Twitterでは当日に写真も含めて諸々発信したものの、その後なかなか文章に出来なかったのが、今回取り上げる、デル、Latitude Chromebook Enterpriseです。
モデル単体としてはSNS等で軽く発信することは出来ても、モデルの性格を考えると、それだけでは足りない気がして、なかなかまとめられなかった、というのが正直なところ。なので、既に情報としては新しいものではありませんが、今回、2019年9月3日に開かれた新製品記者発表会の内容も交えながら、このモデルについて改めて考えてみたいと思います。
はじめに:多くの批評や一般論。でも「それは、あくまで特定の個人の仕事や趣味、生活において」ですよね?
Chromebookの情報を日々追っている私は、ネット上で様々な意見を目にします。
「Chromebookはブログ更新や家庭でのサブ端末としては最適だけれど仕事には使えない」
「Chromebookはおもちゃ(この場合はマイナスイメージ)。本格的な仕事には不向き。」
挙げていけばキリがないのですが、大きな企業がChrome OS端末を大量導入したり、ハイスペック・ハイプライスのモデルが発表されたり、企業での導入のアピールがされればされるほど、ネット上ではPCの知識が豊富な、そしてある意味では下手な企業に勤めている方よりも遥かに知識も経験も豊富な方々の、尤もらしいこうした意見を目にします。
特に他OSと比較しての「あれがダメ」「これが出来ない」「この辺りがクソ」といった感想とともに、結論としては「仕事では使えない」となるのですが、眺めていて一つの視点が欠けていることが多いなぁ、と感じるのです。それが、
それはあくまで「あなたの仕事や趣味、生活において」という前提ですよね?
ということです。こうした記事が出るたびに、私も含めた多くの人は、その自分の意見がまるで一般論、どの業種のどの部署においても当てはまるかのような前提で評論家、批評家になってしまいがちだな、と思うのです。
(企業のおける話が想像しにくければ、教育現場に導入されるパソコンについての多くの意見を眺めてみると分かりやすいかな、と思います。その中で、実際に教育現場に携わっている方はどのくらいいるでしょうか。
多くは単純に自分の趣味や仕事における常識と呼ばれるものを、10代前半が中心の、多くがパソコン自体接したことのない子どもたちに当てはめようとしていることに気づかれるのではないでしょうか。)
あなたや私の職場における、あなたや私の用途においては「おもちゃであり使えない」という意見は大変分かります。そしてそれはその現場においては貴重な声だと思います。
でも同時に、それはあなたや私の用途においては有効であっても、あなたの知らない業界、世界では、むしろあなたや私が「〇〇こそ至高」と思っている環境こそが、「使えない」「クソみたいな」「おもちゃ」である可能性もあるんですね。
私たちは基本的には私たちの狭い世界の中でのことしか基本的には分かりません。また、自分の中の限られた知識(それが例え5年10年アップデートされていないものでも、また非常に偏りのあるものでも)の中でしか判断が出来ません。けれど、それを常識であるかのように、他の仕事や業界にも当てはめて考えてしまいがちなんですね。でもあなたや私の周りが世界標準なわけではありません。
そこで今回は、ちょっとそうした自分の中での常識、当然だと思っていることを一度取り払って想像してみてほしいのです。世の中には、自分たちの想像とはまったく違ったことが求められ、必要とされている(反対に重要視も必要ともされていない)世界がたくさんある、ということです。
2019.9.3 デル テクノロジーズ クライアントソリューションズ 新製品記者発表会
2019年9月3日、都内某所で「デル テクノロジーズ クライアントソリューションズ 新製品記者発表会」が開かれました。私も当日はありがたいことに声をかけていただきました。なぜなら、当日デルはChromebookにおいて、初のChrome Enterpriseモデル(注:現在ではHPも続いてChrome Enterpriseモデルを発表しています)であるDELL Latitude Chrome(Chromebook) Enterpriseが発表されたからです。
当日は決してChromebookの新製品発表だけがメインだったわけではありません。確かにDELL Latitude Chrome Enterpriseは、Chromebookユーザーの一部にとっては非常に気になるモデルではありますが、あくまで当日デルが発表したUnified Workspace、Workspace ONEを構成する製品の一つに過ぎないからです。
デルの提供するUnified Workspaceについては当日参加された各専門メディアが恐らくより正確に、かつ詳しく文章にされていると思いますので、ここでは省略します。
個人のChromebookユーザーの視点としては、近年ますます求められている、企業におけるクライアント仮想化導入の目的と課題、仮想化市場において、従来の運用の考え方自体が古く、負担が重くなってきている現状がある。そうした中、運用管理コストの大幅な削減やセキュリティの強化、また職場(働く場所)が自分のオフィスのデスクのみではなくなってきている中で、デルとしてはどういうソリューションを提供、提案できるか、という話だと感じました。
当日はクラウド、Webとローカル、仮想を組み合わせた環境であるChrome OS(Chromebook)だけでなく、同社の提供す完全仮想環境を想定したWyseシンクライアントも合わせて発表されています。
Wyse ThinOSは「VDI接続に特化して独自設計・API非公開で開発」「Win32アプリやLinuxアプリの導入/実行が不可能であり、ブラウザも非搭載」「端末へのアンチマルウェアソフトは不要、月例パッチもなし」というVDIに最適化された独自OSです。
在宅勤務やどこででも、起動時にOS、設定などの環境の最新イメージをWMS環境よりダウンロード(設定ファイルやOSイメージは軽量のため、ネットワークへの駅ようは最低限とのこと)、作業を行うものとのこと。ほぼ仮想環境での作業、というのが特長です。
各部署、各人がその状況において必要とするものにもっともセキュアで最適化された環境で繋がって作業が出来れば良い。
