ASUSの新作スマートフォン、ZenFone 3シリーズについて、台北での新作発表会ZenvolutionとCOMPUTEX TAIPEI 2016で実際に触れてみての印象を、カタログスペックとともに前回書きました。
[kanren postid=”16054″]
特にDeluxe、Ultraはそれぞれに「世界初」の機能なども積まれていてそれぞれに素晴らしいと思うのですが、個人的に最も大きな進化だと思っているのは、実は「カメラのシャッター音」です。単純なことなのだけれど、実は意外と今まで意識されずにいた部分。敢えて意識してみないと変わることがない部分。そこにこれからのASUS(特にASUS JAPAN)の挑戦があると思っています。ASUSのZenFoneに限らないテーマではありますが、絡めて書いてみたいと思います。
ASUS ZenFoneの最大の弱点は個人的にはカメラのシャッター音だと思っています。
ASUSのスマートフォンで私が最初に使ったのがZenFone 5です。大きな不満も特になく、今までのスマホとAndroidのイメージを変えてくれた良機だと思っています。ただ一点の不満を除いては。それはその後のZenFoneシリーズ(6モデル使ってきましたが)でも一貫していました。
それが、耳障りで嫌がらせのようなカメラのシャッター音です。
カメラの性能が悪い等々色々言われていましたが、この辺は「どういう写真が好きか」によっても分かれますし、今後の改善も期待出来ます。けれど、このブログの文章を今までに読まれたことのある方は、しつこいくらいに私が書いていることを思い出されたかもしれません。
嫌がらせのようなシャッター音がある時点で、どれだけ性能が上がろうが、どれだけカメラの性能を謳おうが、所詮「カメラ機能付き」の「日本の」スマホに過ぎない。
これは光学3倍ズームを搭載して今年初めに発売された名作ZenFone Zoomでも変わりません。カメラに関しては、シャッター音が変わらない限り、あくまで私の中では「オマケ」に過ぎなくなってしまうのです。
[kanren postid=”12626″]
この時点で「犯罪者乙」など茶化して何となく済ませたいと思われている方は、この先は読まなくても良いかもしれません。恐らく私とはこの点に関しては相容れませんし、相容れないのは仕方ないのですが、そもそも話のしようがないからです。だって、話をする気はないでしょ?
でも改善されないのは日本メーカーではない時点で仕方ないのです。
何故なら、大した問題ではないからです。シャッター音が耳障り?ならオフにすれば良いでしょ?
それだけなんです。シャッター音が必要な人にとっては、シャッター音だとハッキリ分かるくらいにちゃんと音がしてくれれば良いだけですし、音に拘る必要はない。嫌ならオフにすれば良いだけです。これはASUSに限らず、基本的にiPhoneだろうが、世界のスマホにおいては普通のことです。音に拘るという感覚もあまりなかったのかな、と思っています。
けれど、日本においてはそれではダメなんです。何故なら日本ではシャッター音のオンとオフの切り替え機能を「敢えて無効にしてから」販売するからです。シャッター音(とフォーカス音)は日本においては外すことの出来ない、常に付き合い続けなければならない身近な存在です。
そもそもカメラから出るシャッター音って犯罪防止云々じゃなくて物理的に仕方なく出てたはずなのにどうしてこうなった… https://t.co/r2esNuSnVw
— ふらぢゃいる (@Fragile1973) 2016年6月7日
元々シャッター音がしていた理由は別にあった、という話をさっそく教えて頂きました。
盗撮みたいな犯罪防止のために法律で決まってるんだから仕方ないでしょ?
