久しぶりに話題性十分なモデルが国内で発表されました。
日本HPは本日2021年10月7日(木)、国内市場向けに11.0インチIPSタッチディスプレイ搭載、Chromebookとしては待ち望まれていた方も多いと思われるSnapdragon 7cを搭載し、4G LTE対応も選択できるデタッチャブルタイプのモデルである、HP Chromebook x2 11の年内の発売を発表しました。
現時点では正確な発売日は未定ですが、既にサイト上にて予約の受付を開始しています。
主なスペックは下記の通りですが、その後で私の感じたことを補足していきたいと思います。
Wi-Fiモデル | セルラーモデル | |
プロセッサー | Qualcomm Snapdragon 7c | Qualcomm Snapdragon 7c |
カラー | ナチュラルシルバー&シェイドグレー | ナチュラルシルバー&ナイトティール |
メモリ | 4GB | 8GB |
ディスプレイ | 11.0″ IPSタッチディスプレイ (2160×1440)USIペン対応(別売) |
11.0″ IPSタッチディスプレイ (2160×1440)USIペン対応(別売) |
ストレージ | 64GB eMMC | 128GB eMMC |
無線機能 | Wi-Fi 5 / Bluetooth 5.0 | Wi-Fi 5 / Bluetooth 5.0 |
通信モジュール | Qualcomm Snapdragon X15 4G LTEモデム | |
質量 | 560g(本体のみ) 1.03kg(KB、キックスタンド含) |
560g(本体のみ) 1.03kg(KB、キックスタンド含) |
HP希望販売価格 | 82,500円(税込)〜 | 99,000円(税込)〜 |
注目点は3点。Snapdragon 7cが「どれだけChrome OSに馴染むか」「優位性を発揮できるか」そして「価格」。
まずは前評判、期待ばかりが高まってしまっている「Snapdragon」神話とChromebookの相性です。
Androidスマートフォン等ではお馴染みのSnapdragonがWindows PCやChromebookにも搭載される、という話は数年前から出ていましたが、なかなか普及までには至りませんでした。様々な要因があるとは思いますが、例えばWindows PCであれば、思ったよりもパフォーマンスを発揮できていなかったり、アプリとの相性が出る、またバッテリー駆動時間は魅力とはいえ、価格が思ったほど手頃ではなかった、など、従来のIntel製、AMD製のPCに比べて明確な優位性を出せなかった、という点も挙げられると思います。
ただ、Chromebookの場合には、以前からAndroidアプリ対応を謳っていることもあり、Chromebookユーザーではない方からも「Snapdragon搭載モデルはよ」「出たらIntel製モデルを駆逐するでしょ」といった意見を結構目にしていました。それぞれに期待している点は様々でしょうが、AndroidスマホといえばSnapdragon、「Chromebookは要はAndroid PC」という誤解も多く見られる現状では、まさに4G LTEにも対応し、おそらくAndroidアプリとの相性も(従来のChromebookと比べて)断然良く、快適に使えるモデルとしての期待値がかなり大きかったのだと思います。
ただ、実際に最初に海外で発売されたSnapdragon搭載モデルは、思ったほどのパフォーマンスを発揮できませんでした。現在日本でも人気のあるLenovo IdeaPad Duet ChromebookやASUS Chromebook Detachable CM3などに搭載されているMediaTek製のモデルとパフォーマンスはさほど差がないどころか、むしろAndroidアプリ等のパフォーマンスに置いては下回る例も幾つか見られたり、と結構散々だった覚えがあります。
また、従来からChromebookを使ってきた身からすると、前述の「Chromebookは要はAndroid PC」という誤った認識にも不安を感じていました。ChromebookのOSはAndroidではありません。あくまでChrome OS上でAndroidアプリを動かしているに過ぎず、OSはChrome OSなんです。つまり、システムに関わるようなアプリは使えませんし、中のシステム構造も違います。また、実際のAndroidアプリに関しても、動かないもの、インストールできないものも多いですし、インストールできたとしても、ミドルレンジより若干下程度のパフォーマンスしか発揮できていないのが現状です。
