当ブログでは折にふれて取り上げていますが、ここ最近Chromebookの海外からの購入について多く書いているので、その場合に関係してくるこのテーマについて今回は書いてみたいと思います。
技適マークについて、です。
Q1: 技適マークは何のためのものですか?
A: 技適マークは、電波法令で定めている技術基準に適合している無線機であることを証明するマークで、個々の無線機に付けられています(詳しくは、「無線局機器に関する基準認証制度」をご覧下さい)。
※無線機の免許申請をする際に、技適マークが付いていれば、手続きが大幅に簡略化されます。
また、特定小電力のトランシーバー、家庭で使用する無線LAN、コードレス電話などは、技適マークが付いていれば、無線局の免許を受けないで使用できます。
Chromebookを海外から購入しなければならない事情については今回は省きます。実際は私も国内販売モデルを買えるのであれば、そちらを買いたいですし、薦めます。とはいえ、海外から購入するとなれば、やはりこの技適については気になる方もいると思います。
この話は曖昧な部分も多く、個人の良心と判断に委ねられてしまっている点が多いと思います。それで良い、という方と、それでは困る、という方、けしからん、という方、様々でしょう。調べても分かりにくい点もありますので、そこに個人の解釈も多く入り込みます。そこで、今回は個人的にも気になっている点でもありますので、管轄の総務省の「電波利用ホームページ」の記述にしたがって、最寄りの総合通信局である関東総合通信局に問い合わせてみました。
以下、問い合わせフォームから問い合わせたものに対する回答と、その後今日電話で30分程伺った内容を元に私の文章(文責)で書いてみたいと思います。少々問題発言もありますが、それらはあくまで私自身の言葉です。関東総合通信局の方の発言ではありません。
気になる点、納得がいかない点がある方は、良い機会ですので最寄りの総合通信局に素直に訊いてみましょう。
技適マークが付いていなければ違法になるのですか?
結論から書くと、そう訊かれれば、もちろん違法です。やめましょう。ですので、技適マークが付いているか分からない方は、表立って挑発するような言動は行政及び正しく使っている方々の迷惑になりますので、慎みましょう。
だって、「私は技適マークの付いていない無線機を意図的に使っています。技適なんて不要です。海外のモデルは安く買えて得です。万歳。」などと煽るようなこと言われたら、取り締まらなければいけないんです。「おやつにバナナは入りますか?」と同じで、言わなければ良いんです。むしろ言わないで下さい(言わなければやって良い、ということではなく)。あの、SNSで犯罪行為をあげちゃうバカな人たちと同じです。あげちゃうから、捕まえざるを得ないんです。捕まえるとなると、人員も時間も手間もかかります。その間、その他の重要な仕事に力を割けなくなるんです。
正直なのは良いことです。また、犯罪自慢したくなる気持ちも分かります。ただ、業務の邪魔をしないで下さい。
法律違反を推奨するかのような誤解を招きやすい表現でしたので、削除させて頂きます。伝えたかったことは、「横断歩道における歩行者の信号無視と同じで、明らかに法律違反だとしても、それをどう扱うのか」という点と感覚としては似ている、ということです。ただ、技適マークの場合は、実際本人の意識している「違反」と「実際に違反かどうか」が食い違うこともあり、勘違いや誤解して認識している人も多いな、という印象を受けました。となると、「違反しました」と主張すれば、実際違反でなくとも違反しているとして形式上調べなければならない訳です。であれば、不安な方はまずは後述するようにメーカーに確認を取るのが現状ではベターな選択肢かと思います。
実際、技適マークの有無だけを論じるのであれば、非常に難しい話になってきます。例えば後述しますが、見えるところにマークが無い場合でも、必ずしも違法だとは限らないからです。
そもそもなぜこのマークはあるのか。何の意味があるのか。
そもそも、なぜこのマークはあるのでしょうか。今回色々と伺った中で、自分の中でも認識の薄かった部分に気付かされました。それは、前述の「総務省 電波利用ホームページ | 技適マーク、無線機の購入・使用に関すること」で挙げられている以下の点です。
Q6:技適マークが付いていない無線機はどうして使用できないのですか?
