブレットとして仕上がっているため、開腹が非常に困難です。というか、私の技術では無理です。
そこで、別の方面からこのモデルに搭載されている通信モジュールについて調べてみることにしました。それが、このモデルでも当然認証を通している、米国の電報・電話・放送などの事業の許認可権をもつ独立行政機関FCC(Federal Communications Commission)による認証です。
Pixel SlateのFCC IDは「HFSC1A」。そこでFCCの認証情報を確認しました。
Pixel SlateのFCC IDを調べたところ「HFSC1A」ということが分かりました。これは実際に製品の外箱等にもきちんと記載されているのですが、ネット等で発売前後の記事を確認しても見つけることが出来ます。こちらのIDでFCCの認証情報を調べてみました。
例えばFCC ID.ioで確認したところ、下記のページが見つかります。
https://fccid.io/HFSC1A
この中の項目に「C1A Wireless Module ID Label/Location Info Label format and location Quanta Computer Inc」というページがあるのですが、そちらを確認すると、
https://fccid.io/HFSC1A/Label/Label-format-and-location-4020763
日本でも認証されている、Intel製7265D2Wであることが分かります。
また、本家FCCのサイトからも、
こちらのページから「FCC C1A SAR Report v2」を確認してみると、
やはり7265D2WでFCCを通していることが分かります。
ということで、当ブログではこれらの情報から、Google Pixel Slateの通信モジュールは技適認証を通したIntel製7265D2Wを用いている、と判断させて頂きます。もちろん目視で技適マークを確認は出来ていませんし、技適マークに関しては様々な意見を持たれる方がいらっしゃり、例え技適マークのある通信モジュールを載せていても本体に技適マークがなければ法律違反だ、という意見をお持ちの方もいらっしゃいます(ちなみに本体に技適マークが付いているからといって、本体全体が技適マークを取得しているとは限りません。この点は前述の関東総合通信局とのやり取りの文章をお読み頂ければ、と思います。)
ということで、この点を確認した上で、以下モデルのレビューに入っていきたいと思います。
まずはスペックから、写真とともに眺めていきたいと思います。
まずは基本スペックから眺めていきたいと思います。比較対象として、Pixelbookの最上位Core i7モデルを合わせて載せてみました。
Model | Pixel Slate | Pixelbook |
CPU | Intel 8th Core i7-8500Y | Intel 7th Core i7-7Y75 |
Benchmark | Octane 2.0:33446 Speedometer 2.0:74.8 |
Octane 2.0:32355 Speedometer 2.0:71.9 |
RAM | 16GB LPDDR3 | 16GB LPDDR3 |
Storage | 256GB eMMC | 512GB NVMe |
Display | 12.3” 3000×2000 (293ppi) LCD Molecular Display |
12.3″ 2400×1600 (235ppi) Quad HD LCD Display |
Dimensions & weight | 290.85 x 202.04 x 7.0mm / 731g (290.85 x 205 x 4.5mm / 486g) |
290.4 x 220.8 x 10.3mm / 1100g |
Price | $1,599 (+ $199(Keyboard)) | $1,649 |
単純比較は出来ませんが、より上がった部分を黄線、下がる、もしくは多少気になる部分を赤線で表しました。
CPUが第7世代Core i7-7Y75(Kaby Lake)から第8世代Core i7-8500Y(Anber Lake Y)に変わりました。お馴染みのベンチマークではそれ程の数値の差はありませんし、私の普段の用途においては既に充分に快適なため、体感差があるほどではありません。むしろ体感上の快適さは単純なCPUだけでなく解像度といった他の部分や、液晶の見やすさ、キーボードやタッチパッド等の使いやすさなども含めた総合的な印象になりますので、正直判断が難しいです。少なくとも今までほぼ毎日常用していたPixelbookと大きな違いはありません。