要は、現時点でのChrome OSとAndroidアプリの相性って、その程度なんです。それをわかった上で、うまく補助的にうまく使い分け、用途を選びながら、既存のChromebookはうまく付き合っている、というところです。購入当初はたくさんのAndroidアプリを入れながらも、結局は必要最低限のアプリを残してほぼ削除して使っている、という方も多いように、基本的にChromebookはPWAに移行する過程においてAndroidアプリを一時的に代用しているような方向性に過ぎません。
さて、そんな中での今回のSnapdragon 7c搭載です。
実は国内でも、この文章を作成している(つまりHPの発表があった)本日、海外モデルを購入、手元に届いた猛者がおります。HelenTech.netのへれん(おむらまさひで)(@Helen_Tech)氏です。
彼が海外から何かChromebookを購入すると、手元に届く頃には国内での発売が決定、もしくは届く前に発売開始される、という伝説を多く持つ、日本を代表するChromebookユーザーですが、本日早速到着したこのモデルのベンチマーク結果を挙げられています。
それによると、
ということで、HP Chromebook x2 11の実機ベンチマーク。8GBRAM/64GBストレージモデルです pic.twitter.com/XuYDkdjeUM
— へれん(おむらまさひで) (@Helen_Tech) October 7, 2021
予想外だったのは、従来の(DuetやCM3などの)Detachableタイプ、つまり軽量、コンパクトを特長としたモデルの常であったパフォーマンスの点において、現行普及価格帯スタンダードモデルに近いベンチマーク数値を出している、という点です。今までであればこの手のコンパクトモデルはバッテリーの持ちや軽さなどを重視させるために、またタブレット的な使い方もより想定して、処理速度的には2〜3年前のモデルと同じくらいのパフォーマンスしか発揮できませんでした(但し、マルチコア性能を生かした作業においては、現行モデルと同等かそれを上回るパフォーマンスを発揮することもあり)。
それが今回、ようやく普及価格帯スタンダードなChromebookと性能が近づいた、というのは評価して良いのではないか、と思います。
ただ、その反面で、やはり個人的にはまだまだ安心できないのが、Androidアプリのパフォーマンスです。上記のChrome OSの動作においては標準的なパフォーマンスを発揮できてはいるものの、前述したように、あくまで「ChromebookにおけるAndroidアプリの動作」に関しては、おまけ的な要素であることは変わりません。
たとえSnapdragonに変わったから、といって、突然日本語入力をATOKに変えられたり、Androidタブレットやスマホ並に快適にゲーム等が動く、というわけではないと思っています(実際起動直後に固まるゲームも多い)。そう考えると、劇的な改善は望めないものの、従来に比べれば幾分か相性や動作の点で改善が見られていれば良いな、とは思っています。その辺りはこの後のへれん(おむらまさひで)(@Helen_Tech)氏の報告を楽しみに待ちたいところです。
そして最後に価格です。現行のデタッチャブルタイプのモデルは(発売から1年以上が経ったこともありますが)各社価格攻勢を強めており、現時点で実売価格で3万円前後で購入できる状況が続いています。そうした中で、HP希望販売価格とはいえ、Wi-Fiモデルでも82,500円という価格設定の価値をどれだけ正当化出来るか、それでも買いたい、と思わせるだけの魅力を発揮できるか、というところですね。
Chromebookユーザーとしては厳しいところですが、ChromebookをAndroidタブレット的な立ち位置と考えれば考えるほど、「その値段出すならiPadで良くね?」「iPadのほうが良くね?」と言われてきました。そして、実際にそれを覆すだけの、iPadを上回るだけのタブレット端末としての魅力と特長は、今後もChromebookには出せないと思っています。なぜなら、Chromebookは(現時点で既に元気がないAndroidタブレットと比べても)タブレット単体として考えたときの優位性はなかなか見出しにくいからです。あくまでChromebookはChromebookだから、ならではの魅力があると思っています。
もちろんHP希望販売価格というのは、ご存じの方も多いと思いますが、基本的には発売と同時にキャンペーンが乱発されて、基本的にその価格で販売されることはありません。大体2〜3万円、下手すると半額くらいでスタートすることも多いので、価格面では現行のDuetやCM3と比べても、そこまで極端に高くなる、ということはないと思います。この辺りはこれから先の情報を待ちたいところですね。