現在、コンパクトなChromebookを選ぶ、となると、選択肢はほぼ3つに絞られると思います。一つが「Lenovo IdeaPad Duet Chromebook」、もう一つが「ASUS Chromebook Detachable CM3」、そして、若干以前のモデルとはなりますが、タブレットタイプのモデルとして販売された「ASUS Chromebook Tablet CT100PA」です。
Lenovoが「新生活応援キャンペーン」を開催中ということもあり、Lenovo IdeaPad Duet Chromebookは5月9日までは9,900円(税込)の値引きとなっています。
https://www.lenovo.com/jp/ja/notebooks/ideapad/duet-3-series/Lenovo-CT-X636/p/ZZICZCTCT1X
また、Amazonでは現在、ASUS Chromebook Tablet CT100PAが46%オフの26,800円とこちらもお手頃な価格になっています。
ASUS Chromebook Detachable CM3に関しては、発売直後の大幅値下げのキャンペーン終了後は大きな動きはなく、通常の価格に戻っているため現時点では若干前述の2モデルに比べるとお買い得感は薄くなっていますが、それでもAmazonではストレージを半分の64GBにしたモデルが44,980円となっていますので、こちらも人によっては十分に選択肢に入ってくると思います。
実際にこれらのモデルを最初のChromebookとして検討されている方も多いのではないかと思っています。そこで今回は、これらのモデルの特徴や違いについて、簡単にまとめてみたいと思います。
はじめに。Chromebookは「Android OSにキーボードが付いたもの」ではありません。
それぞれのポイント、比較に入る前に、予め触れておきたい点があります。それが、
「これらも含めてChromebookは、Android OS(Androidスマホやタブレット)ではない」
という点です。まだまだネット上を眺めていても、「ChromebookはAndroid OSにキーボードを付けたもの」といった認識をされている方も結構目にします。ただ、実際には、
「Chrome OS上でAndroid OS、Androidアプリを擬似的に動かしているだけ」
に過ぎません。この違い、大したことがないように感じるかもしれませんが、全く異なります。というのは、システム部分はあくまでAndroid OSではなく、Chrome OSだからです。
ですので、使えるアプリや使い勝手など相性が出てきますし、またシステムに影響のある部分(例えばATOKのAndroidアプリ版を使いたい、など)に関しては、あくまで「一部のAndroidアプリ内でのみ」しか使えません。Androidアプリでウィルス対策アプリや1passwordなどのパスワード管理アプリ、ATOKなどの言語入力関連のアプリを入れたとしても、それらが使えるのはあくまで一部のAndroidアプリ上に限られていて、Chromebook自体の言語入力をATOKに変える、といったことは出来ません。
このあたりに関しては、余程の方針転換がない限り、今後も対応は難しいかな、と思っています。何故なら、ChromebookはあくまでChrome OS上で動いているノートPCであり、Android OS上で動いている訳ではないからです。また、今後Google自身の気が変われば別ですが、Google自身は別にChromebookをAndroid OSのタブレットに変えていこうとしているわけでもなく、あくまでChrome OSのタブレットに過ぎません。
今回取り上げた3つのデタッチャブル、タブレットタイプのモデルを「Androidタブレットの代わり」として考えている方も多いと思いますが、その点は予め留意しておく必要があります。
今回取り上げる3モデルの特長と違いについて。
さて。それでは、この3つのモデルについて触れていきたいと思います。まずは簡単に違いについて表にまとめてみました。
ASUS Chromebook Detachable CM3 | Lenovo IdeaPad Duet Chromebook | ASUS Chromebook Tablet CT100PA | |
キーボード | 付属(分離型) | 付属(分離型) | なし |
液晶サイズ | 10.5”(1,920×1,200) | 10.1”(1,920×1,200) | 9.7” (2,048×1,536) |
プロセッサー | MediaTek MT8183 | MediaTek Helio P60T | Rockchip RK3399 (OP1) |
外部液晶出力 | 1,440×900 | 1,920×1,080 / 30Hz | 3,840×2,160 |
RAM / eMMC | 4GB / 64GB | 4GB / 128GB | 4GB / 32GB |
スタイラスペン | 付属 / USI | 別売 / USI | 付属 / EMR |
本体サイズ / 質量 | 239.8 x 159.8 x 7.35mm / 約450g | 255.44 x 167.2 x 7.9mm / 約506g | 238.8 x 172.2 x 9.98mm / 約510g |
自動更新ポリシー | 2028年6月 | 2028年6月 | 2023年8月 |