Pixel Slateで話題になっているタブレットモード時のオーバービュー画面での動作のラグについて。我が家のi7のSlateで他のタブレット型と同様の動作をさせてみましたが、特に不審な点も強制終了やカクカクもありませんでした。片手で録りながら行っているので、手の動きが若干怪しいのは勘弁。 pic.twitter.com/XqV8YE4F5a
— おふぃすかぶ.jp (@OfficeKabu) February 20, 2019
RAMはどちらも16GB。この点は現行Chromebookの中では貴重(他にはSpin 13最上位、HP Chromebook 14 x360最上位くらい)です。16GBもあっても何に使うの?という指摘は数年前からありましたが(当時から僅かに16GB搭載モデルが存在したため)、幾ら「軽くてサクサク」と表されることの多いChromebookでもChromeブラウザの使い方や、最近の多種多様な用途によっては8GB RAMを求める声も出てきています。その中での16GBは決して無駄と言うことはないと思いますし、精神的な安心感はやはり違います(実際眺めていると16GBとはいかないまでも10GB近辺まではいくことが時々あるので)。
ストレージは今回一時話題になりました。当初Pixelbook最上位と同様にPixel Slateでも最上位モデルはNVMeが搭載されているのではないか、と言われていたのですが、実際にはeMMCだった、とのこと。
個人的にはもちろんここはNVMeにして欲しかったと思っています。実際Pixelbookの時にもNVMeの恩恵を感じた記憶はほぼないので、気分の問題だとは思うのですが、最上位モデルって価格が突然跳ね上がるんですよ。だってこの下のCore i5モデルで$999ですよ。幾らCPUとRAMが違うとはいっても$600も違うんです。ちなみにこの下のCore i3との価格差は$200です。ちょっと気分的にねぇ、最上位モデルって本当に必要としている人を除けばその他は私のような変な人しか買わないと思うんです。だから数出ないから価格も上がるんだ、と言われてしまえばその通りですが、最上位には最上位たり得るだけの理由があると思うんですよ。細かいことですが。
ただ、実際eMMCだろうが、256GBだろうが、前回(NVMe、512GB)も10分の1も使わなかった私としては全く影響はありません。
続いてディスプレイ(液晶)です。高解像度部分はタブレットとしての使用も考えられるので、3000×2000(Aspect Ratio 3:2)もありかな、と思います。通常のラップトップPCとして使う場合、この解像度だとフォント小さすぎて常用は厳しいですが。ただ、今回特筆したい点として、Google自身がMolecular Displayと敢えて表現するように、今回の液晶、非常に綺麗です。これはPixelbookやその他の従来のChromebookと比べても一段階以上は上だと感じます。いや、良い、ホント。ここ最近のハイスペックモデルも液晶結構高評価のようなので、全体的に液晶に力入れてきているのかもしれませんが、個人的には今回のPixel Slate、この点非常に好印象です。
これ、別の目的で並べて撮ったのですが、左のTab 10の液晶と比べても印象が違うのがお分かり頂けるのではないか、と思います。
ちなみにベゼルの幅ですが、上辺が約10mm、左右が13mm程度です。これをどう評価するかはそれぞれに違うかもしれませんが、今回非常に本体が薄い(7mm)ですし、12.3″という大きさは手で持つにはそれなりにしっかり掴む必要があります。縁ギリギリまで液晶画面があると誤って触れてしまう可能性もあると思うので、個人的には充分ではないか、と思っています。
縁周りも非常に綺麗に仕上がっています。
続いて本体サイズですが、ほぼA4用紙に近いです。
上記の写真はA4用紙の上にPixel Slateを置いたところ。大体の大きさがイメージ出来るのではないか、と思います。
本体の厚みは7mm(スペック表より)。
タッチスクリーン対応、AES方式のペンスタイラス対応、またこちらが実質本体ということを考えると、非常に薄く仕上がっています。実際にはここに別売りのキーボードが重なるので全体の厚みとしては11.5mm程度になるのですが、Pixelbook(10.3mm)同様、非常に薄く出来ています。
