この2年ほどで、国内においてもChromebookがだいぶ知られるようになってきました。一番大きいのはGIGAスクール構想による全国の学校へのPC導入だと思います。それに合わせて、今までほとんど取り上げてこなかったか、ある意味ネタ程度か煽り程度にしか触れることのなかった大手メディアや、他OSのPC中心の情報サイトなどでも最近はChromebookについて取り上げてくれるようになりました。
情報が増えることは非常に喜ばしいことなのですが、ある程度知名度が上がると出てくる悩みがあります。それが、話題になれば金になる、とばかりに、まったくChromebookを使ったことがない、興味がない、「お得情報」「お買い得情報」「ポイ活情報」系サイトも取り上げ始めている、ということです。
それらの中には、単純にセールなどの価格だけを見て「実質価格が○○円なので、それをメルカリ等で販売すれば、差額で○○円お得」的な情報を普通に発信しているところもそこそこ見かけます。
で、何が困るか、というと、そうした情報も増えてきてしまったことで、折角Chromebookに興味を持っても、
「どのChromebookを選んで良いのか分からない」
という悩みが増えてしまった、ということなんですね。
ある程度自分の中で信頼出来る、と思えるサイトがある方であればまだ良いのですが、多くの方にとっては、Chromebookにおいてはどの程度のスペック、価格帯のものが良いのか分からない、と思うのです。また、ある程度PCに詳しい方でも、他OSの基準に照らし合わせて選ぼうとしてしまうと、結果として間違った選択をしてしまうことも多々あるな、と眺めていて感じています。
Chromebookの選び方、といっても色々あります。中には「オススメ○○選(2022年4月版)」といった記事もあるでしょう。それらを一つ一つ検証していくと幾ら書いてもキリがありませんので、今回はそんな中で、とりあえず1からChromebookを選ぶ上で、調べる際の「最初の目安、基準」のようなものを書いてみたいと思います。
まずはこのステップを踏んでいただくことで、ご自身の中でもある程度絞り込みが行えると思います。
まずは絞り込み。「Amazon、メーカー公式サイトは使わない。ビックカメラもしくはヨドバシのサイトを使いましょう。」
今回の文章のポイントはほぼこれに集約されます。
現在国内において、お得に買える、セールが度々開催される最たるものが「Amazon.co.jp」と「メーカー公式(直販)サイト」です。後者はあくまで一部のメーカーではありますが、実際お得情報、セール情報といえばこれらのメーカー直販サイトがよく取り上げられます。
ただ、既にある程度自分の中で機種が絞られている(目的の機種を狙い撃ちする)のであれば別ですが、そうでない場合は、
「選定の段階ではAmazon、メーカー公式サイトは使わない」
ようにしましょう。もちろん購入時に、ではなく、あくまで絞り込みの段階で、です。理由は簡単です。
- Amazonはセラー販売も含めると、既にサポートも終了している6年以上前のモデルも普通に販売されている。
- メーカー直販サイトはモデル自体が探しづらい上に、お得なのかどうかも分かりづらい。
からです。
Amazonはマニアでも判別しにくい、6年近く前のサポート切れのモデルも普通に並べられている。
試しにAmazonで単純に「Chromebook」と検索してみましょう。
まぁ流石に単純に「Chromebook」とだけで検索する人はあまりいないとは思いますが、517件出てきました。さて、ここからとりあえず下までスクロールしていったとします。
Chromebookの情報を6年発信し続けてきた私でも、正直探す気が失せます。
それどころか、
商品名を見ただけでは、そのモデルが「いつ発売されたモデルなのか」が全く分かりません。
Chromebookマニアの私が見ても、モデルの判別が付かないんです。これはAmazonお馴染みとも言えるんですが、好き勝手な商品名の付け方が出来るので、分からないんです。しかもWindows PCとか普通に混じってるし。
で、大抵商品名だけでなく、その商品ページに飛んでも、詳細な情報がほとんど書かれていないんです。例えばプロセッサーが「Celeron」とだけしか書かれていなかったり、「GIGAスクールモデル」と書かれているけど実際は遙か昔に発売されたモデルだったり。
じゃあ価格で安いのを選べば良いんじゃないか、反対に、ある程度4〜5万円のモデルを選べば良いんじゃないか、と思われるかもしれません。でも、ここで落とし穴があります。それが、
Amazonの販売価格と、販売時期やモデルのスペックは、かなりの割合で一致していない。
ということです。
この辺、長くなってしまうのですが、Chromebookには最近はようやく知られるようになってきた、端末(モデル)毎に決められているサポート期間である自動更新ポリシーというものがあります。
