先日のブラックフライデーセールでChromebookの購入を新たに検討された方も結構いらっしゃるのではないでしょうか。
ただ、眺めていると、まだまだChromebookってどんなものなのか、いまいちイメージが出来ていない、という方も多いと思っています。
そりゃそうですよね。Chromebook自体は既に最初のモデルが出てから10年以上が経っていますが、国内で話題になり始めたのはほんとこの数年の話だからです。
ネットで出てくる疑問を眺めていると、何となく皆さん「Windowsなどの既存のPC」をベースにイメージされている気がします。
なので「手元のWindows PCが古くなってきたから、最近話題のChromebookが安いし買い換えを検討している」とか「Officeは使えるのかな?」「DVDは見られるのかな?」といった疑問が結構出てきているのかな、と思います。
また、Google自体が押し出していることもあり、Androidアプリが一応それなりに動くことから「Androidタブレットの替わり(もしくはiPadより安いから)」といった理由で、何となくスマホの延長上にある端末だと思われている方もいると思います。
この辺りの話は、前回「2つのイメージを取りあえず一旦捨てましょう」というテーマで文章にしています。
で、今回は何の話をしたいかというと、じゃあChromebookって何?ということです。
従来のPC的な感覚で見れば、確かに(従来のPCの基準で考えるのであれば)単に出来ることが限られている、ネットに繋がないと何も出来ない、ただ安いことだけがメリットの、Web閲覧専用端末。Androidアプリが動くからタブレットにキーボードが付いたモノ。といった、機能が限られた安価なPCに思われがちです。
なのでPCに詳しい方でもこの辺りあまり理解出来ずに「Chromebookの存在意義って何?」的な感想を持たれる方も見かけます。
ただ、実はChromebook、従来のPCでも、Androidタブレットでもなく、実は全く別のことに特化したデバイスなんです。なので、似ているようでいて、全くの別物です。
ちょうどここ最近、Chromebookを説明する上で、非常に分かりやすい例となるサービスが少しずつ話題になってきていますので、今回はそのサービスを例に挙げながら、Chromebookって何?という点について話してみようと思います。
もちろんこれが絶対的な唯一の正解というわけではありません。
正直、あなたにとって使いやすければ、便利に使えているのであれば、その使い方があなたにとって一番です。ただ、今回お話しするようなイメージを持ってChromebookを見てもらえると、前述したような疑問(「手元のWindows PCが古くなってきたから、最近話題のChromebookが安いし買い換えを検討している」「Officeは使えるのかな?」「DVDは見られるのかな?」)に対しても理解しやすいのではないか、と思います。
Chromebookは「ネットで繋いだ、外部にある何かを動かすことに特化させたデバイス」です。
例を出す前に、まず結論からお話しすると、Chromebook(ChromeOS端末)は、
ネットで繋いだ、外部にある何か(高性能なコンピュータなど)を動かすことに特化させたデバイス
です。この一文でパッとイメージ出来た方は、この後の説明はほぼ不要だと思いますので、この時点で読むのを終了してしまっても大丈夫です。
つまりどういうことかというと、
ゲームも、画像編集も、動画編集も、単純な文章作成も、データの管理も、すべてChromebookの中で行うのではなく、Chromebookで外部の高性能の巨大なコンピューターにネットで繋いで、そのコンピューターで処理して使う。
そうした使い方をするために最適化されたデバイスなんです。
ここが、外見は似ているようでいながら、Windows PCやMacBook、更に言えばスマートフォンやタブレット端末との大きな違いでもあります。
これらの既存のデバイス(Windows PCやスマートフォンなど)は基本的には、
- ゲームも、画像編集も、動画編集も、単純な文章作成も、専用のアプリをPC(スマホ)の中にインストールして使う。
- データ管理も、必要な文書ファイルや表計算のファイル、書類などはPC(スマホ)の中に保存したものを読み込んで使う。
んですね。
これに対してChromebookは基本的にはChromebook本体内にこうしたアプリやデータをインストール、保存して使いません。
もちろん一時的には保存することはあっても、基本的には作業をしているのは、ネットで繋がれた先にある、巨大なコンピューターの中で行っているんです。
ちょっと分かりにくいと思うので、ここで先ほど触れた例を挙げて説明してみたいと思います。
