[革靴] 靴を修理に出す時に、私たちが心に留めておきたい幾つかのこと。

[革靴] 靴を修理に出す時に、私たちが心に留めておきたい幾つかのこと。

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今回は久しぶりに修理についてちょっと触れてみたいと思います。職人さんや修理を散々してきた方にしてみれば今更な部分や間違っている部分など出てくるかもしれませんが、その辺りは遠慮なくご指摘下さい。

メーカーに出すか、街の修理屋さんに出すか。

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これはお店にいた時によくお客さんに言われたことでもあります。メーカーは修理が遅い。なんで踵をちょっと取り替えるだけなのに何週間もかかるんだ、と。ミスターミ○ットならその場ですぐやってくれるじゃないか。怠慢だ。誠意を見せろ。と。

お気持ち分かります。駅構内のミスタ○ミニットならちょちょいとその場でやってくれるのに。

修理自体は余程数こなすか価格を上げない限りなかなか利益出ません。

これには色々と事情はあります。お店側、メーカー側の勝手な事情ももちろんあります。多少は怠慢な部分もあるでしょう。ただ、時間がかかるのにはそれなりの理由があります。そして、例えば同じ踵を取り付けるのでも、その場で取り付けるのと、取り付けた後しっかり一晩寝かせたものでは全く付き方が違ってきます。

また、実際、修理って利益ほとんどないんです。往復の送料もお店持ちになるわけで、実質修理を受ける度に赤字になる場合も多々あります。

じゃあ、送料がかからないようにその場で直せる体制を作ればいいじゃないか。

これもその通りです。でも、その為に職人を常駐させるのであれば、それなりに毎日修理の件数がなければとてもじゃありませんがコストのほうがかかって仕方ありません。

革靴に限らず、世の中の多くのものは大量生産・大量消費が前提で作られ、価格が決められています。私たちがこの価格で買えるのは、またセールになると更に半額以下にまで下がることがあるのは、この大量生産・対象消費が前提になっているから、とも言えます。今、目の前にあるこの革靴は、様々な事情と需要と供給と理由があって、その価格になっています。けれど、価格と価値は別です。その靴をどう扱うも私たちの勝手。ただ、価格だけで考えてしまうのは、少し寂しくありませんか?

メーカー修理の強みって何でしょうか。

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ただ、メーカー修理にもそれなりの強みがあります。例えば底の全交換であれば、その靴を作る際の木型に入れてやってくれる可能性があること。純正の部材でやってくれること。中底の交換なんて、普通はなかなか出来ません。値段が一気に上がるか、やらないところもある中、例えばリーガルであれば中底交換で+4,320円(価格が変わっていなかったら)です。リーガルの場合、今まで作った修理可能な靴の場合は、その全ての木型を保管している、と言われます。実際どうかは分かりませんが、たとえ代替部品であっても、修理が可能な状態なのであれば修理自体は出来る、ということです。

これ、中底交換、と考えると非常に破格なのですが、お客さんによっては大変嫌がられます。だって値段が更に上がるわけですから。特にリーガルなんて、元々の価格帯を考えると4,000円上がるだけで新しく買ったほうが安くなってしまうわけで、その気持ちも分からなくもないですが、逆にそんな値段でやらざるを得ない事情というのを考えてみるとまた違った捉え方が出来るかもしれませんね。

正直、1万そこそこ程度でオールソールなんぞ、私はやりたくないですよ。まして部材代もかかってる訳ですから。

この辺り、靴が大量生産大量販売されたことで、靴が修理しながら履き続けるものではなく、履き捨てて買い換えるものに変わってしまった悲しさかもしれませんね。

別にミ○ターミニットを貶したいのではなく、実際にしっかりと修理はされています。ただ、安い、速いにはそれなりの理由があり、それをわかった上で利用しましょうね、ということです。修理ばかりは本当に相性と縁がありますので、馴染みの修理屋さんがあるのであれば、そこが一番だと思います。

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踵や底を交換する時に気をつけたいこと。

日本ってホント凄いな、と思うのは、一つは靴の品揃え。これはよく言われますが、もう一つ思うのが、修理パーツの豊富さ。これほど修理の際に選択肢の多い国も滅多にないと思います。

踵一つ考えても、例えば今回利用させて頂いた浅草コブラーでは今ざっと数えただけでも革、ラバー合わせて35種類くらいありました。もう靴好きにしてみれば、憧れのあのトップリフト、あの幻の○○が、みたいな楽しみも出来るわけです。

そういう人にしてみれば、既に分かっていて選ぶわけですから良いのですが、ちょっと気をつけたいこと。

中敷き一枚敷くだけで履き心地は変わります。では踵の高さが変わったら?

