先日開催された教育関係者向けのイベント「Google for Education – ICT 教育サミット」では、現在日本国内で展開している4メーカーすべてが出展していました。私にとっては夢のような空間、大人のおもちゃ箱です。
前回その内の一社、デル株式会社より同社の現行モデル「DELL Chromebook 11 3180」をお借りしていることを書きましたが、実は大変ありがたいことに他に二社から同様にお借りすることが出来たのです。その内の一台が今回取り上げる、日本エイサー(Acer 日本)が先月28日に発表、発売した初のLTE搭載モデル、Acer Chromebook 11 C732です。
DELL Chromebook 11 3180同様、一回で書き切れるモデルではありませんが、限られた期間の中でもう一台と合わせて、出来る限りじっくりと使い込みながらその使用感をレビューさせて頂きます。
現時点で誰にでも薦められるモデルではないけれど、価格とスペックだけで判断するのは非常に勿体無い良モデル。
今回のこのモデル、文章作成時の市場価格が最安で税込78,250円(価格.com調べ)です。まぁ発売前からこの辺りの価格は予想されていたとはいえ、「このスペックでLTE載ったくらいで8万はないでしょ」という印象を持たれた方もいらっしゃるかと思います。発表当初なんてネット眺めていると4万円くらいを想定していた方も結構見かけましたので、この反応も仕方ないかなぁ、と。ただ、実際現時点では家電量販店等に並んでいる訳ではなく、あくまで文教法人向けです。そして、現時点では信頼の置ける販売パートナーのみに扱いを絞って文教法人向けに展開するのは得策かな、と感じています(この理由は後述)。
ただ一方で、手元に届いてから既に一週間近く使っていますが、個人的にはこのモデルは充分に魅力的。PR記事だから、と思われる方もいるかもしれませんが、私、このモデルこの価格でもちょっと欲しいな、と思っていますし、もう少し流通が安定してきたら購入する可能性も高いと思います。それくらい、刺さる人には刺さるモデルです。
スペックや価格って誰もが納得する共通の物差しではなく、その人の用途、求めるものによって全く印象が変わってきます。そう考えると、例え前述の4万円前後でもし発売されたとしても、その影響の出方(価格は本体の質に影響しますので)によっては、使い勝手がいまいちで使用頻度も下がり、結局使わなくなってしまうかもしれません。使わないのであればどんなモデルであっても、4万円でも高いはずです。反対に手放せないモデル、毎日のように使ってしまうモデルであれば、その2倍、3倍であってもその人にとっては価値のあるモデルです。
そういう点を考えると、今回のモデルは想定価格8万円をモバイル用途という面に注力させて作ったらこうなった的なモデルかな、と考えています。ちょっと分かりにくいと思うので、以下書いてみたいと思います。
まずは第一印象。思っていたよりも「意外と質感良いかも」。
結構価格なりの質感あるんですよ。高級感はないですが、ちょっと丁寧に扱いたくなるくらいの雰囲気はあります。何というか、安っぽさはありません。今回のモデル、どうしても4万円程度のモデルに4万足してLTE機能付けた的な印象を持たれる方もいると思います。「4万円程度のモデル」って、「日本価格はボッタクリ」と考えられている方にとっては「海外では100ドル200ドルで売ってるのに」的印象があると思うんですね。スペックも特筆するような点がないこともあって、単純な耐衝撃耐水モデルの印象を持たれるかもしれませんが、案外良いですよ、これ。(まぁ最近の日本で展開しているモデルはどれもそれなりにしっかりした質感を持っていますので、その辺りをイメージして頂ければ。数年前のイメージのままだと少し驚かれる方もいるのでは。)
底面ですが、技適マークは2つ。LTEモジュール(左側)とWi-Fi、Bluetoothのモジュール(右側)が付いています。
左右下のスピーカー穴上に丸い穴が空いていますが、これがそれぞれキーボードに水を溢した時に水が抜ける穴になっています。
耐衝撃性と耐水性を備えたモデルは比較的ガッシリした印象もあると思うのですが、前回ご紹介したDELL Chromebook 11 3180同様、そんなに分厚いゴツい印象もありません。普通の少しシットリした感じのChromebookです。
