「Chromebookはネットに繋がないとただのゴミ」と以前から言われてきました。実際にはそんなことはないですし、またこの話については色々思う部分もあるのですが、今回は省きます。ただ、ネットに繋がっている状態でこそ本領を発揮するのも確かです。そうしたこともあり、Chromebookでも以前からLTE対応モデルの発売が望まれてきました。特に持ち運んでいつでもどこでも開けばすぐ繋がる状態、というのは思った以上に普段遣いにおいての気持ちのハードルを下げてくれます。
この方面では以前からLTE対応のUSBドングル(USB端子に挿すタイプのモノ)という製品が色々と出てきていました。バッテリー等がないので充電も要らず、USB端子に挿すだけでネットに繋がるその手軽さは、Chromebookでも非常に便利に使えるのではないか。ということで私も数年前に検討していますし、実際にその内の1つはこのブログでもレビューしています。
こちらではFUJISOFTのFS040Uという製品を試しましたが、その際にもう一つ選択肢として考えていた製品がありました。それが今回ご紹介する株式会社ピクセラの出しているPIX-MT100という製品でした。
こちらの製品はFUJISOFTのFS040Uに比べると価格が半分ほどと手頃なことが魅力でしたが、対応しているLTEバンドが1/3/19と非常に限られていて、SIMを選ぶのが難点でした。また、どちらの製品も同じなのですが、現在使うとなると、用いるSIMが現在主流のnanoSIMではなくmicroSIMと一回り大きいのも悩ましいところです。
そうしたところ、ピクセラが今回新たに対応バンドやSIMサイズなど細かい部分をアップデートしたMT110を発表、発売しました。
発表時、そして発売直後と少しネットでも話題になったこの製品、私も入手しましたので、レビューしていきたいと思います。
ピクセラ LTE対応USBドングル PIX-MT110
今回はAmazon.co.jpで購入しました(翌日到着だったので)。価格は14,800円(税込)です。今も前モデルのMT100が併売されているのですが、こちらが現在同じAmazonで13,636円(文章作成時点)であることを考えると、価格はほぼ変わらなかったようですね。
発売直後は品薄だったのですが、現在は楽天市場等でも在庫が回復してきているようです。
中身は至ってシンプル。外箱自体も非常にコンパクトで、今回Amazonで他の日用品と合わせて購入したので、一瞬入れ忘れられたのではないか、と心配になったくらいです。
本体とセットアップガイド、そしてUSB延長ケーブルと固定用面ファスナー(これらについては後述)が付属します。
数字(92mm x 38mm)だけだと分かりにくいとは思いますが、クレジットカード(85mm x 54mm)くらいの大きさですね。あ、カードのほうが15mmくらい幅が広いか。厚さは14mm。シャツの胸ポケットやジーンズ等のポケットにも気軽に入る大きさと重さ(42g)です。
USB端子部分は本体側に収納できます。USB端子自体は180度まで回転して開きます。
ただ、一般的に最も使いことが多いのは上の写真のような、90度まで開いた状態で、ノートPCの側面のUSB端子(Type-A)に挿す場合ではないか、と思います。
FUJISOFT FS040UとPIX-MT100との違い。
冒頭でも触れましたが、前モデルPIX-MT100は価格は手頃ながら対応する通信バンドが限られていたり、といった悩みが少しありました(人によっては気にならないかもしれませんが)。そこで、以前レビューしたFUJISOFT FS040Uと合わせて、この3モデルを簡単に比較してみたいと思います。
ピクセラ PIX-MT110 | ピクセラ PIX-MT100 | FUJISOFT FS040U | |
対応バンド(LTE) | 1/3/8/18/19 | 1/3/19 | 1/3/8/11/18/19/21/26/41 |
対応バンド(3G) | 1/6/19/5 | ||
SIMサイズ | nanoSIM | microSIM | microSIM |
本体色 | 白 | 白 | 黒 |
USB端子の角度 | 180° | 180° | 270° |
実売価格 | 14,800円 | 13,500円前後 | 27,000円前後 |
