[革靴] 靴屋だった私が人気のスワールトゥをビジネスに薦めない理由。

[革靴] 靴屋だった私が人気のスワールトゥをビジネスに薦めない理由。

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スワールトゥは私の中ではビジネスシューズではなくファッションシューズです。ファッションに興味があって、ちゃんとお手入れ出来て、この靴の長所と短所を分かった上で、それでも履くというのなら構いませんが、興味のない人がデザインだけで中途半端に手を出すと火傷します

スワールトゥってどんな靴?その魅力と、長所、短所。

スワールトゥってこんなデザインの靴

スワールトゥ

10年以上前にロングノーズが流行った際に、如何に足を長く、また細く見せるかという理由から考案されたデザインの一つです。つま先まで一直線に伸びる二本の線が視覚効果として靴の横幅を絞らせ細く見せ、またつま先側に長く見せてくれます。時代とともにスーツのフォルムが変わるように、靴の流行も変わります。ちょうど「細く・長く」が時代のスーツとも合ったとも言えますね。

で、何故私が薦めないか、というと、履き方や歩き方とお手入れに気を遣わないと、見るも無惨な靴になるからです。そもそも靴なんかに金かけてられるか、履き潰すもの、なんて考えている人が大半の世の中では、これほど「汚く見えやすい」靴はないかもしれません。

色々と理由は出てくるのと思うのですが、ここでは2つ挙げてみたいと思います。

理由1:スワールトゥ自体が比較的安価な靴に多い。

スワールトゥは若者向け、と考えられていること、またデザイン上分かりやすいことから、比較的安価な靴のデザインとして採用されることが多いのです。靴単体と見た時に目を引きやすいことから、他のデザインと組み合わせて用いられることもあるため、靴全体の中の比率としても高くなりがち。

数多く並んだ「個性のない」革靴の中から手に取ってもらいやすいため、特に大量生産される低価格帯の靴に採用されることが多くなります。デザインで目を引くので、細かい作りやフォルムといったバランスを誤魔化しやすいのも良さと言えるかもしれません(もちろんしっかりと作ればそれだけ美しく見えるデザインとも言えます)。

そして、この価格帯は、安価に仕上げるために、革の表面にガラス仕上げと呼ばれる樹脂でコーティングしたものが多いのも特徴です。もちろんガラス革にも勿論良さはあります。それが雨に比較的強かったり、メンテナンスが容易なこと。そして艶があるので、一般的にはきれいに見えやすいとも言えます。ただ、反面皺が目立ちやすかったり、一度傷が入ると取れない、と言った欠点があります。

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理由2:そもそもサイズが合っていない。

それだけ大量に出回っている(人気がある)デザインのため、多くの方が愛用しています。そして、残念なことに、その多くの方は「脱ぎ履きのしやすい」サイズを好むため、自分の靴のサイズを誤りがちです。大抵大きすぎになってしまいます。スニーカー感覚でサイズを選ぶので、1.5~2センチは違うことも多いのです。で、ぶかぶかで履くことに慣れている方の歩き方って、スリッパ履いて歩く時の歩き方に似てくるんですね。これがまた革靴と相性が悪い。

サイズの合わない靴を履くのは、本人だけでなく、靴にとっても大きな負担になります。

本来入る必要のない部分にシワが入り始めます。また、サイズの合わない靴を履けば、歩き方も変わってきます。その結果何が起こるかというと‥

つま先長い(捨て寸大きい) + サイズ大きい = 目も当てられません。

汚い履き皺が必要以上に入り、更にサイズが大きいためにつま先がそこら中にぶつかってボロボロ。傷が入ってもそもそも靴に興味がないのでお手入れしない。だからあっという間に朽ち果てていく。

お店に並んでいる時の靴がなまじ綺麗なだけに、その落差に益々履き潰されていく。散々です。まぁ、お手入れしたくてもガラス靴は耐久性はあっても削れた部分の補色がしづらいので、難しいのですが。