周りの人に聞いてみても、またネットで色々な書き込みを見ていても、結構「音を消すのは法律違反」だから「音がして当然」だと思われている方が多いな、と思います。法律違反なのは「音を消すこと」ではなく「盗撮すること」です。この二つは全く別。実際には「スマホのカメラのシャッター音は消してはならない」とは法律では定められていません。スマホにカメラ機能を付けるにあたっての「自主規制のためのガイドライン」のような形で共有されているものはあるようですが、「ねばならない」ものではないのです。
むしろ、日本で販売されているシャッター音を消すことができないiPhoneが例外的な存在です。アメリカなど日本以外の国/地域で販売されているiPhoneは、側面のボタンをサイレントモードに設定しておけば、カメラでシャッターを切るときの音が出なくなります。
日本で販売されているiPhoneがシャッター音を消せない理由は、公式にはコメントされていませんが、迷惑行為防止を目的にしていると考えられます。ある程度の音量でシャッター音が聞こえれば、写真を撮ったことが周囲にわかるため、いわゆる”隠し撮り行為”の予防につながります。スマートフォンが普及する以前から、日本のカメラ付き携帯電話は自主ルールとしてシャッター音が消せない仕様で流通しており、その経緯を踏まえた措置だといえるでしょう。
法律や政令など明文化された形での”シャッター音規制”は確認できませんが、携帯電話を監督する総務省の文書「ユビキタスネット社会の影の部分への対応策一覧)」には、撮影ルールとして「シャッター音を消したり小さくしたり出来ない構造」が携帯電話各社の自主規制により採用されている旨記載があります。
海外のiPhoneはシャッター音が消せるって本当ですか? – いまさら聞けないiPhoneのなぜ | マイナビニュース
カメラ機能がついてから日本では盗撮などの犯罪が激増した。
だからシャッター音は必須である。
雑誌の盗撮や映画などの録音も同様。シャッター音をなくせば犯罪がまた増える。
そんなイメージかと思います。
盗撮は重罪です。それは人、モノに関係なく同じです。だから、それは厳しく罰する必要があります。でも考えてみて欲しいのですが、電車の中でシャッター音、盛んにしてませんか?スクリーンショット撮りまくってますよね?皆さん別に音なんて気にしてないんです。コンビニや書店でも普通に雑誌撮影してる人がいますよね?(なので「雑誌を撮影することは犯罪です」なんてわざわざ貼り紙までしてある。)
確かに犯罪を抑止する効果は多少はあるかもしれませんが、盗撮していようが大半の人は見てみぬ振り。盗撮している本人もそれが犯罪だという認識すらないかもしれません。そして本当に盗撮している人の大半はわざわざ音なんて立てません。無音カメラだ何だ幾らでも方法はあるんです。
昔、CDのコピーを防止するためにコピーコントロールCDなるものが出た結果、犯罪がなくなったかと言えば、犯罪する気なんぞ元々ない大半の人にとっては却って使いづらくなって面倒になっただけなのと同じです。
むしろ、勝手にメーカー側が自主規制で犯罪防止のために、と勝手に規制した結果、カメラの音に対して無頓着、無関心になってしまった方のほうが多いのではないか、と思います。
こういう問題は、電子カメラの業界内で、無音にできない仕様にするなどの自主規制をし、電子カメラは無音にできないという国民意識を安定させた上で、立法化に踏み切る等の順序を経ていかないと解決するのは難しいのではないかと思います。
無音のカメラアプリは法律的に問題ないの? | シェアしたくなる法律相談所
こちらで書かれている小野 智彦 弁護士は「盗撮目的で無音アプリを入れる行為」を法律で規制することができるのか?という視点で考えた場合に法律が出来るのか、ということだと思います。「盗撮目的で」入れたとしても法律では規制できない。その上での上のようなご意見だと思うのですが。
追記:書店で本を撮影する行為だけでは法律違反にはならないそうです。
書店で本を撮影する行為は法律違反か 弁護士に聞いてみた – ライブドアニュース
実際には本を撮影していても「法律違反」にはならない、とのこと。そう考えると、シャッター音よりもむしろこうした部分の法律を整備して厳しくすることのほうが大切なのではないか、と思うのですが。
スマホのカメラが一般的になり、撮影のシーンが多様化し、SNSが発達した現代では。
写真を撮る、ということ自体が大きく変化してきています。これだけスマートフォンのカメラが日常生活に根付いてきている現代では、むしろ大切なことは「シャッター音を強制的にさせて盗撮を防ぐ」という大義名分よりも、むしろ個々人のモラルだったり、この状況で写真を撮ることが良いことなのかどうなのかを自分の頭で考えることが出来るようになることだと思うのです。
盗撮をするのはシャッター音がしないからでしょうか?むしろ何も考えずに場所や状況を考えずに静かな場所で音を響かせて写真を撮る人があまりに増えました。
食事前に料理の写真を撮るのは当たり前のようになりました。そういう時には無音カメラを使えば良い、という意見もよく目にしますが、音をさせずに撮っている人は元々自分の頭で考えて撮って良いのか悪いのか判断出来る人です。むしろそうした事を一切考えずに大きな音をさせて撮る人が多い。そうした人にとっては「犯罪云々」以前に、「周りがどういう状況か」「それが良いことなのかどうか」考えてすらいません。そのことのほうが問題ではありませんか?