前述のスペック表(GoogleのPixel Slateの製品ページ)では本体の重さは731gということでしたが、私が計った限りでは728g。まぁ誤差の範囲内ですね。
別売りの純正キーボード。Google Pixel Slate Keyboardについて。
続いて別売りの純正キーボード、Google Pixel Slate Keyboardについて見ていきます。
改めて先ほどのスペック表を眺めてみます。
Dimensions & weight | 290.85 x 205 x 4.5mm / 486g |
Price | $199 |
上記写真の左側がPixel Slate背面に接する部分、右半分がキーボード部分ですが、このキーボードが大変薄いです。
個人的にキータッチが非常に心配になってしまうような薄さなのですが(左右重ねた状態で4.5mmですし)、思っていた以上にキータッチは良好です。
キーピッチは充分に19mm前後取れていますし、
タッチパッドも充分に広さ(大きさ)があり、反応も良好です。
接続はこの端子部分(USBとして認識されているようです。初回起動時に認識の画面が表示されます)がマグネットになっていて、結構ピタッと貼り付きます。当然Bluetoothキーボードなどと違って別途の充電は必要なく、本体から給電されるようです。
厚みは違うと思うのですが、印象としてはPixelbookのキーボードに近い感触です。実際Googleの発表の際にもこのキーボード、それなりに自信持ってアピールしていた気がするのですが、実際に安っぽさはありません。また、もちろんキーボードバックライトもあります。
本体背面には結構しっかりとマグネットで貼り付き、自由にスライドが出来るので、本体の角度の調整はしやすいな、と感じました。
ただ、このスタンド部分が10cm強あるため、通常のラップトップPCよりも更にテーブルの余裕が必要です。
また、膝の上に載せて使う場合、どうしても結合部分の前後が曲がるので、角度に自由がある、とも言えますが、多少安定はしません。また、ラップトップPCのように(良いかどうかは別としても)キーボード側を掴んで本体を支える、ということは出来ません。
Pixel Slateの純正キーボード。あと人によって気になるとすれば、キーボード側が結構余裕がある(左右に)のと軽いので、膝(腿)上での作業考えてる場合は慣れが必要かな、と思います。当然キーボード側掴んで持ち上げることは出来ないので、あくまでキーボード付スタンドカバーです。 pic.twitter.com/ho14LDhdkI
— おふぃすかぶ.jp (@OfficeKabu) February 20, 2019
また、本体をキーボード側に倒す際に、背面のマグネットで貼り付いているスタンド部分を外してしまう(本体だけ前傾する)と、簡単に結合部分が外れます。
作業を終了して、本体を閉じようとする際には、背面側カバーを本体背面に付けた状態で閉じないと小さなペキッ(結合部分が外れる音)という音がして(もしスリープ状態の場合)突然タブレットモードとなって液晶の電源が入ってしまうので、ちょっと気になります。
Pixel Slateの最初のレビューで触れた「閉じるとき気を付けないと外れる」について、誤解招きそうなので動画で補足。前半のように普通に閉じれば何も問題ないです(多分みんなそうする)。ただ、後半でカバー部分だけ開きますが、ある程度まで開くとマグネット部分外れます、という意味です。 pic.twitter.com/ygJ0zQFvxH
— おふぃすかぶ.jp (@OfficeKabu) February 20, 2019
キーボード側はマグネット等は特にないので、重ねて掴んでも少し左右にズレたりと余裕があるんですね。この辺好みが分かれそうです。通常のスマートフォンやタブレットのフタ付きケース(カバー)のような感覚で立った状態で広げると簡単に本体部分が外れてしまうので、広げる際にはしっかり座った状態で机の上で広げた方が安心だと思います。
キーボードとしてはなかなか打ちやすく気に入っているのですが、本体カバー的に考えると、そのまま鞄に入れるには少し気を使いそうです。また、後述の指紋認証もあるため、私は持ち運びには別途お馴染み国立商店製のレザースリーブを使っています。
Pixel Slate使用時には下に敷くことで軽いクッション代わりになるのでキータッチが変わり、個人的には好みです(他のChromebookでも愛用しています)。
