[かぶ] Googleは極論Chromebookは売れなくても良いと思っている。MicrosoftのXbox戦略と重なる特定のハードウェア依存の思考からの脱却。

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[かぶ] Googleは極論Chromebookは売れなくても良いと思っている。MicrosoftのXbox戦略と重なる特定のハードウェア依存の思考からの脱却。

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MicrosoftのXboxが最近少々好調なようです。

ハード自体の販売台数はPS5やSwichとは比較にならないのですが、ただそれでも家電量販店売り場等でもそれら2機種と同じくらいの販売スペースを確保してもらっているようですし、それなりに販促活動もしてもらえている様子。

在庫も一時期はPS5以上に入手困難(PS5はまだ抽選販売があったのにXboxは店頭で運良く見かけないと買えなかった)だったことを比べれば、今は普通に買えるようになってきています。

で、この状態に大きく貢献したと思われるのが、Microsoftが最近押し出している「Xbox Game Pass(以下Game Pass)」です。

XBOX GAME PASS に加入して、次のお気に入りのゲームを見つけよう| Xbox

これはこのブログでは以前から取り上げていますが、月額料金を支払うことで、対象のゲームが遊び放題になる、というもの。そしてこのGame Pass、最近ではStarfieldはじめAAAタイトルが発売初日から対象となることも増えてきまして、Xbox買ったらまずはお試しで(初月100円等で)使ってみる、という楽しみ方ができるようになりました。しかもこれはXbox機だけでなく、PCでも利用が可能(プランによる)です。

これだけでも十分に魅力的なのですが、個人的に感じているのが、このGame Passの最上位プランであるUltimateです。

このプランでは「Xbox Cloud Gaming」という機能が使え、これによってXboxやPCだけでなく、ネットワーク回線を介して手元のスマートフォンやタブレット端末、更に最近ではVR端末であるMeta Quest 3も対応したということで、本当に「いつでもどこでも手元の端末でXboxのGame Pass対象のゲームが(通信環境さえ安定していれば)遊ぶことができる」という状況が生まれました。

Xbox.com 上の Xbox Cloud Gaming  (ベータ版)

勿論クラウドゲームサービスですので、本体にゲームをインストールする必要はなく、また低スペックのスマホやタブレット、Chromebookでも快適に遊ぶことが出来ますし、セーブデータもクラウドで保存されていますので、出先でiPadで遊んでおいて、自宅に戻ったらPCやXboxで続きを遊ぶことも出来ます。

で、先日ファミ通.comにマイクロソフト ゲーミングCEO フィル・スペンサー氏のインタビュー記事が掲載されました。

【VIPインタビュー】マイクロソフト フィル・スペンサー氏「Xboxとは、マルチデバイスで遊べるプレイヤーのコミュニティー」 | ゲーム・エンタメ最新情報のファミ通.com

これを読んでいて、Chromebookユーザーでもある私は、Googleの今のChrome OSとそれを取り巻く戦略と相通ずる部分があるな、と感じましたので、ちょっと今回はこれについて書いてみたいと思います。

Microsoftは極端な話、Xbox自体が売れる必要はない。だからそもそもハード販売台数で勝負していない。

これ、PS5ユーザーからしたら「負け惜しみ」と捉えられるかもしれませんが(実際Xなどネット上ではそうした煽り合いが日々行われている)Xboxユーザーからしたら的がズレているので何もダメージ受けてないんですね。

それは、Microsoftはそもそもハードウェア自体で利益を上げようと考えていないからなんです。(まぁPS5もハードウェア自体はいくら売れても大した利益にはならず、ゲームの売上で利益を上げる構造は似ているのですが)

日本における現在の数字を見ますと、過去3年間で、どの国や地域、市場よりも、Xboxがもっとも成長しているマーケットです。そのうちの多くの成長がPCで牽引されています。それは、Xboxというブランドが日本のゲームファンの皆さんにとって、家庭用ゲーム機やPC、クラウドなど、幅広いプラットフォームでプレイしていただけているということでもあり、私たちにとってもたいへんうれしいことです。Xboxとしては、プレイヤーの方々がどこにいても選ばれるような、ゲームのブランドになりたいと考えています。