作り話か本当かは分からなくても、如何にもあり得そうに思えてしまうこんな話。
ちなみに、iPhoneをはじめ、スクリーンショット時にも音がするのは何故でしょうか。これも理由があるそうです。「もしスクリーンショットの音をオフに出来るようにしてしまったら、盗撮する時にカメラを起動させてシャッターボタン代わりにスクリーンショットボタンを押せば無音で撮れてしまう」からだそうです。
そして、どのメーカーも日本市場でカメラのシャッター音の切り替えが出来るようにしないのは、「シャッター音をオフに出来るようにしてしまうと、犯罪の片棒を担いでいるメーカーだと非難を受ける恐れがある」からだそうです。本当かどうかは分かりませんが、そうしたジョークとも思える理由でも何となくありそうだと思えてしまうところに、私たち利用者が相当馬鹿にされているような気がするのは私だけでしょうか。
@_LifeStyleImage むしろそれによって個人のモラルやマナー意識が低下あるいは欠落しているような気すらします。あるいは「おまえら野放しだと全員盗撮するだろ!」と決めつけられているのか(笑)。
— saku03_(さくらい伸) (@saku03_) 2016年6月7日
そんなシャッター音話がどう今回のASUSとZenFone 3に繋がるのかと言うと。
長々と書きましたが、そんな一見脱線しているように思えるシャッター音の話がどう今回のASUSに繋がるのかというと、ここ最近のASUS JAPANのこんな動きが関係しています。
【お知らせ】
ZenFone Zoomにおいて撮影時のシャッター音が小さく調節されました♪
更新方法 : 設定→端末情報→システム更新→更新を確認
更新後のビルド番号は「JP-2.26.40.108_20160520」となります。 pic.twitter.com/hvLVgMC53s— ASUS Japan (@ASUSJapan) 2016年6月7日
個人的にはカメラ機能の改善よりも遙かに嬉しい。撮った写真はある程度までなら補正は出来ますが、音は塞ぐしか方法がありません(無音カメラは基本動画撮影からキャプチャしているパターンが多いので細かい修正が難しかったり、画質自体が落ちるので)
前回の文章でも触れましたが、今回ASUS JAPANが正式に発信していたので、改めて触れました。これ、大したことがないように見えて、結構大変なことだと思うのです。
シャッター音については、ネットで少し検索しただけでも「小さいと犯罪を助長するので、もっと大きくするべきだ」と言った意見もあったり、と意見が大きく分かれやすいセンシティブな内容でもあります。けれど、カメラ機能を売りにしているZoomを日本でシャッター音を消さずに実用的にするには、シャッター音を小さくするという方法が現実的でもあります。そして、こうした音に関する意見は、恐らくASUS本社(台湾)側からはなかなか出ないでしょう。何故なら元々「オフに出来る」からです。(海外の別のメーカーによっては実質無音化出来るモデルもあるようですが。)
音を消すことが出来ない端末を販売している日本でしか強く出ることのない意見です。Zoomは特にカメラに興味を持った方が買われたでしょうから、ユーザーとしてはこの問題は放置は出来ません。
ZenFone Zoomのカメラを静音化してみた^^
root化やAPKをいじったりはできないから超アナログな方法でw
ブリスターパックを小さく切って本体とTPUケースの間に挟むだけ! pic.twitter.com/8pUoFsI73m— らんす@ほにほに共和国 (@Lanse_NRSp) 2016年4月10日
お手軽DIYでZenFone Zoomのシャッター音を小さくしてみた : ASUS好きのZenBlog(ゼンブログ)
私も入手直後にスピーカーに詰め物をしました。全く音がしないようにしたんです。この方法の欠点は、音が一切鳴らなくなってしまうこと。私はそもそも端末のスピーカー自体全く使わないので何の問題もないのですが、Zoom自体はスピーカー機能も売りの一つだったので、そうした魅力の一つを犠牲にしていることになります。
今回のZenFone 3ではシステム音と連動してシャッター音が調整可能。
前回も触れましたが、ZenFone 3では単に「オンとオフの切り替え」だけではなく、「システム音(スピーカー等)と連動してシャッター音も大小調整可能」になりました。
これ、大したことがないように見えますが、ASUSとしてもシャッター音というものを意識するようになったことの表れではないか、と思うのです。
@ASUS_ZenBlog スマホの音量によって、シャッター音の音量が自動的に調整できるようになったらしい。
結構小さかったよ。— ASUS Cynthia (@asuscynthia) 2016年5月31日
まだ日本版は発表されていませんので、そもそもZenFone 3自体日本でどのモデルが出るか分からない段階では日本モデルはどうなるかは分かりませんが、元々「オンオフ切り替え可能」なグローバル版で既に搭載されているのは嬉しい限りです。ちなみにスクリーンショット音のオンオフに関しては日本版でも既にMaxでは「切り替え機能」自体があり、その他のモデルでもシステム音と連動して無音にも出来ます。
