以前から興味がありながらも、何となく難しそう、退屈そう、気難しそう、そもそもつまらなそうという先入観と偏見が邪魔をして、老後の趣味として数十年後に思い出されそうだった歌舞伎。
けれど今となってはその全ての誤解と先入観と偏見を抱いていた過去の自分があまりに勿体無かったと後悔しております。こんな素晴らしい世界を老後の趣味にしてしまうのは、あまりに機会の損失、勿体無い。
今回観たのは「東海道四谷怪談」。日本人にはお馴染みお岩さんのお話ですが、私はその話の詳細は元々知りませんでした。単に顔がただれてしまって変形して、井戸に身を投げてうらめしや〜な話だと思っていました。その程度です。ごめんなさい。
そして、初歌舞伎。隣で妻も時々ウトウトしていましたが、私は奇跡的に最後まで食い入るように観ておりました。
でも意味は大半は分かりませんでした。
それなのに、面白いんですよ。あれを伝統芸能だ、の一言で難しいものだと片付けてしまうのは勿体無いです。
元々江戸時代の大衆芸能だったわけで、難しい訳ではないんです。楽しいものなんです。あまり気負っちゃいけないんだなぁ、分かろうとするだけ野暮なんだなぁ、などと勝手に一人納得しながらその独特の雰囲気を楽しみました。
私の中では、年末のNHKホールで聴く第九と同じ類のものだと思いました。あれも行くまでは、なんかかなりお洒落していかなければいけないんじゃないか、背筋伸ばしてクラシックを鑑賞しなければいけないんじゃないか、みたいに緊張してしまいますが、あれだって第九の何が私に分かるかと言われれば、10年近く毎年妻と行っていますが、何も分かりません。
でも、不思議な事に、分からないなりに年々寝なくなりましたし(寝ても良いんですが)、毎年指揮者によって違う第九の世界をそれなりに今年は良かった、今までのベストは何年前だな、みたいに楽しんでいる自分に気付きました。あれも年末のエンターテイメントなんですね。歌舞伎も同じです。
今回会場に着くまで、同様に妻と二人緊張しながら、何着てったら良いんだろう、とか相談しながらあーでもないこーでもないとやっておりましたが、一回行ってみたら、あ、そんなこと気にすることのない、また寝ちゃってオッケーな(いびきと激しい横揺れ前揺れは厳禁だと思う)素敵な世界でした。年末の第九ほどイベントにせず、普段から月一くらいの気分で趣味の中に取り入れていったほうがより楽しめると思います。