ちょっと写真だと黒光りしちゃってますが、実際は落ち着いた、天板もサラサラしたミドル~ダークグレーっぽい印象。先ほどヒンジ側の画像を載せましたが、180度開くためか、天板側奥が若干小さくなっています(段差がある)。じっくり見ても見るに堪えうるだけの、撫でていたくなる、高級感はないけれど安っぽくもない、個人的にはこの印象好きです。
11.6″であれば折角なら1kgを切って欲しい、という方もいるとは思うのですが、この後触れる理由により、私的にはむしろこれくらいの重量に留めて、その分を安心感に振って正解かな、と思っています。実際11.6″で手で掴んだときの収まり具合(厚みや触り心地)も良いですし、重心のバランスも良いのか、そこまで重い!と感じることはありませんでした。全体的に縁がそれ程角張っていない柔らかい印象も影響しているのかもしれません。
私が旅の「友」に選びたくなった理由。
まぁ旅の供でもよいのですが、敢えて友としておきます。今回届いた日の翌日から数日間帰省することになったのですが、
LTEによる常時接続と気軽に鞄の中に放り込める、いつでも開ける気安さ気軽さは旅と相性が良い
と感じました。
あと、少し恥をさらすと、先ほどカフェで落ち着きすぎて乗車時間ギリギリになった挙げ句、機種変したの忘れてスマートEXとスマホの紐付け失敗して駅員さんにその場で変更してもらったという…
そんなバタバタで慌てて鞄に放り込んでも大丈夫そうな安心感と気軽さはやはり大きいです。 pic.twitter.com/sCj5ui8NtE— おふぃすかぶ.jp (@OfficeKabu) July 4, 2018
カフェで徳川将軍アイスラテ飲みながら触っていたのですが、ちょっと時間ギリギリになってしまって慌てて天板だけ閉じて鞄に放り込んで改札向かいました。でもこれ普段だと+モバイルルーターだったりスマホのテザリングだったりも一応意識しちゃうんですね。あと、PixelbookやHP Chromebook x2といったモデルだと衝撃がやっぱり気になるので、一応鞄の中に入れるときにも「直接地面に接しない(少し底面から離れていて緩衝材もある)」PC用のスペースに入れようとしますし。C732では他の耐衝撃タイプのモデル同様その辺りほとんど意識しませんし、傷も考えませんでした(実際傷も入っていません)。
また新幹線の車内ってグリーン車でもない限りそこまで一人分のスペースが広く取られている訳ではないので、(今回は窓側座りましたが)飲み物の場所とか、またテーブルのスペースとか、少し何かしようとするときに揺れたりとか、意外と「落としたり溢したりしないか少し気になる」ことが多いのですが、そういうこともあまり意識しなくて良いというのもこのタイプのモデルの魅力。
東京に戻ります。帰りの新幹線はAcer Chromebook 11 C732Lにします。理由は簡単。広い解像度で小さいフォントは私、
酔っちゃうんです。
3Dゲーム酔いから新幹線車内まで。最近めっきり弱くなってきた、おふぃすかぶでございます。 pic.twitter.com/Irkb1fNrER
— おふぃすかぶ.jp (@OfficeKabu) July 6, 2018
更に私、結構新幹線車内でもノートPC使っている印象あるかもしれませんが、最近酔いやすくなりまして、意外と出来ないんです。高解像度に小さなフォントって、安定して、落ち着いた場所では非常に便利ではあるのですが、こうした常に、また時々は大きく揺れる車内だと私の場合持ちません。その点、11.6″で解像度1366×768って「今時FHDでもないなんていつの時代のPCだw」と言われることもありますが、ノングレア処理された液晶と合わせて、視認性が落ちる車内では非常に快適です。
「LTEモジュール搭載による常時接続」と「耐衝撃性・耐水性」「視認性の良さ」
これらの組み合わせは車内に限らず、移動中どこでも広げる可能性のある、またそういう使い方を求めている人にとってはLTE搭載とともに大きな魅力となるポイントだと思うのです。
その上で眺めてみると、スペックはChrome OSとしては現行充分なバランス。
今回はあくまで「個人ユーザーの視点」寄りに書いていますが、これって企業で使う方や、もしくは学校で導入する方でも、求める部分はある程度重なると思うんですね。その上で、それらをまとめるスペック的な部分を少し見てみると、