対応バンドについては分かりづらいのですが、FUJISOFTのFS040Uは当時から国内の各キャリアのバンドにしっかり対応しているだけでなく、当時の状況も考えて3Gのバンドにも対応しています。
ピクセラの旧PIX-MT100は若干対応バンドが少ないですね。基本的にはドコモ及びドコモ回線を利用しているMVNOのSIMでの使用がメインになると思います。
今回のPIX-MT110はそこに新たに対応バンドが増え、主要3キャリアのプラチナバンド(B8/18/19)に対応、というのがポイントとなっているようです。
最近の国内でのChromebook需要の高まりから、そうした声が増えてきたこともあり、敢えてポイントの一つとして前面に出した、ということで、製品自体は前モデルの段階から既にChromebookでも基本的には動作していた、と見て問題はないと思います(実際前モデルのMT100をChromebookで愛用している方にも何名がお会いしています)。
少し長くなりましたが、この違いの中で大きいのが一つは今回のMT110でnanoSIMになったこと。現在一般的にスマートフォン等で使われている、一番小さいサイズのSIMになります。USB端子の(回る)角度等は大きくは変わらず。ただ、一点大きいのが、前述のように主要3キャリアのプラチナバンド(B8/18/19)に対応したことも合わせて、
「もしかしたら楽天モバイルのSIMでも使えるのではないか?」
という期待が持てた、ということです。で、結論から言えば、普通に使えました。
楽天モバイルは自社回線のエリアがまだまだ限られてはいますが、エリア内であれば無制限でそれなりに快適に使えるのが魅力です。実際私自身は1人1回線のみ1年間無料なのに、別途妻の回線ともう1回線の、合計3回線(うち2回線分は有料)で日々使っているくらいです。
このUSBドングルを挿せば気軽に楽天モバイル回線でChromebookを使える、というのは大きいな、と思いました。
設定と細かい部分で気になった点。
初期設定自体は非常に簡単です。
本体側面のSIMスロットを開けて(蓋が硬いので開ける際に注意)nanoSIMを挿します。
その後は普通にPCのUSB端子に挿します。PC本体から給電されるので、バッテリー等は特にありません。起動するとLED部分がオレンジ色に点灯します。
既に初期設定が済ませてあれば、この後約30秒程度でLEDが青色に点灯します。
ただ、初期の段階ではAPNの設定等を行っていないので、繋いでいるPC上のブラウザーを起動、アドレス欄に「192.168.0.1」と入れて設定画面に移ります。パスワード等はセットアップガイドに書いてありますので、あとはそれに従って進めるだけです。
一度設定してしまえば、あとは毎回設定する必要はありません。挿してPC本体の電源を入れれば(もしくは電源の既に入ったPCに挿せば)30秒ぐらいでLEDが青に点灯して、接続完了です。
ここまでは特に問題はないのですが、唯一心に留めておきたい点があります。それが、
本体の隣の端子との幅が狭いと、それらの端子が使えなくなってしまう
という点です。
要は本体の横幅がそれなりに(38mm)あるので、挿してる間は左右の端子が使えなくなってしまうことが多いんですね。で、これを解消するために、前述のUSB延長ケーブルが存在します。
ケーブルの長さがそこそこあるので、この状態だと多少邪魔なので、画像右上の固定面ファスナー(シール)を使って、本体(USB端子部分)を本体天板等に貼り付けて固定する、という改善案がマニュアルにも記載されています。
そしてもう一点。まぁ仕方ない部分でもあるのですが、このUSBドングル、端子がType-Aなんですね。なので、最近の薄型ノートPCなどでUSB-C端子しかない場合には、変換アダプターやハブ等を間にかませる必要があります。
今回、Chromebookでの使用を検討されている方も結構いると思うのですが、その中で恐らくイメージされている方が多いと思われるのが、Lenovoの10.1型コンパクトモデルであるLenovo IdeaPad Duet Chromebookだと思います。
現在、2021年1月15日まで税込9,900円OFFのキャンペーンが開催されていますので、この機会に購入される方も多いのではないでしょうか。
で、使われている方はご存知のように、このモデル、インターフェースはUSB-C端子が1つのみ。それも場所が本体側、向かって右側面下にあります。