キーボードに関しては今回は購入していないのですが、「Brydge G-Type Wireless Keyboard for Google Pixel Slate」が$159.99と純正キーボードより$40安いながらも、よりラップトップPCに近い感覚で使えるキーボードとして高評価のようなので、私自身も改めて購入してみたいな、と思っています。
ただ、こちらも日本直送をしていないので、転送サービス等を利用する必要があるのが残念です。
Brydgeの本家サイトは日本に発送してくれるようです。
先程Twitterで教えていただきました(ありがとうございます!)日本までの送料は$30のようです。(2019年2月17日 22:00 訂正)
2日使ってみての使い勝手について。音質は非常に良好。また指紋認証も好印象です。
最後にこの2日間使ってみての使い勝手と印象について触れておきたいと思います。
まずは今回液晶とともにGoogleがアピールしていたスピーカー部分です。非常に音が良いです。
横にしたときに液晶の左右に位置するスピーカー部分。これは同じDetachableタイプだったHP Chromebook x2でも同様だったのですが、個人的には充分過ぎる程に綺麗な音を聴かせてくれます。これなら12.3″の美しく高解像度な液晶と合わせて、動画や音楽に積極的に使いたくなります。本体ストレージも256GBと充分にありますので、動画や音楽を保存しておいても良いかもしれません。
この辺りはDetachableタイプの2モデルはタブレットとしての利用をしっかり想定して作られているな、と感じます。また、スタイラスペンに関してはPixelbookと同じPixelbook Penが使えますし、軽く書いた限りではPixelbook同様非常に快適に書くことが出来ます。
9.7″、EMR方式対応のAcer Chromebook Tab 10はそのコンパクトさから気軽なメモやノートに最適ですが、より広い画面(12.3″)でのペンの利用は更に創造的な用途に用いることが出来るのではないか、と思います。
正直なところ、HP Chromebook x2は(Chromebook全体としては数少ない)Pixelbook、Pixel Slateと同じAES方式に対応していながら、書き心地に関しては残念でした。付属のPenは使えたもののPixelbook Penには対応していない、など方式は同じでもバージョンが違うのか、パネル自体の性能の違いなのか、もう少し頑張って欲しかった、というのが惜しい点でした。
それに対して今回のPixel Slateは今のところPixelbook同様、いや、それ以上に(タブレット単体としても使えるので)快適に使えます。最近は純正のGoogle Keepなどもようやく使い勝手が改善されてきたこともあり、スタイラスペンを多用した使い方にも非常に適していると思います。
そして、気になる方も多いと思われる「指紋認証」です。
Chromebookの一つの悩みとして、サインイン時に毎回Googleアカウント(パスワード)を入力しなければならない、というものがありました。一応SmartLock for Chromebookもあります(最近少し安定してきた気もしますが)が、反応が若干鈍いので、認識する前にさっさとパスワードを入力してしまった方が早い、という方もいるのではないか、と思います(私がそう)。
また、最近はDetachableタイプやタブレット型のモデルが出てきていますが、スマートフォンやタブレットのように指紋認証や顔認証が付いていないことで、電源を毎回切らずにスリープを多用して使うにはセキュリティ的に不安が残りました。そうした意味でもタブレットとしての使い勝手と考えると惜しい部分が残っていました。
今回の指紋認証ですが、サインイン時ではなく、スリープからの復帰時のロック画面のみ有効です。
https://support.google.com/pixelslate/answer/9131797
つまり、電源を入れた時には通常通りパスワードなりPINなりSmartLockなりが必要な事は変わりません。
ただ、作業を終えた時にいちいち電源を落とさなくても、電源ボタンを押してスリープにするだけで済むようになります(但し、設定で「スリープから復帰するときにロック画面を表示する」をオンにする必要があります。
指紋は3つ登録できます。私はラップトップPCとして使う状況を想定して、「左手親指」「左手人差し指」を、そしてタブレットとして縦で使う際を想定して「右手人差し指」を登録しました。