簡単に、といいつつ、いつもどおりの長い表となってしまったのですが、こうしてみると、先行して数年前に発売されたChromebook Tabletと最近のDetachableに関しては、意外と違いがあることに気づかれるのではないでしょうか。
最近はこの手のモデルはMediaTek製のプロセッサーが使われています。これらはクラムシェルタイプのスタンダードモデル等にも採用され、かなり使われるようになってきましたが、以前はごく一部のモデルに限られていました。むしろコンパクトなモデルは「OP1 for Chromebook」と呼ばれたようなRockchip製のプロセッサーが主流(といってもそこまで数が多かった訳ではありませんが)でした。
Octane 2.0などのベンチマークスコアに関しては、大きな差は見られません。ただ、外部液晶モニターへの出力時の最大解像度や、元々の最大解像度自体に違いがあります。
最近のDuetやCM3はベースはキーボードを取り付けた状態でノートPC的に使うことを想定しているため、極端に大きめの解像度は採用されていません(1,920×1,200程度)。それに対して、Chromebook Tabletはベースがタブレット端末として使うことを想定しているので、より高い解像度での表示も考えられています。
これは単純に目と液晶との距離に関係します。ノートPCの距離で画面を見る場合には、あまり解像度が高くても、文字その他が小さくなりすぎてしまうため、却って使いづらくなってしまいますが、タブレット端末であれば目との距離が違いので、高解像度で多少文字が小さくなろうがそこまで影響がないからです。
私たちはつい表面上のスペックを重視しがちですが、「解像度が単純に高ければ良い(高性能)」か、という点は注意が必要です。
続いてはストレージ容量。多くの方はこの手のタイプのモデルは「iPadやAndroidタブレットの代わり」として考えているのではないか、と思います。そう考えると、Chromebook Tabletの32GBというのは非常に心もとないのも事実です。一応microSDスロットなど外部ストレージも使えますが、かと言って本体内のアプリやデータなどを気軽にそうした外部ストレージに移せるわけではありませんので、まだまだ使い方は限定的です。
となると、本体ストレージ容量がどの程度あるか、はこうしたタイプのモデルではそれなりに重要なのですが、このあたりは「好み」ですね。もちろん色々アプリや書類や電子書籍などのデータなどをどんどん入れていきたいとは思いますが、入れれば入れるほど、今度は他の端末への移行や、他端末と併用する際には不便になります。何故ならChromebookの大きな魅力の一つが「端末内にアプリやデータをほとんど残さないので、モデルを気分で切り替えて使ったり、移行などの際に楽」という端末にほとんど依存しないことでもあるからです。
このあたりは割り切って「この端末はタブレットとして、iPadやAndroidタブレットと同じ使い方をする」というのも良いのですが、そうなった場合には、当然最初からiOSやAndroid OSといった、元々タブレットで使うことに特化させたUIを持った端末のほうが使いやすいと思います。前述の通り、あくまでChromebookにおけるAndroidアプリの相性は「動けば儲けもの」程度でもあるからです。
続いてスタイラスペンについて。こちらは3モデルともUSIもしくはEMRペンに対応していますので、自分と相性の合うAndroidアプリやWebアプリが見つかれば、それなりにしっかりしたイラストやノート取りにも使えます。最近はCLIP STUDIO PAINTもChromebookに正式に対応しましたし、このあたりは今後に期待ですね。ただ、これに関しても、突き詰めてじっくり使い込みたい、というのであれば、現状ではiPad+Apple Pencilを私は勧めたいと思います。
キーボードに関しては、Chromebook Tabletはもとから付属していませんが、ここは用途次第。私のように、キーボードを取り付けた状態では画面が小さく、また頭が落ちてしまう(首を落として画面を凝視する)形になるのは厳しいので、元々そうした使い方は「どうしても必要な時」に限っています。じっくり文章作成をしたいのであれば、私であれば、フルサイズキーボードとそれなりの解像度でもそれなりの視認性を持っている、13.3インチ以上のクラムシェルもしくはコンバーチブルタイプのモデルを選びます。(実際、ご存じの方もいると思いますが、私の場合はDetachableのDuetやCM3でも、付属キーボードからは取り外して、タブレットスタンドに取り付けて、視線の高さを上げて、別売りのフルサイズに近いキーボードを繋げて使っています。)
さて。ここまでの段階においては、これら3つにそれほど大きな違いはなく、となればあとはお財布と好みで選んでしまって問題ないのではないか、と思われるかもしれません。
ただ、ここで実は最も注意してほしい点があります。それが、お馴染みの、端末ごとに定められているサポート期間である「自動更新ポリシー」です。これが今回はかなり大きいです。というのも、
- ASUS Chromebook Tablet CT100PAは「2023年8月」まで。
- Lenovo Duet ChromebookとASUS Detachable CM3は「2028年6月」まで。