PCゲームを販売するプラットフォームは多々ありますが(有名どころではSteamやEPIC Games Storeなど)MicrosoftもMicrosoft Storeでゲームを販売しています。またXboxの全てのゲームというわけでは勿論ないのですが、Xboxには「Xbox Play Anywhere」対象のゲームがあります。これはそのゲームを一度購入すれば、XboxであろうとPCであろうと動くというものです。つまりハードウェア毎に買い替える必要がない。

Xbox Play Anywhere | Xbox

更に最近はXbox Game Passによって、Xbox本体を持っていなくてもXboxの(一部の)ゲームが幾らでも遊べるようになりました。で、ネットを眺めていると、前述のXbox Cloud Gamingを使ってiPadでStarfieldを遊んでる!凄い!どこでもXboxのゲームができるじゃん!といった声も結構目にするようになりました。

Xbox Game Passは、Xboxにおいて重要な意義を持っています。とくに、PC Game Passの伸びが顕著です。日本のPCゲームの市場サイズは、過去3年間で約2倍になっているのですが、PC Game Passの利用者は約4倍になっているんです。市場の成長よりも、Game Passの成長のほうが早いということで、これはXboxブランド全体にとって、非常にいいことです。

Microsoftとしては、Xbox Game PassをきっかけにXboxに興味を持ってもらえるのも勿論ありがたいのですが、反対にXbox Game Passを契約してくれることのほうが余程利益を出しやすい。なぜならMicorosoftはハード屋ではないからです。

Windowsも次期バージョンではサブスク型になるのではないか、という噂もありますが、(既にOfficeなどは365でサブスク型に変わっていますね)デジタルを介した(DL型の)サブスクタイプのサービスで利益が出れば良い。

じゃあXboxのハードウェア自体は要らないのか、といえば、当然必要です。何故ならまだまだ現状は過渡期であり、家電量販店などでXboxのハードウェアがPS5などと一緒に並んでいる(パッケージソフトも含めて)ことで、多くの方は「Xbox」という存在を知るからです。Xboxを知ってもらうためには、まだまだXboxという箱物があったほうが伝わりやすい、ということです。(もちろんハードウェアとして使って楽しんでもらうこともできる)

そう考えると、最初でも触れたように「Microsoftは極端な話、Xbox自体が売れる必要はない。だからそもそもハード販売台数で勝負していない。」んです。

むしろXboxをきっかけにして「Xbox Game Pass」を中心としたXboxコミュニティ、Xbox経済圏が生まれてくれれば良い、と考えているのではないか、と私は考えています。

私たちとしては、Game Passの利用者も含めて、プレイしてくださる方々がすべてXboxユーザーだと思っています。家庭用ゲーム機で遊んでくださっている方はもちろん多いですが、自宅では家庭用ゲーム機やPCで遊んで、出先ではクラウドで……というマルチデバイスでプレイされている方も多いです。

そうすると、「Xboxというのはマルチデバイスのコミュニティーなのか?」という疑問も出てくると思うのですが、私としては、「Xboxは、さまざまな場所でマルチデバイスで遊べるプレイヤーのコミュニティーである」と考えています。

私は出張や移動が多いので、ASUSのROG Ally(ASUSから6月に発売されたポータブルゲーミングPC)を持ち歩いているのですが、私はこれもXboxだと考えます。Game Passももちろん使えますし、『Starfield』や『Lies of P』もプレイします。私のいろいろなセーブデータがクラウドにあるので、スクリーンを移行してどのような場所でも遊ぶことができるのです。私自身が持ち歩いているコミュニティーという位置づけになりますね。家に帰ったら、家庭用ゲーム機で大型テレビにつないでプレイするわけです。

これは私達にとってもメリットが大きいと思っています。何故ならある一定の機種やプレイ環境に縛られることがなくなるからです。

Microsoftアカウントがあれば、Xbox Game Passを使って、手元のあらゆる端末で最新のゲームが遊ぶことができる。勿論現状では様々な壁があることは確かですが(日本では特にゲームと言えばPS5という風潮が強いだけでなく、メディアもXbox自体はほとんど取り上げない)将来のゲームの楽しみ方としてとても個人的には期待しています。