A:電波は多くの人が利用しており、現在の社会生活に欠かすことのできない重要なものですが、電波は有限希少ですので効率的に使って頂くために、使用するチャンネルや送信出力、無線機の技術基準など様々なルールが設けられています。
技適マークが付いていない無線機の多くは、これらのルールに従っていません。このような無線機を使用すると、知らずに他人の通信を妨害したり、ひいては社会生活に混乱を来すことになりかねません。
技適マークの付いていない無線機の購入・使用は十分ご注意下さい。
太字は私が付けましたが、様々な背景がある中で、最も大切な部分はこの点なのではないか、と思います。同じ上記電波利用ホームページ内に「混信・妨害の事例」というものが挙げられています。
- 「改造アマチュア無線機を使用した「なりすまし」通信による消防用無線等に妨害」(平成21年9月 大阪府)
- 「外国規格のベビーモニターが携帯電話の基地局に妨害」(平成22年1月 神奈川県)
- 「音声伝送用トランスミッターが消防無線に妨害」(平成23年1月 北海道)
これらは勿論原因となった「許可されていない無線機を利用した」ことも問題ですが、それよりもその結果として起こしてしまった結果が重大な犯罪です。それくらい無線機、電波というものは難しい。検査をしてないものは保証することが出来ないんです。
まして、それがそうした問題を引き起こすかどうかなんて、素人が分かるはずがないんです。それくらい難しいのが無線、電波です。実際私たちは自分が発信している、受信している電波がそれらの重要な電波と混信していない、と自信を持って言えるでしょうか。
混信などによって生じる、反社会的な行為を防ぐためにこの法律は存在する。
世の中には違法な電波がそこら中に飛び交っています。全て取り締まることは、予算を考えても、人員を考えても難しい。けれど、その結果として生じる反社会的な行為は防がなければなりません。盗聴、妨害、更に発展してテロ等々。
取り締まるためには、ある程度の基準と、その目安が必要です。そして、それらは電波法、電波通信事業法などによって度々改正されながら、基準が変わりながら定められています。厳密に見ていくと、数年前に技適マークを取得したスマートフォンやラップトップPCが、今の基準では技適マークを外さなければならない場合も実際あるそうです。
勿論マークの有無自体を問うことも大切なのですが、少なくとも認証を受けていない通信機器の場合には、こうした混信などが生じる可能性が高いということです。本来の目的は、その結果引き起こす恐れのある反社会的な行為を未然に防ぐこと、取り締まること。そのために法律が存在する、ということです。
とりあえずマークが確認できれば問題ないんでしょ?と思われた方へ。
じゃあ、とりあえずマークがついていれば良いんでしょ?と思われている方も多いでしょう。付いていても現行の認証では外れている可能性があることは先ほど触れましたが、ここでは「確認できなければ違法なのか」という点を考えてみます。
技適認証を通過したモジュールに関しては技適マーク付けることが決められていますが、ラップトップPCなどの場合には本体表面には技適マークが無い場合もあります。(中を開いて通信モジュールを見ればマークはあるものの)
何故なら、Wi-Fi通信を行う通信モジュール単体に認証が取れている場合には、通信モジュール自体にマークを表記をするため、内蔵してしまうと見えなくなってしまうからです。
この点は利用者にとっては悩ましい問題で、見た目で技適マークのあるものかどうかの判断が難しいという声があり、2014年9月1日からの改正で、こうした場合に本体の見える場所にマーク(のコピー)を表記しても良いという風に変わったそうです。
ここで「のコピー」「表記しても良い」と書いたのは、これは法律で定められている訳ではないからです。認証を受けている機器以外の部分に全く同じマークを付けるのは「コピー」になります。これは混乱や乱用を招く可能性がある。また「表記しても良い」としたのは、これを「しなければならない」となると、また様々な規制の問題が絡んでくるのだそうです。
また、以前はマーク自体が直径5mm以上、更にその横にRマークに続く技適番号を記載する必要がありましたが、最近の小型化する無線機器によってはこれだけの大きさを記載するスペースを確保できない場合も考えられることから、現行では直径3mmに改正されました。当然誤った表示のされ方がされている場合も確認されているようで、それが違法になるのかどうかは難しいところです。
さらに、例えばラップトップPC一台とっても、無線通信をほぼ担う、取り外しが可能な通信モジュール単体に技適認証されているのか、それともそれを含めたラップトップPC全体に技適認証されているのか、は本来であれば大きな問題です。
何故なら、たとえ通信モジュール自体は違法な電波を受発信することは無くとも、それを組み込んでいる端末側、本体側にその電波を改良、改造してしまう仕組みが施されている可能性もあるからです。だから本来であれば、本体全体に対して技適認証がされていなければなりません。けれど現状ではモジュール単体なのか、ではそれを組み込んだ本体自体は違法な処理は行われないか、といった判断はメーカーごとの裁量に任されている部分も多いとのこと。そして、このことについては現状では明確には定められていません。
表面にマークが無いからといって、またそれが表記が違っているからといって、では違法になるか、というとそうも言えないというのが現状のようです。
技適マークの有無にばかり目を奪われて、肝心なことを忘れていませんか?
