[かぶ] GoogleのG Suiteから見えてくる「端末フリー」の姿が法人市場だけでなく教育市場においても大きなポイントになるかも。

先日書いた「東急ハンズ」の話が予想以上に多くの方に読んで頂き、シェアして頂いたようで、大変嬉しい反面、ちょっと次に何書こうか躊躇してしまった部分はあるのですが、引き続き似たようなテーマで書いてみたいと思います。

[かぶ] 東急ハンズのChromebookへの移行は「依存するOS」を単純に変えたのではなく、むしろ「OSフリー」への道を選んだということ。そこにあるChromeOSの魅力。

2017.08.02

今回は、前回も触れた先月28日に参加させて頂いた三谷商事株式会社主催の「学校のためのChromebook徹底活用セミナー」で伺った話から、教育市場におけるGoogle、Chromebookのシェア拡大の背景について考えてみたいと思います。

Googleが教育市場で広げたいのはChromebookではなくてG Suite for Education。

別に「ChromeOS」でなくても「Chromebook」でなくても良いのだと思います。

前回の最後でこんなことを書きました。

東急ハンズであれば、前述のように「2011年ごろから「OSフリー」を基本方針として社内業務システムの刷新」をしてきた背景があり、また店舗では既に「脱PC」も推進している現状があります。その前提があって、自社の今後のシステムを考えた時、現状選んだのがChromebookへの置き換えという手段だった、ということであって、それは単純に「Windows 7のサポートが2020年で終わるから」というだけの消極的な理由からの選択ではない、ということです。

東急ハンズは別にChromeOSやChromebook「でなければならない」訳ではなく、自社が推し進めてきた「OSフリー」への過程において、ちょうど現時点で導入しているWindows 7のサポートが切れるタイミングに合わせて次を模索した結果「現状ではChromeOS(Chromebook)がベター」だっただけ、という話です。

別に「Chromebook」でなくても良いんです。「ChromeOS」である必要もないんです。

これはGoogleにとっては自社への依存度が低くなるわけで嬉しいことではないように一瞬思えてしまうのですが、実際には「それ程痛くもない」のかな、と思っています。何故ならGoogleにとっては「Chromebookでなくても良い」からです。シェアを広げたいのは「ChromebookやChromeOS」ではなく、「G Suite」だからです。そう考えていくと、今アメリカで大きなシェアを取っていて、日本でも少しずつ話題になってきている(ような気がし始めている)教育市場においてのChromebookに関しても同じ見方が出来ます。

Googleが教育市場で広げたいのはChromebookではなくてG Suite for Educationです。

ChromebookもChromeOSも「よりG Suite for Educationを活用しやすくなる」ための一つの手段であって、これらの機器の導入が一番の目的ではない、ということかな、と思っています。(もちろん売れないよりは売れたほうがシェアは広げやすい訳で「売れなくても良い」とは違います。)

これを単に「Chromebookは安いから」と価格の面だけを捉えて他社が対抗しようとしても手強いのではないか、と思います。例えばMicrosoftの「Chromebook対抗としての$189~のWindows 10 S搭載モデル」も、単なる「機器自体の価格競争」だと考えていると見誤るかな、と思います(Microsoftもそんなことは充分に分かっていると思いますが)

Googleの戦略の強み。それは全てをGoogleアカウントに集約出来る「端末フリー」であるということ。

前回もご紹介した「学校のためのChromebook徹底活用セミナー」で伺った、実際の現場での導入例から考えてみます。

前回もご紹介した前述のセミナーにおいて、第三部で登壇された学校法人光明学園 相模原高等学校の笠原 健司先生のお話で印象的だったことの一つとして、

「学校(授業)ではキーボードがあったほうが良い。だからChromebookを使っています。ただ、動画の再生や編集など、タブレット端末やスマートフォンのほうが使い勝手が良い場合もあります。今の学生はほぼスマートフォンを使っていて、実際にもの凄い速さでフリック入力をしています。であれば、授業以外の場面では普段愛用しているスマートフォンが使えるのが一番なんです」

だいたい意訳するとこんな感じのことを話されていたのですが、実際に授業外ではiPhoneを使っている学生が多いようでした。いつでも、どこでも、何を使っても、授業(Classroom)に参加出来る。課題に取り組める。思いついたときに先ほどのディスカッションの内容に付け加えることが出来る。

課外活動ではChromebookを持ち歩かなくても良い。スマホで撮れば良い。撮ったものはその場で編集してクラウドに(GoogleフォトやGoogleドライブ)アップして共有する。

これらが可能なのは教育現場にChromebookを導入したからではなく、(学生たちにとって)Googleアカウントだけあれば良いG Suite for Educationだったからです。

もちろん「管理負担が減らせる」ことはChromebookの大きな魅力。

もちろん、Chromebookのシェアが大きくなったことの理由にはChromebookとChromeOS自体が持つ教員側(管理側)の管理負担が減らせるという魅力も大きいと思います。

例えば同じく「医進・サイエンスコース」においてChromebookを導入している東京の私立広尾学園中学校・高等学校では、以前は起動の速いタブレット端末を導入していたものの、その時には年度初めに200台以上の端末を回収して1台1台接続して設定を変更していたとのこと。ITに強い教員が2人がかりで3日間で端末の設定を変えていかなければならない労力は大きかったそうです。