[kanren postid=”13889″]
そして、個人的には今回のZoomのシャッター音がシステムアップデートで小さくなったことも考えると、この機能を敢えて塞いでくることはないと思っています。更に期待したいのは、今回のアップデートを受けて、以前のモデルのユーザーもコメント等で「○○も小さくして欲しい」と言った声を上げています。オンとオフの切り替えであればいきなりは難しい問題でも、こうしたシステムアップデートで対応可能な部分なのであれば、充分に可能性はありますし、ハードルは下がったのではないか、と思うからです。
今回のZoomのアップデートも、Zoomの日本のユーザーからの声を多く頂いて真剣に検討した結果だったそうです。今まで音に関してはそこまで気にしていなかった(というより気付かなかった)のが、毎回(各モデル)シャッター音が話題や要望として上がってきていて、これは放置できない、と思ったそうです。
ASUS JAPANとしては、「様々な要望を頂いていることは把握している。例えば、会議中のメモとして写真を撮りたい時にシャッター音が気になる、など様々なユーザーシーンがある。現時点では無音化を行う/行わないの判断はしていないけれど、今後求める声がより大きくなるようであれば前向きに検討する。その際にはスマートフォンカメラの公共マナーとの兼ね合いも考えてよりベストな方法でご提案出来たら、と考えている。」とのこと。(私の方で一部抜粋した上で要約しています。)
追記:2016年9月28日 16:15 更新
本日、日本でもZenvolutionが開催され、国内発売モデル3モデルが発表されました。
[kanren postid=”18372″]
そこで会場にいる、ASUS好きのZenBlog(@ASUS_ZenBlog)さんに気になっていたこの点を早速訊いてみました。
@_LifeStyleImage 消せませんし、変わりませんね。
— ASUS好きのZenBlog (@ASUS_ZenBlog) September 28, 2016
ボリュームボタンで音量を変えることも出来ない模様。まだ会場のタッチ&トライということで、もしかしたら発売時には何かしらアップデートで変更があるのかもしれませんが、個人的にはこれが一番残念です。
マナーの問題はセンシティブで難しいけれど、こうした取り組みをこれからも応援していきたい。
今回のシャッター音の問題は、何もスマホに限ったことではありませんし、実際に盗撮に遭われた方にとってはそう簡単な問題ではないかもしれません。そして、一つの絶対的な答えがあるわけでもありません。けれど、私はそれを「人それぞれの意見があるから」「意見には個人差があります」と言ってお茶を濁したくありません。押し付けるつもりは全くありませんが、「個人差」で何となく雰囲気として誤魔化したり、先送りにしたいとも思いません。だって、個人差なんて、当たり前でしょ?
そして、これはASUS社固有のことではなく、どこかがより良い方法を提案することで、それが良い影響となって他社も含めて良い方向に進んでくれればいいのになぁ、と思います。
私が望んでいるのは、「決まりだから(実際決まってないけど)」「何となくそういう雰囲気だから」で済ませて考えようとしないのではなく、きちんと選択肢が用意されている、ということ。
結果として「でもシャッター音は必要だ」でも良いんです。シャッター音が悪いのではないんです。ただ、もしシャッター音が外せないなら、折角だから拘って欲しい。普段の何の問題も無い時ですら萎えるような高らかで無機質な電子音で撮影を楽しめないのでは、何のためのカメラか分かりません。
写ルンですは巻き上げの音はうるさいけどシャッター音自体は今のスマートフォンのより静かだしな^^;
— ふらぢゃいる (@Fragile1973) 2016年6月7日
写ルンですのあの押した感のあるシャッター音は今思うと結構好きだったかも。 https://t.co/T85Ax3BPW1
— Life Style Image (@_LifeStyleImage) 2016年6月7日
人によっては大したことではないかもしれないけれど、こうした小さな目立たない改善が実は大きなうねりとなって流れを変えることになるかもしれない。実際、私の中では国内販売モデルでキチンとオンオフが出来るモデルが出たら、それだけで買い換える理由になります。
だからこそ、今回のZenFone 3の日本版も期待していますし、Zoomのようなシステムアップデートを他のモデルにも是非これから行っていって欲しいな、と思います。
こだわり抜いた、日本独自のシャッター音という前向きな選択肢も歓迎。往年のカメラの名機あの○○のシャッター音を完全再現!(電子音ではなく)みたいな。もしくは写ルンですの音も意外と好きだったので、あんなのでも可。 https://t.co/Y0xk5Vww1Z
— 鈴木章史 (@SuzukiAkifumi) 2016年6月7日