極端な話をすれば、本来は一台一台、その通信を行う機器全体に対して精査して認証をしなければならないんです。でも無理ですよね?では実際に一台一台調べて、取り締まることが良いことなのでしょうか。可能だとしても、それが現実問題として必要ですか?
となると、現時点では利用者一人ひとりの意識を信頼するしかありません。そして、製造業者、メーカーを信頼するしかありません。今後大きな問題が出てくるようであれば、細かい部分を含めてガチガチに固められる必要が出てくるかもしれませんが、今のところそうならずに済んでいるのが現状です。
大切なことはそれを使う一人ひとりが「電波を受発信するというのは本来難しいこと」だということを、きちんと自覚すること。けれど実際そこまで意識して使うのは難しい。であれば、きちんとした基準を設けて、それを通過した機器でのみ通信を許可します。ただ、それでも自由に出来るわけではありませんから、気をつけて使ってくださいね、ということ。それが技適マークの意味かな、と思います。
では私たちはどうしたら良いのでしょうか。
自分は技適マークの付いている無線機しか使わない、そもそも国内販売品しか使ってないから大丈夫、という方。本当にそれだけで良いのでしょうか。確かに技適マークは付いていますが、それで思考停止してしまって良いのでしょうか。
私を含め、多くの方はこの段階で止まってしまっているのかな、と思います。「とりあえず法律だから」と漠然と考えていて、それ以上考えることがない。付いていなければ犯罪。法律違反。
勿論この思考が良い方向に働いて、今のグレーゾーンでそれぞれの良心と自主規制に支えられて日本の現状が保たれているとも言えます。
ただ、だからこそ、もしこの長々と書いた、要領を得ない文章をたまたま目にしてくれたからこそ、ちょっとだけ考えて欲しい。本来の技適マークの意味は何なのだろう?と。なぜあるのだろう?と。
また、自分の使っている無線機(スマホやWi-Fi通信機能等のついたPCなど含む)が果たして大丈夫なのだろうか、と不安になった方。恐らくいくら調べても答えは出てきません。解釈は曖昧だからです。現状一番簡単な方法は、販売元のメーカーに確認を取ることです。
そして、どんな形であれ、もし技適や無線、通信に関して興味を持たれたのであれば、難しいな、と思われたら、是非最寄りの総合通信局に相談してみてください。
今回、私は30分以上色々と訊いてしまいました。正直行政の方々の貴重な時間を奪ってしまったかもしれません。ただ、こんなことを言われていました。
「電波の利用に関しては非常に難しく、意識、無意識に関わらず世の中では多くの違法な利用がされています。そして多くの方は全く気にせずに何となく使ってしまっています。それが混信や妨害といった事故に繋がることも多々あります。
けれど、最近この技適マークをきっかけに、一般の方でも自分の使っている機器は大丈夫なのだろうか、と思ってくれる方が増えてきました。これだけでも少しは技適マークが役に立ったのかな、と思っています。こうして興味を持って質問してくださることはとても嬉しいことです。これからも気になることがあったら、是非遠慮せずに問い合わせてきて下さい。」
世の中は多くの良心と暗黙の了解に支えられて保たれています。それが必ずしも良いことばかりとは限りませんが、私はそんな文化が嫌いではありません。そして、日々反社会的な迷惑・妨害行為が起きないように尽力されている方々がいる、ということも忘れてはいけないな、と思います。もし気になる点があれば、素直に聞けば良いし、曖昧な世の中の仕組みも分かった上で、そんな曖昧さの中でなんとか息苦しくないように、けれどきちんと支えている方々を裏切らないような言動を心がけたいな、と思っています。