この期間が過ぎるとOSのアップデートが行えなくなります。全く使えなくなるわけではありませんが、新しい機能は使えませんし、セキュリティ面でもリスクが増してきます。そして何より、「低スペックでもサクサク動く」といわれているChromebookであったとしても、正直4年も5年も前のモデルと、最近のモデルでは、同じCeleron、低スペックのモデルでも、体感速度、快適さでも雲泥の差があります。
で、Amazonで困るのは、販売しているのがAmazonやメーカーだけではない、ということなんですね。一個人から得体の知れない並行輸入業者(という名の販売代行業者)まで誰でも自由に出品出来るだけでなく、価格も自由に設定出来るので、表示されている価格自体が適正価格とは限らない、むしろそうでない場合のほうが多いのです。
5年も6年も前のモデルが「GIGAスクールモデル、Celeron搭載」程度しか記載されずに4万円前後で売られていたりします。これ、余程Chromebookのモデルの知識がない限り、そうだと気付きませんよね?最新のモデルと勘違いしてもおかしくありません。で、実際買ってみたら、動作も重い、それどころか現時点ではGoogle自身も推奨していない2GB RAM、更に前述の自動更新ポリシーすらあと数ヶ月で切れるモデルだったりします。中には切れているモデルも多い。
これでは正直、「Amazonで探しましょう」なんて言えません。セールと書かれていても、それが本当にセールである、お買い得である保証がどこにもないからです。
これに関しては、検索の際に「Amazon直販のみに絞る」といった方法もなくはないのですが、そこまでの知識がある方でしたら、そもそも最初からAmazonで調べないと思います。実際にその方法で調べても、無駄な検索結果がそこそこ出てきて見づらくなっただけでした。一応検索の方法を駆使すれば実用的な絞り込みは出来なくはないですが、今この文章を読まれて悩まれている方には正直オススメ出来ません。
メーカー直販サイト。最初から頼ると振り回されます。
続いてメーカー直販サイト。これについても2パターンあります。
- HPやLenovoのように、常にセールを行っている。
- ASUSのように、定価かもしくはほぼサポート終了のモデルが超格安で販売(地雷)されている。
あとはエイサーのように元々本家サイトでは販売してない場合もありますが、主に上の2パターンです。で、どちらでも困るんです。
まずは1番目。「HPやLenovoのように、常にセールを行っている」場合。これ、お得なように見えますが、年中セール価格なんです。なので、目的のモデルが既に決まっていて、そのモデルの価格を常にチェックしている状態であれば良いのですが、同じ名前の1年前、2年前のモデルも同じようにセールになっていたりするので、お得だと思って買ってみたら旧モデルだった、といった場合もあるんです。
また、意外とセールでお得なように見えるのですが、価格だけで選ぶのであれば「別に他で買うのと大差無い」場合も多々あります。むしろ旧モデルの在庫処分の場合も多いので、無理して最初からメーカーサイトを選ぶ必要はないかな、と。
続いて2番目。ASUSのようなパターンです。もちろん定価で販売することが悪いわけではないのですが、メーカー直販ならではの強みが見えにくいのが残念です。そしてそれ以上に悩ましいのが、中途半端な型落ちモデルを、他で買うよりも高い価格でセールとして販売している程度ならまだ仕方ないのですが、既にあと1年ほどでサポートが終了するモデルを、そうした記載も全くせずに「アウトレット」とだけ書いた状態で1万円などで販売していることがあるのです。
先日は完全にサポートも終了した6年以上前のモデルをしれっと売っていましたが、あれ知らずに買った人はどうするんでしょうか。
また、残念ながら現時点では各メーカーのサイトのChromebookページについてはお世辞にも「分かりやすい」とは言えません。これはPC全般に言えるのかもしれませんが、メーカー公式サイトは「ある程度モデルが絞れている方が、そのモデルの詳細を知るために狙い撃ちで見に行くものであって、まだ絞れてない人が見に行くには不親切」な場合が多いな、と感じています。
ということで、何かAmazonやメーカーに喧嘩を売っているような内容になってしまいましたが、そこでオススメしたいのが次の方法です。
現行モデルを知るには「ヨドバシ」「ビックカメラ」を調べるのが一番です。
正確に言えば、他にも信頼に足る家電量販店はあるのですが、その辺り細かく言い始めると分かりづらくなってしまうので、この2つに絞ります。まずは「今どんなモデルがあるのかな」と知るためには、この2つの家電量販店のサイトを見るのが一番です。
理由は国内のChromebook販売事情が関係しています。ここを説明すると長くなるので詳しくは触れませんが、簡単に言うと
「国内の個人向け市場にChromebookが並び始めたのが2〜3年前から」
だからです。要は、それ以前のモデルは上記2つの家電量販店では扱ってないんです。そして、あくまで家電量販店です。価格も当然市場の相場に合わせた価格に落ち着いています。なので、数はあるものの、それでもある程度現時点での適正価格が把握しやすいんですね。