前述の理由が重なり、スワールトゥに限らず、巷にはお手入れのされていない、傷だらけの、そして下手すると踵も踏み潰されたような靴が多くなっています。スワールトゥは元々人気がありますし、大量に出回っていることもあって、そんな状態で遭遇する確率も高くなってしまう。

目立ってしまうんですね。悪い意味で。

デザイン上の長所が、靴に興味がない人には思わぬ短所になってしまう。

で、冒頭の「ファッションシューズ」に戻るのです。何故ファッションか。起源とかそういう点から考えてもいいのですが、ひとまずここでは単純な点、

デザイン上、まわりの人の視線がつま先に集まりやすい。

ということを挙げたいと思います。そりゃ、そうです。その為のデザインなんですから。まぁ、つま先が長い靴はだいたいそうなんですが、スワールトゥは細く、長く見せるデザインのために、特に目立ちやすいんです。デザイン重視で選ぶ方も多く、靴だけ明るいブラウンとか選んでしまうので、ますます靴「だけ」が目立ってしまう。

つま先が目立つ → つま先の傷や汚れを隠しにくい → そもそもお手入れしない →

敢えて汚いつま先を目立たせて印象づける必要がビジネスにありますか?

手間を掛けたくない人が、手間のかかりやすい、弱点が目に見えやすい靴を敢えて選ぶ必要がありますか?

スワールトゥに限らず、必要以上につま先が長い靴は、ぶつけやすく、また日本人の歩き方(これについてはまた)だと傷や汚い皺が入りやすい。しかも目立つ。だからどんなデザインか覚えてないけど、魔法使いの靴だの、トンガリ靴だの言われてしまう。

それだけ印象に残りやすい靴なんです。

ということは、うまく見せれば非常に効果的なデザインでもあるのですが、その分常日頃からお手入れやそのための意識が欠かせません。

それなりに気を遣わないとファッションなんて出来ません。お洒落はやせ我慢なんて言葉もありましたが、ファッション性を重視する靴を履く以上、靴にもそれなりに気を配らないといけなくなってしまう。

安価なスワールトゥって、ビジネス用の履き潰しに最も向いていない靴なんじゃないかと思います。

だから、ファッションで履いて下さい。その特性を理解した上で。活かすための努力を惜しまないのであれば、これはこれで面白い靴だと思います。

デザイン性の強いこの靴は、今回挙げたような理由から、何もしなくても目立ちやすくなります。そこをどう料理するのか。そこに興味を持てる方にだけ、おすすめしたい。ただ、ビジネスにおいて、また多くの方にとって、靴だけを目立たせる必要がどこにあるのでしょうか

それが、敢えて「ビジネス」にこの靴を薦めない理由です。

このブログの「靴のお手入れ」と「靴の選び方」が一冊の本になりました。

今回の文章も含め、今までこのブログで200以上書いてきた「革靴のお手入れ」と「革靴の選び方」に関する内容に加筆、修正してまとめたものをAmazonのKindle書籍として発売しました。

前半で皆さんが「何か特別で面倒なもの」と考えてしまいがちな靴磨き(本書では「お手入れ」)について、また後半では多くの方が陥りがちな革靴の間違った選び方(主にサイズ)についての誤解を解きたいと思います。

Kindle書籍、というと「Kindle端末」が無いと読めない、と思われている方も多いのですが、お使いのスマートフォンやタブレット端末でも「Kindleアプリ」を入れることでお読みいただけます。スマホに入れて、いつでも気が向いたときに目を通せる、いつも手元に置いておけるものを目指して書きました。また、Kindle Unlimited会員の方は、今回の書籍は無料でお読みいただけます。

この文章をきっかけに、より多くの方にとって「革靴って痛いと思っていたけれど、ちゃんと選べば意外と快適なんだな」「靴磨き(お手入れ)って何も特別なものじゃなくて、毎日の歯磨きや洗顔のような日常なんだな」と感じて頂き、より革靴を身近なモノに感じてもらえたら、と願っています。

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