と、これらには5年近い差があるからです。これには理由があります。Chromebookにおける「自動更新ポリシー」に関しては「発売日から6〜8年」といったイメージを持たれている方も多いのですが、実際には「各ハードウェアプラットフォームの開発時期、発表時期」から数えて「8年(2019年以前のハードウェアプラットフォームのものは現時点では6年)」になります。このハードウェアプラットフォーム、というのが少々厄介です。
というのも、例えばCT100であれば、発売は2019年4月ですが、中に搭載されているプロセッサーなどの基本的なハードウェア構成(プラットフォーム)は、国内では2017年11月(海外では9月)に発売された同社のコンバーチブルタイプの名機、C101PAとほぼ同じだからです。そのため、2019年に発売されながら、自動更新ポリシーの扱いとしては2017年のC101PAと同じ(2017年から6年で2023年)という扱いになります。
これに対して、今回のDetachableタイプの2モデルは、ハードウェアプラットフォーム的には2020年のものになります。CM3は今年発売されましたが、先程と同様、Duetと同じハードウェア構成という扱いになるので2020年になります。で、2020年以降に発表されたプラットフォームのモデルに関しては、自動更新ポリシーを従来の6年から、順次8年にする、とGoogle自身が発表していたこともあり、このモデルの場合は2020年から8年間で2028年になります。
この部分、最近現行モデルとして販売されている各社のモデルでも同様で、発売自体は2020年でも、ハードウェア構成的には2019年以前のもの、というモデルが結構混在しています。この場合、8年ではなく、従来どおり6年となりますので、そこで更に短くなってしまっていることに注意が必要です。ですので、現時点では基本的には今年以降発表されたモデルを買うのが無難と言えるかもしれませんね。
ということで、長くなりましたが、冒頭で触れたように、現時点ではChromebook Tabletは46%オフと非常に魅力的ではあるのですが、ハードウエア的には2017年、つまり4年前のモデルという扱いになりますので、「あと2年」と割り切ってでも、数千円安く買えることや、その他今回触れたような部分でこちらに魅力を感じる場合を除けば、5月9日のキャンペーン終了までは、数千円高くてもLenovoのDuetを個人的にはオススメしたいと思います。
これらの3モデルは、Chromebookのスタンダードではなく、あくまでその内の1タイプ。むしろ若干特殊で個性のあるタイプのモデル。
最後に。今回は今、国内でも人気の高い、また一般的にも最も知られているであろうコンパクトサイズのChromebookを取り上げました。ただ、6年以上Chromebookを使ってきた私が伝えたいことがあります。それが、
これらは「Chromebookの中の1つ」に過ぎません。
「これがChromebook」というわけではありません。
分かりにくい表現になってしまいましたが、Chromebookといっても、液晶サイズや本体の大きさ、重さ、更に細かいスペックや処理速度、さらに言えば価格も多種多様です。これは他のOSのPCと変わりありません。
今回取り上げた3モデルは話題にもなっていますし、価格も手頃なことから、最初に使われる方も多いのではないでしょうか。ただ、これらのモデルが必ずしもあなたと相性が合うとは限らない、ということです。でも、このモデルが使いにくかったからといって、即、
Chromebookは使いにくい。
という結論に至ってほしくないな、と思うのです。これらはあくまでChrome OSを載せたPCの内の1つに過ぎません。こうしたデタッチャブルやタブレットタイプのモデルが合いそうだと思って買われたかもしれません。そして思ったよりも使いにくかった。もしくはあまり使う機会がなかった。
でも、もしかしたら、あなたの本来の用途を深掘りしてみると、実はこうしたコンパクトタイプのモデルよりも、13.3インチ〜15.6インチのスタンダードなクラムシェルタイプ(一般的なノートPCタイプ)のChromebookのほうが相性が良い可能性もあります。
同様に「言われているほどサクサクでも快適でもない」と感じられるかもしれませんが、これらのモデルは現行の中でも、むしろ単純な処理速度的には控えめなモデルです。単純なパワー等を抑えつつ、コンパクトさ、持ち運びのしやすさと、バッテリーの持ちや、Androidアプリが多少使いやすいように、という方向に特長を振った1モデルです。
むしろ少し個性のあるモデルですので、「これがChromebook」と考えてしまうと、せっかく興味を持たれたのに、あなたに合うChromebookが他にあるのに、単純に最初の1台が自分に合わなかっただけで「Chromebookって大したことないじゃん」「案外快適じゃないし使いにくい」と思ってしまうのではないか、と心配しています。
スマホも同じですよね?あなたに合うスマホ、合わないスマホがありますが、1台合わなかったからといって「私はスマホは合わない」とはなかなかならないと思うのです。それと同じです。
なので、あくまでこれらのモデルは「Chromebookの数多いラインナップの内の1つ」として、選択肢と考えてもらえたら嬉しいです。
https://www.lenovo.com/jp/ja/notebooks/ideapad/duet-3-series/Lenovo-CT-X636/p/ZZICZCTCT1X