幸い?にもこのモデルにはその他に端子がないので、左右への干渉はないのですが、USB-Cのみなので変換アダプターを間に入れると
危うさがありますよね。このまま使うの、ちょっと気を使いそうです。となると、この場合は前述の延長ケーブルをやはり使ったほうが安定しそうです。
付属のケーブルだとUSB Type-Aですし、先程も触れましたが若干長さもあるので、Type-AからType-Cへの変換ケーブルを別途購入しても良いかもしれませんね。
ちょっと動作検証出来てませんが、例えばこんな感じのもの。で、そのまま本体のスタンドカバー等にこのケーブルを先程の固定面ファスナーで貼り付けてしまうのもありかな、と思いました。
この辺り、うまくやればかなり使い勝手が上がるのかも。また一つ、Duet Chromebookの活用法が出来るかもしれませんね。
試しにUSB-C to Aの変換ケーブル(15cm)を購入してみました。
USB-CのみのLenovo IdeaPad Duet Chromebookで安定してPIX-MT110(LTE対応USBドングル)を使うとしたらこうなるかなぁ。USB-C to Aの変換ケーブル(15cm)を使って伸ばした状態。ケーブルがもう5cm長ければ本体背面カバーに貼り付けられると思う(15cmだとギリギリ)。 pic.twitter.com/dAAfg19wTY
— おふぃすかぶ.jp (@OfficeKabu) November 16, 2020
このほうが安定しますしケーブルも嵩張りませんね。USB-C端子のみのモデルを使っている場合には、変換アダプターを使うよりも、このくらいの短いケーブルで繋いでしまったほうが(例えば天板側に貼り付けても良いですし)使いやすいかもしれません。
今回購入したケーブルはこちら。
Chromebook本体自体がLTEに対応するのも魅力的だけど、こんな気軽に使えるドングルという選択肢もありだと思う。
冒頭でも触れましたが、実際のところ、確かにChromebook自体にLTEモジュールが内蔵されてしまうのが一番ラクなのかもしれません。
ただ、既に他OSでもLTE対応のPCを使われたことのある方ならある程度分かっていただけると思うのですが、本体に内蔵するLTEモジュールって結構OSとの相性が出やすかったりして、安定して通信が出来るようになるまで一手間かかることも多いのです。またSIM自体なかなか認識してくれなかったり、再起動したらLTEモジュール自体見失ったり。
普段スマホやタブレットのようなSIMさえ挿せばすぐ繋がって気軽に使える使い方をイメージしている方にとっては、PCのLTE対応って意外と面倒くさいと思います。
あとは、LTEモジュールを追加すれば、その分コストも上がります。当然価格も上がりますし、Chromebookは安さが魅力、と考えられている方にとっては、3万円の(スタンダードな控えめスペックの)モデルを5万円に上げてまでLTE対応にしたい、という声がどの程度あるのか、という問題もあると思っています。
それに比べると、LTE対応のUSBドングルという選択肢は、確かに見た目は少し目立ちますが、単体で持ち歩けば、どのPCでもUSB端子に挿せば、特に設定をせずに30秒で繋がります。また、今回は触れませんでしたが、このPIX-MT110(MT100も)は実はWi-Fiスポットとして使うことも可能です。USBから給電する必要がありますが、例えば自宅ではUSBアダプターつけてコンセントに繋ぎっぱなしにしてWi-Fiルーター的に使う、という使い方も出来ます。
あとは競合するとすれば、いま出てきた純粋なモバイルWi-Fiルーターでしょうか。こればかりは好みや用途による部分は大きいかな、と思います。USB端子に挿さなくてもWi-Fi接続で繋げられる、という気軽さはあります。ただ、モバイルルーターの場合には、使った後は本体バッテリーを充電する必要があります。私、時々やっちゃうのですが、カバンに入れっぱなしにしてて、たまに使おうと思ったらバッテリーがなかった、ということがありました。
本体自体に価格を上乗せしてLTE対応を待つのももちろんアリ。ただ、ポケットにも入るコンパクトさのこうしたLTE対応のUSBドングルを一つ、その他のアクセサリーと一緒にカバンやポーチの中に入れっぱなしにしておく、というのも気軽で良いアイデアなのではないか、と思っています。