そうしたモデルは今となっては実用的ではない、というだけでなく、値付けも自由なので、本来の相場よりも高く設定されていることも多くなっています。なので、マニアが見てもひと目では判別しにくくなってしまっています。
では、先ほどと同じように「Chromebook」とだけ入れて検索してみます。ただ、ちょっとここでは「絞り込み」を入れています。
それぞれ、「26件(ヨドバシ)」「33件(ビック)」という結果が出ました。
「絞り込みを入れればAmazonだって同じじゃないか」と言われるかもしれませんが、この絞り込みをAmazonで行うと、先ほど触れたように「有象無象のセラー」が大量に混ざってしまって、検索の意味を成していないんです。それに対して、ヨドバシ、ビックで絞り込みをかけた場合には、そうしたセラーが混じらない、あくまでそれぞれの店舗のモデルしか出てきません(当然ですが)。
で、この際に先ほど「絞り込みをかけた」と書きましたが、ポイントが1つだけ。それが、単純にChromebookと検索してしまうと、Chromebook対応の周辺機器やアクセサリー類も含まれてしまうので、現在国内で個人向け市場に展開しているメーカーのみで絞り込む、ということです。
「レノボ」「HP」「ASUS」「Acer」「富士通」
です。その結果が先ほどの画像のような検索結果です。これで無駄が全くありません。で、これを眺めれば、現行モデルの大体の価格帯とラインナップが分かるかと思います。また、ここは流石に家電量販店だけあって、商品名もある程度法則に基づいて付けられているので、プロセッサーやメモリ容量、本体サイズなども含めて一目でだいぶ分かりやすくなっています。
さて、あとはこの30件前後の検索結果から自分に合いそうなモデルを選んでいっても良いですし、そこからメーカーの絞り込みをかけていっても良いと思います。
最後に。「見た目の安さ」に惑わされない。「Chromebookは安いモノ」と思いすぎない。
さて。ここまで長々と説明してきました。もしかしたらあなたにとっては今更な話題で、特に役に立たなかったかもしれません。
ただ、ネットを眺めていると、意外と「なんでそこでそのモデルに手を出しちゃったのかなぁ・・」「なんでその情報アテにしちゃったのかなぁ・・」と思うような選択をされている方を結構見かけるんです。
その大きな理由として、私は巷で当たり前のように言われている
Chromebookは低スペック・低価格でもサクサク動く
というイメージがあまりに絶対視されてしまっているのがあるんじゃないかなぁ、と思っています。
確かに間違いではないのですが、どうもそれが極端になってしまって、
Chromebookは安くなければならない。どんなモデルでも、低スペックでもサクサク動く。
というイメージばかりが先行してしまっている印象を受けるのです。この文書の前半でも触れましたが、そんなうまい話はありません。(もちろん快適さの感じ方は人それぞれではあるのですが)
その結果、巷に溢れる、Chromebookユーザーならどう見ても今からだと買わないようなモデルが、単に「安い」「お得」というだけで買われていっています。でも、あと数千円〜1万円程度出せば、常識的な、現行モデルが買える場合が多いのです。
また、多くの方が「興味は持ったけど、どのモデルを買って良いのか分からない」と悩まれています。もちろんその理由は今回挙げたような理由ばかりではないとは思うのですが、
突然この1〜2年でピンキリの情報が溢れだした結果、情報量の多さの割に、有益な情報が少ない、見分けにくくなってしまっていることも大きいのではないか、と思っています。そこに今触れた「Chromebookは安くなければならない(魅力がない)」「Chromebookは本来安いモノ」といった先入観が複雑に入ってしまって、ますます混乱させてしまっているのかな、と感じます。
今回お話した内容で、あなたが望むモデルには一足飛びでは辿り着かないかもしれません。ただ、とりあえず2022年の時点での国内のChromebook(現行普及価格帯モデル)の相場と大体のイメージを掴んでいただけたら、そしてその中から失敗の少ない選択肢を選んでいただけたらいいな、と思っています。
色々とツッコミどころはあるかもしれませんが、そうした意見も含めて、もう少しこの辺りの認識が広く伝わってくれたらいいな、と願っています。
日本で言えば、3年も4年も前のモデルがたまたまAmazonで型落ちセールで安くなっているのを見かけて、「ほら、Chromebookは安いじゃないか」と言っているようなものです。そりゃそうです。型落ちなんですから。そして、型落ちは単に古い、というだけでなく、今回も触れたように、サポート期間(アップデート期間)も少なければ、同じ低スペックでも現行モデルとは体感でも処理速度がだいぶ違います。
そこは一緒くたにしないで欲しいな、といつも思っています。