うん、ちょっと難しくなってきた。恥ずかしながら私もそうした作業環境、職場環境に身を置いている訳ではないので、具体的な作業というのが思い浮かばないのですが、当日も、その後もこの文章をまとめている今までもずっと考えていたのが、要は
Chromebook「だけ」とかWyse ThinOS「だけ」とかではなく、各部署、各人がその状況において必要とするものにもっともセキュアで最適化された環境で繋がって作業が出来れば良い。
ということだと思うのです。それらをデルとしてはUnified Workspaceという形で一括で保守管理が出来る仕組みを提供しますよ、と。
実際Chromebookについても、今回Latitude Chrome Enterpriseを2モデル発表しましたが、「これはChromebook LatitudeではなくLatitudeなんです」と言われていました。従来のLatitudeを使う必要がある人もいるだろうし、Latitude Chromeのほうが適している人もいる、更にLatitude Chromeは「最大RAM容量32GB」や「最大ストレージ容量1TB NVMe」といったインパクトのある部分ばかりが取り沙汰されてしまいがちです。
でもそれだけを持って冒頭のように「自分の仕事では不要だから、世の中においてもChromebookに32GBは不要」と考えるのはなんか違うのではないか、と思うんですね。32GB、1TBまでサポートはしているけれど、LTEモジュールだったり、CPU、Ethernetポートなど、幅広い選択が可能になっています。価格帯も非常に幅がある。あくまで、それらの中から、他のWyse ThinOS端末やその他OS環境なども含めて、幅広い選択肢の中から最適なツールを導入してください、ということだと思っています。別に、
Chromebookだけですべての作業が出来ます。
みたいな話じゃありません。反対に、もちろんChromebookだけですべての作業が済んでしまう企業もあるでしょう。場合によっては現場ではPC自体不要でスマホやタブレットでOKというところも多いと思うのです。その中で、Latitude Chrome Enterpriseを必要とする現場もある。必要とする社員もいる、ということですね。
もちろん仮想環境だけでは厳しい職場もあれば、そもそも特定のOSでなければ無理な場合も多々あります。けれど私たちはどうしても自分の環境だけで「仕事には不向き」「導入に疑問」「ありえない」と言ってしまいがちです。要はどちらも大きなお世話なんだと思います。
私にとってのLatitude Chrome(Chromebook)Enterprise。
さて、そんな中で、このブログでは最も気になるのがLatitude Chrome Enterprise(Latitude Chromebook Enterprise)です。このモデルはEnterpriseの名の通り、企業向けの製品となっています。
CPUには第8世代Whiskey Lake世代のCeleron、Core i3〜i7までを選択可能。RAMも4GB〜32GB、ストレージも128GB〜1TB SSD(NVMe)から選択が可能です。オプションでLTEにも対応、14インチの5400はEthernetポートも備えています。5400が14インチクラムシェル、13.3インチの5300が2-in-1ということで、360度回転ヒンジを備えたコンバーチブルモデルになります。いずれもFHD、Anti-glareのタッチ、ノンタッチ構成です。
と、これだけ見ると既に発売されているCore i3〜i7を載せたAcerやDELL、Lenovoのハイスペックモデルと大きな違いはなさそうに思えます。そこをEnterpriseとしたのは、従来のChromebookの規格というよりもWindowsでも評価の高いLatitudeをベースに、耐久性(17のMIL-STD 810Gに適合)、高速充電といったハードウェア面から、前述のUnified Workspaceを構築するエンドポイントの一つとして、セキュリティー面からデバイス、アカウントまで統合的に管理できるようになっている、という点があるのかな、と思いました。
あとは豊富な構成の中から適切なものを適切な台数で導入できる、という点。完全にこの辺り個人ではない視点ですね。これ、個人で「ブログ更新とWeb閲覧程度」で使っている限りまったく縁のない世界です。あ、別にバカにしているわけではなく(私自身がそんな用途なので)要はそういう環境の整った、もしくは今後導入されるであろう、仮想環境での作業も多い仕事に携わる方でなければ、そもそもピンとくるはずもないんですね。私、ピンと来てませんし。
ただ、そういう環境もあるのだ、ということに想像を巡らせることは出来ます。そして自分には分からない、縁のない世界があり、けれどそれを必要としている人たちもいる、ということ。なぜなら、そもそも需要自体ないのであれば、デルをはじめ各メーカーもやりません。なにも余興で始めているわけではないからです。
ということで、Enterprise用のモデルとして今回発表されたこれらのモデル。海外では早速5300のほうをお馴染みChrome UnboxedがUnboxingしていますが、
私自身も非常に興味を持っています。私はChromebook自体、道具、日用品の一つだと思っています。文房具、筆記具のようなものと言っても良いかもしれません。筆記具も100円ボールペンでも非常に書き心地のよいものがあります。反面、万年筆のような世界もある。そして、道具であればあるほど、そこへの拘り方も多種多様であると思っています。
私は確かに基本的にはブログ更新やSNS、基本的なG Suiteでの作業や共同編集等にしか用いませんが、一日の中で触れている機会が最も長いものの一つである以上、自分の好きな道具を使いたいと思っています。そして、常にそれを探してもいます。そんな視点で考えると、今回のLatitude Chromebookは非常に魅力的であり、気になるモデルでもありました。
そこで、現時点でLatitude 5400 Chromebook Enterpriseを手にする機会に恵まれそうです(繰り返しますが、あくまでEnterpriseモデルであり、一般、個人への販売は現時点では行っていません)。その際にはあくまで道具の一つとして考えた時の、私にとってのこのモデルの使い勝手と印象を改めてレビューしてみたいと思います。