で、これと同じことがGoogleとChromebookの戦略にも実は言えるのです。

Googleは極端な話、Chromebook自体が売れる必要はない。あくまで普及させたいのはGoogle Workspace。

これは以前から発信してきていること、そして昨年の教育市場向けのイベント(商談会)でもあるEDIXの現場でも、また様々なGoogle関連のイベントでも耳にし、また実際に感じてきていることなのですが、Googleが実際に普及させたいのはGoogle Workspace(教育現場ではfor Education)です

前述のMicrosoft同様、Chromebookというのはあくまで「Google Workspaceを利用してもらうに当たって、それにより最適化された端末が実際に箱物として眼の前で販売されていることで、導入のきっかけとしてもらう分かりやすいハードウェア」に過ぎないんですね。

ビジネスアプリとコラボレーションツール | Google Workspace

実際ご存知のようにGoogle自体は元々ハードウェア自体で利益を上げる企業ではありません。

で、イベントでも各メーカーの方からも耳にするのですが、教育市場向けのChromebook端末、巷では「安さだけが唯一の魅力だから教育市場でシェアを伸ばしたのに、日本のモデルは色々保証つけて低スペックなのにボッタクリ」等々言われていますが、実際にはあれ、何万台売れようが、何十万台売れようが、メーカーとしては担当社員の給料にほとんど反映されない程度、雀の涙程度の利益しか上がらないどころか、むしろモデルによっては売れば売るほど赤だそうです。

「GIGAでChrome OSがシェア取る、ということで、毎回バブルのように売れてるように見えるかもしれないけど、利益自体は大して上がってなくて、あくまであれをきっかけに学校でChromebookを介してGoogleのサービスを使う学生が増え、将来的に社会に出た時にその世代がGoogle Workspaceを使ってくれることが目的」なんですね。

というと教育現場のみの特殊な状況のように思えるかもしれませんが、実際には法人向けも同様の話を(まったく別の担当の方ー当然ですね、部署が違うので)複数名から耳にしています。

ちなみにGoogle Workspaceも勿論Chromebookでしか使えない訳ではなく、Xbox Cloud Gaming同様、Windows PCからMacBook、AndroidスマホからiPhone、iPadなど様々な端末で使うことが出来ます。そして、これらは「Googleアカウントさえあれば、いつでもどこでもどの端末でも自分の最新の作業環境がすぐに再現できる=本体は端末ではなくアカウント」に繋がってきます。

更にいうと‥Google Workspaceでなくても、既に多くの方はChromebookは使っていなくても、使っているものがありますよね。それがGoogleのサービスです。

GmailやGoogleカレンダーに慣れたユーザーは、その内Google DocsやSpreadsheetも使うようになるかもしれません。そうしたクラウドでの共有に特化したサービスに慣れ親しんだ層が増えてくれば、自然とGoogleの提供するサービスに馴染んでくる。

そのための学校におけるChromebookをツールにしたGoogle Workspaceの普及であり、企業のDX化に合わせたGoogle Workspaceの普及です。

なので、巷で言われているような「Chromebookは最近店頭でも見かけなくなったし話題も目にしなくなった。終わったな。」といった反応。

実際には似たようなこと、5年も8年も前から同じこと言われ続けているんですが、シェア取れなくても良いんです。覇権取る必要なんてない。あくまでGoogleのサービス、しいてはGoogle Workspaceを契約して使ってくれるユーザーが増える(シェアが増える)ことが目的で、そのための販促ツールに過ぎない、ということですね。

