[0203-201405] 続けていくことの素晴らしさと苦悩。 – 三交製靴株式会社 ラギッドシューズ –

[0203-201405] 続けていくことの素晴らしさと苦悩。 – 三交製靴株式会社 ラギッドシューズ –

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表札の前に自動販売機。三交製靴のスタンスが表れているようで興味深い。別に意図してそうした訳ではないのだけれど。

昭和の匂いを残した、変わらない靴。

主要顧客は何十年来の古くからの丸善時代にマナスルシューズを買った人たち。これしか履かない、履けない、という人たちばかり。
昭和から続く浅草の会社で、今は、切り盛りされている松田さん(女性)とご高齢の社長(松田さんのお母さん)当時からの職人さん一人で細細とやっている。
丸善には昔から続く、マナスルシューズという名靴がありました。素朴で、頑丈で、けれどはき心地は柔らかく、靴底はなかなか減らない。知る人ぞ知る一品です。

丸善が取り扱いをやめたとき、マナスルシューズもそのまま消える予定でした。職人さんもご高齢。丸善時代はかなりの数を長年に渡って販売してきましたが、ちょうどよい機会だと。ところが、長年の顧客からの強い願いで、職人さんが一人残られて、そのまま存続することにした。
ただ、実店舗は持たず、今までのお客さんのために、続けられるだけ続けよう、と。

これしか履けない、というお客さんが全国にいる。出来るところまで続けていこう、と。

丸善時代の良さも辛さもそのまま受け継いだ現在。

ところが何の因果か、一部の靴好きの間で火が付いた。靴好きが知ってしまった。
その一人が私なわけですが、そんな私の目から見ても、この靴はおかしい。
何がおかしい、って、価格と作りのバランスが悪すぎる。安い。
国内、一人の職人さんが頑強な底付け以外は全て手縫いで作っている。ちなみに型を抜くのは松田さん。甲革の縫いのちょっとしたほつれくらいは松田さんがミシンでやっちゃう。

職人さんが一人で、しかも丸善時代と違って大量納品の必要がないから、のんびり丁寧に作っている。(ちなみに今日は旅行に行っちゃってて、お休み。週末前は天気が良いと良く旅行に行っちゃうらしい。)

とはいえ、その職人さんは昔からマナスルシューズを作り続けてきた中でも一番の腕を持った方。元々大量に作る腕を持った昔からの職人さんが一日数足作るか作らないかの数をしっかり作っているものだから、当時よりも遥かに出来が良い(松田さん曰く)

そんな靴が牛革で2万円台。貴重なペッカリーで3万円台。
間違ってると思う。
これで利益が出るはずがない。
採算が合うわけがない。
実際、合ってない。
では、何故出来るのか。
出来ているような出来ていないような。
それが文頭の写真に表れているような気がした。

古くからの顧客と、靴のあり方と、現在と。

実店舗を持たない。でも昔からの顧客には関係ない。もうサイズも何もかも分かっているから。一応ホームページはある。注文も出来る。楽天市場店もある。でもそもそもそういうお客さんはネットなんて見ない。だから、今でも昔のモデルを復活させてもお手紙でご案内している。

靴は履いてみなければ合うかどうかは分からない。そういう意味では店舗の役割って重要。けれど、こちらは工房(作業場?)であって、お店ではない。だから突然訪ねられても松田さんがいる時ばかりでないから困るので、場所も住所はあるけれど、分かりやすく載せてはいない。(実際は事前に連絡頂ければ松田さんも歓迎らしいのだが)

そのおかげで、たくさん注文が来ることもない。だから職人さん一人と松田さんの二人でやっていける。
ただ、値付けの苦悩。この作りでこの値段は安過ぎる。けれど、昔、丸善で買った主要なお客さんからすると、昔この値段で買った訳だから、この値段が普通な訳です。こんなにはき心地が良い靴でも、この値段が普通なわけです。で、そういう層は、全てではないけれど、これしか履かない、履き倒す、履きこむ。で、修理に出す。だから、この値段を上げるわけにはいかないのです。

客層を変えるのなら、値段も変えるべき。適正に戻すべき。でないと、結局誰も幸せにならないのです。高いものには高いなりの理由があるし、そうでなければ職人さんの地位(嫌な言い方になってしまうかもしれないけれど)も上がらないのです。

でも変えられない。何故なら、三交製靴がこの靴を続けようと思ったのは、そういう昔からのお客さんの声に応え続けたかったから。
いいのか悪いのか良く分からないけれど、その微妙なバランスのおかげで、この体制で、今までのお客さんのために続けていけているのかもしれない。
そこが、見つけて欲しいのか、見つけられたくないのかわからない、自動販売機に隠れた表札。(狙ってやったわけではありません。)

生意気言って、すみません。でも私はそんな三交製靴が好きです。


私も、三交製靴には、これからも長く続けていって欲しいと心から思っている。松田さんとお会いするたびに、お話を聴くたびに、その想いを強くする。
そのためには、もっと多くの人に知ってもらいたい。そう思いつつも、逆に知られないほうが良いのかもしれない、という想いもそれ以上にある。知られてしまったら、今のこの三交製靴ではいられなくなってしまうかもしれない。それが良いことなのか、良くないことなのか、私にはまだ分からない。
松田さん、どうしたら良いんでしょう?部外者の私が偉そうに勝手に悩んでも困られてしまいそうですが。いや、いつもの松田さんの笑顔とカラッとした雰囲気で、そんな若者の自己満足に過ぎない悩みも笑い飛ばされてしまいそうですが。
今日、三交製靴を後にして、駅まで歩いていたら、忘れ物をママチャリ飛ばして追いかけて届けに来てくれた松田さんの帰っていく後ろ姿を見ながら、そんなことをふと思いました。

マナスルシューズ(現、ラギッドシューズ)については、日を改めて。
熟練の職人が手縫いで作り上げた、頑固な紳士靴ラギッドシューズ(旧マナスルシューズ)
三交製靴株式会社

こちらも合わせてお読み下さい。→
slooProImg_20140528175248.jpg2014年5月26日 私の二足のラギッドシューズ
– 三交製靴株式会社 ラギッドシューズ –
//lifestyleimage.jp/?p=647

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