「ねばならない」というものではないのですが、知っておくと店員さんの反応が全く違う(知らなくても大半の人がやってしまうので、半分諦めている部分もある)コツを何回かに分けて紹介します。お客さんと店員さんの関係とは言っても、店員さんだって結局は1人の人間です。だから、こうしたちょっとした気遣いが、意外と嬉しくて、そういう靴のことをちゃんと考えてくれるお客さんなら、より良い靴を選ぶ手伝いをしたい、と思うものです。今回はほとんどの店員さんはあまりに多いので半ば諦めているので口に出さないけれど、それだけにこれだけでも全く印象が変わる、「靴のつま先を持たない。」ということについて、です。
安い靴だけでなく、高級靴を扱うお店でも変わらず見かける光景ですが、靴を手に取る時つま先を持つのはやめましょう。確かに展示の方法がいかにも「つま先を持って下さい」と言っているかのような置き方なのもあるのかもしれませんが、これ、とても嫌がられます。
お店に立っていると、あまりに多くの人がつま先を持ちます。「ああ、またか・・」といった感じで半分以上諦めている店員さんも多いのですが、そんな状況だからこそ、つま先を持たず、例えば履き口周りであったり、紐のある羽根部分を持っただけで、好印象を与えられます。
靴のつま先を持ってはいけない理由は幾つかあります。
例えば最近では「Mのブツ欲日記」の2014年5月1日分では、
これ絶対にNGですからね。
なぜダメか。
ちょっと考えればわかると思いますが、
掴んだところに靴の重量がすべてかかっちゃうでしょ?
そしたら革のつま先部分が傷むのは簡単に想像できますよね。
革の種類や作りによっては、親指で掴んだ部分が潰れてしまうことも。
そしたらもうその靴は売りモノになりません。
「オレ、お洒落には詳しいからね」的な態度プンプンさせながら
こういう持ち方をしている人を店先で見ると、
「お洒落を語る資格無しっ!」と切って捨てたくなります。
他には、
- つま先を持つというのは持った時の靴の重さが全て先端のつま先に集中してしまうので、つま先を痛めやすい。また持った時のバランスが悪くなるので、靴を落としたりしやすい。
- つま先は靴の顔でもあるので、お店としてもしっかり磨き上げたりと特に気を使っている場所。特に靴好きの方ならご存じのように、つま先と踵はポリッシュなどで鏡面仕上げを施して顔が映るくらいまでピカピカに磨き上げる部分でもあります。その部分を無造作に触られる、指紋や傷を付けられることが気分として良くない。
等々。
靴は靴屋にとっては単なるモノではなく、大切なモノであり、商品であり、子どものようなものです。だからこそ、自分のお店から巣立っていく靴には大切に扱われて欲しいし、長く愛用して欲しいと願っています。なので、ここではどんな理由あれ、つま先を持たないだけでも、嬉しいものです。また、幾ら販売するものだからと言ってもそうした靴に対して気を配れる方に譲りたいものです。
そこで、上でも挙げたようにいけない理由は幾つもあるのですが、ここではちょっと違った視点で理由を挙げたいと思います。
- あなたはペットショップで、可愛い犬や猫を抱きかかえたいと思った時、頭や顔を持ちますか?
- 可愛い赤ちゃんや子どもを抱っこする時、頭を鷲づかみして持ち上げますか?
- 花屋さんで綺麗な花を見つけて手に取る時、花びらを触りますか?
- 眼鏡屋さんで眼鏡を買う時、眼鏡のレンズ部分を持ちますか?
どれもに共通するのは、それぞれにとって、最も大切で繊細な部分だということ。
上の視点の内、人によっては、もしかしたら幾つかは実際に触るかもしれない。
でも、一つくらいは抵抗のあるもの、ありますよね?
靴も以前「つま先は靴の顔」「つま先のマジック」と書いたことがありますが、とても繊細で(勿論芯は入っているとはいえ)、その靴の個性を決める大切な部分の内の一つ。とともに、ちょっと力加減を間違えるとそれだけで傷が付いてしまう場所でもあります。
靴を生き物のように考えるのは難しいかもしれませんが、そうしたことに気がまわるようになると、より素敵な人になれるのではないかなぁ、と思います。
最後に、つま先絡みでもう一つ。
試しに履いてみた時、まさかつま先をグイグイと押したりしていませんよね?
スニーカーの時のクセなのか、踵に指を入れるのと同じくらい多いのがつま先に余裕があるか見るために、何も言わずに突然つま先を潰そうとする人。
芯が入っている、と書きましたが、入っているだけに、ここを力を入れて潰されると、元に戻らなくなることもあります。つま先を触られる以上に、商品としてダメになってしまう行為なので、これも気を付けて下さい。
2014年10月8日 10:00 追記
「甲高幅広」「外反母趾」関連のアクセスが非常に増えてきています。大変ありがたいことで、少しでも甲高幅広の誤解が減ってくれれば嬉しいのですが、公開から半年が経ち、改めて読み直してみると無駄に長い。
またその後も幾つかこうした話は書いていまして、そろそろ一旦まとめたほうが良いのでは無いか、と思いましたので、半年後のまとめを作ってみました。
今までに書いてきたもののリンクもまとめながら、特に先入観や誤解の多い「甲高幅広」と「外反母趾」を中心に、靴と足の関係について書いています。
覚えておくと得をする、お店で喜ばれる靴の見方、履き方にもちょっと触れますので、いつも以上に長くなりますがお時間のある方は合わせてお読み下さい。
甲高幅広と外反母趾に見る、日本人とつま先の関係。