従来の販売台数、売上ランキング、表面に出ているシェアといった基準では測れない世界と未来がある。

さて、ここまでの話を読まれた方の多くは、もしかしたらXboxユーザーの、Chromebookユーザーの「単なる負け惜しみ」にしか聞こえないかもしれません。

実際冒頭でも触れたように、Xをはじめとするネット界隈ではXboxユーザーとPS5ユーザーの無駄な煽り合い(でもそこにSwitchユーザーはあまり含まれていない)が毎日のように繰り広げられていますし、Chromebookに関しても私が昨年6月辺りにこの話をXで話したときには「Google信者の言うことだから全く参考にならない」「中の人に聞いた?そんなの中の人は売りたいんだから、都合の良いことしか言わないし、本当のこと言うわけがないだろ」と噛みつかれました。

もちろん私はGoogleのChrome OS部門に携わっているわけではありませんし、それどころかGoogleの人間でもありません。だから実際には本当に「負け惜しみ」に過ぎず、Googleの中の人が都合の良い言い訳を考えついただけの可能性も勿論あります。

ただ、私自身8年近くChromebookを使ってきて、「Chromebookの本体は端末ではなくGoogleアカウント」と散々発信してきていることもあり、この話がとても腑に落ちましたし、従来の「ハード偏重」の価値観に一喜一憂する必要はないのではないか、と最近思うようになりました。

そう考えてみると、最近の(最近に限らずですが)個人向け市場においてChromebookがそこまで伸びないだけでなく新製品があまり出ないのも分かる気がします。

個人向けは元々そこまで重視されてないんです。

個人ユーザーは別にChromebookを使う人が増える必要はなく、あくまでGoogleアカウントを使うユーザーが増えてくれれば良い。そのきっかけになれば良い、程度の認識なんですね。

数年前に各社が精力的に製品を展開した時期がありましたが、最近は国内外ともにそこまで積極的に出てきていません。それを以て「Chromebookオワコンw」という人もよく見かけるのですが、これに関してもあるメーカーの方が「既に国内の個人向け市場においてはある程度認知度を上げることが出来たので、目的は達成している」と言われていました。

最初それを聞いたときには個人的にはガッカリしたのですが、今改めて振り返ってみると、別に大きな利益が上がるわけでもない、むしろ「採算度外視で赤、広告費と割り切ってでも展開して知名度を上げる」意味ってほとんどないんじゃないかなぁ、と思っています。

となると、ここ最近発表されるChromebookのモデルが軒並みハイエンドだったり法人向けが多かったりするのも、結局はGoogle Workspaceを導入するニーズがあるのがそこであり、またそうした現場で求められているのは結局はある程度の快適さも求められるスペックのモデルである、というだけに過ぎないんじゃないかと。

個人はどうせ買わないですから。個人が求めているような「安さこそが」の2〜3万円モデルなんて、頑張って作っても売れないどころか、作れば作るほど赤字になる、更にWorkspaceの契約には結びつかない訳で、となると、もしかしたらまだハードウェアが一般層に届くXboxのほうが救いがあるかもしれません。

ということで、今回はMicrosoftのXboxの戦略から、以前から感じてきたGoogleのChromebookの戦略との共通点について考えてみました。もちろんこれが唯一の、絶対的な正解というわけではありませんが、最近のChromebookを取り巻く事情についての一意見として何かしら参考になれば嬉しいです。

【VIPインタビュー】マイクロソフト フィル・スペンサー氏「Xboxとは、マルチデバイスで遊べるプレイヤーのコミュニティー」 | ゲーム・エンタメ最新情報のファミ通.com

XBOX GAME PASS に加入して、次のお気に入りのゲームを見つけよう| Xbox

ビジネスアプリとコラボレーションツール | Google Workspace

Microsoftは極端な話、Xbox自体が売れる必要はない。だからそもそもハード販売台数で勝負していない。

Googleは極端な話、Chromebook自体が売れる必要はない。あくまで普及させたいのはGoogle Workspace。

従来の販売台数、売上ランキング、表面に出ているシェアといった基準では測れない世界と未来がある。

  • Microsoftは極端な話、Xbox自体が売れる必要はない。だからそもそもハード販売台数で勝負していない。
  • Googleは極端な話、Chromebook自体が売れる必要はない。あくまで普及させたいのはGoogle Workspace。
  • 従来の販売台数、売上ランキング、表面に出ているシェアといった基準では測れない世界と未来がある。