で、この3本最初に登録しちゃったので、当初指紋認証がよく分からなかった(気付かなかった)んです。「あれっ?指紋登録してるのに、認証画面出ないじゃないか」「対応してないのか」等々悶々と考えてしまったのですが、良く考えたら普段よく使うこれらの3本の指で電源ボタン押してた(触れてた)ので、認証画面すら表示されずロックが解除されてしまっていたんですね。試しに登録していない右手親指でスリープ状態で電源ボタンに触れたら普通に指紋認証付きのロック画面が表示されました(その後上記3本のどれかの指で電源ボタンに触れた瞬間にロックが解除される)。
この指紋認証の速さは私が普段使っているPixel 3 XLなどのスマートフォン並に速いです。
電源ON直後のサインインは従来通りのサインインが必要ですが、スリープ(&ロック)が実用的になったことで、タブレットとしてだけでなく、通常のラップトップPCとしての使い勝手も向上した気がします。何せセキュリティの不安を感じずに(もちろん指紋認証は完璧ではありませんが)普段からスリープを多用できるようになったからです。
続いて、Pixel Slateの指紋認証について。最初はスリープ状態から一度キーボードを押して、ロック画面を表示させてから、指で触れて認証。その後、スリープ状態から直接指で触れてロック解除させています。 pic.twitter.com/ajjIXvhBKg
— おふぃすかぶ.jp (@OfficeKabu) February 20, 2019
入手後2日の時点での印象は「戸惑い」。ただ、「想像力」と「創造力」が求められる様々な現場におけるツールとしての可能性を感じます。
今回の文章からも私自身の「戸惑い」を感じられた方もいらっしゃるのではないか、と思います。何故ならいつものような暑さ(暑苦しさ)がそれ程感じられないからです。文字数自体は既に1万字超えてますので鬱陶しさはいつも通りですが、何となく私自身がどう評価して良いのか戸惑っている印象があるのではないか、と思っています。
その通りです。
このモデル、私のような(用途として)一般的な「気軽に付き合えるツール」としてのChromebookをイメージされているユーザーにとっては、何故Googleが冒頭のように「今回Pixelbook 2ではなくこのPixel Slateを」満を持して出してきたのか、分かりにくいと思うのです。人によっては他社(AppleやMicrosoft)の米国の教育市場における追い上げに脅威を感じて、「その場しのぎ的に」最近タブレット的なモデルを出し始めてきただけなのではないか、その迷走の結果としてのSlateなのではないか、と感じられても不思議はありません。
ただ、今日他のPixel Slateユーザーの方とお話ししてみて、またここまでのGoogleの動きを改めて考えている内に、むしろGoogle自身が想定している「想像力」と「創造力」が求められる様々な現場におけるツールとしての当然の結果としてこのモデルをこの時期に出してきたのではないか、と感じるようになりました。
あ、今もしかして苦笑されました?信者だと思いました?
ちょっとこの仮定については、更に使っていく中で継続して考えていきたいと思うのですが、とりあえず現時点での頭に浮かんでいることを最後につらつらと並べて、この文章を終えたいと思います。
Chromebook、Chrome OSは、更に言えばG Suiteは基本的には(主に米国の)教育市場を想定して作られています。その方向性も含めて、です。であれば、勿論そのためのサービスやアプリの開発のために、開発者にとっても使いやすい端末でなければなりません。それがここ最近のAndroidアプリ対応やLinux対応への動きです。
そう考えたとき、何故AppleもMicrosoftも通常のラップトップPCではなく、iPadやSurfaceのような端末を投入しているのでしょうか。なぜMacBookや通常のWindowsノートPCではないのでしょうか。
ここ最近、Acer Chromebook Tab 10だけでなくASUSやCTLなどもタブレット型端末を次々と発表しました。またスタイラスペン対応や、多くの教育市場向けモデルがタブレット的にも使えるConvertibleタイプということを考えると、Google自身も現場においてのタブレットの重要性を認識している、と考えられるのです。
教育市場向けのiPadが発表された時、Appleユーザーの方々が「教育市場におけるタブレット端末」の優位性について結構発信されていました。タブレットで充分、という意見だけでなく、タブレットだからこそ出来る、様々な創造的な教育がある、と。