踵の削れを放置していると、どんどん身体が歪んできます。なので、放置しないで(惜しまないで)コンスタントに交換して欲しいのですが、踵の高さって考えたことありますか?

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これ、それぞれの靴によっても多少違いますし、更にもしトップリフト交換と考えると、それぞれに厚みが違います。例えば今回私のマナスルシューズに付けて頂いたビブラムのラバーだと約6.0mm。平均的な厚さです。これを例えば私の大好きなリッジウェイに替えたらどうなるでしょうか。

踵だけリッジウェイは流石にないかもしれませんが、先ほどの浅草コブラーのサイトによるとリッジウェイは前が約15.0mm、後ろが約17.5mmだそうです。ここまで極端なパターンはないにしても、例えば英国好きだから、とイギリスのPhillipsに替えると7mm、9mmとなっています。数ミリ違うわけです。

たかが数ミリと思いがちですが。

足なんて鈍感ですから、ちょっと履いている内にすぐ何も感じなくなります。すぐ慣れてしまうんですね。ただ、数ミリ踵だけ高くなれば、今までとは靴のバランスが変わってくることは覚えておいたほうが良いと思います。

今回私の修理では靴の前部分だけダブルソールになる、ハーフミッドソールにしました。当然シングルソールの時と厚みが違います。前が厚くなれば、それに合わせて場合によっては踵の高さも調整しないと前後の高さのバランスが崩れます。

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足は鈍感と書きましたが、決して影響を受けないわけではなく、その程度の誤差でさえ歩き方や姿勢には大きく影響してきます。

慣れるのが早い、ということは、先ほどの削れすぎた踵同様、身体の歪みも起こりやすい、ということです。

職人さんによっては、もちろんこの辺りの前後のバランスや組み合わせ、元々の靴の状態を考えて最適な組み合わせを何も言わずに選んでくださる方もたくさんいらっしゃると思います。踵一つとっても、単に外観だけでなく、履き心地を左右する大切なポイントですから。

そうした点でも、修理はどこでも一緒なのではなく、人間が手を加えるものである以上、大きく違いが出てきてしまう、ということです。

高ければ単純に良い、ということではないのも難しいところですが、つい価格や時間だけで選びがちなので、この辺りもちょっと心に留めておきましょう。

自分の履いた靴は、最後まで愛情を持って接してあげてください。

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これは別に修理に限らないことではあるのですが。お店に修理のために靴を持ってきて、見積もり金額が思った以上に高いと知った途端、吐き捨てるように文句を言った挙句、目の前に出した靴を雑に(持ってきた時の)コンビニ袋に放り込んだり、「じゃ、捨てて」と冷たくなる方が結構います。

あとは、修理に時間がかかる、踵だけで良いと思ったら他にも修理が必要だった、と分かった途端、じゃあ履き潰すよ、と言い放つ方。

気持ちも分からなくはありません。

でもね、つい少し前まで、そんな冷たい態度を取っているあなたの足を、体重を、毎日支え続けてきた靴なんです。

靴に対する扱い方を見ると、異性に対する接し方が分かる。

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と聞いたこともあります。まぁ靴に心があるかないかは別としても、その靴があなたの足元に来るまでに、たくさんの方の手がかかっているわけですよね。

そして、修理から帰ってきた靴を無造作に雑に扱う方もいますが、その靴、職人さんがしっかり時間をかけて直してくれた靴なんですよ。

もし直さない、と決めたとしても、その靴が役目を終える最後の瞬間まで、きちんと愛情を持って接して欲しいと思うのです。

余計なお世話かもしれませんが、これを書きながら当時の風景がたくさん蘇ってきてしまったので、最後にちょっと触れてみました。

このブログの「靴のお手入れ」と「靴の選び方」が一冊の本になりました。

今回の文章も含め、今までこのブログで200以上書いてきた「革靴のお手入れ」と「革靴の選び方」に関する内容に加筆、修正してまとめたものをAmazonのKindle書籍として発売しました。

前半で皆さんが「何か特別で面倒なもの」と考えてしまいがちな靴磨き(本書では「お手入れ」)について、また後半では多くの方が陥りがちな革靴の間違った選び方(主にサイズ)についての誤解を解きたいと思います。

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この文章をきっかけに、より多くの方にとって「革靴って痛いと思っていたけれど、ちゃんと選べば意外と快適なんだな」「靴磨き(お手入れ)って何も特別なものじゃなくて、毎日の歯磨きや洗顔のような日常なんだな」と感じて頂き、より革靴を身近なモノに感じてもらえたら、と願っています。