Windows版のゲームをネットに繋ぐことで快適に遊ぶことが出来る、クラウドゲームサービス。
最近少しずつ話題になってきたクラウドゲームサービスをご存じですか?一番有名なものとしてはGeForce NOWというサービスがあります。
GeForce NOW Powered by SoftBank フリープランで楽しもう
既に利用したことがある方なら、このサービスの仕組みを何となくイメージ出来るのではないでしょうか?ただ、ご存じない方、いまいちイメージ出来ない方のために簡単に説明しておくと、
このサービスでは、
PC(やスマホ)の中にPCゲームを直接インストールする必要はありません。
クラウド(ネットワーク)上に、何万人と同時にアクセスして使える非常に高性能なゲーミングPCがあると思って下さい。(要は日本のどこか、世界のどこかに、です)
なので、私たちは自分でゲーミングPCを用意する必要はありません。何故なら高負荷な処理はすべてその非常に高性能なゲーミングPCが行ってくれるからです。
私たちがすることは、そのゲーミングPCにネットを使って、IDとパスワードでサインインするだけです。
高負荷な処理はすべてそのゲーミングPCが行ってくれるので、手元の端末ではあくまでその結果が画面に映し出されるだけです。そして、私たちはキーボードとマウスだったり、ゲームパッドなどを使って、その映っているゲーム画面を見ながら遊ぶ。
え?そんなの実用的なの?大したゲーム遊べないんじゃない?と思われた方は、私が最近、ChromebookとGeForce NOWで、同じChromebookユーザー3人とボイスチャット付きでマルチプレイを遊んでいる様子をライブ配信していますので、そちらもサラッと眺めてみて下さい。
(ゲームは2017年のものですが、GeForce NOWの対応ゲームには最近発売されたばかりの高負荷なゲームもあります)
ある程度安定した通信環境があれば、かなり快適に遊べます。
というと、もしかしたら
「そんなの、ゲーミングPCなりPS5なりを買った方が良くない?」
と思われる方もいると思うのですが、クラウドゲームサービスにも利点があります。それが、
- ゲームをその都度本体にインストールする必要もなければ、アップデートも必要ないので、そのための時間がかからない。
- また、ゲーミングPCであれば例えばGPU等のドライバーのアップデート等が必要だが、それも不要。
- 高負荷な処理はすべて外部のコンピューターで行っているので、手元の端末は低電力でも使えますし、ファンが回って五月蠅い、ということもない。
- 端末を選ばないので、手元のChromebookでも、デスクトップPCでも、iPadにゲームパッドを繋いでも続きからすぐに遊ぶことが出来る。
これらが、そのゲームを購入していれば、あとはGeForce NOWのIDとパスワードさえあれば自宅でも出先でも宿泊先のホテルでも実家でもネットに繋げる環境さえあれば遊べる、ということなんですね。
もちろんFPSなどでeスポーツに代表されるような、本当に僅かな操作ミス、遅れも許されないような精密なプレイが必要なゲームだったり、有り余るお金とパワーを使って、常に最高峰の4Kの美麗なグラフィックと処理速度で最高のゲーム体験をしたい、と言う方には向きません。
ただ、この手頃さ、手軽さはメンテナンスが一切要らない、場所と端末を選ばない、という意味で慣れると非常に便利なんです。
で、これを先ほども挙げたように、画像編集でも、動画編集でも、単純な文章作成でも同じ考え方で行おうとした端末、更に言えば、そうした使い方に特化したOSとシステム、UIにした端末がChromebookなんです。
基本的な考え方が、こうした「ネットに繋いだ、外部にある何か(の上でアプリ等を)を動かすこと」なんです。
私たちが無意識に使っている多くのサービスは、実は「外部にある何かを動かして」使っている。
今までのPCやスマホの考え方では、画像編集も動画編集も、それ以外の日常の作業も、専用のアプリを本体にインストールすることで、複雑な機能や処理を行ってきました。
多くの方にとっては、手元にお気に入りの使い慣れた動画編集ソフトや年賀状作成ソフト、音楽再生ソフトや、日本ではシェアの高いMicrosoft Officeなどのほうが楽ですし使いやすいと思います。
もちろんそれらの強みは今も大きいです。本格的な画像編集や動画編集をWebサービスのみで行うのは(最近一般用途であれば十分な機能を持ったサービスが出てきているのですが)多くの方にとっては知名度がないだけでなく、慣れていないのでハードルが高いとは思います。