とはいえ、私自身も、ではChromebookのようなラップトップPCが意味がないのか、と言われれば、全くそうは思いません。フルキーボードのある、またフルブラウザが機能するPCの強みというのも大きいですし、それは非常に大切なことだと思っています。何故ならプログラミング教育においても、またその他の学術的な作業においても、キーボードの強みというのは大きいと思うからです。
だから、タブレット単体だけでは限界があるのも確かです。
キーボードも必須でありながら、かつ創造力、想像力を育てる教育も行えるツールとしてのデバイス、と考えた時、ペンに対応し、タブレットとしての強みも活かせ、且つキーボードも自在に使えるものが必要になってきます。その間を行き来するもの、となると、Detachableタイプのモデルが現状ではベターなのではないか、と思います。Convertibleがダメなのではありません。むしろキーボードの強みを活かし、そういった教育に重点を置くのであれば、コスト的な面を考えても通常のラップトップPCに近いモデルの方が良いかもしれません。
今回のPixel Slateは正直言って、現状(取り巻く環境)を考えると、個人ユーザーが日常の用途として用いるには、残念ながら戸惑いも感じるし、却って使いづらかったり、本領を発揮できなかったりする場合も多いのではないか、と思っています。
(むしろ前述の「Brydge G-Type Wireless Keyboard for Google Pixel Slate」のような、より従来のラップトップPCに近い形のキーボードを使った方が、違和感も少なく、また快適に使えるのではないか、という気もしています。)
私も今まで通りの普通の用途で気軽に使う限りにおいては、別にこのモデルでなくても良いんです。第一高いし。快適さだけ考えれば既にPixelbookもありますし、他の半値くらいの昨年後半に出た各メーカーのハイスペックモデル(Convertible)を選んでも良いんです。
ただ、既に国内で入手された方に開発に携わる、興味を持たれている方が非常に多いように、刺さる方がいるのも確かです。そしてそうした方々がこのSlateを用いて生み出していく様々なツールやサービスは、恐らく今後のGoogleとChrome OSにとっても貴重な財産になっていくと思っています。
正直なところ、今このモデルを「活かしきる」には、余程G Suiteが日常に存在し、仕事や学校においてクリエイティブ(という表現が曖昧ですが)な、積極的な関わりが出来る環境にいない限り、難しいのではないか、と思います。更に言えば、現状の国内の教育現場の授業がそうした環境にある訳ではありませんし、受け身で物事に取り組む学習姿勢であれば、正直不便さすら感じるかもしれません。
その辺りが、私自身が、このモデルに触れた時に感じた、
何か新しいものに触れたワクワクやドキドキとともに感じる戸惑い
なのではないか、と思います。この戸惑いから更に想像を働かせて、色々試行錯誤することを楽しめる方にとっては、恐らくこのモデルはそうした可能性や未来を感じさせてくれるデバイスになると思います。
ちょっとポエム的になってしまったかもしれませんが、私の中ではこのモデル、HP Chromebook x2に触れた時以上の戸惑いや、スルーできない引っかかりを感じるのです。HP Chromebook x2でも恐らく感じられたのかもしれない。ただ、それにはまだあの時はタブレット的な部分が今以上に中途半端でした。あれから時間が経ち、Acer Chromebook Tab 10に最初疑問や戸惑いを感じた時と近いものがあります。正直もしかしたら今この文章を根気よくここまで読まれたあなたも、Chrome OSのタブレット型端末(Acer Chromebook Tab 10など)も「何が良いのかサッパリ分からない」といった戸惑いを感じられているかもしれない、と感じています。
HP Chromebook x2が先駆けて道を作ったところを、今回Google自身がPixel Slateというフラッグシップモデル(Pixelbookと両輪)で更に切り開いていく。そこには戸惑いや違和感もあると思うのですが、ワクワクを感じるのも確か。そのワクワクと戸惑いが何なのか、これからじっくりこのモデルを触りながら、感じ、発信していきたいと思います。
https://store.google.com/us/product/pixel_slate