Acer Chromebook 11 C732L-H14M | |
CPU | Intel Celeron N3350 |
Benchmark | Octane 2.0:10,953 / speedometer 2.0:27.09 |
RAM | 4GB |
Storage | 16GB eMMC |
液晶 | 11.6″(1,366×768) |
Interface | USB-A 3.0 x1 , USB-C 3.1 x2 , microSD , microSIM |
サイズ / 重量 | 302mm x 209mm x 21.30mm / 約1.26kg |
現行普及価格帯の中では特に不自由を感じることのない充分なスペックです。Androidアプリを積極的に使いたい、という方の場合には元々別のモデルを選ばれた方が無難。タッチスクリーン非対応ですし、内部ストレージも16GBです。補助的に幾つかのアプリを入れる程度であれば便利には使えますが、このモデルで激しいゲームをしたり、色々なアプリを入れて、というのはあまりオススメ出来ません。
ただ、外で11.6″のモデルを使うと考えた時、ある程度用途は限られてくると思うのです。その点に関しては充分な力は持っているかな、と思っています。1~2年前の普及価格帯のOctaneスコアの平均が7000~8500だったことを考えると、基本はしっかり押えています。
Speedtest by Ooklaで平日の12時台に東京の品川駅構内のカフェで計測したときの速度。LTEについてはこの後触れますが、docomoのmopera Uを利用してこのくらいの速度はほぼ出ています。
インターフェース類は側面奥側(液晶側)に付いていまして、それぞれ上記の通り。ちょっとSIMカードスロットが分かりにくいかな、と思います。こちらは
専用のSIM取り出しツールが付いていまして、これで少し押すとバネになっていて中からSIMが直接顔を出す形です(SIMトレイ等は無し)。SIMカードを挿す時はそのまま挿す感じですね。一応このヘラのような厚みと幅のあるものを使えば外せますが、基本的に指ではSIMカードが簡単には外れないようになっているのは教育市場を想定してのことかな、と思いました。
現時点ではdocomoのmopera U契約のみ。MVNO SIMは一応「H」で接続出来るもののまだ実用的ではない。
さて、多くの方が気になる部分だと思われるこのSIMの対応の部分。結論から言えば、
素直にdocomoのmopera Uを別途契約して下さい(オプションとしてでも可)。一応既にdocomoのSIMを契約されている方は別途my docomo等からオプションとして付けることも出来ます。
これ、docomoのspmodeじゃダメなの?とか色々あると思うので、今回一応docomo系MVNOなども試してみたのですが、基本的に設定画面が「mopera U」と「other」しかないんです。
で、mopera U契約したSIMだと挿して「mopera U」選べばすぐに認識してくれるのですが、その他のSIM(MVNOなど)は「other」を選んで手動でAPN設定をしても
まだOS側の対応が不十分なのか、APN設定の入力がスムーズにいかなかったり、いっても一度再起動させないと認識してくれなかったり、再スキャンする必要があったり、と結構面倒です。しかも、その結果MVNO SIM(今回はDMMモバイルのSIMを使用)で認識はするものの、
Acer Chromebook 11 C732L(MVNO DMMモバイルSIM)。まだ検証中ですが、LTEではなくHであれば接続は可能。ただ、先ほどのmopera SIMに比べると接続までが長い。起動後もしばらくネットワーク探してます。 pic.twitter.com/LtMdQ79TvB
— おふぃすかぶ.jp (@OfficeKabu) 2018年7月3日
LTEではなくH(3Gよりは速いけど4G・LTEより遅い)でしか繋がりません。これ、しばらく色々と試してみたのですが、今のところLTEにならないんですね。MVNOによって違うかもしれませんが。
そして、上の動画のように、サインイン後もしばらくネットワークを探し続けるので、これだったら以前ご紹介したようなLTE対応のUSBドングルなどを使った方が良いと思います。価格も安いですし使い回しも出来るので。