ただ、スマホを普段使っている方は「アプリがないと何も出来ない」と思われるかもしれませんが、実は多くの方が無意識に使っている多くのサービスは、実は「外部にある何かを動かして」ることが多いんです。
例えばYouTube動画。スマホで見れば、あれはYouTubeアプリがあるから再生できている、と思うかもしれませんが、あれも実際に画像を再生させているのはGoogleのYouTubeのサーバー内であって、その結果をスマホやPCの画面に映し出しているだけに過ぎないんですね。
Amazonで買い物をする。あのサイトも別にアプリが必要な訳ではなく、Amazonの作ったサイトをネットを使って訪れて、そこで買い物をする。カートに入れたり、決済処理をしますが、あれらのデータはすべて、私たちのPCやスマホ内にあるのではなく、ネットで繋がれたAmazonのサーバー(外部)にあるわけです。
それをIDとパスワードを使って呼び出して使っているだけです。
つまり、私たちがネットで行っていることの多くは、無意識ながら、普通に自分のPC内にあるものではなく、PCの外にあるモノに繋いで、その外にある何かの中で作業をしている、ということなんです。
みんな大好きSNSも同じです。スマホがメインの方だと、SNSは専用アプリがないと、それを自分の端末にインストールしないと使えない、と思いがちなんですが、あれ、アプリなくても多くのサービスは使えるんです(もちろんアプリ専用のサービスもあれば、アプリの方が使いやすくカスタマイズされていることもあります)。
ChromebookはTVやクーラーなどの「リモコン」、PS5やXboxで言えば「ゲームパッド」のようなもの。
さて。長くなってきましたので、そろそろ今回の結論に入りたいと思います。
厳密なことを言えば違うのですが(むしろその違いが分かっている、突っ込める方であれば、今回のような例えは必要ないと思うので)、例えて言うと、
ChromebookはTVやクーラーなどの「リモコン」、PS5やXboxで言えば「ゲームパッド」のようなもの。
です。本体ではないんですね。本体を操作するためのコントローラーの部分なんです。
既に何らかのPCを使われている方であれば、従来のPCでいえば「液晶モニター」と「キーボード」と「マウス」の部分です。
PC本体はネット上の何処かにあって、そこにIDとパスワードを使ってネットを介して繋いで、使う。
もちろん厳密なことを言えば違いますが、ざっくりとしたイメージとして考えて下さい。
実際にはChromebookの中にOSもあれば、データも保存出来れば、AndroidアプリやLinuxなども入れることも出来ますし、完全なシンクライアントという訳ではありません。
【図解】シンクライアントとは?仕組みや実行方式の種類、製品比較も|ITトレンド
ここではあくまで、従来型のPCや、スマートフォン、タブレットとの違いを分かりやすくイメージして貰うために、敢えてザックリとした分け方をしました。
このイメージを持って頂けると、冒頭で触れたような、ネット上で見かける、皆さんが悩まれているような疑問も少しはスッキリするのではないでしょうか?
- 「手元のWindows PCが古くなってきたから、最近話題のChromebookが安いし買い換えを検討している」
- 「Officeは使えるのかな?」
- 「DVDは見られるのかな?」
手元のWindows PCと同じ使い方をしたい、想定しているのであれば、Chromebookは向きません。
Officeを使いたいのであれば、Officeが入っているWindows PCにネットで繋いで(リモートで)使うか、Officeのオンラインサービスを使う必要があります。
DVDは基本的には見ることが出来ません。極端な話をすれば、もしかしたらDVDを再生して表示してくれる何かにネットを介して接続することが出来るのであれば、表示することは出来るかもしれません(今回の説明的には)。
この最後のDVDを見られるか。これって、音楽や映像(映画)などであれば、Apple MusicやSpotifyなどのストリーミングサービス、Netflixなどの配信サービスをイメージして貰うと分かりやすいかも。
つまり、音楽や映像を、ネットの先にある何かの上で再生してもらって、その結果を手元のChromebookで流す、映す、というイメージです。
ということで、今回の話は終わりです。
正直分かりにくかったかもしれません。またAndroidアプリやLinuxはどうなんだ?など細かい部分では疑問点も残るかと思います。その辺りはこのブログでも今までに何回も触れていますので、興味のある方はそちらをお読み下さい。
今回の文章で、「Chromebookって今までの一般的なPCやスマホとは考え方(仕組み)が違うんだな」と何となくでも伝われば嬉しいです。