歌舞伎、せっかく東京にいて、以前は職場が銀座で、築地に寿司を食べに行くことも時々ありながら、いつも素通りでした。難しい、分かりにくい、もし見に行って、厳かな雰囲気な中で礼儀もわきまえず、肩ばかり凝って寝てしまったらどうしよう。そんな漠然とした不安から見ない振りをしていました。
けれど、勿体ないと思うのです。
食わず嫌いは損ではないか。
今年は妻と歌舞伎を時々見に行こうかな、と思っています。いえ、今まで全くありません。食わず嫌いのようなものでした。大学の時にクラスメイトで歌舞伎が好きな女の子がいましたが、何度か話を聞いたのですが結局魅力が分からずじまいでした。難しいモノと決めつけていたのかもしれません。ごめんね>クラスメイトだった女の子。
私は年末になると夫婦で第九を聴きに行きます。これは別に特別なことでも何でも無く、結構一般的だと思うのです。最初の頃はよく寝ました。訳分からないクラシックの世界は私にとって不安でした。
今では全く気負わず、楽しみに行きます。勿論分かっているとは言いませんが、自分なりには楽しめていると思います。
で、ふと思ったんですね。歌舞伎も同じじゃないか、と。分からない、という時を過ぎると、徐々に楽しくなってくるのではないか。これだけ人気と歴史のある世界です。食わず嫌いは損ではないか。
歌舞伎って何着ていけば良いんですか?
分からない世界というのは、とにかく何が分からないのかすら分かりませんから、不安です。それが最初の一歩を踏み出す大きな障壁になっているのだと思います。例えば、既に歌舞伎を楽しまれている方からすれば鼻で笑われるかもしれませんが、歌舞伎って何着ていけば良いんですか?どうやってチケット取れば良いんですか?何がお薦めですか?
もう初心者丸出しです。
で、初心者というのは基本ネットでは丸出しにすると嫌われます。「初心者なので」は免罪符でも何でも無く、言った途端に冷ややかな目で見られます。本人は謙虚なつもりで言ったのだと思いますが。
何でも全て分からないからお任せになってしまうのが困るのですね。
となると、初心者なりに人に訊く前にとりあえず何かしら知ろうという気概だけでも見せて臨まなければならない。
そう思って手を出したのが、何故かこの一冊です。
成毛眞「ビジネスマンへの歌舞伎案内」(NHK出版新書 446)
別に仕事に役立てたいとか、ビジネスマンだから(私がビジネスマンかどうかは別として)と言った理由ではなく、単純に基礎のキを気負わず眺めてみようと思ったからです。
歌舞伎も同じで、どんな演目がかかっているかも大事だが、歌舞伎を観に行くという行為自体が楽しい。一緒に行った人と帰りに飲みに行くのが楽しい。そして家に帰り着くころには、具体的に何が面白かったのかは忘れていて、なんとなく楽しい一日だったという感想だけが残る。これでいいのである。
歌舞伎の細かい演目の内容などはどうでも良かったんですね。その辺いきなり勉強しようと思っても私の中で恐らく挫折すると思いましたので。それよりも、歌舞伎ってもっと気軽に楽しめるんだよ、とか、
歌舞伎もそれでいいのである。役者が入れ替わり立ち替わり舞台をつとめる。そのすべてを真剣に観る必要はない。いいなと思うところは見入り、退屈だったら居眠りをしてやり過ごしてもいい。最初から最後まで、肩肘張って観る必要はまったくないのだ。つまり、観る側が見方を決めていいのである。
いいなと思うところだけ見ればいいんだよ、といった心構えから、じゃあ当日はどんな感じで、例えば歌舞伎座へなら行けば良いのか(簡単なタイムスケジュールの例)といったことなど、まずは歌舞伎というもののイメージを膨らませるきっかけとして手に取ったというのが理由です。
間違ったところや突っ込みどころより、まずは最低限のマナー
ところが結構面白いんですよ。これ。歌舞伎に詳しい方から見れば細かい部分で間違っているところや突っ込みどころもあるようですが、そもそも私のような人間にはそれが間違っているかどうかよりもとりあえず歌舞伎に興味を持ったので、最低限のマナーだけ知りたい、というレベルです。
ゲームを楽しむ上での最低限のルールを知っておくような感覚です。
間違っている部分が何処かなんてそもそも分かりませんし、そんなもんは後で楽しめるようになったら修正していけば良い。そうした点でもまったく問題なく、最後まで強弱付けながら気軽に読めました。
Kindle版も良いけれど、ガイド的な本は書籍が良いよね。
とりあえず、こういうガイド的な本は、紙の書籍の状態で一冊手元にあると便利です。私はいつも通りKindle版で買いましたが、確かに勿論持ち歩けて自由にいつでも読めて便利ですが、あとでパラパラとポイントだけ見直したい時にはまだまだ電子書籍は弱い。
最初から最後まで通しで読む物語などには向きますが、ガイドブックや入門書の場合には紙の書籍の方が便利ですね。それでも私はひとまず若干値段が安くて気軽に読めるKindle版で買っておいて、気に入ったモノだけ改めて書籍版も購入し直しますが。
とりあえず私は「かぶき手帖 2015年版」は必須としても、
あとは巻末のブックガイドにあった本の中から面白そうなものも流して読みつつ、今年は妻と歌舞伎も楽しみたいと思います。