ちなみにmopera U契約のSIMを使った場合、
Acer Chromebook 11 C732L(ドコモmopera U SIM)のLTE接続まで。Wi-Fi優先なので、Wi-FiはOFFにしてあります。サインインまでは接続されず、サインインでEnter押して通常画面に切り替わる瞬間にLTEに変わります。 pic.twitter.com/j4BSQ74UCC
— おふぃすかぶ.jp (@OfficeKabu) 2018年7月3日
ちょっと分かりづらいのですが、サインイン画面から通常の画面に切り替わる、ホンの僅かな瞬間に一瞬「LTE」に既に切り替わっているんです。結構速いです。また、先ほど挙げたような品川駅構内のカフェの時も、普通に閉じて(サインアウトせず)、新幹線の中で再び広げましたが、LTE接続されていました。
この辺りのSIMの対応と今後の状況については先日少し触れましたが
これが冒頭で挙げた「現時点では信頼の置ける販売パートナーのみに扱いを絞って文教法人向けに展開するのは得策かな、と感じています」と書いた理由です。これ、現時点で家電量販店で普通に販売したら説明不足で即クレーム出てきそうです。OS側の対応次第のようなので、対応がされるまではある程度販路が限られる、そしてSIMもまとめて契約するような状況で販売したほうが問題は少ないかな、と思います。
これ、完全な推測ですが、このMVNO、ドコモ系のSIM対応が万全でないので、文教法人市場のように一括納入、SIMもまとめてご契約、保守もしますよ的な体制なら全く問題がないことでも、個人向けに一般家電量販店等で扱うとなると、何かとトラブルが起きそうな気がするんです。そもそもドコモmopera契約のMicro SIMを別途契約してこのモデルを量販店で購入するという層自体がどの程度いるのか分かりませんが。
まぁその分購入する層が非常に限られるので、そのあたりの諸々の事情もわかった上で、忖度した上で購入してくれる知識豊富なPCユーザーなら問題ないのですが、今回発売の反応一つ眺めてみても、意外とネット上でもこの辺の情報はあまり共有されていなさそうだったので、いざ手元に届いてみたら使えたり使えなかったり不安定とかなっちゃうと、いきなりイメージダウンになりそうな気もしてしまうのです。
今回も8000字近くの中で予想以上に魅力を感じているモデルであるだけに、この点オススメしにくいのが残念です。
OS側のアップデートを期待して待ちたい、従来のChromebookのイメージを変える常時接続が魅力のモデル。
良いモデルなんですよ。シットリと落ち着いた、派手さはないものの、LTEでの常時接続することを想定した本体の作りとスペック、そして今回は触れませんでしたが、標準的なキー配列。
私、このモデル使うまでは「別にLTEモデルで無くてもいいじゃん」と、単に普通のChromebookにLTEモジュールが付いただけのモデルをイメージしていたんですが、これだけでまったく印象が変わるんですね。
最近盛んに「Always Connected PC」が言われるようになりました。今回のこのモデルは従来からWindows PCなどでは存在していたパターンではありますし、決して新しい、というわけではないかもしれませんが、Chrome OSに載ることで、また印象が変わります。感覚、価値観が
常に繋がっていることが前提のスマートフォン辺りに近くなってくる
んですね。これは面白い。元々バッテリーがほぼ一日持つChromebookなだけに(今回シンプルな構成なことも、バッテリーの持続時間に良い影響を与えているかもしれません)、たったLTEでの常時接続一つなのですが、気分が更に軽くなります。
残念なのはまだこうしたモデル自体が非常に限られていること、どうしても割高になってしまうこと、そして出始めということもあって、OS側の対応がまだ充分でないこと。
この辺りが解消され、家電量販店等で個人でも買えるようになってくると、このモデルは面白くなってくる。Chromebookの良さがより伝わりやすくなる。そのきっかけを作ったモデルとして、このモデルは是非多くの方に試して欲しい、実際に使ってみて欲しい良モデルだと思っています。いや、ホント、こういう記念的なモデルは個人的にも常に手元において使い続けたい気分です。
・・・買うか。