これがChromebook導入後はGoogle™の管理コンソールを用いて5分で終えることが出来るようになったそうです。また普段の管理においても何か設定を変えなければならない際には、例え家に端末を忘れてきた生徒がいたとしても(実際いるそうですが)端末を回収しなくてもウェブ上で一括管理出来るのは大きな強みとのこと。

端末自体に独自の規格のアプリやシステムを組み込む、というのは確かに便利です。より複雑なことも出来るかもしれません。ただ、端末毎の互換性の問題が生じたり、OSのアップデートに伴ってアプリ自体が使えなくなる恐れも出てきます。また、その都度端末を回収し、メンテナンスを行う必要も出てきます。けれど、端末に依存しないウェブベースの規格であれば問題ありません。

ChromebookやChromeOSは基本的にはローカルへのデータの保存を前提とせず、また更新はほぼ自動、起動時には常に最新の状態に保つことが出来、更新も起動も速いというのが強みです。Chromebook自体がウェブベースの規格に繋ぐためのツールに過ぎず、安定しているのも特徴。

「安さ」だけが取り上げられがちですが、その安さを生んでいる本体の構造そのものが教育現場においては管理の上での安定性と容易さを生む結果になっています。

「入れ物(端末)が何か」というのは目的を考えた上での最後の選択に過ぎない。

教育現場への導入というと、「タブレットかノートか」「WindowsかMacか」みたいな「何(=箱モノ)を入れるか」という話ばかりが先行してしまうけれど、本来は「何をやりたいのか」が先で、そのために「どんな仕組みを作るか」が後の筈です。入れ物が何かというのはそれらを考えた上での最後の選択に過ぎないと思っています。

ちょうど先日、こんな記事が話題になりました。

このネタ自体は以前からまことしやかに語り継がれてはいたものの、私自身、実際の状況についてはよく分かってはいませんでした。こちらの記事では実際には

ほとんどの学生がレポートをパソコンで書いているものの、たまにスマホを利用する学生が約1割いると考えると、今回の取材と感覚的に一致する。「レポートをスマホで書く」学生はいないが、「レポートにスマホを使う」学生はいる、という表現が適切と言えるのかもしれない。

としています。大学のレポートや大切な論文となれば実際にはスマホでは難しいかもしれません。ただ、実際ITスキルの高い学生が「基本的にはパソコンで書いているものの、スマホを使うときがあるそうだ。締め切りが近く急いでいて、ちょっとした空き時間や移動時間を使って書きたいときや、思い付いた構成を書き留めるのにスマホを使う。」ということもあるようで、時と場所、状況に応じて使い勝手の良い端末を選んで使える、というのは大きな魅力ではあります。

今回の文章では私は「G Suite」(とG Suite for Education)をとても評価する書き方をしていますが、勿論このシステムでなければならない、とは思っていません。ただ、今後は教育現場においても「端末フリー」というのは大きなポイントになってくるのかな、と感じました。

必要に応じてそれぞれが自分に合った環境を整えることは大切だと思います。大学や研究者であれば、場合によってはハイスペックなPCが必要になってくる場合もあるでしょう。けれど、そうした方々であっても、スマホやChromebookのような端末が全く意味がない、無駄、というわけではありません。時と場所によってはスマホでアクセス出来ることが大きなメリットにもなります。

また、中学校や高校においては普段はそこまでの環境は必要なく、授業ではChromebookを使いつつ、外ではスマホを使う、というパターンもありだと思います。

そうした時に教育現場に必要なものは、特定の端末でしか使えないものや、独自の規格ではなく、端末に依存しない安定したツールなのかな、と感じました。その一つが今回取り上げたG Suite for Educationかな、と思っています。

もちろんAppleやMicrosoftも同様のツールは提供していると思います。あとはそのツールがどういう顔を持っているのか、ということだと思います。独自性が強いのか。ある程度端末は固定されるのか。

これはそれぞれの教育現場の担当の方々の判断に依るものであって、現場で携わっていない私がとやかく言えることではありません。それぞれに皆さん悩まれて、現場でないと分からない問題も多々あるでしょう。

私は単にChromebookが好きな一個人のユーザーに過ぎませんが、そうした視点からこれからも教育市場での導入事例は追っていきたいな、と思っています。

今、G Suite for EducationやChromebookを導入している、もしくは関心を示している教職員がGoogleの提供するSNSであるGoogle+を活用して「教員によるコミュニティ」を各地で立ち上げ、実際に活動されているそうです。

Google+は個人ユーザーの間では「Facebook対抗としてGoogleが出したものの結果が出ていない、とっくに終わったSNS」程度の認識の方も多いと思います。ただ、実際には広く浅く世界的に広がるFacebook同様のSNSではなく、このような同じGoogleアカウントを持つ、Googleのサービスを活用する者同士が交流するコミュニティとしての性格のほうが合っているのかもしれないな、と思います。

Chromebook好きにとってはGoogle+はメンバー数10万人を超えるChromebookコミュニティもある貴重な交流の場でもありますので、これからも期待して見ていきたいと思っています。

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